東京・品川にあるスタインウェイ・ジャパンに行って見た。イーサン・ホーク監督『シーモアさんと、大人のための人生入門』のラストシーンではニューヨークのスタインウェイ本社のコンサートホールでホーク監督の紹介によりピアノ教師シーモア・バーンスタインがピアノを演奏するシーンが心に残る。そこで、webDICE編集部ではスタインウェイ・ジャパンのセレクションルームはどうなっているのだろうと思い訪れた。
映画『キングスマン』を思い出した。スーツできめてくる入り口というロビー。
プレートひとつひとつには、現代ピアノの礎となったスタインウェイ社の取得した特許が彫り込まれている。
右奥の本棚を押すと、隠し扉の向こうには秘密基地が。
ずらっと並ぶスタインウェイのピアノ。ここはピアノを購入する人が最終的にご自身のピアノを選ぶためのセレクションルーム。
ルイ15世モデル。さて、スタインウェイのピアノはいくらするかというと、黒いグランドピアノで約1000万円から2000万円。国産のグランドピアノだと200万円台からある。値段の違いは何かというと、その製造工法にあるという。国産は工業製品に近いが、スタインウェイのピアノはピアノ枠の「リム」を曲げる工程に特徴がある。合板を何層にも重ね、一枚の平らな板状にしてそれをグランドピアノの独特な形に一体成形される。
ガラスの窓から中が見える部屋にあるメンテナンスルーム。映画の最後でシーモアさんが演奏するニューヨークのスタインウェイのコンサートホールで特徴的なのは、ガラス窓の向こうに道を歩く人が見えること。コンサートを行わないときも、外からピアノが見えるようになっているという。なお、映画に登場するニューヨークのコンサートホールは、撮影後の2014年に移転のため閉鎖された。
「鍵盤」と可動部分の「アクション」は取り外し可能。
シリアル番号。1853年創立で、ようやく2015年に60万台に達した。創立163年という歴史を考えると手作りのため少量の生産。
製造場所はニューヨークとハンブルクの2か所。
パーツをばらすと製造責任者のサインが現れる。
塗装と仕上げのメンテナンスをする部屋。
出荷を待つピアノ。
スタインウェイ風にカッティングシートで飾られた加湿器。
この日の室内は気温24度、湿度43%。
自身の作業台の前に立つスタインウェイ&サンズ社の創立者、ヘンリー・エンゲルハート・スタインウェイ。
9月1日に行われた映画の公開記念イベントで金子三勇士さんが弾いたピアノを調律。ピッチは442。
世界主要ホールの9割で使用されている。コンサートホールのピアノは弾き込まれるため寿命は短くなるが、スタインウェイピアノは、その比類なき音色とともに耐久性に優れているため、多くのアーティストから高く支持されている。
映画『シーモアさんと、大人のための人生入門』より、ニューヨークのスタインウェイ本社のコンサートホールで演奏するシーモア・バーンスタイン ©2015 Risk Love LLC
(写真:荒牧耕司、浅井隆)
映画『シーモアさんと、大人のための人生入門』より ©2015 Risk Love LLC
映画『シーモアさんと、大人のための人生入門』
2016年10月1日(土)、シネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか、全国順次ロードショー
人生の折り返し地点――アーティストとして、一人の人間として行き詰まりを感じていたイーサン・ホークは、ある夕食会で87歳(映画製作時)のピアノ教師、シーモア・バーンスタインと出会う。たちまち安心感に包まれ、シーモアと彼のピアノに魅了されたイーサンは、彼のドキュメンタリー映画を撮ろうと決める。シーモアは、50歳でコンサート・ピアニストとしての活動に終止符を打ち、以後の人生を「教える」ことに捧げてきた。ピアニストとしての成功、朝鮮戦争従軍中のつらい記憶、そして、演奏会にまつわる不安や恐怖の思い出。決して平坦ではなかった人生を、シーモアは美しいピアノの調べとともに語る。彼のあたたかく繊細な言葉は、すべてを包み込むように、私たちの心を豊かな場所へと導いてくれる。
監督:イーサン・ホーク
製作:ライアン・ホーク、グレッグ・ルーザー、ヘザー・ジョーン・スミス
撮影:ラムジー・フェンドール
音声:ティモシー・クリアリー、ギレルモ・ペナ=タピア
編集:アナ・グスタヴィ
出演:シーモア・バーンスタイン、マイケル・キンメルマン、アンドリュー・ハーヴェイ、ジョセフ・スミス、キンボール・ギャラハー、ほか
配給・宣伝:アップリンク
2014年/アメリカ/81分/英語/カラー/16:9/DCP
原題:Seymour: An Introduction