(写真)「宇宙人解剖フィルム」を模倣してつくられた宇宙人の死体模型(ロズウェル・UFO博物館より)
日本で一番エッジなオカルトサイトとして高い人気を誇る『X51.ORG』の主宰者・佐藤健寿氏が、知られざるUFOの謎に迫るため2006年に北米視察を決行した。1947年UFO墜落事件であまりにも有名な「ロズウェル」、UFO開発の空軍基地として知られる「エリア51」、UFOが数多く目撃されるパワースポットの「セドナ」などUFOの聖地を巡り、不可解な現象を徹底調査する姿を映像に収めた。そのリアルな『X51.FILES』が昨年GyaO(ギャオ)で動画配信され、大きな話題を呼び、この度ついに完全DVDとして発表。しかも、日本UFO界の重鎮・矢追純一氏との対談映像も収録している。
今回の佐藤健寿氏のインタビューは、UFOの話だけにとどまらず、ネットを軸にした時代の流れ、メディアの実態などを聞く事ができた。
ネット時代だからこそ、現地に行く事の価値が上がっている
── 佐藤さんは『X51.ORG』というオカルトサイトを運営しながら、昨年は著書『X51.ORG THE ODYSSEY』を出版され、今回初めてのDVDを出されました。いま、発売されてどんな気持ちですか?
昨年GyaOで動画配信されたものなので、新しくつくった喜びというのはあまりないですね。ただ、サイトから書籍化というのはよくありますけど、DVDになるパターンはそんなにないので、単純に試みとしてはよかったと思います。
(写真)『X51.ORG』主宰の佐藤健寿氏
── 矢追純一さんとの対談が特典映像で入っているのも興味深いですね。矢追さんとは初対面だったんですか?
ええ。実はいろいろなところでニアミスはしていて。同じテレビ番組の中で、僕が素材を出して、矢追さんがその映像について話すとか、そういうのはありましたね。僕も意識的に、“いま会ったら損する”というので避けていたんですけど、今回の映像は矢追さんへのオマージュ的な部分が無きにしも非ずなので、ここら辺で1回会っておくのもいいかなと思って(笑)。面白い人ですし、ある種の天才ですね。対談をする前に、「ドキュメンタリーのしゃべり? バラエティーのしゃべり?」って聞かれましたよ(笑)
── やはり、矢追さんに影響を受けていますか?
そうですね。UFO研究家としての矢追さんの影響を受けたわけではないんですけど、ただ、80年代に矢追さんがプロデュースしていたUFO番組がありましたよね。僕は2003年からずっとサイトをやっていますが、最終的にはそういう番組をつくりたいと前から思っているんです。だから、そのモデルになるのは矢追さんだな、と。
── 映像の中で、佐藤さんは肩書きをUFO研究家ではなくがジャーナリストと名乗っていたのはなぜですか?
この業界は結局、胡散臭いと思うんですよ。UFO研究家やUFOジャーナリストと名乗るのもなんだか…。落合信彦さんという国際ジャーナリストがいて、僕の中で矢追さんと落合さんはほぼ同じライン上に並んでいる方なんですね。まだインターネットもなく、面白い情報がたくさんあった時代に、海外へ行っていろいろな情報を仕入れてきた方たちで。UFO研究家は他にいっぱいいるし、つまんないと思って、エンターテイナーとしてのノビー(落合信彦氏の愛称)をリスペクトしているという意味でジャーナリストとしました。でも実際には肩書きは所詮肩書きなので、何でもいいと思ってます。
── 本編に、空軍基地「エリア51」の入り口付近で警備の車が待機しているという不気味なシーンがありましたね。佐藤さんは平然としていましたが恐怖感はありませんでしたか?
僕は「エリア51」に行くのは2回目で、入り口のラインを越えなければ何もしてこないのはわかっているので別に平気でした。1年中撮影クルーがくる場所なので相手にしきれないというか、入り口のラインを越えない限りは許すという感じだと思います。ほんとに越えるとものすごく厳しくて、高い罰金を払わないといけない。
── 「エリア51」は表面的には軍事施設なんですよね?
多分、大部分は普通の軍事施設です。ただ、あの撮影のときもそうだったけど、施設の中から大きい白いバスが出てきて。ナンバープレートがなく、黒いガラスで中がまったく見えないという。普通のバスにすれば注目しないのに、匿名的なバスにするから目立つんですよね。「エリア51」で働いていた人に会った事がありますが、やっぱりみんな知らないと言ってましたね。施設内は広すぎるし、それぞれお互い何をやっているのか、名前さえも知らないらしいんですよ。あそこは表面上見る限りは軍事施設なんですけど、ただの軍事施設じゃない何かがある感じはします。
── そういった謎めいた部分に魅力を感じていると。
やっぱり「エリア51」は聖地なんです。聖地巡礼みたいなものですね。
── 一番の見どころはどこですか?
見どころとはちょっと違うかもしれないですけど、「エリア51」や「ロズウェル事件」などはネットに情報がたくさんあるんですよ。現地に行かなくてもネットでいくらでも話がでてくる。みんなそれを見て知った気になって、ロズウェル事件を信じる人もいれば、深く調べて嘘だと思う人もいる。
でも、「エリア51」や「ロズウェル事件」ぐらい知られている事でも、意外に現地に行ってみると違う。あるいは、現地に行くということは、「ググれば出てくる」「ググってなければ存在しない」(ググる=Googleで調べること)という最近のネット的な価値観に対するアンチテーゼみたいなところがあるかもしれません。ネットを長くやってきたからこそ、現地に行く事の貴重さ、ある意味贅沢だと思うんです。相対的に今、価値があがってるかもしれない。
ネットで世界のいろんな写真を見れる時代になって、珍しい場所や面白いところもたくさん見られるようになりましたが、それを見ただけで知った気になって、情報として完結しちゃうのは、なんか悲しいというか、語弊を承知で言えば、ある意味不幸な時代なんじゃないかとさえ思いますね。クリックひとつで世界を見た気になってしまうというか。
UFOはほんとうに無意味なのか
── 映像を見ていると一歩ひいたところで冷静な目で見られている感じがしたのですが、佐藤さん自身は超常現象やUFOはどれくらい信じているのですか?
僕は今回矢追さんと対談で話して、そこが一番共感できたんです。矢追さんも冷めてると言っていて、僕もたぶん同じですごく冷めていて。超常現象としてUFOが好きというよりも、トータルでみると社会現象的な側面もあるわけです。もしかすると、心理学の問題かもしれないし。どんな問題であったにせよ、トータルでみたときに他に例のない、20世紀特有の面白い何かだったと思うんですよね。幽霊もいまだに、アカデミックにほとんど語られないわけじゃないですか。でも、永遠に無視され続けるものなのかなぁと疑問に思うところがあって。そういう意味で僕は、“宇宙人って絶対来るよね”ということよりも、“ところでこれは何だろう?”っていう感じなんです。
── 佐藤さんの著書『X51.ORG THE ODYSSEY』で、UFOに対してフィフティ・フィフティ、半分信じて半分疑っているという半信半疑派と書かれていましたね。
正直に言うとそうなんですけど。自然体でどこまでやれるのかという気持ちもあるし、先輩たちをみているとUFO研究家と名乗ってあまり幸せそうな人はいないから(笑)。そういうふうにはならずに、自然な形でできないかなぁと思っています。
(写真)『X51.ORG』として初の単行本。過去数年間に渡って行った北米、南米、アジアなどの海外現地視察の結果を中心に、これまでの歩みを集大成としてまとめたもの
── UFOネタに飽きることはないですか?
飽きるというか、自分の中で流行り廃りは多少ありますけど。よく人から、「こういうのって無意味でいいよね」ってよく褒め言葉として言われるんです。でも、自分の中では無意味という感覚もなくて、ほんとに無意味なのかなぁって。
無意味で言えば、スポーツや経済にしても、大げさな話だけど等しく無意味だと思うんです。でも、UFOは米軍がエネルギーを費やしていたり、人間に影響しているものという意味では、そこまで無意味ではないかなぁと。芸術もそうですよね。例えば、アート映画は生活に必要なものではなかったりするわけです。だけど人間って、古代の文明を発掘したときに、その文明の進歩具合を測るのは、実は芸術の発展具合だったりしますよね。想像力の問題というか。いくら住居とかがダメでも、芸術が高度に発達していると、何となくこの文明は高度な精神文明を持っていたんじゃないかということになりますよね。そこは変なパラドックスだなと思っていて。
ネタの神秘性が維持できない、物語のない時代
── 最近はオカルト番組を見なくなりましたが、時代的な流れなのでしょうか。
いろいろな要因があるんですけど、ひとつはテレビ局の規制ですよね。オウム事件以降、オカルト的なものはテレビではタブーになってしまった。最近ではまたほとぼりが覚めたのか、ネットで豊富にネタが集まるからなのか(笑)、また復活してきたようですけど。あとは、ネタがない。例えば、YouTubeの人気動画をネタにしているだけの番組もあります。矢追さんの時代みたいに、2 時間以上でもつネタがない。今は物語のない時代ですよね。
── 無意味な事に一生懸命やってる人があまりいなくなったっていうことでしょうか。
そうですね。テレビの企画会議なんかに出ると常に鉄板って言葉が出てくるんですけど、業界全体がものすごく委縮している感じがすごくある。つまり、みんなが無難になっているから、絶対はずさないものしかやらないんです。
オカルトというのは、オウムの事件でネガティブな印象になってしまった。ほんとはUFOとオウムは直接的にはほとんど関係ないけど、そういうのをテレビで堂々とやるのはよくないとみんな思ってしまったわけです。でも一方で、江原啓之みたいな霊能者がでてきてゴールデン枠でイタコみたいなことをやってるわけで、要はポリシーの問題ではなく、見せ方の問題でしかないんですよね。でも、やっぱり一番の原因は、大きい物語がなくなっちゃったということですかね。ポストモダンとよく言われていますけど。
── 具体的にポストモダンとは?
1995 年に「宇宙人解剖フィルム」という、死んだ宇宙人が解剖されていく様子が映されている映像が世界公開されたんです。アメリカはフォックス、日本ではフジテレビが4000万くらいで買い取って。その後10年間ほどずっと真偽を巡ってもめてたんです。だけど、2006年に出版された『UFOとポストモダン』(木原善彦著/平凡社)という本で、この宇宙人の死体をもって、まさにUFOの時代は自ら死亡宣言をしたということが書かれていて、なるほどなぁって思ったんです。確かにこれ以降、大ネタはないんですね。
95年は、まさにインターネットが始まった年です。インターネットの時代になって嘘が通じなくなったということがあるんですよ。矢追さんの時代だと、エリア51という場所で UFOをつくってるとテレビで流れたら、誰もそれを確認しようとはならないわけです。今は、誰かがそういうことを言ったら、ネットで調べてある程度のことがわかってしまう。そういうネタの神秘性が維持できないんです。
最近は逆に、YouTubeなどに素人からの投稿でUFOの写真や動画が増えているんですよ。最近アメリカでUFOが鮮明に写っている写真が話題になって、これは久しぶりにビッグウェーブだと思ったんですけど、それさえあまり話題にならない。やっぱり時代としても冷めてるということです。これは、こういうジャンルに限った事ではなく、聖火リレーにしてもそうですけど、一方的なアジテーションが通じない時代なんかじゃないかと。いいことでもあるし、ちょっとつまんないことでもある。インターネットが一番大きいのかなと思いますよ。
── ひとつのカルチャーとして成り立たないで、すぐに終わってしまうという。
断片化していて、極小的には盛り上がっているんですけど、大きい流れになることはないですし。この先、一世を風靡するようなUFOは出てこないんじゃないかと思います。それこそ宇宙人が直接地球に降り立つくらいじゃないと。
今はマウスよりも足を使って色々見たい
── もともと、なぜUFOとかに興味を持ち始めたんですか?
その辺は普通で、男の子だったら誰でもUFOとか宇宙人が好きじゃないですか。単純に矢追さんの番組を見ていて影響されて。矢追さんは満州生まれで、そのとき相当辛い経験をしたそうなんです。だから、今後は人の100倍楽しい事をして100倍楽に生きていこうと思ったらしいんですね。僕は辛い体験はしていないんですけど、これ以上面白い事はないんじゃないかと思うほどUFOなどの超常現象に興味がありますね。
── 『X51.ORG』は今までトータルで2億4000万アクセス(!)と、想像を超えるアクセス数を誇っていますが、サイトを立ち上げたきっかけは何ですか?
大学生の頃にちょうどウェブが流行り始めたんです。まだブログという言葉がなかったときに、海外でちょっとずつブログが話題になっていたんですね。で、新しいブログ形式のシステムでつくってみようと思ってコンテンツを考えたときに、UFOとか超常現象などの話が一番好きだったから書き始めたんです。
(写真)『X51.ORG』トップページ
── ウェブへの関心も大きかったんですね。
海外でのUFO目撃談がリアルタイムでCNNのサイトで見られるとなったら、すごく面白くて。それをそのままスクラップしないともったいないなと。これは、いままで誰もできない事ができるんじゃないかなと思ったんです。海外では、ブラックホールが消えたとか、謎の光をみたとか変な科学のニュースが毎回ひとつはあるんですよ。今の近代オカルトの父と言われているチャールズ・フォートという有名な人がいて、その人は1920年代にロンドンとかニューヨークの図書館に通って、ひたすら新聞に目を通して、世界中で起きた変な事件をスクラップしていたんです。それと同じ事がインターネットでできると思った。
フォートはオカルトな人ですけど、僕の場合は、タイで浮気をした旦那が奥さんにチンコを切られたとか、そういうニュースも興味深いと思っていて。そこが自分の中ではちょっと差別化しているところです。あとは、元々モンティ・パイソンが好きなのもあって、最初のうちは、サイトの内容はフォートとモンティ・パイソンの融合みたいな感じを目指していたかもしれません。今はもうちょっと裾野が広がっているので、何のサイトだと言われても僕もよくわからないんですけど。
── 最近『X51.ORG』が、あまり更新がされていないのはなぜですか?
いろいろ理由はありますが、ひとつは、もともと自分は番組をつくろうと思っていたんですね。ところが、地上波のオカルト番組が、僕のサイトをがっちりウォッチしていて情報をもっていくわけですよ。サイトを更新したら、そのネタを翌々週の番組で流すとか。実際に関係者に見せてもらったんですが、企画書がまんまサイトのプリントアウトだったりするんです。どの番組とは言いませんが、そういうアンビリーバボーなことが(笑)、冗談じゃなく本当にあるんです。
もうひとつは雑誌の取材や個人的な目的でずっと海外視察を続けているために実際的にあまり時間がないということが大きいです。ネットの状況も僕がサイトをはじめた頃に比べて、だいぶ変わってきた感じがあるので、いまはちょっと静観というか、今はマウスよりも足を使って色々見といた方がいいんじゃないかなと思ってます。それこそネットは歳をとっても、足が動かなくなっても、いつでも見られますから。
── きっと、Yahooからニュースをひっぱってくるという軽い感覚なんでしょうね。
自分としては、それに対して権利を主張するような事はできないと思っていますが、ただ悔しいわけですよね。僕も僕で番組をつくりたいと思っているから。ネタだけもっていかれて、僕のサイトの文章の流れのまま番組を作られたりすると、僕が中に入ればもっとできることがあるのにと思うんです。だから、ここ1年ずっとテレビとか紙媒体の方で活動してます。テレビにせよ、雑誌にせよ、外側からつまんないとか文句を言うのではなく、自分が中に入っていって面白いものを作りたいという気持ちがあります。
これからはネットの時代だとかよく言われますが、まだまだテレビとか雑誌でないとできない事は予算的な意味でも、パブリシティ的な意味でも多々ありますし。そのために実際いろいろな企画を立てています。更新すると、他にもっていかれるというところでジレンマなんですよね。次のステップとして、サイトと紙媒体を連動してなにかをやるとか、プラスアルファがほしいと考えているところです。
(インタビュー・文:牧智美/構成:山口生人)
■佐藤健寿PROFILE
武蔵野美術大学卒業後、単身渡米。2003年5月よりウェブサイト『X51.ORG』を開始。以降、サイト設計、デザイン、運営、ライティングほか、すべて一人でおこなっている。2004年にはBlog of the Yeah!大賞ほか、様々なウェブアワードを受賞。ウェブでの活動を進める一方で、2003年から2007年にかけ毎年3ヶ月以上、世界各地を単独で取材(南米、インド、チベット、北米、ヒマラヤ他)。近年はネットに留まらず、TV、出版へとその活動の幅を広げている。最近は、旅雑誌『TRANSIT (トランジット)』(講談社MOOK)の1号にて「エキセントリックチャイナ」「三国志の世界」を執筆。現在、同誌の企画で南米へ取材中。
『X51.ORG』ホームページ
『TRANSIT』ホームページ
『X51 FILES SEASON1:UFO in USA』
UFO、超常現象、UMA、キメラ、オーパーツなどあらゆる現代の謎に迫る姿をリアリティあふれる映像で構築した「X51.FILES」より1stシーズン~アメリカ UFO編~を完全DVD化。未公開映像を含むエリア51、ロズウェル等の視察に加え、特典映像として日本UFO界の重鎮・矢追純一氏との対談も収録。初回限定盤には本作用に制作されたブックレットと初公開写真が付属します。
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