映画『モンゴリアン・ブリング』より
アップリンクが運営するクラウドファンディング『PLAN GO』の第一弾プラン「モンゴルのヒップホップを追ったドキュメンタリーを上映したい」は、『モンゴリアン・ブリング』(原題:Mongolian Bling、オーストラリア、2012年、脚本/監督:ベンジ・ビンクス)の上映イベントを6月17日(日)にアップリンク渋谷で開催するプランだ。
【PLAN GO:モンゴルのヒップホップを追ったドキュメンタリーを上映したい】
http://plango.uplink.co.jp/project/s/project_id/45
『モンゴリアン・ブリング』 は、急速な近代化が進むウランバートルを舞台に、これまで映画として描かれることが少なかった「現代のモンゴル」を生きる若者にスポットを当て、歴史的経緯を踏まえながら伝統と自身のアイデンティを見つめ、独自の表現を模索するラッパーたちの姿を映した音楽ドキュメンタリー作品。
映画『モンゴリアン・ブリング』より
監督のベンジ・ビンクスはオーストラリア出身の世界をまたに駆けるテレビカメラマン。アマゾン流域やカンボジアでの映像制作の後、シベリア鉄道を旅する中でモンゴルのヒップホップと出会い、長期にわたって現地の歌手や関係者、街行く人を多数取材し本作を完成させた。モンゴルの伝統を感じさせるビジュアルとモンゴルヒップホップのビートがつむぐユニークなストーリーは本作品以外では目にすることができない貴重なドキュメンタリーといえる。
映画『モンゴリアン・ブリング』より
本作の監督であるベンジ・ビンクス(Benj Binks)のメッセージを紹介する。
ベンジ・ビンクス監督のことば
──伝統文化だけでない「新しいモンゴル」を映し出すベンジ・ビンクス監督
初めてモンゴルのヒップホップを聞いたのは、シベリア鉄道で添乗員として働いているときでした。多くの人がそうであるように私もモンゴルと言えば、広大な草原、家畜の世話をしながら放浪する人々や伝統文化を思い浮かべていました。しかし、ひとたび首都ウランバートルで電車を降りた途端、この国には、時代遅れのステレオタイプ以上のものがあることに気付かされたのです。
映画『モンゴリアン・ブリング』より
映画『モンゴリアン・ブリング』の舞台となる首都ウランバートルは、エネルギーに満ちた若者たちと伝統文化に慣れ親しんだ大人たちで賑わう近代的な都市です。流行に敏感な若者たちは、親しみをこめてウランバートルのことを「UB」と呼んでいます。街はヒップホップであふれています。広告、ファッション、クラブやバーで鳴り響く音楽など……。これらは、20年ほど前にモンゴルの人たちを民主化へ導いた西洋文化が与えた影響の産物のひとつでしょう。
本作品は、スナップ写真のように人々の日常を切り取り、ヒップホップの生き生きとしたリズムを通して「新しいモンゴル」を映し出しています。世にあるモンゴルを題材とした映画のほとんどは、伝統文化だけに焦点を当てたものが中心です。しかし実際のモンゴルというのは人口の半分以上を占める150万人が都市ウランバートルで生活していて人々が思い描く草原のモンゴルとはまた違う現実が存在します。私は、こうしたウランバートルの様子やそこで暮らす人々の姿こそ、この国の最新の状況として伝えるべきではないかと強く感じていました。そしてヒップホップの視覚的かつ音楽的な魅力は、こうした状況を伝えるのにぴったりの手段でした。
映画『モンゴリアン・ブリング』より
現地のリアリティを知ろうと、モンゴルのヒップホップ・シーンで現在活動している人やかつて活動していた人達に私は片っ端からインタビューをしました。さらに音楽、民主主義、アイデンティティについてユニークな知見をくれる人々にたくさん出会いました。作品ではその中のほんの一部だけを取り上げていますが、映画に登場する各個人のストーリーを通じて現代モンゴルの姿を感じ取ってもらえれば何よりです。本作品を完成できたのは、ひとえに作品に関わってくれた人たちの協力であり,心から感謝しています。
私はもともと、モンゴルのヒップホップについての映画をつくるつもりでした。しかし、撮影を進めるうちに、モンゴルの伝統音楽や恐ろしい歴史、前途多難な民主化、ヒップホップとモンゴルの伝統とのつながりといった新たな発見が次々と生まれ、最終的にはモンゴルのヒップホップシーンだけには到底とどまらないドキュメンタリー作品が完成しました。オーストラリア出身の私を含め欧米から目を向けると、アジアの見知らぬ土地モンゴルにはどんな映画にも収まきらない語りつくせない無数のドラマがあります。特に現代のモンゴルは、急速な近代化が進むなかで、独自のアイデンティティや伝統を持ち続けながらも、その継承に不安が募る微妙な過渡期にあります。
伝統的な音楽・文化と、多くの若者が魅せられている西洋文化の影響との狭間で、人々は互いに折り合いがつく妥協点をつくり出そうとしています。
映画『モンゴリアン・ブリング』より
本作品は現代のモンゴル社会を初めて描いた映画として、才能あふれる若いラッパーたちを取り上げることで、この作品が美しくて魅力的なモンゴル文化のもう一つの側面を描き出すとともに、外国の「ブリンブリン」人気に押されて失われていく危機に陥っている文化に希望を与えることを願っています。
▼監督がウランバートルで本作について行ったTEDxトークの様子
クラウドファンディング『PLAN GO』では、本作の日本語字幕作成のほか、6月17日(土)の日本初上映会開催費、作品資料(日本語)やDVD制作費用を募る。支援者には上映会参加のほか、DVDやストリーミング視聴の特典が用意されている。
本プランを起案した5th-element(田中恵子、玉川千絵子、野田美稀)は、日本未公開の優れた海外ドキュメンタリーの上映・ディスカッションイベントを企画するチーム。それぞれ仕事・育児の合間を縫って、ヒップホップとその背景にある社会問題について知識を共有する活動に励んでいる。
5th-elementの田中恵子さん、野田美稀さん、玉川千絵子さん(写真左から右)
http://plango.uplink.co.jp/project/s/project_id/45