映画『遺伝子組み換えルーレット』より
クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は、遺伝子組み換え作物の健康に与える影響をテーマにしたドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』日本語版製作を支援するプロジェクトを紹介する。
NGO法人・アジア太平洋資料センター(PARC)がプレゼンターを務める今回のプロジェクトでは、今作の日本語版DVD発売のために、130万円を目標に2015年10月30日23:59までクラウドファンディングを行なう。既に版権交渉は終了しており、集まった資金は、翻訳、字幕つけの作業、商品化のために使用される。
このクラウドファンディングでは、3千円から15万円までの支援を受付中。すべての金額に「完成記念上映会ご招待」と「エンドロールにお名前記載」が進呈されるほか、1万円以上で「完成作品DVD 1枚プレゼント」、3万円ではさらに「本作品の上映会1回分のイベント上映可能な権利」と「雑誌『オルタ』1年間定期購読プレゼント」、5万円で「作品パッケージ、フライヤーにお名前記載」、そして15万円で「本作品の上映が3年間何回でも可能な権利」と、映画の自主上映イベントや、遺伝子組み換え食品の問題についてのシンポジウム開催を考えている方には最適の特典が用意されている。
webDICEでは、このプロジェクトを企画する、生産と消費の場をつなぐ交易を通じてオルタナティブな社会のしくみを作る活動を行うオルター・トレード・ジャパン(ATJ)の政策室室長・印鑰智哉(いんやくともや)さんからのメッセージを紹介する。
詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。
アメリカの遺伝子組み換え作物の健康被害の現状を描く
映画『遺伝子組み換えルーレット』
遺伝子組み換え作物の専門家として国際的にも著名なジェフリー・M・スミス監督によるドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』は20012年アメリカで製作され、遺伝子組み換えによる健康被害を科学的に立証する内容が大きな話題となった。今作は、①遺伝子組み換え作物の健康に与える影響に焦点を当てたものであること ②政府の規制機関で関わっていた研究者の証言、医療関係者など専門分野の多数の証言によって構成されたものであること ③子どもの健康被害に直面した親、医療関係者などの証言、遺伝子組み換え飼料による家畜の健康問題、そして非遺伝子組み換えに切り替えた場合の改善など、遺伝子組み換えの危険のみならず、その具体的解決策まで示唆する内容となっていること を特徴としている。
映画『遺伝子組み換えルーレット』より、ジェフリー・M・スミス監督
本作品の発表以降、その内容を裏付ける研究レポートも多数発表。WHOの外部研究機関である国際がん研究機関(IARC)も今年2015年3月20日に、モンサントの農薬グリホサートの発ガン性を認めている(動物実験での発ガン性が確実であり、人への発ガン性に関してはデータ不足である2Aのカテゴリー認定)。
映画『遺伝子組み換えルーレット』より
映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』公開時に掲載した白井和宏さん(市民セクター政策機構・専務理事)によるトーク・レポートで紹介したように、遺伝子組み換えに関する日本の食品表示制度には大きな抜け穴があり、対象となるのは、納豆、豆腐、味噌など30種類の食品に原料に使用された場合に限られる上、重量の5パーセント以下であれば表示しなくてもよいため、実際には様々な遺伝子組み換え原料が相当、含まれていても表示されない。そしてアメリカから輸入したトウモロコシや大豆、砂糖大根を使用しているため、遺伝子組み換えの可能性がかなり高いのですが、「遺伝子組み換え原料が含まれています」とは記載されない。
そのため日本の消費者も知らない間に遺伝子組み換え大豆やトウモロコシを直接間接に食べているのが現実であり、アメリカで起きているこうした健康への変化は日本でも起きる、あるいはすでに起きている可能性がある。
私たちの食生活に何が起こっているのか。その現実に気づき、一緒に考え、声をあげるための材料として観てもらいたいと、今作の日本語版製作は進められる。
今回の日本語版製作プロジェクトを行うにあたり、作品から、アメリカで人気ブランドの粉ミルクから検出された遺伝子組み換えの割合について説明するシーンが公開されている(字幕は仮の状態です)。
▼映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』からのワンシーン
米国のほとんどの粉ミルクが牛成長ホルモン注入のものと、遺伝子組み換えコーン由来の原料で作られています。独立した研究所の試験で主要な4つの粉ミルクから、相当な量の遺伝子組み換え大豆成分が検出されました。シミラック・ソーイが42%、ガーバー・グッド・スタートが48%、エンファミル・プロソビーが49%、ウォールマート・ソーイが66%。米国政府は200万の新生児に無料の粉ミルクを提供します。しかし、提供するのは遺伝子組み換えの粉ミルクだけです。
印鑰智哉(オルタートレード・ジャパン:ATJ)さん
「日本の粉ミルクも遺伝子組み換え原料が検出される可能性がある」
監督のジェフリー・M・スミス氏は遺伝子組み換え問題を批判する米国のオピニオンリーダーとして長く活躍しており、非営利団体Institute for Responsible Technology(責任ある技術研究所)を主宰しています。
日本でも『偽りの種子-遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』が出版されており、日本でも講演されたことがあります。最近ではモンサントを批判するアルバム『ザ・モンサント・イヤーズ』をリリースしたニール・ヤングの反モンサント・コンサートツアーに遺伝子組み換え問題の講演者として同行するなど、米国で遺伝子組み換え反対を語る上でキーとなる活動をしています。
ニール・ヤングとジェフリー・M・スミス監督によるツアーのフライヤー
このドキュメンタリー映画ではこれまで語られてこなかった医学者、健康問題の専門家、さまざまな疾患を持つ子の親、獣医、家畜の健康問題に詳しいジャーナリストが登場し、遺伝子組み換え食品によって、人びとや家畜にどんな健康の異変が起きているのか、どのように解決できるのかが語られています。
米国では胃腸の疾患、アレルギー、炎症性疾患、不妊、ガン、自閉症など多岐にわたる疾患に苦しむ人がこの約20年間にわたり急激に増加しました。特に子どもたちの健康に対する懸念は急激に上昇しています。
この20年間、何が変わったのでしょうか? 1996年に商業的大規模栽培が始まった遺伝子組み換え作物がこの変化を引き起こしている可能性について科学的な調査を元にしたさまざまなストーリーが語られています。
現役の医学者、医療関係者は職を奪われるのでなかなか声が出せない現実があります。しかし、それでも出てきたこれだけの証言は衝撃的なものです。
そして、食を変えることで何が起きたか? 子どもの健康を取り戻せた親たちの涙と笑顔、そして農民の決意をぜひ見ていただきたいと思います。
今作では、アメリカで人気ブランドの粉ミルクから検出された遺伝子組み換えの割合について説明するシーンがありますが、日本で発売されている粉ミルクについては、国内メーカーは基本的に非遺伝子組み換えの原料を使うというポリシーをかなり前ですが、確認しています(生協などからの話)。ただし、その原料は多くが米国産とかんがえられるので検査してみたら検出される可能性はあるかもしれません。調達が毎年難しくなっている(高くなっている)、はずなので、実際に製造会社に質問状を送るなど考えた方がいいかもしれません。
映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』
監督:ジェフリー・M・スミス
原題:Genetic Roulette – The Gamble of Our Lives
2012年/アメリカ/85分
MotionGallery日本語版製作プロジェクトページ:
https://motion-gallery.net/projects/parc201507
『遺伝子組み換えルーレット』公式サイト:
http://geneticroulette.net/
▼映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』海外版予告編
『偽りの種子―遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』
著:ジェフリー・M・スミス
翻訳:野村有美子、丸田素子
1,728円(税込)
家の光協会
Amazonでの購入は下記より
http://www.amazon.co.jp/dp/425954666X/webdice-22
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映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』
渋谷アップリンク他全国順次公開
監督:ジェレミー・セイファート
出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリー二、ヴァンダナ・シヴァ
配給:アップリンク
2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/カラー/アメリカ、ハイチ、ノルウェー
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/gmo/