骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2017-10-16 21:30


ポップカルチャーのマッシュアップ!パンクロック×スパイスリラー『アトミック・ブロンド』

シャーリーズ・セロン主演、ベルリンの壁崩壊の年を舞台にしたハードコア・アクション
ポップカルチャーのマッシュアップ!パンクロック×スパイスリラー『アトミック・ブロンド』
映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

シャーリーズ・セロンが英国諜報部のエージェントに扮した映画『アトミック・ブロンド』が10月20日(金)より公開。webDICEではデヴィッド・リーチ監督のインタビューを掲載する。

舞台となるのは1989年、東西冷戦末期のベルリン。シャーリーズ・セロン演じる女性エージェント、ロレーン・ブロートンがジェームズ・マカヴォイ演じるベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァルとともに奪われた極秘情報を奪還するために奔走する。『ジョン・ウィック』のプロデュースも務めたリーチ監督が指揮する切れのいいアクションの連続、なかでもブロートンの『トゥモロー・ワールド』『バードマン』ばりの10分ワンカットで見せる脱出劇は出色だ。ベルリンのひんやりとした街並みの描写とともに、ニュー・オーダー「ブルー・マンデー」やティル・チューズデイ「愛のVOICES」、ネーナ「ロックバルーンは99」など80年代ヒット曲がスリリングな物語を彩っている。


「これまでのようなアクション映画の『だまし』は少ない。シャーリーズ・セロンのスキルや適応能力や姿勢があれば、もっと長いテイクやもっと複雑な動きも撮れるだろう。観客は主人公ロレーン・ブロートンのアクションにシャーリーズの本性を見るはずだ」(デヴィッド・リーチ監督)


シャーリーズ・セロンなしではこの物語は成立しなかった

──今回のプロジェクトの経緯について教えてください。

『アトミック・ブロンド』の脚本は、プロデューサーのケリー・マコーミックを通じて、僕のところにやってきた。彼女はたまたま僕の妻なんだ。そして脚本は僕が長年知っていたカート・ジョンスタッドのものだった。そこに多くの可能性を感じた。実際に脚本を読んでみたら、題材がページの上でいきいきとしてきて、すぐにそこに何を足すことができて、どのように撮影したらいいかわかった。そして、音楽が聞こえ始め、映像が見え始めた。そうして、監督出来ることになったんだよ(笑)。

映画『アトミック・ブロンド』デヴィッド・リーチ監督 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『アトミック・ブロンド』デヴィッド・リーチ監督

舞台となるのは、崩壊の瀬戸際にある世界の均衡のイメージを宿した1980年代のベルリンの街。この町の神秘的な雰囲気が、歴史の重要な瞬間に、異質で必死な人間たちが交わる物語の背景となる。僕は、歴史的ドラマとスパイのサスペンスとアクションをうまく組み合わせたカート・ジョンスタッドの脚本を高く評価している。僕は80年代に育ち、ベルリンの壁の崩壊やその重みについてはっきりと記憶に残っている。だからすぐにこの素材に引きつけられ、面白いと思った。特に今日の政治状況にも通じるからだ。また、物語を語ることだけでなくビジュアルの可能性にも興味を持った。

映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

──ご自身も俳優、スタントマンとしてのキャリアをお持ちですが、主人公のロレーン・ブロートンを演じるシャーリーズ・セロンとの仕事はいかがでしたか?

僕が探しているのは映画的なアクションを体現し、観客が驚くようなキャラクターだった。“ロレーン・ブロートン”は追求するにふさわしい、独特な女性主人公になると感じた。キャラクター主導の物語で観客を大きく揺さぶりつつも、思いもしないようなタイミングで極めて独特なアクションを盛り込む。僕の使命は観客に「これ、どうやってやってるの?」と思わせることだ。

一方で、ロレーンの感情の動きも大事にした。ブロートンはものすごく複雑なキャラクターで、このストーリーを通して、スパイ映画に現代的な解釈を添えた。ロレーンは、人とはある程度感情的な距離を保ち、冷酷な意志や厳しさを備えながらも、内面では思いやりや人間らしさ、傷がうごめいていて、それが滲み出ている人物だ。

Atomic Blonde (2017)
映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

シャーリーズほどの力量がある俳優と仕事を出来る大きなチャンスで、それは本当に素晴らしかったよ。こんなに明確に、キャラクターの難しいところを演じられる人がいてくれるのは、まさに監督への贈り物だ。ロレーン・ブロートンは、容赦なくて、冷たくて、ハードな、不屈のスパイだ。でも同時に、彼女には繊細で、人間的な面がある。そういう役を演じるのは難しい。彼女のような力量ある女優なしでは、作品は成立しなかった。

特に際立っていたのは、彼女が決してやめない、ということだ。あるビジョンを受け入れて、それを信じると、彼女はなにがなんでも最後までやり通すんだ。階段でのファイトシーンは、僕自身スタントチームと一緒に長年温めてきたアイディアだった。それを知った彼女は、実現に向けて100%以上の力を使って、身を乗り出して擁護をしてくれた。そして、製作費や労力をそれに使ったんだ。

僕は予定していたファイトシーンを拡大し、彼女の中に見た潜在能力に合わせてトレーニングを考えた。彼女は運動能力がずば抜けている。それを生かさないのはもったいないと思い、ファイトシーンの振り付けやスタントチームへの指示を「もっと大規模にするぞ」と変更した。

映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

シャーリーズは完全にブロートンの身体的特徴に合っていた。彼女は常にスタントチームと打ち合わせして、動きを学び、ファイトシーンの事前のビデオ撮影にも参加し。立ち稽古に始まり、どんどん速度を上げていく。彼女は動きが滑らかで正確だ。どこでどうやれば最大の効果を上げてカメラに映るか分かっていた。

これまでのようなアクション映画の『だまし』は少ない。彼女のスキルや適応能力や姿勢があれば、もっと長いテイクやもっと複雑な動きも撮れるだろう。観客はブロートンのアクションにシャーリーズの本性を見るはずだ。

現場では、デヴィッド・ボウイを四六時中流していた

──ロレーンとタッグを組むエージェント、デヴィッド・パーシヴァル役のジェームズ・マカヴォイの演技はいかがでしたか?

彼は、演技の達人だよ。僕の意見では、彼はまだ十分に活用されていない。僕は彼の大ファンなんだ。パーシヴァルの役を演じることを引き受けてもらえて、夢が実現した。彼は実に多くのものをキャラクターに持ち込んで、いきいきとさせてくれた。

映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『アトミック・ブロンド』デヴィッド・パーシヴァル役のジェームズ・マカヴォイ © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

──劇中の音楽の使い方について教えてください。

アーティストとしての僕にとって、音楽はとても重要だ。このプロジェクトでは特にそうで、脚本を読んだ時、いろんなことがページから飛び出してきた。80年代の音楽が聞こえ始めたんだ。それは素晴らしいバックグラウンド・ミュージックになると思った。脚本に対する僕のビジョンを掘り下げれば掘り下げるほど、サウンドトラックへのアイディアが膨らんでいって、僕たちはそれらのアイディアを脚本の中に落とし始めた。そして、僕たちは、撮影用のプレイリストを作ったんだ。それぞれのシーンにイメージする楽曲があって、僕たちは基本的にそれに合わせて演出した。だから、映画には、MTVのようなDNAがあって、観客をその時代と場所に連れ戻す助けをした。音楽とは、本質的にとてもノスタルジックなものなんだ。

現場では、デヴィッド・ボウイの「キャット・ピープル(プッティング・アウト・ファイヤー)」を四六時中流していた。西洋の音楽やファッションは東ベルリンでは違法で、だからこそ余計に現地の若者は憧れた。この映画のポップ感覚は明らかに当時の音楽を参照している。サウンドトラックでは有名な曲もたくさん聞けるが、加えて当時知られてなかったカッコいい曲も入っているよ。

映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『アトミック・ブロンド』 © 2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

──ロケはドイツやイギリスだけでな、ブダペストやハンガリーでも行われたそうですね。

ブダペストには、大都市に負けない広い通りもあり、ロンドンとパリの代わりも務めた。高級店や外国の大使館が立ち並ぶアンドラーシ通りにある建物がMI6のオフィスビルに理想的だった。インテリアは古典絵画、革のイス、サクラ材の高級家具、シャンデリア、装飾を施した天井、ふかふかの絨毯、重厚なカーテンと、イギリスの権力を感じさせるんだ。

──タイトルを原作の「The Coldest City」から『アトミック・ブロンド』に変えたのはなぜですか?

僕は、「The Coldest City」というタイトルが好きだった。なぜなら、その言葉には、多くの意味が含まれているからだ。「Cold」という言葉は、いかに新鮮かとか、麻薬とか、80年代的なものを表現できる。でも、映画に反映されているものを観客に対してより明確に示すために、『アトミック・ブロンド』というタイトルはよりパーフェクトだった。この作品は、ポップカルチャーのマッシュアップなんだ。パンクロック、スパイスリラー……。『アトミック・ブロンド』は、僕たちが作り出したものを適切に表していて、この映画に値するタイトルなんだ。

──最後に、日本での公開にあたって、どのような気持ちですか?

日本のファンが、このスパイジャンルの新しいツイストを楽しんでくれればいいなと思う。ハードコアなアクションを見ることができるよ。同時に、シャーリーズの素晴らしい演技や、本当に感情移入出来るヒロインを見ることになると思う。それは、僕が関わったことを誇りに思える、素晴らしく繊細な演技なんだ!

(オフィシャル・インタビューより)



デヴィッド・リーチ(David Leitch) プロフィール

スタントマン、アクション/スタント・コーディネーター、第二班監督として多数のアクション映画に関わる。スタントとしては『オーシャンズ11』(01)、『マトリックス・レボリューションズ』(03)、『トロイ』(04)ほか。コーディネーター、第二班監督としては『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(09)、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)など。キアヌ・リーブス主演のアクション映画『ジョン・ウィック』(14)で、チャド・スタエルスキとともに共同監督、プロデューサーをつとめ、本作が単独監督デビュー作となる。全世界で大ヒットを記録した『デッドプール』の続編『デッドプール2(原題)』の監督としても抜擢され、現在制作進行中である。




映画『アトミック・ブロンド』
10月20日(金)より、全国ロードショー

1989年、東西冷戦末期のベルリン。世界情勢に多大な影響を及ぼす極秘情報が記載されたリストが奪われた。イギリス秘密情報部MI6は凄腕の女性エージェント、ロレーン・ブロートンにリスト奪還を命じる。ベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァルとタッグを組み任務を遂行するロレーン。彼女には、リスト紛失に関与したMI6内の二重スパイ“サッチェル”を見つけ出すという、もう1つのミッションがあった。リストを狙い、ベルリンに集結する世界各国のスパイ。誰が味方で誰が敵なのかわからなくなる状況下、ロレーンと世界の運命は?

監督:デヴィッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ 他
2017年/アメリカ/115分
配給:KADOKAWA

公式サイト

▼映画画『アトミック・ブロンド』予告編

レビュー(0)


コメント(0)