骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2017-07-05 22:00


「キアヌにSWATとの訓練課した」監督が語る『ジョン・ウィック:チャプター2』の舞台裏

ハリウッド定石のアクション撮影を否定するところから始まった“ガン・フー”の方法論
「キアヌにSWATとの訓練課した」監督が語る『ジョン・ウィック:チャプター2』の舞台裏
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

キアヌ・リーブスが伝説の元殺し屋を演じる人気シリーズの第2弾『ジョン・ウィック:チャプター2』が7月7日(金)より公開。webDICEでは前作に続き監督を務めるチャド・スタエルスキのインタビューを掲載する。

第1弾で描かれた復讐譚から5日後、殺しの依頼を断ったイタリアン・マフィアに自宅を爆破されたジョン・ウィックは、復讐を開始しようとするものの逆にそのマフィア、サンティーノから7億円の懸賞金をかけられ、世界中の殺し屋に命を狙われることになってしまう……。キレのいいアクションの鮮やかさとともに、荒唐無稽すれすれの設定にリアリティを与え、屈強なキャラクターなのにどこか親しみやすさ感じさせるキアヌの存在感をたっぷり楽しむことのできる作品だ。

「アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』の影響を受けているシーンもありますし、また実際にイタリアで撮影した影響もあるかと思いますが、ベルナルド・ベルトルッチからの影響もあると思いますよ」(チャド・スタエルスキ監督)


良い映画を作る素材になり得るのは俳優

──先ず、本作『ジョン・ウィック:チャプター2』の見どころにもなってくると思いますが、前作『ジョン・ウィック』と比べ、本作におけるキアヌ・リーブスのアクションはどのように進化しましたか?

前作よりもさらに掘り下げていきたいと挑戦しました。そしてそうするためには、キアヌに頑張ってもらわなければいけなかった。キアヌの実力の底上げを計らなければならなかったのです。良い映画を作る素材になり得るのは、俳優ですよね。まずは俳優を10倍レベルアップさせなければならない。そうすればキャラクターを上手く描けるようになるし、ちゃんと撮影できるようになるし、編集も上手くできる。基本をしっかり作れば、あとはいかようにも膨らませることができるのです。これは映画に限らず、ダンスでも、体操でも、音楽でもそうですが、とにかく努力するということです。そこが鍵だと思います。

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』チャド・スタエルスキ監督
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』チャド・スタエルスキ監督

──具体的に、どういったトレーニングをキアヌに課したのですか?

例えば、キアヌには射撃チャンピオンのタラン・バトラーに指導されながら週に3~4回、およそ10週間もの間、毎回1000~1500発の実弾を撃ってもらいました。こうして実弾で精密に調整してからキアヌをジムに連れて行き、銃のレプリカでアクションシーンを調整したのです。撮影が始まるまでには、キアヌの筋肉は実弾でのトレーニングの動きを記憶していて、“ガン・フー”のシーンを素晴らしく演じることができていました。

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』ジョン・ウィックを演じるキアヌ・リーブス(左)、情報王キング役のローレンス・フィッシュバーン(右)©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

──徹底した役作りですね。銃を扱ったユニークなアクション、“ガン・フー”(ガンアクション+カンフー)はどういった経緯で生まれたのでしょうか?

まず、ガンファイトという話から始まります。銃撃戦や銃の扱い方はやはりハリウッド映画がよく参考にされるのですが、実際には、ハリウッド映画は間違っているのです。なぜハリウッドの銃撃戦や銃の扱い方が間違っているかというと、そちらの方が簡単に撮れるからです。そこには技術的な制約が関わってくるのですが、ブランクと言って、撮影では空砲で銃弾を撃ちます。しかし空砲であっても実際に撃つわけですから、敵と主人公、撃つもの同士の間に4メートルほどの間隔がないと撮影できないのです。そして、撃った人物、撃たれた人物の反応を撮らなければいけないから、切り返しが必要になり、そこでカットしなくてはいけなくなる。そういった技術的な制約があるわけです。今までのハリウッド映画の撮り方はこのようにして撮影してきました。

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』ボディガード・カシアン役のコモン(左)、ジョン・ウィック役のキアヌ・リーブス(右) ©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

──なるほど。

例えば、ミリタリー系のアクションといえば相手にパンチをします。しかし撮影をする時、実際には相手をパンチをすることができないので、編集・切り返しが発生します。しかし『ジョン・ウィック』の場合は、「撃ちましたよ」、「殺されましたよ」といった流れを1フレームの中に収めたかったのです。1カットで収められるアクションと言えば、掴み技があります。そこで柔道や柔術、合気道といった素手での戦いというアイディアが出てきたので、ロングテークで収めるためにこうしたアクションを応用しようという発想に至りました。そうして映画が出来上がってから、批評家たちがこれは“ガン・フー”だと言い始めたのです!

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

キアヌは必要なアクションはなんでも心から受け止める

──アクションを1カットに収めるにあたって苦労した点はありましたか?

カメラもあらかじめ決め込まなくてはいけないし、スペシャルエフェクトをどうするのかも決めてなくてはいけない。血をどう流すか?照明はどうするのか?スタントも完璧でなくてはいけない。そういう要素が合わさることでやっと1フレームに収まるので、相当な準備が必要になってきます。ですので、各シーン毎に徹底的にリハーサルを行いましたよ。

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』殺し屋アレス役のルビー・ローズ(右)、イタリアン・マフィアのサンティーノを演じるリッカルド・スカマルチョ(左) ©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

──他にはどういったトレーニングをキアヌに課しましたか?

キアヌは『マトリックス』では様々な種類のカンフーを習い、『47RONIN』では居合道と日本の剣術を習得しましたが、本作の撮影にあたっては、特殊部隊SWATの人たちを呼び一緒に訓練させ、およそ4ヵ月間にわたりブラジリアン柔術を習わせ、さらには車のスタントも新しいレベルへ仕上げました。キアヌは必要なアクションはなんでも心から受け止めます。そのような性格の俳優はなかなか見られません。本作でもキアヌの激しいアクションがみられるなんて、観客が大喜びすることは間違いありませんね!

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

──最後に、本作を撮影するにあたり、影響を受けた作品はありますか?

一番大きなオマージュは、やはり『燃えよドラゴン』です。大好きに思っている作品ですね。そしてやはり、黒澤明監督の作品です。三船敏郎さん達が出演するサムライ映画で描かれる「武士道」の影響があります。また本作は全編を通しセルジオ・レオーネ色が強いと思うのですが、『続・夕陽のガンマン』といった西部劇からの影響が色濃いと思います。それと、アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』の影響を受けているシーンもありますし、また実際にイタリアで撮影した影響もあるかと思いますが、ベルナルド・ベルトルッチからの影響もあると思いますよ。

(オフィシャル・インタビューより)



チャド・スタエルスキ(Chad Stahelski) プロフィール

前作『ジョン・ウィック』(15)で監督を務め、大作アクション映画に数多く関わるアクションの伝道師。アクション/スタントコーディネーターとして『マトリックス リローテッド/レボリューションズ』(03)、『300<スリーハンドレッド>』(07)、『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)ほか。スタントとして『マトリックス』(99/スタントダブル:ネオ)ほか。




映画『ジョン・ウィック:チャプター2』©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

映画『ジョン・ウィック:チャプター2』
7月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開

監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、ルビー・ローズほか
配給:ポニーキャニオン
原題:John Wick : Chapter 2
2017年/アメリカ/122分
©2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ©Niko Tavernise

公式サイト


▼映画『ジョン・ウィック:チャプター2』予告編

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