骰子の眼

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東京都 渋谷区

2017-09-15 21:20


アフリカ音楽ファン注目!マダガスカルが舞台の映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』支援募集

『ギターマダガスカル』亀井岳監督が手がける初の劇映画プロジェクト
アフリカ音楽ファン注目!マダガスカルが舞台の映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』支援募集

2015年のドキュメンタリー映画『ギターマダガスカル』でアフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ島マダガスカルのミュージック・シーンを追った亀井岳監督が、ふたたびマダガスカルを舞台に描く初の劇映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』の制作支援プロジェクトが、300万円を目標に9月28日まで実施中。webDICEでは亀井岳監督からのメッセージを掲載する。

今回のプロジェクトでは3千円から30万円まで6つの金額設定を設け、完成した作品のエンドロールへの名前の記載のほか、現地の音楽を収録したCD、現地ミュージシャンの楽器進呈など、アフリカ音楽ファンにはたまらない様々な特典が用意されている。詳しくはmotiongalleryの特集ページまで。

日常の中に活きる音楽の力を伝える
文:亀井岳(『ヴァタ ~箱あるいは体~』監督)

8月1日より、マダガスカル南東部の小さな町マナンテンナから撮影を開始した映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』は、なんとか撮影日程を完了し帰国の準備に入りました。

この地を舞台に私が描いたのは、出稼ぎ先の村で亡くなった少女の骨を受け取りに、4人の男が旅をする物語。劇中、南部の人々の生活や地域に根付く音楽を通してあらわになる、彼ら独自の死生観を重要な主題としています。

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』
映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』亀井岳監督

マダガスカルでは、“死”は通過点で人生は永遠に続くと考え、人は死後、祖先という存在になります。人々は割礼や葬式などの際、祖霊を招き入れるために音楽を演奏しますが、歌と踊りは彼らにとって生活の中の彩りであると同時に、祖先と喜びを共有するツールでもあります。これは日本の彼岸や祭りをはじめ、世界中の祭事とも共通する、音楽原初のカタチだと思います。木をくり抜いて作った“カブシ”と呼ばれる小さなギター。誰かが村の片隅にあるマンゴーの木の下でこれを弾きだせば、子供たちが集まり、女性も一緒に踊りだす。毎日の過酷な労働を片時でも忘れ、誰もが分け隔てなく喜びを共有する場。その音楽は、“割礼の時に歌う歌”や“葬式の時に歌う歌”など、伝統的なリズムやメロディが原型で、祖霊との繋がりを持ち日常の中に活きる音楽の力を感じます。

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』
映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

前作『ギターマダガスカル』が、ドキュメンタリー手法の作品だったのに対し、本作はオリジナル脚本の劇映画。制作現場も大幅に増員しました。撮影監督の小野里、音楽監督の高橋、製作の櫻井、そして私の4人が日本人。そこに主要キャスト、技術スタッフ、コーディネーター、小道具や4人のドライバーなど、多くのマダガスカル人達と構成する総勢30名ほどのにぎやかなチーム。

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』
映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

日本とマダガスカルの共同製作は私が強くこだわったところです。実は本作、調べた限りではマダガスカル史上2本目の長編劇映画。現地スタッフは実際の映画製作を通し、技術などを蓄積する得がたい機会です。多くのマダガスカル人とチームを組み、彼らの考え方や世界観も、今まで以上に深く体感しました。

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』
映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

例えば、マダガスカルには“カバーリ”という演説をする文化があり、彼らはとにかく話し好き、しかも長く話すことを良しとします。撮影中も何か問題があると、全員が話しだす。有用無用問わず、とにかく皆が自分の意見を言い、一方では話しを聞くという習慣で、結局解決しないまま延々対話が続くことも少なくありません。

また、土地に対する意識が高く、撮影をするには持ち主に直接許可を取る必要があります。ここに先ほどの習慣が加わり“映画とは何なのか”の説明から始まって、かなりのエネルギーを要します。そんな事も、映画が祝福されるためには必要なプロセスだと考えていましたが、撮影を開始した我々には、底力を試される予期せぬ障壁がいくつも立ちはだかりました。

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』
映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

……乾期の8月、9月なのに延々雨、スケジュールが組めない。その雨で増水、道が遮断されロケ地に向かえない。地方の演者は標準のマダガスカル語が通じない。気がつくと演者がいなくなっている。墓を荒らして骨を盗む“骨泥棒”と間違われる。もちろん電気なし、電波なし、などなど……。しかし、それらも含め、すべてがマダガスカルであり、映画製作への活力となりました。

この国は1日1ドル程度で生活する人が多い国ですが、実際ここに来て人々と触れ合うと、必要最小限のもので生き、人との繋がりを大切にする姿から、私たちが学ぶべきことが多くあると感じます。バイタリティー溢れる彼らと共に撮影したこの映画を、力のあるものとして世に放つべく、まさに今挑戦しているクラウドファンディングは、まだまだ目標金額まで届いておりません。この記事をご覧になっている皆さまには、どうか『ヴァタ ~箱あるいは体~』の制作支援プロジェクトに参加していただけますよう、心よりお願いいたします。




亀井 岳(『ヴァタ ~箱あるいは体~』監督・脚本/FLYING IMAGE)プ ロフィール

金沢美術工芸大学大学院修了。 2001年、造形から映像制作へと転身。旅と音楽をテーマに、ドキュメンタリーとドラマを融合させるスタイルで、2009年初監督作はモンゴルの喉歌をテーマにした『チャンドマニ 〜モンゴルホーミーの源流へ〜』。人々の営みと音楽を主題にしたロードムービー『ギターマダガスカル』を2015年劇場公開し、2016年現地首都アンタナナリヴにて上映。 2017年あらたなプロジェクトを携え再びマダガスカルへ。




■『ギターマダガスカル』亀井岳監督、日本・マダガスカル共同製作の長編劇映画『バタ 〜箱あるいは体〜』制作支援 プロジェクトページ


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マダガスカル / 亀井岳


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