骰子の眼

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東京都 渋谷区

2016-11-29 17:15


廃棄食材からおいしい料理を作る!映画『0円キッチン』監督来日クラウドファンド実施中

「誰もがフードロスに対する“食材救出人”になりうるのです」グロス監督インタビュー
廃棄食材からおいしい料理を作る!映画『0円キッチン』監督来日クラウドファンド実施中
映画『0円キッチン』より

「廃棄食材を救出し、おいしい料理に変身させよう!」フードロスを減らすユニークな取り組みを追ったエンタメ・ドキュメンタリー『0円キッチン』が2017年1月21日(土)よりアップリンク渋谷にて公開。クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにてダーヴィド・グロス監督の来日支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、オーストリアのダーヴィド・グロス監督のインタビューを掲載する。

世界で生産される食料の3分の1は食べられることなく廃棄されている。その重さは世界で毎年13億トン。「捨てられてしまう食材を救い出し、おいしい料理に変身させよう!」と考えたグロス監督は、植物油で走れるように自ら改造した車に、ゴミ箱でつくった特製キッチンを取り付け、ヨーロッパ5カ国の旅へ出発する。各地で食材の無駄をなくすべく、ユニークでおいしく楽しい取り組みをしている人々に出会っていく様子を映像に収めている。

今回のプロジェクトでは、フードロスを減らすアクティビスト(自称:食材救出人)でもあるダーヴィド監督の来日を実現するための費用と、映画『0円キッチン』をより多くの人に届けるための配給費用の一部を集める。ダーヴィド監督を日本に招聘することにより、監督に、映画製作の背景や想い、活動のエネルギーを直接語ってもらうことで、映画で映し出されている“ヨーロッパの出来事”を、日本の人たちとつながった世界、もっと身近なものとして捉えてもらいたいということ。そして日本で同じようにフードロスに関わる活動をしている人たちと監督との交流の機会をつくることで、ヨーロッパでの取り組みのヒントを、より有機的に日本へ伝えたいということ。さらに、監督来日によって、映画『0円キッチン』への注目度を高め、映画のなかで映し出されている食料廃棄の問題について、より多くの人に知ってもらい、考えてもらいたいという思いのもとクラウドファンディングが行われる。

集まった資金は、監督の日本への渡航費、日本での滞在費、滞在中の通訳費用、来日時のイベント会場費用、監督来日に伴うイベントの宣伝費用と、映画のチラシの増刷・配布費用などに使用される。

今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2017年1月6日までの期間で、150万円を目標に資金を募る。監督出演のイベントや先行試写会、自主上映を考えている人に最適な参加者100名までの上映権など、多彩な特典が用意されている。 詳しくはプロジェクトページまで。


誰もがフードロスに対するアクティビスト(活動家)になりうる!
ダーヴィド・グロス監督インタビュー

──なぜ『0円キッチン』の取り組みを始めたのですか?フードロスに関心をもつようになったきっかけは何かありますか?

2012年に自分の故郷であるオーストリア・ザルツブルグのファーマーズマーケットで、ある年配の女性を見つけました。彼女は、マーケットのゴミ箱の中に食べ物がないか探していました。ショックでした。貧しい人たちが、他の誰かが捨てたものを食べることを受け止めたくありませんでした。それから少し調べていたら、貧しいからではなく、消費主義への批判として、ゴミ箱にダイブする(入り込む)人たちがいることを知ったんです。「ダンプスターダイバー(大型ゴミ箱ダイバー)」や「ウェィストダイバー(ゴミ箱ダイバー)」と自称している人たちです。この活動をしている人たちにコンタクトをとり、自分でゴミ箱へのダイブをザルツブルグの近所でやり始めました。

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』ダーヴィド・グロス監督

僕はスーパーのゴミ箱からたくさんの新鮮な食べ物を「救出」し、友達と分け合ったり、はじめての0円キッチンイベントを開催しました。それから僕たちはゴミ箱へのダイブと料理を撮影し始めたのです。低予算でウェブ上にシリーズをアップしたところ、有名になり、アートの祭典に招かれ、ついにテレビ局が僕たちのヨーロッパ周遊ロードムービーに協賛をしてくれました。そして出来上がったのが『0円キッチン』です。

──一番印象に残っている、場所・人・アクションはありますか?

「チョップ・ベジタブル・ディスコ」(野菜叩きカット・ディスコ)と呼ばれているベルリンの取り組みが一番印象的でした。アイディア自体はシンプルです。若者が農地から規格外の野菜やフルーツを集め、人気のある場所に集まって、良い音楽を聞きながら、その野菜やフルーツをカットするのです。食べ物を救いながらパーティーができるんです!この取り組みは世界中で行なわれて成功していて、今ではヨーロッパ、アジア、南アメリカ、そしてアフリカにも「チョップ・ベジタブル・ディスコ」は存在しています。この実績が伝える重要なポイントは、より持続可能な経済を実現していくための戦いは、とっても楽しいものにもできうるのだということです。

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』より

ヨーロッパを旅しながら、
他の人たちが「ゴミ」と呼ぶ食料だけで
料理をすることができる

──映画を製作する上で、苦労したことはありますか?

この数年でフードロスはヨーロッパで大きな問題になりました。私たちの『0円キッチン』と類似した映画への関心も高まっています。また、食べ物はすべての人が関わっているものなので、人の感情を動かしやすいものです。だから私たちの映画への出資者やサポーターを見つけることは、それほど難しくありませんでした。それに私たちはただの「映画の製作者」として見られたくないのです。

映画の製作以外にも、私たちのプロジェクトでは様々な活動を行なっています。たとえば、パブリックな場所で料理イベントを開いたり、啓蒙のためのキャンペーンや、学校での講義も行なっています。ある友人は、オーストリアで捨てられる食材を使ったケータリングビジネスを始めてもいます。悲しい部分があるとすれば、あまりにも多くの食料(世界で生産される食料の3分の1)が廃棄されているということです。だからヨーロッパを旅しながら、他の人たちが「ゴミ」と呼ぶ食料だけで料理をすることができるのです。

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』より

──「0円キッチン」を公開してみて、出身国であるオーストリアや他国でどんな反響がありましたか?

オーストリアでも世界の他の国々でも、良い反響をたくさんもらっています。これまでヨーロッパの複数国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、クロアチア、チェコなど)の映画祭で上映されていますが、まだロシアや北アメリカ、ニュージーランド、韓国などでは上映されていません。このことは、フードロスがグローバルな問題であり、『0円キッチン』のストーリーに自分との繋がりを感じてもらえることを示しています。料理の仕方そのものに強い関心をもつ人もいれば、社会的な面やビジネス的解決方法の面から関心をもつ人もいます。ジャーナリストやシェフ、環境活動家、学校の先生、農家の人、科学者、どんな立場にいる人であれ、誰もがフードロスに対するアクティビスト(活動家)になりうるのです。

──「0円キッチン』の取り組みが、具体的に誰かの生活習慣を変えたような例はありますか?

様々なレベルで変化があります。私たちは欧州議会で『0円キッチン』のイベントを行い、政治家たちに自分たちの食事の余り物から新たに作った料理を提供しました。このイベントが、議員の人たちに政治的決定への影響を与えることを願っています。また『0円キッチン』の取り組みを始めてから、フランスがスーパーで売れ残った食べ物を捨てることを禁じる法を制定したり(捨てずに社会福祉団体等へ寄付する必要があります)、他の国々がフランスの例に習いつつあります。変化をすぐに生み出すもっとも簡単な方法は、『0円キッチン』のイベントに参加してもらったり、学校で料理教室を開くことだと思います。一度でも廃棄食材料理を食べたら、きっとその人の意識は変わるはずです!

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』より

──この映画を製作したことによって、自分自身の意識の変化はありましたか?作り終えた今は食に関してどんな問題に注目していますか?

『0円キッチン』はこれまでに取り組んできた映像プロジェクトのなかで一番、いろんな点から私の人生を変えた作品です。そして僕だけではありません。製作メンバーたちも僕に「0円キッチンレシピ」をシェアしてくれたり、映画を観た人が、食べ物を捨てる前にもう一度考え直すようになったとメッセージをくれることもあります。だから自分の周りにたくさんの変化をもたらしている作品といえます。実は今の恋人と出会ったのも、ウィーンでのゴミダイブに行った時です。スーパーのゴミ箱で始まるラブストーリーなんて、本当にワクワクするロマンスじゃないですか?

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』より

政治的な話に戻ると、料理は政治的な行為で環境に大きな影響を与えるものだと僕は強く信じています。そして、貧困と食料廃棄とをあわせて解決方法を考える必要があると思っています。食品業界の人たちは賞味期限が切れたものを「ゴミ」と呼びますが、本当のゴミは、食料廃棄を生み出している現在の経済システムです。これこそを僕たちは変えなければなりません。

映画『0円キッチン』
(映画『0円キッチン』より

──日本の観客への一番のメッセージは何ですか?

とてもシンプルなメッセージです。料理を作って、愛して、捨てないこと!有名な「これはゴミではない(This isn't garbage)」という言葉は、僕の人生哲学になっています。この思想は禅の影響をとても受けていて、約800年前に道元という僧侶が書いた素晴らしい書物に記されている言葉です。「典座教訓」という彼の料理の手引き書は、フードロスを減らし、食べ物に敬意をもってどう扱うべきかを考えさせられた初めてのエッセーです。この精神が、消費主義国である日本社会において今も大きな影響力をもつことを願っています。自然や自然の恵みが僕たち自身の一部あるということを、再発見できることが大切だと思います。




ダーヴィド・グロス(David Gross) プロフィール

1978年オーストリア、ザルツブルグ生まれ。ウィーン大学でコミュニケーション科学と演劇学を、ドナウ大学クレムスでジャーナリズムを学び2003年に卒業。以後、ジャーナリスト・ドキュメンタリー映画監督として活動。




映画『0円キッチン』

■世界で1/3の食料が廃棄されている現状を変えたい! 映画『0円キッチン』監督を日本に!MotionGalleryプロジェクトページ


映画『0円キッチン』
2017年1月21日(土)
アップリンク渋谷にてロードショー

監督:ダーヴィド・グロス、ゲオルク・ミッシュ
脚本:ダーヴィド・グロス
撮影監督:ダニエル・サメール
編集:マレク・クラロフスキー
音楽:ジム・ハワード
制作:ミスチフ・フィルムズ
制作協力:SWR/ARTE、ORF
プロデューサー:ラルフ・ヴィザー
2015年/オーストリア/81分
配給:ユナイテッドピープル

公式サイト

劇場公式サイト


▼映画『0円キッチン』予告編

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