渋谷の映画館・アップリンクで『見逃した映画特集2015』が12月19日(土)より開催される。
『見逃した映画特集』は2013年より実施され、アップリンクの年末年始恒例となっている人気企画。「気がついたら上映が終わっていた」「忙しくて見逃してしまった」「もう一度スクリーンで見たい」という映画ファンの心残りを解消してくれるプログラムとなっている。
今回も2015年公開作から選りすぐりの42作品をラインナップ。批評論争が巻き起こったデイミアン・チャゼル監督『セッション』と、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』という話題作2作を続けて観ることができるほか、巨匠アレクセイ・ゲルマンの遺作『神々のたそがれ』、戦後70年という節目の年に塚本晋也監督が発表した「戦争を体験する映画」『野火』、第69回カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞したグザヴィエ・ドラン監督『Mommy/マミー』など、世界的巨匠の名作から気鋭の若手監督の意欲作までが上映される。
各メディアやSNSなどで2015年ベスト映画が発表されるこの時期、あなたの2015年ベストは?もし見逃した作品があるなら、ぜひこの機会を利用してみてほしい。
webDICEでは、モデル・俳優の栗原類さん。映画ライターの真魚八重子さん、映画監督の松江哲明さんによるオススメの3本をコメント付きで紹介する。
『見逃した映画特集2015』
日程:2015年12月19日(土)~2016年1月29日(金)
会場:渋谷アップリンク(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階・2階)
※12月31日(木)、1月1日(金・祝)は休館日
料金:1作品:一律¥1,300 /学生・シニア¥1,100 / UPLINK会員¥1,000
※サービスデー適応外
スケジュール詳細はこちら
▼『見逃した映画特集2015』スケジュールフライヤー(クリックで拡大)
栗原類さん(モデル・俳優)
■『セッション』
教師役のJ・K・シモンズは超が付く程狂気じみている鬼先生でやる事なす事全てがイカれていて”本当にこういう人いるの?”と疑ってしまいますが、そのキャラクターの設定と言葉の選びが人間臭くてフィクションぽさ全く無く”本当にいるんじゃないか”と思ってしまう様な微妙な説得力がこの映画の魅力の一つです。サウンドトラックのジャズの曲も全て素晴らしくて音楽通にもうってつけですが一番の注目ポイントはエンディングです。最後の演奏シーンからのスタッフロールへの入り方は映画の歴史に残る様な完璧な終わり方でした。
■『はじまりのうた』
ストーリーは馴染みがある様なシンプルな恋愛物語ですが、登場人物が皆純粋であり嫌いな人は一人も思いつか無い様な”平和”な映画です。主演のキーラ・ナイトレイの歌も今作の注目ポイントの一つです。決して上手い訳ではありませんが存在感があって無視できない様な歌声を持っていてついつい聞いてしまう磁力を持っています。大作映画やCGが多い映画からちょっと一休みしたいのならこの映画はうってつけです。
■『ザ・トライブ』
今作は本当に実験的な映画でした。出演者全員が聴覚障害者である為”セリフ”が全く無いので進行は手話と役者たちの表情や仕草で映画を観る事になります。劇中も音楽が全く無いのでこの映画の暗い雰囲気はまるで聴覚障害者の人逹から観た我々の世界を表している様に思えます。暴力のシーンも役者の人逹には音が聞こえ無い為手加減をせずに本気で殴りかかる所もリアルに見えます。
松江哲明さん(映画監督)
■『はじまりのうた』
2015年は原稿を書く前のエンジンとして『はじまりのうた』のサントラを何度も再生した。追いつめられた状況から生まれた音楽を聞くと筆が進むのだ。街でゲリラ演奏という大好物な設定もよかったし、安易な恋愛関係に陥らない物語にも感動した。僕はギターを奏でるキーラ・ナイトレイに惚れない自信はないけれど。
■『ローリング』
今年の日本映画はやっぱり『ローリング』かな(『野火』は2014年に見てたので)。冨永さんを褒めると「友達だからでしょ」なんて言われたけど「友達が面白い映画を作ったら嬉しいに決まってるじゃないか!」と反論した。こんなことを言う人は「知り合いが微妙な作品を作った時の感想を伝えなきゃいけない辛さ」を知らないのかな。川瀬陽太さんも柳英里紗さんも松浦祐也さんも井端珠里さんもお知り合いだからこそ「最高!」と言いたい。整音の山本タカアキさんもグッジョブ。
■『悪魔のいけにえ』
『悪魔のいけにえ』を見逃した人に朗報。またスクリーンで見れます。人生が変わる機会です。良い方向か悪い方向かはあなた次第だろうけど、そんな映画は1000本に1本あるかないか。「騙されたと思って」という表現があるけど、本作に限っては騙さない。見ろ。
真魚八重子さん(映画ライター)
■『神々のたそがれ』
『神々のたそがれ』は監督のアレクセイ・ゲルマンが完成直前に逝去。だがじつに13年もの時間をかけた怪作だ。本編はルネッサンス期のヨーロッパの話にしか見えないが、他の惑星を舞台にしたSFである。だが野蛮な人間しか出てこないし、四六時中誰かが蠢いている落ち着きのない映画は、情報量が多すぎて一度見じゃ足りないほど。
■『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』
若手女性監督の出世作『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』。タイトルはホラー風だが、ボーイ・ミーツ・ガールの瑞々しさと、とある重大な問題を巡って二人の間に緊張が走りつつ、うやむやになっていく恋愛の瞬間が良い。「猫運び映画」としてもカワイイ。
■『ナイトクローラー』
『ナイトクローラー』は事故現場専門のパパラッチもの。この役のため、激やせしたジェイク・ギレンホールの見た目のキモさ、推したい! さらに監督夫人である、女優のレネ・ルッソが重要な役で登場。ジェイクがレネに、仕事をネタに肉体関係を迫るシーンは、身内配役の結果、27歳も年上の女を狙う男というシーンに。でもこれが、主人公を特殊な趣味のヤツに見せる、思いがけない効果をもたらしていて、生々しさがムワッと漂う。
○見逃してしまって気になってるのは『パロアルト・ストーリー』。ジア・コッポラのセレブな家名&才媛顔やオシャレ感に気圧されて、見るのに気力がいる!
上映作品
『悪魔のいけにえ 公開40周年記念版』
監督:トビー・フーパー
1974/83分/アメリカ
『あん』
監督:河瀨直美
2015/日本・フランス・ドイツ/113分
『息を殺して』
監督:五十嵐耕平
日本/2014/85分
『沖縄 うりずんの雨』
監督:ジャン・ユンカーマン
2015/日本/148分
『エレファント・ソング』
監督:シャルル・ビナメ
2014/カナダ/100分
『お盆の弟』
監督:大崎章
2015/日本/107分
『神々のたそがれ』
監督:アレクセイ・ゲルマン
2013/177分/ロシア
『合葬』
監督:小林達夫
2015/日本/87分
『Cu-Bop(キューバップ)』
監督:高橋慎一
2014/日本・キューバ/スペイン語・英語/107分
『きみはいい子』
監督:呉美保
2015/日本/121分
『恐怖分子 デジタルリマスター版』
監督:エドワード・ヤン
1986/香港・台湾/109分
『グッド・ストライプス』
監督:岨手由貴子
2015/日本/119分
『孤高の遠吠』
監督:小林勇貴
2015/日本/120分
『黒衣の刺客』
監督:ホウ・シャオシェン
2015/台湾・中国・香港・フランス/108分
『ザ・ヴァンパイア残酷な牙を持つ少女』
監督:アナ・リリー・アマポアー
2014/アメリカ/99分
『THE COCKPIT』
監督:三宅唱
2014/日本/64分
『ザ・トライブ』
監督:ミロスラヴ・スラボシュピツキー
2014/ウクライナ/132分
『人生スイッチ』
監督:ダミアン・ジフロン
2014/アルゼンチン,スペイン/122分
『セッション』
監督:デイミアン・チャゼル
2014/アメリカ/107分
『セバスチャン・サルガド地球へのラブレター』
監督:ヴィム・ヴェンダース、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド
2014/フランス・ブラジル・イタリア合作/110分
『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』
監督:タラール・デルキ
2013/シリア/89分
『ディオールと私』
監督:フレデリック・チェン 2014/フランス/90分
『トゥーマスト ~ギターとカラシニコフの狭間で~』
監督:ドミニク・マルゴー
スイス/2010/英語/カラー/88分
『ナイトクローラー』
監督:ダン・ギルロイ
2014/アメリカ/118分
『二重生活』
監督:ロウ・イエ
2012/中国、フランス/98分
『野火』
監督:塚本晋也
2014/日本/ 87分
『はじまりのうた』
監督:ジョン・カーニー
2013/アメリカ/104分
『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
2014/120分/アメリカ
『パーティー51』
監督:チョン・ヨンテク
2013/韓国/101分
『バレエボーイズ』
監督:ケネス・エルヴェバック
2014/ノルウェー/75分
『パロアルト・ストーリー』
監督:ジア・コッポラ
2013/アメリカ/100分
『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』
監督:ジェレミー・セイファート
2013/アメリカ、ハイチ、ノルウェー/85分/ビスタ
『フレンチアルプスで起きたこと』
監督:リューベン・オストルンド
2014/スウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェー/118分
『ブラジル・バン・バン・バン~ジャイルス・ピーターソンとパーフェクトビートを探しもとめて~』
監督:チャーリー・インマン
2014 /イギリス、ブラジル、アメリカ/75分/ビスタ
『ボクは坊さん。』
監督:真壁幸紀
2015/日本/99分
『Mommy/マミー』
監督:グザヴィエ・ドラン
2014/カナダ/138分
『やさしい女 デジタルリマスター版』
監督・脚本: ロベール・ブレッソン
1969/フランス/89分
『雪の轍』
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
2014/トルコ・仏・独/196分
『ラブバトル』
監督:ジャック・ドワイヨン
2013/フランス/99分
『ルック・オブ・サイレンス』
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
2014/デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス合作/103分
『ローリング』
監督:冨永昌敬
2015/日本/93分
『ワイルド・スタイル』
監督:チャーリー・エーハン
1982/82分/アメリカ