骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2018-04-26 15:10


17歳と24歳の青年 互いに惹き付け合う必然性描くラブストーリー『君の名前で僕を呼んで』

脚色ジェームズ・アイヴォリー×監督ルカ・グァダニーノ×新星ティモシー・シャラメ
17歳と24歳の青年 互いに惹き付け合う必然性描くラブストーリー『君の名前で僕を呼んで』
映画『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture

1980年代の北イタリアの避暑地を舞台に、17歳と24歳の青年の激しい恋を描く『君の名前で僕を呼んで』が4月27日(金)より公開。webDICEではルカ・グァダニーノ監督のインタビューを掲載する。

アンドレ・アシマンの小説を原作に、『モーリス』『眺めのいい部屋』のジェームズ・アイヴォリーが脚色を手がけ、『胸騒ぎのシチリア』のルカ・グァダニーノが監督を務め、『レディ・バード』などで進境著しいティモシー・シャラメと『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマーが共演。エリオとオリヴァーが惹かれ合う必然性と、夏の終わりとともに別れを余儀なくされる切なさを、アピチャッポン作品を手がける撮影監督サヨムプー・ムックディプロームによる、したたるような美しい画とともに描写している。物語の後半、ティモシー・シャラメットが演じるエリオの父親、パールマン教授が息子に対し「自分はお前たちのような経験を逃してしまったが、感情を無視するな」と伝えるシーンは、監督、原作者、そしてアイヴォリーからの若者たちへのメッセージとして受け取れるだろう。恋することの痛みと喜びを受け止めることの大切さを、この物語は教えてくれる。


「私はこの映画を“超知的(ハイパー=インテレクチュアル)作品”のようには考えて欲しくないんだ。見る人の気持ちを高めてくれるような優しいラブストーリーだ」(ルカ・グァダニーノ監督)


原作よりも現在進行形の映画にする

──アンドレ・アシマンによる原作の回顧スタイルを取り入れなかった理由は?

原作小説は、プルースト的な、過去の事柄を思い起こすスタイルだった。喪失のメランコリーに満ちた時代に耽るような。とても美しいと思ったが、私は現在進行形の映画にする方が、より観客の心を動かし、キャラクターへの共感性がより強くなると感じたんだ。

映画『君の名前で僕を呼んで』ルカ・グァダニーノ監督
映画『君の名前で僕を呼んで』ルカ・グァダニーノ監督

──舞台はイタリアの避暑地で主人公の父は美術史学者、古典の引用も多く、言語も様々ですね。

私はこの映画を“超知的(ハイパー=インテレクチュアル)作品”のようには考えて欲しくないんだ。見る人の気持ちを高めてくれるような優しいラブストーリーだ。ボックス入りのチョコレートのような存在になってほしいね。

映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture

ふたりの親密さ、互いに惹き付け合う必然性

──官能的な描写が緻密にされている原作を映像化するのは難しかったのでは?

エリオとオリヴァーが初めて結ばれるシーンは、脚本では映像的に書かれ過ぎていたと記憶してる。どう演出しようかとかなり悩んだ。スクリーン上のセックスは、最も見るに耐えられないものになることもあり得る。一般論だが、セックスがその人物の振る舞いを描く方法の1つで、その振る舞いにキャラクターが反映されているならば、私はセックスを描くことに興味がある。だけど単にその行為を描くだけだったら、興味はないんだ。だから、体をどう動かすとか、そういうことは問題じゃない。私たちは、ふたりの親密さ、互いに惹き付け合う必然性、映画に必要なすべてを持っていたからね。

私は、彼らが足を相手の足の上に置くと、とてもエロティックに感じることに気づいた。その瞬間、切迫した親密さの表現になり、とても強くパワフルになるんだ。ふたりの実際の身体的行為を見て得られるものが、そんなに大きいのか?私は、そうではないと思う。何を見せて、何を見せないか。私たちは自由に決められる。ある意味でそれはとても解放的な経験だったよ。

──ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーは一緒ではなく、別々にキャスティングしたと聞きましたが。

ティミーは4年前、彼が17歳の時に配役を決めた。彼の人生の中で今この瞬間、二度とは訪れない瞬間の彼を得られて本当にうれしく思う。アーミーは『ソーシャル・ネットワーク』を見て以来ずっと、みんなと同じように彼に夢中になった。僕はずっと彼のことを、大きな幅を持ったとても洗練された俳優だと思っている。だからオリヴァーという役を考えた時、映画の中で誰もがオリヴァーにうっとりするのだから、彼のとてつもないチャーミングさを使わない手はないと思った。ただ単にハンサムな男性として使うのではなく、彼の持つ大きなふり幅を上手く使おうと思ったんだ。

映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』エリオ役のティモシー・シャラメ ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』オリヴァー役のアーミー・ハマー ©Frenesy, La Cinefacture

──一緒にいるふたりを初めてレンズ越しに見た時の感想は?

映画作りはいつもミラクルで喜びだ。彼らはカメラに対して映画に対して、本当に誠心誠意で、だからこそ彼らの友情関係が、エリオとオリヴァーに起こることを僕らに信じさせてくれるんだ。

映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture

35ミリのレンズひとつしか使わない制限を自分に課した

──撮影監督にサヨムプー・ムックディプロームを起用した理由は?

彼と最初に仕事をしたのは、私がプロデューサーとして関わった映画だった。フェルディナンド・チト・フィロマリーノが監督した『Antonia』という映画だ。フェルディナンドがアピチャッポン・ウィーラセタクンの映画が大好きで、それで私がサヨムプーに連絡し、撮影監督をやってくれないかと頼んだんだ。サヨムプーにとって初めてのタイ以外の映画だった。彼の雰囲気を創り出す能力、同時にキャラクターを理解する能力は驚くべきものだったよ。それで私は彼にアプローチしたんだ。私たちはこの暑い夏の熱を映画に映したかった。ところが、実は撮影期間のほとんどで激しい雨に悩まされていた。サヨムプーが人工的な完全な光を創り出してくれたんだ。サヨムプーは自然に対する特別な感覚を持っている。そして光の彫刻家でもある。すばらしい穏やかさや精神的な静けさを現場にもたらしてくれる人間としても、彼を敬愛しているよ。

映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』撮影現場のサヨムプー・ムックディプローム(右) ©Frenesy, La Cinefacture

──35ミリのレンズひとつで撮影したそうですね。

私は制限があることが好きなんだ。映画づくりで制限を知るのはいいことだと思う。そういった制限を通してこそ、映画を語る言語が見つかるんだ。私はひとつのレンズしか使わないという特殊な制限を自分に課した。この映画の感情的な流れをテクノロジーで邪魔したくなかったからだ。ストーリーや登場人物や生活の流れに集中したかったんだ。

映画『君の名前で僕を呼んで』エリオの父親、パールマン教授役のマイケル・スタールバーグ  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture

──スフィアン・スティーヴンスにオリジナル曲を書いてもらおうと決めたのは?

私が心から称賛するアーティストが、スフィアンだ。彼の声は素晴らしく天上的だ。そして歌詞はシャープでとても深くて、悲しみと美しさに溢れている。彼の音楽は心から離れない。このあらゆる要素が、私がこの映画に込めたかったものなんだ。スフィアンの歌によって映画にもう1つの声が加わったと思っている。彼の音楽はナレーションのないこの映画のナレーションでもある。

──80年代のポップソングはあなたが選んだとか?

私はザ・サイケデリック・ファーズが大好きなんだ。曲を使ったのは一種、自叙伝的な意味合いだ。17歳の頃、彼らの曲に完璧に影響されて聴いていたことを思い出すよ。オマージュを捧げたかったんだ。

(オフィシャル・インタビューより)



ルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino) プロフィール

1971年、イタリア、シチリア州パレルモに生まれる。映画監督デビュー作は、1999年ヴェネチア国際映画祭で世界プレミア上映されたティルダ・スウィントン主演の英語作品『The Protagonists』。続く第2作はイタリアでセンセーションを巻き起こした自伝小説の映画化『メリッサ・P~青い蕾~』〈未〉(2005)。第3作となる『ミラノ、愛に生きる』(2009)では再びティルダ・スウィントンを起用。『胸騒ぎのシチリア』(2015)もスウィントンが主演、他にレイフ・ファインズ、ダコタ・ジョンソンらが出演した。長編映画第5作となる本作では、いよいよその才能を成熟させ、数々の作品賞を受賞。次回作は、ダリオ・アルジェント監督のクラシック・カルト映画『サスペリア』のリメイクで、ティルダ・スウィントンとダコタ・ジョンソンが出演。公開は2018年を予定。




映画『君の名前で僕を呼んで』  ©Frenesy, La Cinefacture
映画『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture

映画『君の名前で僕を呼んで』
4月27日(金)、TOHOシネマズ シャンテ 他 全国ロードショー

監督:ルカ・グァダニーノ
出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール、エステール・ガレル
原作:アンドレ・アシマン
脚本:ジェームズ・アイヴォリー
撮影:サヨムプー・ムックディープロム
美術:サミュエル・デオール
原題:Call Me by Your Name
2017年/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ/132分
配給:ファントム・フィルム
提供:カルチュア・パブリッシャーズ/ファントム・フィルム

公式サイト

▼映画『君の名前で僕を呼んで』予告編

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