骰子の眼

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東京都 江東区

2015-07-31 19:38


変更なく展示続行決定、会田誠さんと東京都現代美術館に「撤去要請」問題について聞いてみた

会田誠さん「これでやっと静かに作品を鑑賞してもらえるかと思い、ひとまず安心しました」
変更なく展示続行決定、会田誠さんと東京都現代美術館に「撤去要請」問題について聞いてみた
東京都現代美術館で開催中の企画展『おとなもこどもも考える ここはだれの場所?』より、会田家の作品「檄」

美術家の会田誠さんが東京都現代美術館で開催中の企画展『おとなもこどもも考える ここはだれの場所?』に展示中の作品について、7月25日、自身のTumblrで美術館側から「撤去要請」を受けたと発表した。

会田誠さんは、妻の現代美術家・岡田裕子さん、中学二年生の息子と「会田家」名義で作品を発表していた。会田さんはTumblrのなかで、長い白い布に毛筆で「文部科学省に物申す」などの文章が書かれた「檄」という作品と、昨年制作した「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」というビデオ作品について、美術館から「撤去要請」があったと明かしている。

webDICEではこの問題に関し、会田さんと東京都現代美術館事業推進課長・北條光昭さんに7月30日にコメントを求めた(美術館を通してチーフキュレーター長谷川祐子さんにも依頼したが、長谷川さんは出張中とのことでコメントはもらえなかった)。

その後、本日7月31日、会田さんとチーフキュレーターの長谷川祐子さんと企画係長の加藤弘子さんを交えた話し合いが行われ、会田さんの作品は変更なく展示されることが決定した。そのため、編集部では会田さんと北條さんに再度コメントをもらった。

会田家 檄 2015 撮影:宮島径 Courtesy Mizuma Art Gallery
会田家「檄」2015 撮影:宮島径 Courtesy Mizuma Art Gallery
会田誠 国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ 2014 ビデオ(26分07秒) © AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery
会田誠「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」2014 ビデオ(26分07秒) © AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

東京都現代美術館 事業推進課長・北條光昭さんのコメント

■会田さんの作品の展示について

現時点ではそのまま展示を続けます。会田さんにはあくまでご相談させていただいている状況なので、その調整が計れない限りは一方的に改変などは行いません。

■会田さんのTumblrでの発表までの経緯

「檄」のメインのビジュアルに関しては、現場で制作されていたこともあって、7月17日のレセプションの数日前に設置されました。その後の内覧会以降、関係職員が見て「ちょっと子供には難しいのではないか、もう少し親しみやすいかたちにならないか」という意見がありましたが、開催が迫っていることもあり、今から直すというのは難しいので、会田さんには展示が開けてからご相談しましょう、ということになりました。

18日に初日を迎えたあと、19日にご覧になった友の会の方から代表にクレームの電話がありました。「書いてある内容を公的機関である美術館が推奨するのか」という内容でした。これに対しては「会田さんご家族の会話がこうしたスタイルで表記されているもので、あくまで作品の一部です。決して美術館が『文部省に物を申す』ということではありません」と説明し、ご納得いただきました。

その後、23日と24日に長谷川(祐子/チーフキュレーター)と企画係長の加藤弘子と担当キュレーター藪前知子、そして会田さんの4人で話し合いが行われた際に、話の流れのなかで「どれくらいクレームがあったのですか」と聞かれ、1件電話がありましたが、その場で説明しご納得いただいたことを申し上げたそうです。ですので、そのクレームがきっかけで話し合いの場を設けた、というわけではありません。

■話し合いのなかで「撤去要請」という言葉は出たのか

2つの作品を含め、今回の展示全体がもう少し分かりやすくならないかという話のなかで、選択肢がいくつもありました。私たちも説明が悪かったと思うところもありますが、何かを強引に撤収するということではなく、「代りの案はありますか」というお願いでした。容認いただけないようであれば、現在のようにそのまま展示するつもりでした。

■チーフキュレーター長谷川祐子さんの説明について

長谷川は現在出張中のため不在なので、公式のコメントについて現在は未定ですが、これだけ世間を騒がせてしまっているので、何かしらか対外的にお知らせすることはあると思います。

【7月31日付の追加回答】
■31日の話し合いはどんな内容だったのか

「撤去」という言葉がひとり歩きしてしまっているため、そういう方法はないことを前提にさせてください、と確認のお話をしました。会田さんは「了承しました」というお返事でした。


東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催中の企画展『おとなもこどもも考える ここはだれの場所?』より、会田家の作品「檄」
東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催中の企画展『おとなもこどもも考える ここはだれの場所?』より

会田誠さんのコメント

■美術館側の「撤去の要請ではなく、相談している状況」という見解について

「会田家」のスペースを担当した藪前さんと我々、それに対する長谷川さんとの会話のなかで、「撤去」という言葉は何度も使われました。しかし、問答無用に「撤去」を実行するということではないので、それを「相談」というならそうかもしれません。そこは会話なのでなかなかうまくいえません。長谷川さんは──正確な再現ではないですが──「私は撤去すべきだと思います。撤去すべきだと思わないんですか?」と言いました。それに対し僕は、理由とともに「撤去すべきだとは思いません」と答えました。そうした押し問答が2日間にわたってありました。

会田誠さん
会田誠さん

もちろん僕は作ったものは見せたいですし、なんとか続けられるようにしたいので「気に食わない文字があるなら、そこを墨で塗りつぶすことも相談に応じますが、それでいいんですか?」と提案しました。僕としても抵抗の姿が顕在化することにもなるので、場合によってはその方法も考えました。しかし、美術館側はいかにも検閲が入ったように見えるので好ましくないと思ったようで、その案には賛成しませんでした。

また美術館からは、書かれている内容を柔らかくしてワープロで打ちなおしてプリントアウトして壁に掲示するという案ならやぶさかではない、「あなたの言論を封殺するつもりではなく、毛筆の雰囲気がこの展示でふさわしくない」というようなことも言われました。僕はこのスタイルにこそやりたかった意義があると思っていたので、「撤去なら撤去でいいですが、その見返りはくると思います。僕は自分の主張をネットに公表します」と言いました。

最終的に、この問題は長谷川さんの考えと僕を代表とする「会田家」の意見の相違なので、「ここは民意を問いましょう」ということになり、美術館側から「声明を出します」という話がありました。2日間の話し合いは、何をするともなく解散になりました。翌日会場に行くとき、幕がなくなっているという覚悟もありましたが、展示はまだされていました。約束の通り自分の考えは表明しておこうと、25日にTumblrに事実を包み隠さず書いて発表し、長谷川さんからの言葉を待ちましたが、いまだにありません。

■話し合いはまだ美術館側と続いているという状況なのか

ファシズム国家のようにあちらが撤去を実行していないことは見てのとおりです。しかし、こちらの主観的には、脅されたけれど脅しには屈せず、膠着状態のまま現在に至る、という認識です。

【7月31日付の追加回答】
■31日の話し合いをふまえての心境

もちろんスキャンダル狙いなわけではなかったので、これでやっと静かに作品を鑑賞してもらえるかと思い、ひとまず安心しました。

▼会田誠さんのTumblrより
会田誠

(取材・文:駒井憲嗣)



『おとなもこどもも考える ここはだれの場所?』
2015年10月12日(月・祝)まで開催中
東京都現代美術館 企画展示室1F

アーティスト:
ヨーガン レール
はじまるよ、びじゅつかん(おかざき乾じろ 策)
会田家
アルフレド&イザベル・アキリザン

開館時間:10:00~18:00
*2015年7~9月の金曜日は21:00まで
*入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(2015年9月21日、10月12日は開館)、9月24日

公式サイト:
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/whoseplaceisithis.html

キーワード:

会田誠


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