映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
2015年11月に引退したプロレスラー・天龍源一郎の引退発表から両国国技館での引退試合までを追ったドキュメンタリー映画『LIVE FOR TODAY-天龍源一郎-』が2月4日(土)より公開。webDICEでは川野浩司監督のインタビューを掲載する。
「天龍革命」と呼ばれるどんなときでも手抜きをしないファイトを信条とし、長きにわたる活動のなかでプロレスの楽しさをファンに伝えてきた天龍。川野監督は彼と、所属する「天龍プロジェクト」の会長を務める娘の嶋田紋奈との関係を中心に、激闘の日々を描いている。ダーレン・アロノフスキー監督の映画『レスラー』について、ミッキー・ロークが演じた主人公の気持ちが理解できると漏らすシーンや「プロレスは伝承文化」と自らのポリシーを語る場面など、リングの上では見せない表情をカメラは克明に捉えている。
「一緒に歩んでる感」は伝えたかったです。今回、天龍さんの引退ロードに同行するという機会をもらえて、映画を観ている方も天龍さんの傍を歩いているような感じにしたかったのです。(川野浩司監督)
影響を受けたのは映画よりプロレスからの方が大きい
──なぜ天龍源一郎をテーマにしたドキュメンタリー映画を撮ろうと考えたのですか?
もともと少年時代からプロレスファンでした。奇跡的にも映画監督になり、数本の映画を作ることもでき、次に何をやるかと考えたとき、プロレスに関する何かをやりたいと思ったのがきっかけと言えばきっかけです。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』川野浩司監督
ぶっちゃけて言うと、自分の人生において影響を受けたのは映画よりプロレスからの方が大きいと言うのもあります。プロレスを観ていろんなことを感じ、学びました。その感じを伝えたいなぁとも思ったのです。
また、ドキュメンタリーを以前からやりたいと思っていまして。なかなか良い出会いといいますか、縁が無く。そんななかプロレスのドキュメンタリーをやりたいと、知り合いのプロレスにラインがあるプロデューサーに相談したところ、『天龍プロジェクトでの天龍と娘である代表の関係が素敵ですよ』と。そこで、天龍プロジェクトにドキュメンタリーの打診をしたことから始まりました。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
──被写体である天龍さんと初めてお会いした時はどんな印象でしたか?
それはずっとテレビや紙面で観ていた人ですし、なんせ「ミスタープロレス 」ですから。ただただ緊張したの一言です。最近は大御所の役者などにお会いしても、あまり緊張するとこもなくなったのですが、天龍さんと会った時は、めちゃくちゃ緊張しました。
そして、最初は距離というか、まだ警戒されているような感じもしました……。今回の撮影は、その距離感を徐々に縮めていく作業でもありました。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
天龍革命が今のプロレス界にも根付いている
──撮影に入ってからどんな点で苦労しましたか?
プロレスという世界に入っていくことでした。客としてプロレス会場には行っていましたが、映画の世界とは勝手が違う完全アウェーの世界にカメラを向けるという。試合前はどこに居て撮ればいいのか?試合前は選手も緊張感が高まっているので、なるべく視界に入らないようにしていました。また、試合を撮るにしても観戦しているお客さんの邪魔にならないようになど、いろいろ気を使いました。
──日本で長く人気のあったプロレス文化をどう思いましたか?
今回、天龍さんの引退ロードを一緒に歩んで、感じたのは、地方興行の良さです。一年に一度やってくるプロレスを楽しみにしているお年寄りの方や、テレビに出ている人を生で観られるという感動など、都心のビッグマッチとは違った、地方のしかない温かみのある感じがしました。全国津々浦々を巡業することによってプロレスが根付いているんだなぁと思いました。
それこそ、地方興行も手を一切抜かないという天龍革命が今のプロレス界にも根付いているんだなぁと感じました。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
──監督はドキュメンタリーを初めて撮られたと思いますが、演出ではどんな点に気をつけましたか?
特にドキュメンタリーだからと気をつけた点はなく、とにかく今回は「ミスタープロレス 」天龍源一郎の映画なので、天龍さんの名に負けないように、さらにこの映画を観るであろうプロレスファンの期待を裏切らないように、というところを意識していました。
演出と言うのかわかりませんが、「一緒に歩んでる感」は伝えたかったです。今回、天龍さんの引退ロードに同行するという機会をもらえて、映画を観ている方も天龍さんの傍を歩いているような感じにしたかったのです。引退試合の入場シーンもそこから来ました。あのシーンは渾身のワンカットでかなり見どころです。観た方はみんな泣いてしまいます(笑)。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
──もし、次にドキュメンタリーを撮るとしたら何をテーマにしますか?
今回は天龍源一郎というジャンルを代表するビッグな方を撮影したので、またジャンルを代表する人(テーマ)を撮りたいです。ジャンルを代表する人=スターが多いと思うのですが、そういう人でも普通の人間であり、いろんな苦労もあります。その地位に居る理由も密着すれば見えて来ますし。もし、次にドキュメンタリーを撮るとしたら……どうせなら日本を背負う安倍首相なんて興味あります、撮れればですけど。撮れるわけないと思いますが、今回もまさかの天龍源一郎を撮れたのですから、人生なにが起きるかわかりません。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』 ©2016天龍プロジェクト
(オフィシャル・インタビューより)
川野浩司 プロフィール
1972年、福岡県福岡市生まれ。九州ビジュアル・アーツ映画科卒業後、福岡の映像制作会社を経て、豊田利晃氏などの監督作品のスタッフとしてキャリアを積む。2001年テレビ朝日・セガによるドリームキャスト用実写ゲームソフト「es」(三上博史、釈由美子主演)で監督デビュー。その後、PV・TVドラマ・ファッションショーなど幅広いジャンルにわたり作品を手がける。2007年11月にカナダのモントリオール国際LGBT映画祭に「20/20 VISION AWARD」受賞。 また、『青い春』『ナインソウルズ』『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン(映画版)』のメイキングも手がけている。
映画『LIVE FOR TODAY -天龍源一郎-』
2月4日(土)より新宿武蔵野館、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次公開
出演:天龍源一郎
ナレーション:染谷将太
監督・撮影・編集:川野浩司
エグゼクティブプロデューサー:嶋田紋奈
プロデューサー:中林千賀子 加藤英治
製作・配給:天龍プロジェクト
企画:ミレニアムプロ
制作プロダクション:ブースタープロジェクト
2016年/ビスタサイズ/カラー/DCP/121分