骰子の眼

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東京都 渋谷区

2017-08-29 20:00


水江未来とTwothが語る「スクリーンの外へと拡張し続けるアニメーション」

ジャンル横断プロジェクト「トリップス・アンド・ビブリオマニア」アップリンク渋谷で開催
水江未来とTwothが語る「スクリーンの外へと拡張し続けるアニメーション」
水江未来『LIFT / トクマルシューゴMV』より(©楳図かずお/小学館)

水江未来、Twoth、ボンジュール鈴木、DAZZLE、朝武雅裕、MACCHIRO、小野ハナ、中山信一、ORVAL。漫画、音楽、アニメーション、ダンス……といったそれぞれ異なる分野で活躍する9組のクリエイターが集い、コラボレーションを通して新たなアニメーション表現を模索するプロジェクト『TRIPS & BIBLIOMANIA(トリップス・アンド・ビブリオマニア)』。昨年末にはDVDとCDからなる同名の“アニメ−ションアルバム”をリリースした彼らが、アップリンクを舞台にイベントシリーズをスタートさせている。

今年6月に開催されたリリースパーティーでは、このアルバムに収録された全作品の上映と併せて、シンガーソングライターのボンジュール鈴木と音楽家Twothによるコラボレーションライブが行われ、アニメーション作家の水江未来がVJを務めた。ジャンルを横断しながら(あるいは表現の場をパラレル化させながら)、より多層的で変幻自在なアニメーション表現に取組んでいる「TRIPS & BIBLOMANIA」とは、どのようなアイデアから生まれ、始まったのだろう?

webDICEでは9月1日(金)の第2回開催にあたり、プロジェクトの中心的人物である、水江未来とTwothことスダシンイチの二人に行ったインタビューを掲載する。

「様々なメディアを行き来するTRIPS & BIBLIOMANIAは、アップリンクでのイベントでの上映、ライブ、VJ、トークもその世界観の一部になっていますね。つまり、これからも拡張していくということです」(水江未来)

「マンガ好きな人に『アバンギャルドな音楽って意外にもオモロイんだ』って感じてもらうキッカケ。アニメ好きな人に『このマンガの質感って良いかも』って感じてもらうキッカケ。音楽好きな人に『アニメーションって音楽的なんだ!』って気がついてもらうキッカケ。沢山の小さなキッカケを作ることで、シーンを広げていければなと考えています」(Twoth)


「これは僕の音楽と共鳴するアニメーションだ!って心の中で叫んでました」(スダシンイチ)

──TRIPS & BIBLIOMANIAというプロジェクトが始まる前から、お二人の交流は始まっていたのでしょうか?

水江未来(以下、水江):はい。僕が作家活動を始めた頃は、アニメーションの音楽は自分で音楽制作ソフトを使って作ったりしていました。しかし、それも行き詰まり、音楽はその道のプロに任せて、その音楽と自分のアニメーションをコラボさせていくしか、自分の創作の発展はない!と思い、誰か音楽家の方はいないだろうか…と探していたのが2010年の頃。ちょうどその時、「TOKYO ANIMA!」という若手アニメーション作家の上映イベントが国立新美術館で始まりました。僕も参加作家で運営にも関わっていたのですが、そのイベントのPVの音楽を担当していたのが、Twothさんだったんです。

TRIPS & BIBLIOMANIA
水江未来

スダシンイチ(以下、スダ):デビュー当時、僕は“アニメーションを作るように音の物語を作る”ということを目指していました。このコンセプトを心に抱いていたからなのか分からないですが、僕のアルバムを気に入って頂いたアニメーション監督のORVALさんと偶然出会い、ORVALさんのアニメーションに音楽を作るようになりました。そして2010年にORVALさんが六本木アートナイトの「TOKYO ANIMA!」というイベントを立ち上げたんです。

TRIPS & BIBLIOMANIA
スダシンイチ

水江:そこで初めてTwothさんの音楽を耳にしました。聴いていてゾクゾクしてきました。そして、この人と一緒にアニメーションを作りたい!と思いました。

スダ:僕が「TOKYO ANIMA!」で観た水江さんのアニメーションは『JAM』という作品で「これは僕の音楽と共鳴するアニメーションだ!」って心の中で叫んでました。それはそれは、とても強烈な出会いでした。

水江:TRIPS & BIBLIOMANIAのプロジェクトのメンバーであるORVALくんとは、大学時代の同期だったのですが、彼のアニメーション作品の音楽をTwothさんが担当していたので、彼に連絡先を聞き、Twothさんに会いたいと連絡しました。そして、2010年の夏の終わり頃でしょうか、吉祥寺駅前のルノアールで会い、自分の作品を観てもらい、「アヌシー国際アニメーション映画祭で音楽賞を二人で取りたい!」と熱意をぶつけました。そして、アニメーションアルバムにも収録されている『TATAMP』と『MODERN No.2』という2つのアニメーションの音楽を作ってもらうことになりました。『MODERN No.2』の方は、2012年のアヌシーで本当に音楽賞を取ってしまいました!

スダ:そうして、僕と水江さんが出会うきっかけを作ってくれたORVALさんとの3人で次第に交友を深めていき、TRIPS & BIBLIOMANIAというプロジェクトに繋がっていきました。

▼水江未来『MODERN No.2』

「アニメーションの補完を音楽がして、音楽の補完を漫画がして、漫画の補完をアニメーションがするという、壮大な円環構造」(水江)

──漫画、アニメーション、音楽を横断するというTRIPS & BIBLIOMANIAのプロジェクトの構想はどのようにして生まれたのでしょうか?

水江:Twothさんは、僕とORVALくんのアニメーションの音楽をそれぞれ担当してくれていたのですが、僕とORVALくんが同級生だったこともあり、3人で仲良くなっていったんですね。それで、3人の関係の中心にある音楽とアニメーションを、何か1つのカタチに出来ないかと3人で考えるようになりました。Twothさんの音楽アルバムと、僕とORVALくんのアニメーションアルバムを一つのパッケージにして世に出そうと2011年頃から模索し始めました。

スダ:参加アーティストの顔ぶれは、水江さんと僕、そしてORVALさんの各自のつながりが自然な形で広がり集まった感じがします。

──KAI-YOU.netで連載されている漫画『BIBLIOMANIA』は、TRIPS & BIBLIOMANIAのアニメーションアルバムに収録された作品から派生したんですよね?

水江:TRIPS & BIBLIOMANIAの中心にあるのは、OVALくんのアニメーション『BIBLIOMANIA』だと僕は思っているのですが、このプロジェクトを進める中で、彼のアニメーションの思想が個人のアニメーションというアウトプットだけでは収まらず、Twothさんの音楽や、僕のアニメーションを超えて、様々なアーティストに広がっていきました。単にCDとDVDのアルバムをリリースするのが、このプロジェクトの目的ではなく、アルバムは一つの軸に過ぎず、アニメーション、音楽、漫画といった様々なメディアから成るこのプロジェクトは、アニメーションから入っても、音楽から入っても、漫画から入っても、そこには共通する世界観が存在していて、アニメーションの補完を音楽がして、音楽の補完を漫画がして、漫画の補完をアニメーションがするという、壮大な円環構造にもなっています。

TRIPS & BIBLIOMANIA<
KAI-YOUで連載中の『BIBLIOMANIA』

──前回のアップリンクのイベントでは、アニメーションの中で動き回っていたボンジュール鈴木さんが、その上映後に舞台に登場し、歌っていましたね。その後の水江さんとTwothさんの、トークを挟みながらの演奏と映像のコラボレーションも息がぴったりで面白かったですね。

水江:様々なメディアを行き来するTRIPS & BIBLIOMANIAは、アップリンクでのイベントでの上映、ライブ、VJ、トークもその世界観の一部になっていますね。つまり、これからも拡張していくということです。

スダ:マンガ好きな人に「アバンギャルドな音楽って意外にもオモロイんだ」って感じてもらうキッカケ。アニメ好きな人に「このマンガの質感って良いかも」って感じてもらうキッカケ。音楽好きな人に「アニメーションって音楽的なんだ!」って気がついてもらうキッカケ。沢山の小さなキッカケを作ることで、シーンを広げていければなと考えています。

TRIPS & BIBLIOMANIA
Twothの演奏と水江未来のDJ(6月23日、アップリンクにて)

──そして、今回のイベントは水江さんの特集上映ですね。

スダ:水江さんづくしの映像体験とはサイケデリック極まりないですね! 当日は作品の上映に加え、水江さんのリアルタイムVJもあります。作品とは違った、即興性のある蠢くアニメーションVJは必見です。世界に認められた“POPな変態”こと、ミスターサイケデリック水江未来の今を肌で感じてもらいたいです。こんなバランス感覚を持つ人間は世界広しといえども唯一無二ですから。

水江:僕が2011年以降に制作した作品を中心に上映します。映画祭で発表してきた僕の代表作の他、トクマルシューゴさんのミュージックビデオ2作品も劇場初上映になります。特に去年制作した『LIFT』というミュージックビデオは、楳図かずおさんの漫画『わたしは慎吾』の原画を加工して、僕の抽象アニメーションを加えたコラボ作です。そして、スニークプレビュー(覆面試写上映)という形で、僕の最新作も初上映します。まだどこにも発表していない作品です。上映後は、Twothさんのライブ演奏にアニメーションをリアルタイムで合わせていくVJを。その中で、14年前に制作したデビュー作『FANTASTIC CELL』のライブ演奏上映もやります。トークでは作品の解説も。3年ぶりの東京での特集上映になるので、かなりボリューム満点で出し惜しみなく水江未来の全てをお見せします!

──TRIPS & BIBLIOMANIAはこれからどのように展開していこうと考えていますか?

スダ:アルバムを出したし、日本各地をツアーしたいですね。

水江:呼んでいただけるところがあれば、よろこんで向かいます!

(取材・文:倉持政晴)

特別寄稿!:ミュージックビデオ『LIFT』について
文:楳図かずお

楳図かずお

楳図かずおのファンは大勢いますが、具体的にその良い所を理解出来る人は少ないと思う。水江未来さんは、その少ない人の1人でしょう。今回の映像は『わたしは真悟』の扉画を繋げたものです。扉画は1枚1枚が別の絵ですが、私が望む通りに動き出し見事に映画以上の迫力を創り出した。次から次へ くぐり抜けて行く画面運びで「すべてが未来に向かっているんだ!」と気づく事と思います。そして、更に幾らでも次を見たいという気持ちにさせます。これは私を理解していないと作れないですね。一番よく知られている絵は「エレベーターの2人」です。動かないはずの絵なのに動くのですね。見入ってしまいました。




TRIPS & BIBLIOMANIA

TRIPS & BIBLIOMANIA〔DREAMS〕
特集上映:水江未来(トーク&ライブ出演:水江未来+Twoth)
9月1日(金)アップリンク渋谷

19:00開場/19:30開演
一般2,000円/学生1,800円

当日券もございます。イベント当日の午前10時より劇場窓口にて販売いたします。

http://www.uplink.co.jp/event/2017/48722

キーワード:

水江未来 / Twoth / アニメーション


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