(写真)撮影:ジブ・コーレン
イスラエル人としてパレスチナ紛争の取材を続ける報道写真家ジブ・コーレンの姿に迫ったドキュメンタリー映画『1000の言葉よりも-報道写真家ジブ・コーレン』の公開を記念し、世界で活躍する日本のジャーナリストや写真家を招き、トークイベントが開催された。
映画『1000の言葉よりも』の重要なテーマの一つ、それは様々な惨状から人々が目を背ける中、プロとして世界で起きている出来事を伝え続けることが如何に重要かという事である。では、人間が極限の状況におかれる「戦場」というフィールドに身を置くジャーナリスト・写真家達は、現場から何を伝えようとしているのか?
6月21日(土)、東京都写真美術館ホールにて映画の上映後、トークゲストとして18年におよぶパレスチナ取材経験を持つ写真家、村田信一氏が写真に対するスタンスを語った。
「もともとは世界を見たいという純粋な気持ちから海外へ出るようになり、その中で写真家という職業、生き方が自分に向いていることに気づいた」という村田氏。海上自衛隊の経験を持つ氏は、90年から写真家としてパレスチナやイラクを含む世界各地の戦場を取材してきた。以前は他の多くの写真家同様、ニュース性の高い被写体を捜していた。ところがコソボ紛争を取材していた99年頃から、そうした報道写真を撮影することに疑問を感じ始めた。
「戦場から伝えるべきなのは、必ずしもセンセーショナルなテーマでなくとも良いのではないのか。ではそれが一体何なのか、今もまだ模索中です」と語る村田氏は、今後もイラクとパレスチナ取材を続けると言う。彼の眼差しは、衝撃的な一瞬ではなく、戦場で生きることを強いられている一般市民の日々の暮らしに向けられている。
6月22日(日)にはアジアプレス・インターナショナルの代表を務める野中章弘氏がトークゲストとして出演。87年、報道規制の厳しかったアジアのジャーナリスト達のネットワークとして氏が設立したアジアプレス。小型ビデオを使ったビデオ・ジャーナリズムの第一人者の一人として現在もジャーナリストとして活躍する傍ら、プロデューサーとして、また次世代のジャーナリストを育てる教育者としても尽力する。
独立系のジャーナリズムが"マスコミ"に抗うことの重要性を次のように説く。
「戦争は、それを進めている当事者達にとっては常に“正義の戦争”です。人類の歴史において国家はそうして戦争を正当化して来たわけですが、巨大なマスコミによる世論形成は常にその助長をしてきました。対して、常に犠牲者となる一般市民の立場から事実を伝えるという事、それが戦場取材におけるアジアプレス設立当初からのポリシーです」
次回、6月28日(土)はフォトグラファーの片野田斉氏、7月6日(日)はフリー・ジャーナリストの土井敏邦氏を招いてトークショーを開催する。詳細はコチラから。
『1000の言葉よりも―報道写真家ジブ・コーレン』
東京都写真美術館ホール にて公開中