骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2015-11-06 15:10


映像の「こうあるべき」を解き放て!都内各所で開催中、ヴィデオアートという横断的な芸術

渋谷アップリンクでは11/13(金)開催、ゲストは瀧健太郎、西山修平、ヒグマ春夫
映像の「こうあるべき」を解き放て!都内各所で開催中、ヴィデオアートという横断的な芸術
瀧健太郎のパフォーマンス

ジャンルを横断的に表現活動するアーティストを紹介するアート・フェスティバル「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 15/16」(インターディシプリナリー・アート・フェスティバル・トウキョウ)が現在開催中。原宿VACANTやBLOCKHOUSE、明大前のキッドアイラックアートホールといった都内の複数の会場にて様々なイベントが行われることになっており、11月13日(金)には、渋谷アップリンク・ファクトリーにて「Visual Ray - Empathy or Antipathy- 視線×光線 - 共感か反感か」が実施される。

このプログラムでは、瀧健太郎、西山修平、ヒグマ春夫が、見ることと映像の交わり「視線×光線」についての考察を通じて、既存の映像表現を超えた新たな映像パフォーマンスを行う。また、アップリンク・ギャラリーにおいても11月4日(水)から16日(月)まで、3作家の新作映像作品とパフォーマンスの記録映像が展示される。

映像の探求を行う3名のアーティストは、映像が氾濫する現代社会において、既成の映像メディアシステムを転用することにより、見るものを挑発する。彼らのパフォーマンスでは、映像を見るということ自体が考えさせられ、そこでは、映像化した現実世界を、映像を通じて思考し、見るということの可能性が追求される。

開催に先駆け、webDICEでは「Interdisciplinary Art Festival Tokyo」のディレクターである韓成南(ハンソンナン)さんによるフェスティバルの紹介、また3名のアーティストへのインタビューを掲載する。

「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 15/16」について

インターディシプリナリー・アートは、聞きなれない言葉ですが、一言で言うと、ジャンルにとらわれず、ジャンルを横断するために、カテゴリーに属しきれないアートの事を指しています。
インターディシプリナリー・アート・フェスティバル・トウキョウは、2014年から開催され、今年で2回目になります。今年度のテーマは「Jail Break-予見する人工物-」で、東京都内のアートスポットで多発的にイベントを行います。映像や演劇、音楽など、それぞれのジャンルを主軸としながら、横断的な表現活動を行うアーティストをフューチャーして行われるフェスティバルですが、こういった実験的で、先鋭的なアートを、歓迎して、紹介することで、アーティストの発表の場を拡張し、より多くの観客に新しい自由な作品や、観点を見てもらうことを目的にしています。

インターディシプリナリーとは

自分が用いているメディアというものについての意識をしっかり持っていて、それを追求していくうちに、ついそのジャンルから逸脱してしまい、なんとも名付けえなくなってしまったものがインターディシプリナリーアートなのではないかと思っています。現代は、趣味や好みが細分化されていて、その枠を超えて、見るということが少なくなっている状況ですが、シーンの活性化や新たなアートの可能性を広げていきたいと考えています。

今年度のテーマ「Jail Break-予見する人工物-」について

ITの世界では、サービスを行う際に、様々な制限を加えることによって、利潤を確保して、いろんなコンテンツを見せていくというような構造を、現在の消費社会において、作り出しています。Jail Breakというのは、そういったものをはずす事によって、より新たな場所で使えるようになるということです。インターディシプリナリー・アートフェスティバルにおいても、その枠をどこまで解き放つことができるかという思いを持ち、「Jail Break」と名付けました。

また「予見する人工物」ですが、アーティストが作るもの、物体だけではなく、瞬時に消滅する状態や空間を含めて、人間が作り出すあらゆるものを人工物として考えてみたときに、また違うメタ的な視点や、異なるパラレルな世界から見るような、今の人間社会を覗き見する視線のようなものを表しています。

6ヶ月にわたる長い期間があるフェスティバルですが、非常に先鋭的で、実験的なものをキュレーションいたしましたので、ぜひお越しください。

(文:韓成南[インターディシプリナリー・アート・フェスティバル・トウキョウ・ディレクター])



コラボレーションそしてヴィデオというメディアの可能性
瀧健太郎、西山修平、ヒグマ春夫インタビュー

──11月13日のアップリンクでのパフォーマンスの内容について教えてください。

ヒグマ春夫(以下 ヒグマ):テーマは、カメラにより撮る/撮られるということによる身体の見え方です。防犯カメラ、監視カメラを使用することにより、身体が見えていないところでも、映像として撮られているということを出したいと思っています。

ヒグマ春夫
ヒグマ春夫

普通ダンサーは、自分の体を見せるために舞台に立つんだけど、今回のシステムでは、後ろや横からなど、4つのカメラによって撮られている映像を、スイッチして変えていくので、ダンサーが見せたいものが見えているわけではない。そして、できるだけ暗転にして、会場を暗くするので、生の身体はほとんど見えず、映像化された身体が見えてくる。

メディア的な特徴としては、今回は記録として出す映像はない。それが今回の特徴だと思っているのだけど、記録しない、編集しない、リアルタイムな映像をカメラの位置をずらすことによって、映像としての出し方をやってみたい。

瀧健太郎(以下 瀧):今回は、「V-climbing highlines」というタイトルで、劇場空間と屋外を映像の中継で結ぶ作品です。劇場の中でパフォーマーが演技するのを、渋谷の街の中、屋外のビルとかに、断崖絶壁を登っているかのように映して、その状況をまた劇場内に中継するという、都市と身体、ストリートとヴィデオを巻き込んだパフォーマンスにしようと考えています。

瀧健太郎
瀧健太郎

劇場の中にいる観客の方は、スクリーンや生のパフォーマーを見たりしますが、屋外でやるほうはけっこう面白くて、実際に僕がプロジェクターで映像を建物の上に映したり、地面に映したり場合によっては歩く人の背中とかにも映し、本来だったら映像がないはずのありとあらゆる場所に映像を映す可能性があります。そして、こうした屋外の通りすがりの人のリアクションを含めた様子が劇場内のスクリーンに中継される予定です。

西山修平(以下 西山):映像信号と音声信号を反転させて、映像によって音声を操作して、音声によって映像を操作するということをします。抽象的な映像というよりは、イメージや音声といったものも含めて、ヴィデオというものを表現しています。

西山修平
西山修平

僕がヴィデオのパフォーマンスでやる時には、メディア性を感覚的に体験させるって言うことを考えていて、映像は当然動くんですけど、動いているっていうことを、観客が見ているうちに、いつのまにかに、見ている自分が映像の中に含まれているっていうような感覚が起きるんじゃないかと思っています。見ている自分と見られている映像の境がなくなるっていう瞬間を作り出したいっていう感覚が強いです。

──インターディシプリナリー(横断的な)芸術について、どのように考えていますか?

ヒグマ:僕は映像だけではなく、ダンサーや音楽家、詩人、批評家を呼び込んだりして、コラボレーションしてきていたので、割と近いことを以前から自分がずっとしてきたという感じがします。

瀧:ひとつのジャンルだけだと行き詰るので、外部性を求めて、異種格闘技みたいなことをすると思うんですけど、それによって、そのジャンルがより強固になればいいかなと僕は思っています。

西山:僕にとって横断的芸術とは、違うジャンルが一緒にやってるから横断しているというよりも、何かについてすごく一生懸命やってしまったら、横断してしまったという、結果的なものが横断的芸術なんじゃないかなと。

西山修平
西山修平のパフォーマンス

ヒグマ:最近コラボレーションというものが分かんなくなってきている。僕自身がやって分かんなくなってきているというのはおかしいんだけど、あまりにも多くて、なんでもコラボレーションという形でやられているので。コラボレーションをやる時は、相手がすごく重要ですね。

瀧:無目的にコラボレーションをやると火傷するっていうか、2つ以上の要素とかジャンルをぶつかり合わせたときに、お互いが傷つくかもしれないと思いながらやらないと、面白くならないかなと。ジャンルを請け負うみたいな意気込みでやらないと。

西山:自分たちがやっているメディアというものに対する意識がないコラボレーションは何も生み出さないと思っています。自分は映像をやっているので、他のジャンルの人とやるときも、やっぱり映像とは何かっていうことを考えながらやることによって、新たなものが見えてくるのではないかと。

──ヴィデオというメディアによる表現の可能性については?

ヒグマ:最近はあまりにもデジタル化されてて、コンピューターを介したインタラクティブなものに当然なってくるだけど、そういうインスタレーションを見に行ったりすると、最初はすごいって思うんだけど、でも長く見ているとそれを面白いとは思わなくなる。もうちょっと、素朴なヴィデオの使い方をやっていきたいと思っています。

ヒグマ春夫
ヒグマ春夫のパフォーマンス

瀧:ヴィデオが産声をあげた瞬間というのは、アメリカが戦争の中で、例えばナパーム弾とかを落としているところを、中継して見るというような、より早く、瞬間的に見て、判断するっていうことを目的に生まれてきた悪しき側面を持つツールとして登場してきたそうです。こうした戦争でも使われる可能性のあるツールを使って、日常から真実をどう引き出すか、テレビ局やコマーシャルなどの体制側が使うような方法ではない手法をどう突き詰めるか、と思っています。

西山:ヴィデオっていうものが仮のもので、現実が真のものだという感覚があると思うのだけど、ヴィデオというものを突き詰めて考えたときに、果たして現実と仮のものの差があるのかないのかということが見えてくる気がする。そういったことを考えることによって、生きている現実みたいなものが、見えてくるかもしれないと思っています。

──今後どんな作品を制作する予定ですか?

ヒグマ:最初やったみたいに、自分ひとりでやって、何回か経ったらまたコラボレーションで人を呼んだりしたい。僕のやり方としては、身体表現者や音楽家に対して、どうしてくださいというのは言わないのが、このシリーズ(※)では前提としているので、空間があって、僕は映像をやるし、その空間の中で、身体を使って何かしてもらう。当然何回もやっていると、映像を作ったときに、こういう形で映像を流し、インタスターションをするので、こういう感じで動いてほしいというのは、自分の中にはある。本当はそれを言えば、事足りるのだけど、逆に言わなくて相手がどう入ってくるかという面白さとか楽しみもある。それをずっとやってきて、70回ぐらいやってきたので、そういったことも経験した上で、もう一度個人でやってみようと思っています。

 

瀧:場所とか空間、物・オブジェとかに、映像を投影する試みは、それ自体を異質なものに変容させます。物とか空間の読み替え、もしくは読み間違えなのかもしれないけど、どう読み間違えるのかってことを最近はやっているつもりです。それは、例えば、映画の技法とかデザインの手法などにおいても、こうあるべきみたいなルールがどんどん強くなっていることを感じて、そうではない読み方、見方をどうやって内側から作り出していくか、ということに関心があります。

西山:シングルチャンネルの作品を作りたいと思っていて、自分の中の映像の法則みたいなものを作り上げたいと思っています。映像と音声と言葉っていうものを別々に作ったものを、ひとつのシングルチャンネルとして見せるっていうことをしようかと思っています。その中ではいくつもの矛盾が同居する、ひとつの映像作品みたいなものが可能になるのではないかと思っています。

(聞き手:韓成南)

※「ヒグマ春夫の映像パラダイムシフト」は、ダンサー、ミュージシャン、詩人など様々なジャンルのアーティストとコラボレーションをしながら、映像表現の可能性を追求するイベント。明大前のキッド・アイラック・ホールをベースに、毎月1回開催され、2015年11月の時点で、合計71回のイベントが行われている。




ヒグマ春夫/HIGUMA Haruo(映像作家・美術家・パフォーマンスアーティスト)

映像が介在する表現「ヒグマ春夫の映像パラダイムシフト」を継続中。他に年一度のコラボレーション企画「ACKid」、「連鎖する日常/あるいは 非日常・展」がある。’90年度文化庁派遣芸術家在外研修員としてニューヨークに滞在その成果発表を’08年「DOMANI・明日」展を国立新美 術館。2002年「第5回岡本太郎記念芸術大賞-展」優秀賞。2004年 個展「水の記憶・ヒグマ春夫の映像試論」・川崎市岡本太郎美術館。2006年’09年 大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ。他にジャンルを横断したコラボレーションや映像パフォーマンスを国内外で展開している。
http://higuma.v333.ch


瀧健太郎/kentaro Taki(ヴィデオアーティスト)

1973年大阪生まれ。文化庁派遣芸術家研修員('02)、ポーラ美術振興財団の研修員('03)としてドイツでヴィデオ、メディア芸術について学ぶ。「アジアン アートビエンナーレ2009」(台湾国立美術館)、「Video Life」(2011, StPaulstGallery, NZ)、「黄金町バザール2011」にて屋外での映像投影、「Les Instant Video:50 ANS D’ARTS VIDEO」(2013, Marseille)でのヴィデオアート誕生50周年展などに参加、またヴィデオアート先駆者の証言を集めたドキュメンタリー「キカイデミルコト」(2011)など啓蒙活動も行なう。
http://takiscope.jp


西山修平/Shuhei Nishiyama(映像作家/Video Artist)

1976年神奈川県鎌倉市生まれ。立命館大学文学部にて美術批評を専攻。アヴァンギャルドシネマやヴィデオアートに影響を受け、1997年から映像制作を開始。映像というメディアそのものについての考察を通じて、映像化された現実世界の構造を変革する可能性を追求している。作品では、現実の世界をイメージとサウンドに分離し、再構成することにより、現実を映像の論理で思考し、再表象する。映像を用いて、シングルチャンネル、インスタレーション、パフォーマンスを制作。過去にフランス、ドイツ、アメリカ、ハンガリー、ブラジル、インドネシア、マレーシア、韓国などの多くの映像フェスティバルにて作品が上映されている。
http://www.shuhei2480.net


韓成南 Sung Nam HAN(Audio Visual Artist/ IAFT ディレクター)

スーパーリニアの概念のもと、映像×演劇×ダンスのアートパフォーマンスを上演→上映している。ソウル国際実験映画フェスティバル、ローザンヌ・アンダーグラウンド・フィルム&ミュージック・フェスティバル、デトモルド国際フィルムフェスティバル等での上映、ソウル国際ニューメディアフェスティバルにてメディア・アーティスト賞、マリックビル・コンテンポラリー・アートプライズでの受賞、Asia Anarchy Alliance(渋谷ワンダーサイト)でのオープニング・パフォーマンス、MORI YU GALLERYでのグループ展等、個展・グループ展も多数。国際展での発表・受賞、個展等多数。
http://jonart.net




「Visual Ray -Empathy or Antipathy-」
視線×光線 - 共感か反感か -

会期:2015年11月13日(金)
開場19:00/開演19:30
会場:渋谷アップリンク・ファクトリー
料金:前売2,000円/当日2,500円(ともに1ドリンク別)
予約方法:
[メール]info@i-a-f-t.net
[peatix]http://peatix.com/event/121425
作家:
瀧健太郎(ダンサー:飯森沙百合)
西山修平
ヒグマ春夫(ダンサー:小松睦、尾身美苗)

http://www.uplink.co.jp/event/2015/40773


IAFT15/16 Expanded Video Art Exhibition

3作家の新作映像インスタレーションやパフォーマンスの記録映像を展示

会期:2015年11月4日(水)~16日(月)
10:00~22:00
会場:渋谷アップリンク・ギャラリー
料金:無料
作家:瀧健太郎、西山修平、ヒグマ春夫

http://www.uplink.co.jp/gallery/2015/41205


「Interdisciplinary Art Festival Tokyo 15/16」(IAFT15/16)
「JAILBREAK -予見する人工物」
JAILBREAK -Artifacts Predict the Future-

会期:2016年3月31日(木)まで

公式サイト:http://i-a-f-t.net/


▼IAFT15/16 information

キーワード:

瀧健太郎 / 西山修平 / ヒグマ春夫


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