骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2015-10-20 17:36


3つの学生映画祭から受賞6作を上映「日本学生映画祭」VODよりも映画館のイベントへ!

トップレベルの学生映画が集結、「東京国際映画祭」の連携企画として10/23(金)開催
3つの学生映画祭から受賞6作を上映「日本学生映画祭」VODよりも映画館のイベントへ!
「第5回日本学生映画祭」上映作品『死亡動機』(監督:田中穂先)

日本で実施されている学生映画を対象にした3つの映画祭から選りすぐりの作品を上映する「第5回日本学生映画祭」が10月23日(金)、新宿バルト9で開催される。この映画祭は、10月22日(木)に開幕する「第28回東京国際映画祭」の連携企画として実施。webDICEでは、今映画祭の実行委員長を務める雨無麻友子(あまなしまゆこ)さんにその見どころや今の若者の映画との関わり方について聞いた。

多彩な学生映画6作を上映

「『日本学生映画祭』は2011年からスタートしました。日本で行われている学生を対象にした映画祭のなかでも、『京都国際学生映画祭』はその名の通り世界から作品が集まる映画祭であったり、『東京学生映画祭』は一番歴史のある学生映画祭で、多摩美術大学や東京造形大学からの応募が多く、著名な輩出監督も数多いなど、同じ学生映画祭でも作品の色が違うんです。そこで、それぞれの受賞作品を一緒に上映して多くの人に見てもらいたいという気持ちから、この『日本学生映画祭』は始まりました。2012年の第2回からは『TOHOシネマズ学生映画祭』も加わり、現在のような開催となりました」

雨無麻友子さん
「第5回日本学生映画祭」実行委員長の雨無麻友子さん

今年の「日本学生映画祭」では計6作品を上映。まず、海外作品が受賞する傾向にある「京都国際学生映画祭」で長編部門グランプリに輝いた近藤啓介、永田佳大、二宮健監督の『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』は「テンポがよく誰にでもお勧めできる映画」と雨無さんは太鼓判を押す。またオーストリアのパトリック・ヴォルラース監督『Ketchup Kid』は学生映画とは思えない画の深さと、いじめという日本と共通するテーマが描かれている。

田中穂先監督の『死亡動機』と谷阪萌瑚監督によるアニメーション作品『うわさのねこ』は「TOHOシネマズ学生映画祭」からの出品作。ともに、アート色が濃い傾向にある他2映画祭の作品に比べ、起承転結がしっかりつけられており完成度が高いのが特徴だという。

そして今年の「東京学生映画祭」アニメーション部門のグランプリを獲得した円香監督『GYRO』は「一回見ると忘れられないような王者の風格が漂うアート作品」、実写部門のグランプリである中村祐太郎監督の『雲の屑』は「その暴力描写も含めとにかく迫力があり、見た後に心に残る」と、数多くの学生映画に接してきた雨無さんは解説する。

制作者とお客さんの距離が近い

現在、青山学院大学3年の雨無さんは「日本学生映画祭」には第3回からスタッフとして参加。それまでは各映画祭関係者の寄り合いでスタッフィングしてきたが、今年度からは正式に「日本学生映画祭」としての実行委員を組織し、雨無さんはその委員長を任されている。そんな雨無さんが映画祭に携わりたいと思うようになったのは高校生のころだった。

「もともと映画が好きでした。高校生の頃に青山学院大学で実施されているコンペティション『青山フィルメイト』で学生映画を観たのがはじめてだったんですけど、『同年代でこんなの作れる人がいるんだ!』と感動しました。そして映画に携わりたいと思った時にまず入りやすかったのが映画祭のスタッフだったんです。映画を作っている人と喋れる機会なんてなかなかないですし、学生映画祭の盛り上がりも面白いなと思って、映画祭のスタッフを続けています」

今年度は「東京学生映画祭」では副代表を、「青山フィルメイト」では代表を務めた。特に「青山フィルメイト」は地盤のほとんどないところからスタートして作り上げた映画祭なだけに、運営や広報には苦労したという。それらの経験が活かされているのだろう、今回の日本学生映画祭のチケットの一次販売は例年よりも速いペースで完売となった。

「今回の映画祭のプロモーションとしては、『東京国際映画祭』と提携している公式感を出したいと考え、東京国際の学生応援団の方にも広報を手伝って頂きました。また、劇場に足を運んでチラシを配って、という草の根作戦での広報活動だけでなく、SNSを使っての広報活動も行っています。各映画祭にも協力して頂いて、審査員の方からのビデオメッセージも頂いたので、有効に活用したいです」

制作者とお客さんの距離が近いことは学生映画祭の大きな魅力の一つであると雨無さんは感じている。

「上映後は監督さんもロビーに出てくることも多いので、話を聞いたりサインをもらったりすることができます。そうした交流を楽しんでいるお客さんもいますね。作品について疑問に思ったことがあったりしてもその場ですぐに聞けますし、制作者の方とお客さんが直接話すことができるのは学生映画祭ならではだと思います」

第4回日本学生映画祭
2014年の「第4回日本学生映画祭」より、出品監督のトークの模様。左より、登り山智志監督、清水俊平監督、前野朋哉監督、ウエダアツシ監督(協力:ムービーバックパッカーズ)

自由なイベントをできるのはミニシアターの魅力

そうした映画祭の運営に関わる以外にも、雨無さんは多くの映画に関連したプロジェクトに積極的に参加。野外映画フェス「夜空と交差する森の映画祭」のスタッフや新宿バルト9でのアルバイト、映画関連サイトのライター、映画制作スタッフなども行っている。

「最近だと『予告犯』や『ビリギャル』のなどの商業映画の制作のお手伝いをさせて頂いたりしています。さらに、映画祭つながりでいろいろな監督と知り合えるので、自主制作映画の制作やプロデューサーなどもやっています。私自身は将来、映画のプロデューサーになりたいんです。プロデューサーを目指す道は難しいし、映画業界は狭き門ですが、映画祭の後って決まって交流会があるので、そこでのつながりがとても大事。会場で出会った人と将来何か一緒にできたらいいですねっていう話をしながら、いつか映画の制作現場で再び会えたらなと思っています」

同世代の20歳前後の若者の映画に対する興味は薄れているわけではないが、ビデオ・オン・デマンド・サービスなどの普及に伴い、映画館に足を運ぶ機会は減ってきている、と雨無さんは感じているという。

「DVDで観たり、huluなどのビデオ・オン・デマンドを利用している人はいるので、昔と比べて映画に関心のある若者が減っているというわけではなく、映画に触れる機会も少なくなってはいないと思います。ただ、映画を観るための選択肢が増えているから、映画体験をしにわざわざ映画館に行くっていうのが難しくなっているのではないでしょうか。デートスポットでもいいし友達と遊びに来るのでもいいし、映画館に行く癖をつけてくれることで、映画館へ足を運ぶことの敷居を下げられたら嬉しいですね」

そしてアート系の作品は学生の映画を上映するミニシアターについても、渋谷シネマライズの閉館が発表されるなどその数の減少が心配されているが、雨無さんは期待を寄せているという。

「大作映画は観る人は多いですが、ミニシアターにインディペンデント映画や学生映画を観に行く習慣のある人は、まだすごく少ないって思います。私はミニシアターに行くのがとても好きなので、そういう魅力にも辿りついて欲しいです。同じ映画でも、観る映画館の雰囲気によって違った印象になっておもしろいですからね。以前アップリンクでの『わたしはロランス』の学生限定ドレスコード付きの上映に行ったのですが、とても新しいイベントだと感じました。そういった自由なイベントをできるのはミニシアターならではですよね。それらをきっかけにミニシアターやインディペンデント映画に興味を持つ人が増えたら嬉しいです」

(取材・文:田中小春)



【関連記事】

大林宣彦監督も嫉妬した!東京学生映画祭受賞の中村祐太郎監督と山元環監督に聞く(2015-06-03 )
http://www.webdice.jp/dice/detail/4728/




日本学生映画祭

第5回日本学生映画祭
2015年10月23日(金)新宿バルト9 SCREEN2

16:40開場/17:00開演
前売チケットは近日再販予定、詳細は「東京国際映画祭」公式ページまで

http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=349


【上映作品】

『小村は何故、真顔で涙を流したのか』

『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』
監督:二宮健、近藤啓介、永田佳大
2014年/日本/カラー/63分
第17回京都国際学生映画祭・長編部門グランプリ


『Ketchup Kid』

『Ketchup Kid』
監督:パトリック・ボルラス
2013年/オーストリア/カラー/19分
第17回京都国際学生映画祭・短編部門グランプリ


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『死亡動機』
監督:田中穂先
2015年/日本/カラー/16分
第9回TOHOシネマズ学生映画祭・ショートフィルム部門グランプリ


『うわさのねこ』

『うわさのねこ』
監督:谷阪萌瑚
2015年/日本/カラー/6分
第9回TOHOシネマズ学生映画祭・ショートアニメーション部門グランプリ


『雲の屑』

『雲の屑』
監督:中村祐太郎
2015年/日本/カラー/92分
第27回東京学生映画祭・実写部門グランプリ


『GYRO』

『GYRO』
監督:円香
2014年/日本/カラー/7分
第27回東京学生映画祭・アニメーション部門グランプリ


映画祭公式サイト:
http://www.nitigakusai.info/
映画祭公式Facebook:
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▼「第5回日本学生映画祭」予告映像

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