骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2008-02-25 18:49


『ジプシー・キャラバン』大ヒット上映中。ジプシーミュージシャンをめぐるトークイベント開催

ゲストは、川島恵子さん(プランクトン代表)、写真家/評論家の石田昌隆さん、松山晋也さん。
『ジプシー・キャラバン』大ヒット上映中。ジプシーミュージシャンをめぐるトークイベント開催
  • 左から石田昌隆さん、川島恵子さん、松山晋也さん

ジプシーミュージシャンたちが6週間をかけて全米をまわるツアーに密着したドキュメンタリー映画『ジプシー・キャラバン』。2月21日、上映館の渋谷シネ・アミューズにてトークイベントが開催された。

ゲストは、ジプシーミュージシャンなどの来日公演を企画・招聘している川島恵子さん(プランクトン代表)、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのジャケット写真などを手がけている写真家/評論家の石田昌隆さん、スタジオ・ボイス編集長を経て、数多くのメディアで音楽論を執筆している松山晋也さん。

「今日で2回目なんですけど、また泣いちゃいました(笑)。お葬式のシーンでニコライの顔を見て。1回目観たときはしばらく口がきけないくらい辛かったですね」と、川島さん。ジプシーミュージシャンと親交の深い3人が、ここでしか聞けない面白いお話をしてくれた。


ジプシーミュージシャンの生活について

松山「タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが住んでいるところはミュージシャンの多い村なんですけど、その中からタラフのメンバーになれなかったミュージシャンの人たちはものすごく貧乏で。どのくらい貧乏かというと、タラフのメンバーは家でコーヒーを飲むんですけど、そうじゃない人はコーヒーが飲めない。これをすごいカッコ悪いことのように言うんですよね(笑)」

川島「ニコライが住んでいるところは道1本しかない。道が舗装されてなくて子供たちが裸足だったりとか。数百人の村なんですけど、全員音楽家といってもいい。音楽だけが唯一の職業というか、生活ができる職業で。あとの人はずっと家にいて、農業をするわけでなく、勤めてるわけでなく。字を書けなかったりもしますね」

松山「ただ、なにもしないでいる。タラフに選ばれた人だけが海外にあちこちいって稼いでくる。その落差がものすごくあります」

石田「稼いでいるといっても、家はすごく小さいですね」

松山「4畳半くらいの家で。キッチンもないくらい。ベッドがあって壊れたラジカセがあって。CDなんか、もちろんないですから。そういえば、川島さんはニコライから求愛されていたんですよね(笑)」

川島「本作品の中でも言ってたけど、老人になっても俺はきれいな人と出会うのが夢なんだと。あの年齢でも言ってるんですよね」

松山「ニコライの部屋は小さくて汚いけど、ブカレストにこっそりマンションを買っているからそこに住まないか、とかって笑」

川島「日本に来たときも、ホテルのロビーで腰が立たなくて椅子に座ってじーっとしてるんですけど、女性が通るとすーっと背筋がのびて歩けるようになる(笑)。あれはすごかったですよね」

ジョニー・デップとタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの関係について

川島「本作品に出てくるジョニー・デップが、タラフと映画で共演してから世界中で一番好きなバンドと言っていました。タラフのメンバーにとって、世界的に有名な俳優だとジョニーを紹介されても全然興味がないので“あ、そう”という感じで。でもマネージャーが”この人はミリオネアで、1時間でこれだけ稼ぐ”といったら、全員がジョニーの方へ集まってみんなで肩を組んだという(笑)」

石田「ジョニー・デップが友達だっていうとウケがいいということに気が付いて、ジョニーは俺の友達なんだと言っている(笑)」

川島「ジョニー・デップのクラブに全員招待されて、そこで演奏もしたんですよね。普通だったらジョニーに感謝する感じになるんですけど、全然そんなのおかまいなしに、ジョニーが連れてきた可愛い女の子の周りに群がっていたという(笑)。すごく現金で、面白い人たちなんですね。ジョニー・デップは自分のことをちやほやしたりしないから、余計好きみたいですね」

ニコライの死について

川島「いまでも心に残るストーリーがあるんですけど、日本公演が終わって1ヶ月後にスイスのツアーがあったんです。ニコライは車椅子を使うくらい体が弱っていたんですけど、マネージャーにどうしても行きたいと言い張ったんです。“今日は一生で俺の最後のステージだ。だからチャオセスクの歌を最後まで歌わせてくれ”とメンバーに頼んで。普段はチャオセスクは1~2番までしか歌わないけど、その日は最後までやりきりました。それから村に帰って、1週間後に朝食をたべながら孫に囲まれてすーっと息をひきとったという…自分の寿命を知っていたというか、すごいことですよね」

石田「1960年代にジプシーの人達を撮った名作の写真集があるんですが、最後のページが葬式のシーンで終わるんです。強く印象に残っていたそのイメージと、本作品のニコライの葬式のイメージが重なりました。個人的に親しくなっても、最後の最後で踏み込めない向こうの世界にいる人達だなという感じがする。それが切ない感じですよね」

川島「共同体の感じがありますよね。でも、あれだけ悲しみや喜びをちゃんと表に出せる人たちはほんとにいないですよね。この映画には彼らの素晴らしさが映っているので、是非みなさんに観ていただきたいと思います」


今年10月には、本作品に出演していたファンファーレ・チョカリーアが来日する予定。今年もますますジプシーが密かに注目を集めてそうな予感だ。

『ジプシー・キャラバン』は、渋谷シネ・アミューズにて公開中。


◆ジプシー・キャラバン
http://www.uplink.co.jp/gypsycaravan

◆渋谷シネ・アミューズ
http://www.cineamuse.co.jp

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