映画『私の少女時代 -Our Times-』 ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
1990年代を舞台に片思いを募らせる女子高生の奮闘を描き、台湾を始めアジアで大ヒットとなった青春映画『私の少女時代 -Our Times-』が11月26日(土)より公開。webDICEでは、フランキー・チェン監督のインタビューを掲載する。
インタビューでも触れられているように、テレビドラマのプロデューサーとしてヒット作を発表してきたチェン監督は、この作品を恋に落ちる女の子の心情をつぶさに捉え、コミカルな演出をふんだんに織り込み、万人が楽しめるラブコメディとして仕上げている。全編を流れるノスタルジックなムードのなか、主演を務めるビビアン・ソンの快活な魅力が光る。また、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加したアンディ・ラウが本人役で出演しているほか、ジェリー・イェンら人気スターがゲスト出演している点もアジア映画ファンにはたまらないだろう。
初監督の経験はとても幸運なものになった
──監督は今まで人気トレンディドラマを多く作っていましたが、どういうきっかけで映画監督に変わったのでしょうか。
私はドラマを沢山作っていましたが、ずっと映画製作に関わって勉強するチャンスを探していたんです。映画製作に関われるなら、最初はどんな役職でもよくて、映画について学ぶことができればそれでよかったんです。当時この作品のシナリオができたとき、監督をしてくれる人をたくさん探してみたのですが、監督の方々は皆自分の作品を撮りたいので、私たちのシナリオでは監督を引き受けてくれませんでした。「もし適切な監督が見つからなかったら自分で監督をやってみませんか」と、プロデューサーが私に話しました。当時の私は単純に勉強と挑戦をしたいと考えていたので、違う分野の映画監督をやってみることにしました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』フランキー・チェン監督
最初からこの制作グループのメンバーは様々なかたちで助け合っていけるだろうと考えていました。実際、撮影や美術などのスタッフは皆優秀だったので、私は安心して監督することができました。もしこの優秀なグループが無かったら、私はいろいろ遠まわりをしたと思います。このようないい成績を得て、台湾の映画制作グループに助けていただいて、俳優のみなさんもとても頑張ってくれて、素晴らしい友人がゲストメンバーとして協力してくれて、私の初監督の経験はとても幸運なものになったと思います。
台湾の芸能界に新人を送り出したかった
──どのようなプロセスで、この作品を作り上げたのでしょうか。
最初に監督を担当することに決まったときに一番重視したのは、物語をきちんと伝えることでした。次にこの映画は有名な俳優を使わずに、新人をたくさん起用するということを決めました。この時点でこの制作は辛く長くなることは分かっていました。
俳優探しがやはり一番大きな工程でしたね。我々はこの映画を介して、台湾の芸能界に新人を送り出したいとも考えていました。そして高校生活の題材なので、年齢の近い若い俳優を起用することが観衆に説得力を与えるために重要だと思いました。キャスティングでは素人から、少しは経験を持つ新人まで色々見てきました。色々な役者さんを見て最終的にやはり少し経験のある俳優を使った方が良いと考えました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』リン役のビビアン・ソン ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
──撮影地については?
この物語の世界観は1990年代なので、私の記憶の中にある子供の頃に遊んでいた場所などは現在ではもう存在しません。その年代のステージを再現できたのは、この映画の素晴らしい部分の一つだと思います。ローラースケート場や木製窓を使っている第一高校の教室のような場所はなかなか見つからなかったです。私たちはなるべくイメージに近い場所を探してきました。それを基本として映画美術のスタッフにいろいろ手を加えてもらいました。
たくさんの制作工程は、どれもグループ皆にアイデアを出してもらって力を集結して進めました。美術チームは頑張って今ではもう存在しないはずの90年代の風景を再現させました。これらすべての過程が私を成長させてくれたと思います。映画を撮るうえで一番面白いのはもう存在しないものを再現することだと思います。ですから、制作の日々はとても楽しかったです。新しいステージが出現するたび私は自分が今仕事中だということを忘れてしまいます。
映画『私の少女時代 -Our Times-』 ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
──学校のシーンも活気溢れる生徒たちの様子が魅力的に描かれていました。
出来上がった教室に入って、主人公のリン・チェンシン(林真心)の机を見ていると、16、17歳の私の机の光景が思い出されてきました。アンディ・ラウのグッズ、ポストカード、写真などを見て、映画撮影というのはなんという素晴らしいところでしょうと思いました。まるで時空を超えて、過去に戻った感じです。制作チームには自分たちですら過去に戻ったように錯覚する撮影現場を作るようにという使命を与えました。スタッフたち自身が90年代に戻ったように錯覚することができたら、観衆にも十分同じ感じを与えられると信じていました。当時チーム全員がはっきりと持っていた使命は、画面に映っている光景を見て観衆の感覚が一瞬で90年代に戻ることです。この部分は大成功したと思います。
映画『私の少女時代 -Our Times-』リン役のビビアン・ソン(中央)、シュー役のダレン・ワン(右)、オウヤン役のディノ・リー(左) ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
──90年代の台湾での日本文化の影響についてはいかがですか?
90年代の台湾は、日本のドラマや文化などに深く影響されていた記憶があります。子供の頃印象深いのはたとえば酒井法子、少年隊、「東京ラブストーリー」など。その曲やその画面を私はまだ覚えています。日本の文化は実は私たちの少女時代の思い出のひとつでもあります。私は本当は日本のドラマの要素を映画に入れたかったんです。もしこれから『私の少女時代2』を作るチャンスがありましたら、ぜひ「東京ラブストーリー」の歌と物語の要素を映画の中に入れたいですね。たくさんの台湾の観衆が共鳴すると思います。日本の観衆ももちろん共鳴できると信じています。
新人俳優の中から適切な人選を
──今回の出演者はどういう風に選んだのでしょう、監督自ら選んだのですか?
はい。出演者に関して、助監督はいろいろ研究していました。そして有名な俳優を使わずに、新人俳優の中から適切な人選を心がけました。スケジュールもきつかったので、出演者にはある程度の経験は欲しかった。主役だけではなく、主人公の友達やヒロインの友達などはみんな演技力抜群な新人たちです。このような新人たちを多く起用することで映画の表現力が広がったと思います。映画は役者の演技の細かいディティールを拡大して見せます。この作品の表現力と説得力は十分なクオリティーになったと思います。かなり早い段階でダレン・ワン(王大陸)とビビアン・ソン(宋芸樺)の役作りの方向性は決まっていました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』リン役のビビアン・ソン(右)、シュー役のダレン・ワン(左)
──ダレン・ワンを起用した決め手は?
ダレン・ワンと初めて会ったとき、彼は学校の制服を着ていたのですが、制服には「王大陸」という名前が着いていて、私は「なんというふざける名前だ、まさかこんな名前の人がいるとは……」と思っていたんです。彼は髪型を真ん中分けにして前にかぶせていて、加勢大周にとても似ていました。90年代の日本の人気芸能人に似ているなんてとても興味深いと思いました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』シュー役のダレン・ワン(中央) ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
ビビアンはとても頭の回転が早く賢い子です。ですがリンというキャラは天然ボケで、本当に落ち着きがありません。ビビアン自身とリンというキャラは完全に違う人間です。この部分の演技トレーニングでは、役者とたくさん交流して時間をかけて行いました。
キャラの造形に関して、最初ビビアンは私がふざけていると思っていたようです。元々のビビアンのイメージは短髪美人ですが、私たちの考えたリンの造形は同じ短髪でも全然違う感じでした。私は完全に違うビビアンを観衆に見せたかった。彼女もこのような設定を認めてしっかり演じきってくれました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』リン役のビビアン・ソン ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
90年代のローラースケート場を再現
──撮影のとき、困難を感じたシーンを教えて頂けますか。
2006年の台湾で、1995年の台湾を撮影すること自体が難しいことです。たとえば横断歩道の様子や、交通標識なども現在と昔ではちょっと違います。空から地面まで、360度ほぼすべての景色が異なるものです。ロケハンチームは私の子供の頃の記憶の中にある場所を探してみました。たとえば台湾唯一の、20年たっても様子が変わっていないマクドナルド。これは宜蘭にあります。その場所は20年前もこの様子だったということを確認しました。95年のマックはどんなおまけのおもちゃを配っていたのかを想像し、いろいろ美術チームが調べておもちゃの写真がついたポスターを再現しました。
そしてさきほどお話したローラースケート場。昔西門町にいた時は、授業をさぼってラースケートをしに行ったことがあります。そのローラースケート場は現在はもう存在しません。そこで、一つの喧嘩シーンのために、ローラースケート場を丸ごと再現する必要はあるのかチームで討論をしました。そこは撮影中に一番経費が掛かるのに、一回しか映らないシーンです。私はそのローラースケート場が絶対に必要だと主張しました。
映画『私の少女時代 -Our Times-』 ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
そのローラースケート場のシーンがちゃんと再現できれば、70年代生まれの観衆は必ず共鳴してくれると信じていました。当時は授業をさぼって、または週末にローラースケート場に遊びに行って、たくさんの人が行列になって滑り、知らない男の子や女の子と友達になれて、私はそのシーンを取り戻して観衆に見せることはとっても重要だと思いました。
──お気に入りのシーンはありますか?
やはりローラースケート場のシーンがとても好きです。そのローラースケート場は現在のものを元にして90年代当時の様子に改造したものです。私は美術チームからたくさんの驚きをもらいました。たとえば当時のローラースケート場の後ろには蛍光色のカラーブロックや派手な色の照明があり、休憩のときはホットドッグとポップコーンを食べる場所があります。休憩のときそこで男子を待って覗いたりもしていました。美術チームが再現した撮影現場はそれら当時の状況と完全に合致していたし、雰囲気も良くて、私にとってこのシーンの撮影時はとっても没入感が高かったです。そして今の台湾には、当時のような四輪のローラースケートはもうほぼないです。あるのは基本輪が一列に並んだタイプです。多分制作チームは台湾中に存在するすべての四輪のローラースケートを撮影現場に運んできたのだと思います。
映画『私の少女時代 -Our Times-』 ©2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited
役者たちは一列タイプのローラースケートしか経験したことが無く、四輪タイプのものは初めてでした。四輪タイプと一列タイプの滑り方はちょっと違うので、役者が練習するときは今ではほとんど誰も使っていない古い四輪タイプを使って練習しました。エキストラには台湾中から四輪のローラースケートがうまい人を探して撮影現場まで呼んできました。みんな役者より滑るのがとても上手です。みんなが現場で円形のステージに沿って滑っていました。ローラースケート場で90年代のディスコのミュージックを流したら、本当に一秒でその場所が90年代に戻ったのです。
(オフィシャル・インタビューより)
フランキー・チェン(陳玉珊) プロフィール
1974年9月21日、台湾生まれ。95年にテレビ局「飛梭衛視」に入局、その後、「三立電視」に異動し、テレビプロデューサーとして「ハートに命中!100%」(08)、「敗犬女王」(09)、「秋のコンチェルト」(09)、「王子様の条件」(2011)、など数多くのヒットドラマを手掛ける。13年には「柏合麗 樂傳媒」局で手掛けた「蘭陸王」が高視聴率を獲得。監督デビュー作となった本作『私の少女時代 -Our Times-』 (15)は女性らしいロマンティックな感受性と、ユーモラスな笑いのセンスを絶妙にブレンドさせ、台湾で観客20万人を動員、15年のナンバーワンヒットとなると同時に、歴代5位の記録を樹立した。中国、香港、韓国でも社会現象を巻き起こし、ヒットメイカーの本領を遺憾なく発揮すると同時に、台湾・金馬奬では新人監督賞にノミネートされるなど、その監督手腕も高く評価された。16年2月に「玉春雷 娛樂文創」局の制作主任に就任した。
映画『私の少女時代 -Our Times-』
2016年11月26日(土)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
仕事も恋愛も空回りのOLリン・チェンシン(林真心)。ある日、ラジオから聞こえてきたのはかつてのアイドル、アンディ・ラウの歌だった。あの頃、片思いをしていたイケメン優等生オウヤン(欧陽)、恋のライバルを蹴落とす味方をしてくれたワイルドな不良生徒タイユイ(太宇)。90年代、何もかも輝いていた高校時代が一気に蘇る。忘れかけていた純粋な恋と友情を思い出したリンを待っていたものとは?
監督:フランキー・チェン(陳玉珊)
出演:ビビアン・ソン(宋芸樺)、ダレン・ワン(王大陸)、ディノ・リー(李玉璽)、デヴィ・チェン(簡廷芮)
特別出演:アンディ・ラウ(劉徳華)、ジョー・チェン(陳喬恩)、ジェリー・イェン(言承旭)
製作:イエ・ルーフェン(葉如芬)
脚本:ツォン・ヨンティン(曾詠婷)
撮影:チャン・ミンチョン(江敏忠)、チェン・クォロン(陳国隆)
美術:ヤン・チュアンシン(楊傳信)
音楽:クリス・ホウ(侯志堅)
原題:我的少女時代
英題:Our Times
日本語字幕:木村佳名子
2015年/台湾/134分/カラー/中国語・閩南語
配給:ココロヲ・動かす・映画社 ○