「MEC Award 2017」最優秀賞の大柿鈴子さん「Time on canvas」
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埼玉県川口市のSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアムで「MEC Award (メックアワード)入選作品展」が2017年3月18日から4月9日まで開催されている。「MEC Award」は、新しい表現形式にチャレンジする映像作家を応援することを目的にした公募展で、2012年からスタートし、2017年で5回目となる。日本在住の35歳以下の作家、15分以内の映像作品が対象となっており、今年の作品展では83作品の応募作品の中から選ばれた、入選5作、佳作11作が展示されている。
開催初日となる18日、入選5作品の中から最優秀賞「MEC Award」の審査と発表が行われた。「MEC Award」については、ゲスト審査員の齋藤精一さん(クリエイティブ ディレクター/テクニカルディレクター/ライゾマティクス代表取締役)をはじめ、塩田周三さん(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)、四方幸子さん(キュレーター)、森 弘治さん(アーティスト)の4人の審査員が、作品展会場での展示の仕方や工夫についても審査。栄えある今年の「MEC Award」には、「Time on canvas」の大柿鈴子さんが選ばれた。
「Time on canvas」は、大柿さんがこれまで映像や写真で記録してきた風景を絵画として描きなおしていくプロセスを映像化した9分52秒の映像インスタレーション。大柿さんは、2016年に東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。現在、映像制作会社に勤務しながらこの作品を完成させた。授賞式に登壇した大柿さんは「自分が制作している作品を上司に見せるたびに『お前の作品は金にならないな』と言われてきましたが(笑)、その『金にならないな』が。すごい褒め言葉だったんだなと思います。これからも制作を続けたいです」とコメントした。
大柿鈴子さん
総評のなかで審査員の四方幸子さんは、「別の分野から踏み越え、映像自体を新しく作り変えていくものが多かった今年の作品のなかでも、絵画から入り、これまでにない手法で試行錯誤して、かつ完成度が高い」と大柿さんの作品を評価。
同じく審査員の塩田周三さんは「審査員で意見をぶつけ合ったものとみなさんの起爆剤としての作品が融合してひとつの作品として完成する。そしてその入選した作品を展示にすることが『MEC Award』の大きな特徴。展示することによって新鮮な響きになる」と感想を述べ、「YouTubeをはじめ、映像作品を発表することはすごくやりやすくなったけれど、やはりライブはいいし、ライブで見せるほうが金を儲けられると思います(笑)」と大柿さんのコメントに答えた。
講評の最後にゲスト審査員の齋藤精一さんは「カメラも編集機材も安くなり、道具としていろんなものが使える、いい意味で飽和状態の現在。新しい視点を持ち、次の時代を作る刺激を与えられる作家や作品が必要」と新しい作家たちへエールを送った。
「MEC Award 2017」表彰式より
webDICEの取材に大柿さんは、自身がこれまでに撮りためた映像や写真を見ながらドローイングのようにフォトショップで線を描いていき、アフターエフェクトで合成していく作業だったと、そのプロセスを語った。「たまたま旅行に行っていたときの映像を見返していて、稲穂がきれいに撮れていて、それを見ながら線を描いていって、別に撮っていた山の映像と繋がるんじゃないかと線を伸ばしていったり。特に物語や絵コンテがあるわけではなく、自由に絵を描くような感覚で、自分が撮った映像や写真から繋がるものをピックアップして、線を繋げて絵の具を重ねていくように作っていきました」。
大柿鈴子「Time on canvas」
また展示方法については「今までの映像形態のように16:9の画面を座って受動的に見るというよりも、絵画のように近くに寄ったり遠くに引いて見たり、鑑賞者がある程度コントロールできるようにしたかった。そこで、モニターをキャンバスを飾るときのような高さで壁にかけて展示しました」とコンセプトを解説した。
「MEC Award」には副賞として彩の国ビジュアルプラザ内にあるHDスタジオ、映像ホール、編集室などの施設の100時間までの無償利用権が与えられる。大柿さんは「ホリゾントを使えたり、カラコレもできるそうですので、誰かをインタビューして、そこから肖像画を描いていったりしたいです」と意欲を明かした。
「MEC Award 2017」入選作品
大柿鈴子「Time on canvas」
(2016年/映像インスタレーション/9分52秒)
自身がこれまでに撮りためていた映像や写真を絵画として描き直していく過程を映像化し、キャンバスのように壁に掛けて展示。
白鳥蓉子/大島風穂「星淵のほとり」
(2016年/映像/14分59秒)
SF的な物語を35ミリフィルムで撮影。検証用に同内容を4Kデジタル・カメラで撮影し「いかにデジタルシネマカメラがフィルムの質感に近づけられるかの実験も行った。
片山拓人「愚図の底」
(2016年/アニメーション/7分30秒)
福島原発事故による不安をテーマした手描きアニメーション。会場壁面には主人公の男を描いた絵が一緒に展示されている。
早川翔人「みなさんといっしょ」
(2016年/インタラクティブ映像/1分30秒)
モニターの前に立った鑑賞者が線画に変換され、画面の中に登場。見る者が強制的に物語の登場人物になる。
寺澤佑那「ラジオごっこ」
(2016年/映像/8分0秒)
ラジオのMCとして作家自身が彼女とその両親に語りかける「家庭内ラジオ放送」の模様を記録。
「MEC Award 2017入選作品展」
2017年3月18日(土)~4月9日(日)
会場:SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアム
開館時間:9:30~17:00 (入場は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
料金:大人510円/小中学生250円(常設展示もご覧いただけます)
主催:埼玉県
後援:埼玉県教育委員会/川口市/川口市教育委員会
企画:(株)デジタルSKIPステーション