海外からの観光客急増で注目を集める「民泊」。東京・大田区が日本で初めて「民泊」の申請の受け付けを始めるなど、行政レベルでの認知も進んでいる。webDICEでは民泊サービスの大手Airbnbに登録し、週3〜4日渋谷にある会社に勤務し、自宅で旅行者を迎えているホストKさんの体験レポートをお届けします。
Airbnbをはじめたきっかけは、ホテル以外に宿泊する楽しさを経験していたから
2015年の春にホストをはじめて、2016年の現在まで38組のゲストを迎えました。提供している家は一人暮らしをしていた1LDKの小さな一軒家で、大家は父親です。家を空ける機会が増えたのをきっかけにAirbnbのホストに登録しました。普段は会社に勤めているので、退社後や休みの日を利用してゲストとの連絡や出迎えをしています。Airbnbのサイト上で予約処理やお金のやり取り、ゲストとの連絡まですべて行えるし、消耗品などの買い物はネット通販するので、メインの仕事をしながらホストをすることが出来ます。
20代の頃はスケートに夢中で、国内や海外のスケートパークを巡っていました。その時に、旅行中であった友人の友人の部屋を利用させてもらったり、スケートパークのキャンプ施設、ホステル、ホームステイなど、ホテル以外に泊まる楽しみを経験していたので、Airbnbにはすぐ興味を持ちました。
ホストの登録はインターネットで完了するので簡単ですが、ホストを始めるにあたり必要なものを揃えることはなかなか大変です。大体、引っ越しをして家財をひと揃えする位の費用はかかったと思います。
Airbnbをはじめる為に用意したもの ※今回の場合 ※定員は二名
◆設備
シングルベッド×二台、掛け布団×二名分、リネン、バスタオル、電子レンジ、電気ポット、調理器具、カトラリー、救急キット、ヘアドライヤー、アイロン、体重計(荷物の重量測定に便利)、wifiは必須。
※要望があればモバイルwifiも貸し出し。
※冷蔵庫、洗濯機は所持していたため未購入
◆消耗品
ボディシャンプー、シャンプー/コンディショナー、トイレットペーパー、ティッシュ、メモパット、食器洗剤、洗濯洗剤、調味料など。 ウェルカムフードとして、ビールやスナックも。
◆観光資料、その他
英語で書かれている無料の東京案内ガイド、特にTimeOutが便利。
自作の最寄駅から家までの写真付き案内、地元のマップ、おすすめスポット。
英語可の医療機関や緊急連絡先のリスト。
個性豊かなゲストたちとの交流
ゲストは欧米人が5割で、アジア系が4割、日本人が1割程度です。滞在は1週間程度、定員二名なのでカップルの利用が多いです。観光目的の滞在がほとんどで、まれに自営業の方が日本出張の宿泊先として利用することもあります。
会社勤めなので、観光案内するのは時間的に難しいですが、直接ゲストに会ってご挨拶はしています。その際に家の使い方やおすすめスポットや交通手段を伝えたり、細かい質問に答えたり、場合によっては一緒にお酒を飲みながら会話を楽しんだりします。
印象的なゲストは多々います。スペイン人のカップルは、共に映画関係者で、彼氏がスタントマンで彼女は衣装係。彼らとは映画の話で盛り上がりました。親日家の彼らが好きな映画は『空気人形』、ペドロ・アルモドバルの映画は「奇妙で好きじゃない」そうです。
日本製フィギュアのバイヤーをしているアメリカ人カップルは、買い付けたフィギュアを床いっぱいに広げて圧巻でした。チェックアウト時にもらった手紙には「ドラゴンボール」の悟空の絵が添えられていました。
プロダクトデザイン会社でインターンをしているドイツ女性とは一緒に地元の小料理屋さんへ。料理はもちろん、日本の陶器はとても美しいといたく感動していました。
ニセコと白馬を回ってきたスノーボーダーのスイス人男性はレコード好きで、都内の中古レコード店を回り「西部警察」のサントラなどをごっそり購入、彼は日本のヒップホップグループBUDDHA BRANDファンでした。
オーストラリア女性は東京でヘアカットを。ただ日本語が出来ない為、わたしが英語可のヘアサロンを見つけて予約をしました。
東京の法律事務所でインターンをする為に来日したフランス女性は、成人の日に豪華な着物を着た新成人をたくさん見かけて興奮していました。ちなみに彼女の好きなドラマは「花より男子」、フランスでも放送していたそうです。
中国大陸から来たゲストから、LINEは規制されていて使えないので類似のアプリwechatを使っている、と教えて貰いました。規制されているけれどLINEを知っているんだ、と妙に感心しました。
国内に住む日本人の利用も少しずつですが増えています。里帰りや法事など家の用による宿泊が現在のところ多いです。
様々な国の人々と接するので、東京にいながら旅行している気分になり、これはホストの醍醐味と思っています。
人気の観光スポットは、皇居、明治神宮、渋谷や原宿、秋葉原、銀座、六本木、新宿のゴールデン街など、アート・デザイン系のゲストには新宿の世界堂、銀座の伊東屋、美術館や博物館を。ジブリ美術館は英語、それも海外からの予約が難しいせいかあまり行っていないようです。東京以外では、京都、大阪、広島、近郊なら箱根の温泉が人気です。食事は寿司、うどん、蕎麦、ラーメンそしてたこ焼き。レジャーは若いひとならディズニーリゾート、そしてカラオケ。森美術館での村上隆展も人気です。
居酒屋もメニューが豊富で日本独特な雰囲気ゆえに人気です。ただ基本的に日本語のメニューのみなので、二の足を踏むゲストが多いです。そんなときは、とにかく自分の食べたいもの、食べれないものをウェイターに伝えて、おすすめを出してもらって、と伝えています。
欧米の方からよく「日本人は中国人、韓国人をどう思ってる?」と質問されます。隣国だから揉め事は少なくないけれど、言語は違うものの顔立ちも食も近いし、親近感はとてもある、と答えています。
ホストとゲストは互いに評価をしあう
予約からチェックアウトまでの流れ
●ゲストから予約依頼
→予約受付→(家の住所などの情報が自動返信)→ゲストの到着時間確認、より詳細な家へのルートや鍵受け渡し方法の連絡
●家を整えてゲストを迎える準備。
●ゲストがチェックイン。家の使い方を説明や観光の相談。
●ゲストのチェックイン翌日にpaypalで宿泊料金が振り込まれる。
※ゲストは予約時に入金するが、チェックイン後までAirbnbが預る。
●ゲストがチェックアウト。部屋の確認および掃除。
●Airbnbのサイトで互いに星付け評価とコメント。これがAirbnb上での自分のプロフィールになる。
やり取りは相手が日本人ではない限り英語です。私は英語が堪能ではないので、翻訳サイトを駆使します。もちろん直接会ったときは英語を話すわけですが、伝えたい、聞きたいという意志があると、なんとか通じます。
トラブルらしいトラブルは起きていないのですが、ゲストの郵便物が届かず、郵便局へ交渉に行ったことがあります。宛先がゲストの名前だったので、登録の住所と氏名が一致せず配達が停止されてしまったのです。
家の場所が分かりにくく、グーグルマップでも正確な位置がでない為ゲストが迷うことが多かったのですが、写真付きの案内を作成したところ解消されました。
基本的にゲストは礼儀正しく、フレンドリーな人たちです。
宿泊料金は、立地や設備を元にAirnbnbが算出した参考価格を元に定員二名で一泊8000円に設定しました。その宿泊料金からAirbnbのサービス料としてホスト側は3%差し引かれ、ゲスト側は6〜12%加算されます。Airbnbによる収入は、家賃や光熱費、消耗品費を差し引くとそれほど残りません。渋谷や新宿、六本木にごく近い立地ではないし、運営している家もひとつなので妥当ではありますが。とはいえホストすることを楽しんでいます。
家にいる時間も楽しんでもらえるよう設備を整える予定です。オーディオは、デジタル音源はもちろん、レコードやカセットテープも聴けるようにしたり、パソコンを繋いでプロジェクターで映像を鑑賞できるようにしたり。自分と趣味の近いゲストが泊まりに来るようになれば面白いと思います。
◆Airbnb公式サイト:https://www.airbnb.jp/