Photo Credit: Alan Markfield (c)2015 American Ultra, LLC. All Rights Reserved.
『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ、『トワイライト』のクリステン・スチュワートが出演する『エージェント・ウルトラ』が2016年1月23日(土)公開となる。
謎の暗号をきっかけに、片田舎のコンビニバイトの秘められた能力が覚醒。州を封鎖され、殺人マシーン化したエージェントたちが次々と襲いかかる―。
オリジナル脚本を手がけたのは、『クロニクル』マックス・ランディス。CIAが実際に行っていたとされる極秘マインドコントロール・プログラム、MKウルトラ計画を題材に、ダメ男のプロポーズ計画を織り交ぜたキュートな脚本を書き上げた。ハリウッドで売れっ子の彼は、2年連続でフォーブス誌が選ぶ30歳以下の代表30人に選ばれた。映画監督のジョン・ランディスの息子としても知られている。
webDICEでは、マックス・ランディスのインタビューを掲載する。
大部分はラブストーリーで、感情的なビートが大切
脚本家のマックス・ランディス
──『エージェント・ウルトラ』のストーリーがうまれた経緯を教えてください
誰かの愛を勝ち取るラブストーリーを語りたかったんだ。正直で、絆を手に入れる愛の物語だ。あと、アクションもすごくやりたかった。この映画はインディ・ドラマみたいな始まり方をするよね。登場人物がエモーショナルで、『エターナル・サンシャイン』みたいなインディ作品みたいだ。そんなドラマから、キャラクターが突然、強制的にアクション映画に放り込まれるような話にしたかったんだ(笑)
──CIAの機密プロジェクト、MKウルトラ計画(※)がモチーフになっていますね。
※CIA科学技術本部がタビストック人間関係研究所と極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネーム。1950年代初頭から少なくとも1960年代末まで行われていたとされる
子供の時に初めて聞いて、心理的な実験という部分に魅了されたよ。誰かのアイデンティティを強制的に作り変えていたんだからね。人間を道具にしていたんだ。ショッキングだよ。しかも、アメリカが関与していたことを認めているんだからね。機密にしていたのも凄い。最高に狂っていて恐ろしい実話だ。『ボーン』シリーズみたいだよね。
──本作はアクションとコメディがつまった映画ですが、どのようにこの二つのバランスをうまく取りましたか?
お互いをそれぞれ強調した作品を書こうと試みた。この映画はコメディ映画でもアクション映画でもなく、スリラーだ。アクションとコメディをミックスした作品だね。アクションとコメディは常に相互に関連しているし、楽しいよね。誰かが顔をひっぱたかれる場面はなによりも面白いよ(笑)。
──二人の主人公のキャラクターと関係性がとても魅力的です
マイクとフィービーのようなカップルのことはよくわかっていたんだ。マイクにとってフィービーは母親のような存在であり、彼女の後ろに隠れ守ってもらっている。マイクのほうがフィービーとの関係に少し不安を感じているから、インテリな恋人であるフィービーに好印象を与えようとするんだよ。一か月半で第一稿を書き上げたね!
──『プロジェクトX』の監督とのコラボですが、製作前に監督とどんなことを話し合いましたか?
大部分はラブストーリーで、感情的なビートが大切だってこと。それが一番重要な要素だって彼に話したんだ。二人の主人公はスパイ映画的なことにはまったく関心がないのに、いきなりスパイ・スリラー的な展開に巻き込まれていく。二人はただ一緒に過ごし、マリファナを吸って寝ていたいだけなのに、政府のプログラムを崩壊せざるをえなくなる。この要素は本当に書いていて楽しかったね。
──恋愛が本作の鍵でもありますが、あなたの一番好きな恋愛映画はなんでしょうか?
リチャード・リンクレーター監督のシリーズ3作『ビフォア・サンライズ』『ビフォア・サンセット』『ビフォア・ミッドナイト』!ラブストーリーじゃないけど『影なき男』と続編の『夕陽特急』。キャラクターの相性とケミストリーが好きなんだ。あと、園子温監督の『愛のむきだし』、『エイリアン』シリーズもだね。たくさんありすぎて思い出せないよ。ラブストーリーは、何回観ても人を幸せにするよね。
──主演のジェシー・アイゼンバーグとクリステン・スチュワートが素晴らしかったです。
彼らは本当に魅力的だった。クリステンが演じたフィービーの勇敢でタフでもろい部分はとても良かった。僕が脚本に書いたフィービーそのものだったから、凄く嬉しかったよ。
──舞台をウェスト・ヴァージニアにした理由は?
アクション映画の舞台にはならないような街を選んだんだ。『ボーン』シリーズは世界中の街が舞台だけど、この映画はアメリカの小さな町を舞台にしたら面白いと思った。実は当初はオレゴンが舞台だった。『クロニクル』も実は、当初はオレゴンが舞台だったんだ。結局シアトルに変わったんだけど、でもおかげでシアトルのランドマークでもあるスペースニードルを使えて楽しかったけど(笑)。誰もオレゴンが舞台の映画を撮らないからね(笑)。ずっとオレゴンで撮ろうって言い続けていたんだよ。
──SF・コメディ・アクション・ホラーと様々なジャンルの脚本を執筆していますが、一番好きなジャンルは?
強いて挙げるなら、スリラーだ。僕が書いた作品はそれぞれ異なる手段で書いてるけど、究極的にはすべて壊れたスリラーだ。
父ジョン・ランディスの映画で一番影響を受けたのは『狼男アメリカン』
──父親のジョン・ランディスや彼の作品から教わったことはなんでしょう?
父の映画で一番影響を受けたのは『狼男アメリカン』だ。多大なインスピレーションを受けたよ。キャラクターの物語と、ホラー映画というジャンルを巧みに融合した素晴らしい作品だからね。僕自身、まだ映画を監督した経験はほとんどないけどね。
──子供の頃から色んな映画を観て育ったんですね。
最初に劇場で観たのは『スター・トレックⅥ 未知の世界』のプレミアだね。父さんと母さんが僕がすごく小さなときに連れて行ってくれたんだ。反重力の暗殺シーンを今でもよく覚えているよ。「ワオ!!!」ってぶっ飛んだね。
父が見せてくれた映画もあるし、自分で観に行った映画もある。おかげで、ストーリーテリングについてたくさん学ぶことができたんだ。
──20世紀フォックスは『クロニクル2』の企画開発を進めているようですが、あなたは関与していないのですか?
うん、彼らはそう言ってるみたいだけど、実際どうなんだろうね。たくさんの脚本家が関わってるみたいだけど。スタジオの映画だからね。一体なにが起こってるかは誰にもわからないんだ。書いたよ。でも、彼らは僕の脚本を使わなかったんだ。ダークすぎるからってことだったけど、本当の理由はわからないね。一作目は、フォックスが普段作る種類の映画と違ったし、彼らにとっては不測の事態というか偶然のヒットだった。二本目で同じような作品をより大規模な作品として作りたくないんだろうね。理に適っているよ。
──間もなく全米で公開になる『ヴィクター・フランケンシュタイン』の脚本を執筆しています。この作品について少し教えてください。
実はまだ観てないんだ。僕が書いた中で最もお気に入りの脚本の一つなんだけどね。これもスタジオの映画で、僕なしで作ってしまったからね。どんな作品に仕上がっているか非常に興味あるよ。
──現在執筆中の脚本はどんな作品ですか?
あらゆるものすべてだね。2つのコミックと2つのTVショーと6本の映画の脚本をこの半年で書いた。他にも一本インディ映画を売り込もうと思っているし、自分の監督作も一本売り込むつもりだ。あと、ステージ(舞台)ショーもね。とてもエキサイティングだよ。でも本当のことを言うと、脚本家には一切なにも約束されていないからね。これから監督やプロデューサーを見つけるところだよ。どうなるか見てみようじゃないか。
──最後に、脚本家にとって一番大切な資質とはなんでしょう?
たくさんあるよ。脚本家はとてつもなくハードな仕事だ。一見するよりも遥かに複雑な仕事なんだ。脚本家として働くということは、技術者であり建築家でありアーティストになるということ。感情を加えないといけないし、人間を理解していないといけないし。人がどうやって考え、動き、話し、決断を下すかを理解していないといけない。他人の靴に自分の足を突っ込まなければいけない、つまり他人の身に置いて考えないといけないんだ。その他人の靴に全然興味がなくても、その靴を履いて、全体を感情と心を込めて動き回らなければいけないんだよ。そして批評しメモを取る。自分にお金を払ってくれる人にマッチするように脚本を調整し、彼らの意見を理解する。それができなかったら、すべては終わりなんだ。
マックス・ランディス/MAX LANDIS(脚本)
2年連続でフォーブス誌が選ぶ30歳以下の代表30人に選ばれる。この5年間で15本以上の脚本が売れ、最初に製作された長編映画『クロニクル』(12)が大ヒット。現在は、ダニエル・ラドクリフ、ジェームズ・マカヴォイ出演、ポール・マクギガン監督作“Victor Frankenstein”(15)、サム・ロックウェル、アナ・ケンドリック出演の“Mr. Right”(15)など、いくつかの企画がポストプロダクション状態にある。またハーレイ・ジョエル・オスメント、ジーナ・デイヴィス、スコット・バクラ出演で、シアトル映画祭でプレミア上映された“Me Him Her”(15)では脚本だけでなく、監督も務めた。
映画『エージェント・ウルトラ』
2016年1月23日(土)公開
監督:ニマ・ヌリザデ
脚本:マックス・ランディス
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ビル・プルマン、トファー・グレイス、ウォルトン・ゴギンズ、コニ―・ブリットン
2015年/アメリカ映画/上映時間96分 /原題:American Ultra
Photo Credit: Alan Markfield
(c)2015 American Ultra, LLC. All Rights Reserved.
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