『マタンギ・/マヤ/M.I.A』
第32回を迎える映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル2018」が8月4日(土)から東京でスタート、その後も京都、横浜、名古屋で開催される。
今年は、国内以外にも中国・韓国・台湾からの応募も加わった新たな公募部門「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」、日本未公開の注目作や映像アート作品を集めた「エクスペリメンタル・パノラマ」、山崎博やクリストフ・シュリンゲンジーフといった作家を特集する「フィルムメーカーズ・イン・フォーカス」、そして「シンポジウム&レクチャー」と4つのセクションに分かれて実施。webDICEでは、イメージフォーラムの山下宏洋さんから、注目の上映プログラム4つをレコメンドしてもらった。
『蟲(むし)』
ヤン・シュヴァンクマイエル
「ある小さな街で、劇団の俳優たちがチャペック兄弟の戯曲『虫の生活』のリハーサルを行っている。その最中、俳優たちの人生が、劇の登場人物たちの運命と混ざり合っていく」―シュヴァンクマイエル
カフカの『変身』よろしく、劇中に出演する監督本人も含め、人が虫に、虫が人に変容する。
デジタル/98分/2018年/チェコ
現代に生きるシュルレアリストの真打ち、シュヴァンクマイエル自身が“最後の長編映画”と公言している『蟲』。冒頭から終わりまで途切れることがないテンションの高さと、観る者の想像を軽く超える、なお旺盛な創意に満ちた本作は、とても最後の作品には見えません……。冒頭始まっての数分は、何か大事件が起きるのではないか?というハラハラ感で一杯ですが、すぐその予感は見事に脱臼させられてしまいますし、なかなか一筋縄ではいかない遊びにあふれた作品です。
Fプログラム『蟲(むし)』
1作品・98分
【東京】スパイラルホール 8/8 19:00、8/12 13:40
『マニフェスト』
ユリアン・ローゼフェルト
マルクスからダダ、未来派からシチュアシオニスト、フルクサスからラース・フォン・トリアーまで……。20世紀を代表するアート宣言へのオマージュ。アカデミー賞女優のケイト・ブランシェットが、小学校の先生、パンク・ロッカー、ホームレスの男などに扮し、さまざまなマニフェストの精神を具現化する。20世紀アートを牽引してきた数々の有名フレーズが纏う情熱。それらの言葉は、現在生きる我々にどのように響くのか。
デジタル/92分/2013年/フランス
未来派詩人でアーティストのヴァレンティーヌ・ドゥ・サン-ポワンが、女性蔑視を謳ったマリネッティの未来派宣言への返答として1912年に書いた「未来派女性のマニフェスト」。その宣言文(マニフェスト)が元々のインスパイアだったという本作品。カール・マルクスからジム・ジャームッシュまで、20世紀の有名アーティストたちの宣言文の精神を、女優ケイト・ブランシェットが13人のキャラクターとして演じ分けます。アーティストたちの情熱がほとばしる破壊的な宣言文は、言葉がますます軽視されつつある現代にはむしろ新鮮に響くかも知れません。
Gプログラム『マニフェスト』
1作品・95分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/4 13:00
【東京】スパイラルホール 8/12 11:00
【京都】ルーメン・ギャラリー8/26 11:00
『マタンギ・/マヤ/M.I.A』
スリランカの内戦を逃れ9歳でイギリスに渡った少女マヤ。ヒップホップやストリート・アート、ロンドンの移民コミュニティに影響された独自の音楽を作るようになった彼女は、やがて世界的に有名なポップ・イコン、M.I.A.となる。その歯に衣着せぬ政治的物言いと、“バッド・ガール”なキャラクターは、常に批判の的だ。しかしM.I.A.の表現を形作ったのは内戦と、抵抗組織のリーダーである父の存在、そしてイギリスで移民として育った経験なのだった。彼女自身とその友人たちが撮りためた22年間の映像素材を元に制作されたドキュメンタリー。本年のサンダンス映画祭審査員賞受賞作品。
デジタル/95分/2018/スリランカ・イギリス・アメリカ
ミュージシャンのM.I.A.の名前は「Missing in Action (作戦中行方不明)」の頭文字だそうで、スリランカのタミル人武闘派反政府組織のリーダーの父を指しているとのこと。そうした家庭を背景に、難民としてイギリスに渡った少女マヤが、M.I.A.となってそのアグレッシブな音楽性と政治的な言動で世界を騒がすようになるまでを、本人やその友人たちが撮りためた映像を元に構成したドキュメンタリー。M.I.A.姐さんとにかくカッコいい。元々は宅録テープの持ち込みからブレイクした人なんですね。
Hプログラム『マタンギ・/マヤ/M.I.A』
1作品・95分
【東京】スパイラルホール 8/9 13:40、8/11 19:00
【名古屋】愛知芸術文化センター 9/29 19:00
『挑発する生 クリストフ・シュリンゲンジーフ』
『挑発する生 クリストフ・シュリンゲンジーフ』より『友よ! 友よ! 友よ!』
実験映画を出自とし、カルト映画作家としてのフィルモグラフィーを築いたクリストフ・シュリンゲンジーフは、やがて演劇やテレビ番組制作そして社会的アート・プロジェクト、または社会的弱者のための政党結成など活動を大きく広げていった。アフリカでのオペラハウス建築を計画中の2010年、惜しくもこの世を去ってしまったシュリンゲンジーフ。制作途中だった2011年のヴェネチア・ビエンナーレ展示作品は、その年の金獅子賞を受賞した。日本未公開の映像作品や、彼のパフォーマンス、TVショーなど、シュリンゲンジーフの幅広い活動を横断的に紹介する日本初の試み。
共催・プログラム提供:ゲーテ・インスティトゥート東京
日本では『ドイツチェーンソー 大量虐殺』などのカルト映画作家として知られていますが、ネオナチと一緒に大劇場でハムレットを上演したり、ホームレスや薬物中毒者たちと連続オープン・フォーラムを開いたり、ウィーンの街中で外国人排斥リアリティー・TVショーを行ったりという、彼の行った刺激的な社会的パフォーマンスについてはそれほど知られていません。本フェスティバルでは、彼の映画作品からそうしたパフォーマンスまでの活動を概観する特集を行います。「生産性」云々言っている方たちが観たら憤死するのではないか、そんな破壊力ある作品8作品を上映します……。
Sプログラム『挑発する生 クリストフ・シュリンゲンジーフ』
S-1『ヒトラー100年』
2作品・57分
『アドルフ・ヒトラー100年―防空壕での総統の最後のひととき』 16ミリ(デジタル版上映)/55分/1989(ドイツ)
短編作品『エリーゼのために』(2分/1982)
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/4 21:15、8/7 15:45
S-2『ドイツチェーンソー大量虐殺』
1作品・60分
16ミリ(デジタル版上映)/60分/1990年/ドイツ
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/5 21:15、8/8 21:15
S-3『テロ2000年 集中治療室』
1作品・60分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/6 18:30、8/9 13:00
35ミリ(デジタル版上映)/60分/1990年/ドイツ)
S-4『ボトロップの120日』
1作品・60分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/5 18:30、8/9 15:45
16ミリ(デジタル版上映)/60分/1997年/ドイツ
S-5『フリークスター3000』
1作品・75分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/7 18:30、8/9 21:15
デジタル/75分/2003年/ドイツ
S-6『友よ! 友よ! 友よ!』
1作品・73分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/8 18:30、8/10 13:00
デジタル/73分/1997年
S-7『外国人よ、出て行け!』
1作品・73分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/8 13:00、8/11 21:15
デジタル/90分/2002年/ドイツ+オーストリア
S-8U3000
2作品・64分
【東京】シアター・イメージフォーラム 8/8 15:45、8/12 21:15
U3000 「エピソード2 ヨーゼフ・ボイス+インド」(35分/2000年)
U3000 「エピソード7 アフリカ」(29分/2001年)
デジタル/計64分/2000~2001年
東京:2018年8月4日(土)~2018年8月12日(日)
シアター・イメージフォーラム
東京:2018年8月8日(水)~2018年8月12日(日)
スパイラルホール
京都:2018年8月21日(火)~2018年8月24日(金)
京都芸術センター
京都:2018年8月25日(火)~2018年8月26日(金)
ルーメン・ギャラリー
横浜:2018年9月15日(土)~2018年9月17日(月)
横浜美術館
名古屋:2018年9月26日(水)~2018年9月30日(日)
愛知芸術文化センター
主催:イメージフォーラム
共催:ゲーテ・インスティトゥート東京(挑発する生 クリストフ・シュリンゲンジーフ)
京都芸術センター(Co-program 2018カテゴリー D「KACセレクション」採択企画 )
横浜美術館
愛知県美術館
助成:芸術文化振興基金助成事業
協賛:株式会社ダゲレオ出版
協力:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
渋谷東急REIホテル
ルーメン・ギャラリー
会場協力:株式会社ワコールアートセンター
後援:ベルギー王国大使館
カナダ大使館
http://imageforumfestival.com/