台湾原住民アミ族出身のスミン(Suming)の歌声は芯のある力強さを持ちながらも、その感触はとても温かくてやわらかい。
台湾の先住民族の血を引く若者たちが集まり結成されたバンド『Totem/トーテム』の中心人物である音楽家スミンが6月に来日し、渋谷アップリンクなど都内各所でライブを行う。また、台湾在住で、現地のカルチャーを自著やブログで発信している作家・青木由香さん(『奇怪ねー』『台湾ニイハオノート』出版)も一緒に来日し、映像とトークで台湾の今を紹介する。つまり、ミュージシャンと作家がギターと筆を持って繰り広げる「おもしろオカシイ台湾バナシとイケテルアミ族の音楽ナイト」。
今回日本に来るのは2回目というスミンに、アミ族や関わってきた音楽などについて話を聞いた。
── スミンが生まれたアミ族の村は、どんな村で、どんな人たちが暮らしていますか?
僕が生まれた村は、台湾の東の台湾先住民のアミ族の部落で、太平洋に面した場所です。アミ族は海洋民族で平和を好み、泳ぐのが好きで、海産物をつかまえ、歌うことと冗談が好きな人が多い村です。
── 音楽で台湾の先住民文化を紹介しているそうですが、先住民族の魅力を教えてください。
先住民族は台湾のこの土地と一番長くつき合っている民族。先住民がこの土地を守り続け、この土地が先住民を守り続けている。コレが原住民の魅力です。
── スミンの曲には、さまざまな要素が取り入れられていますね。
僕が書く曲はいろんな種類があって、フォーク、ロック、レゲエ、ボサノバ、カントリーなど。でも、一つ特別なのは先住民の音楽。伝統的な民謡以外にも、自分で今風にアレンジした先住民音楽の創作もします。
── たくさんの楽器を操ることができるそうですが、主にどのような楽器を使われていますか?
ピアノ、ギター、アコーディオン、笛等を主に使います。(※青木由香さん曰く、「フルートも和太鼓もドラムもハーモニカもできますよ。笛は、伝統的な笛から普通のリコーダーなど色々吹けます」とのこと)
小さい頃から教会で育ち、宣教師の奥さんが僕に教会で歌う歌をピアノで教えてくれました。小学校では楽団に入って、触った事のないいろんな楽器を試す事が楽しくて仕方ありませんでした。だから、いろんな楽器が演奏できるんです。でもほとんど独学。専門の先生がいたわけじゃありません。兵役の前にギターを始めてから、今、一番よく使う楽器はギターになっています。
── お客さんの反応はどんな感じですか?
ん~、ステージの上からお客さんを見たときみんな楽しそうな表情をしてるけど…特に、速いテンポの作品のときね。最近スローテンポな曲もよく発表するようなって、みんなに違った感じを与えてると想います。先住民族系の作品が僕の音楽ってイメージが、みんなには強いみたい。僕の部落の若い人たちですら、僕が今風に書いた先住民の曲が好きで、良く唱ってくれます。すごく嬉しい事です。
── 2005年に台湾最大のバンドイベントで、スミンのバンド『Totem/トーテム』が優勝してCDデビューを果たしたそうですね。
『Totem/トーテム』は、音楽好きの友達が集まってできたバンドなんだけど、みんなバイトを犠牲にしてバンドの練習をしていました。お金もなく有名でもなかったけど、それでもみんな音楽が好きで、いろんなバンドコンテストやイベントに参加して。そのときに今の会社にスカウトされてアルバムデビューをしたんです。
── 音楽の魅力は何だと思いますか?
音楽の魅力。言える事は一生音楽が好きで、それがなぜだか分からないってことかな、ははは。
── 今回一緒にイベントに出演する青木由香さんとは、どこで知り合ったのですか?
青木さんが僕たちのバンドをインタビューして、それから彼女が良くライブに来るようになって友達になりました。今回初めて一緒にライブをします。なんか、すごい特別。こんな経験ほかにはないし、青木さんも頑張ってますよ。だって、作家がライブハウスに出演するなんてないでしょ。あおきサンも挑戦してみようという気になってくれているので、僕もこんな事ができて光栄ですよ。
(写真右)日本に台湾を紹介している“台湾一人観光局長”の青木由香さん
── 来日するのはどんな経緯で?
始まりは、青木さんが僕にたくさん日本の友達を紹介してくれて、僕に歌を披露する機会をくれました。この中に何人かすごい人がいて、青木さんが「こんなにすごい人がスミンの音楽を気に入ったって事は、スミンの作品はすごいって事だよ」とずーっと言い続け、どんどん僕をみんなに推薦してくれたことがあって、今回のイベントができる事につながったんです。日本には昨年の11月に1回行った事があります。今回は2回目になります。
── 6月7日(土)のアップリンクではどんなライブを考えていますか?
青木由香と僕と、僕の一番小さい従兄弟で、台湾を日本に紹介します。僕の部分は、自分の作った曲、先住民の創作曲。それと原住民の楽器を持っていって、かわいいスペシャルゲストの従兄弟と一緒に披露します。更に、あおきサンと一緒に作った曲も披露します。
── 音楽で何を伝えたいですか?
音楽を使って楽しい気分、努力するとこ、暮らして行く事、先住民族の事などをみんなと分け合いたい。
── 将来の夢を教えてください。
僕の音楽をたくさんの人に分かち合ってもらい、音楽方面で成功したいです。そして、先住民の仲間を助け、村長になって、僕の育った場所に貢献したい。
── 最後に、青木由香さんから見たスミンの魅力を教えてください。
青木由香:純朴で、気どらない田舎っぺ。だけど、ものすごい才能があって努力家で守るべきものに対する意志の固さと勇気、熱意が有るひと。目がキラキラしてるんで、それは会ってみればすぐに分かります。でも、楽しい事があると時間や約束を奇麗に忘れちゃうのが玉に傷(笑)。
ありがとうございました。音と映像とトークで台湾カルチャーの魅力をたっぷりおすそ分けしてくれる「筆いっぽん ギターいっぽん」乞うご期待!
(通訳:青木由香/インタビュー・文:牧智美)
「筆いっぽん ギターいっぽん」5/15in台湾『筆いっぽん ギターいっぽん』
~おもしろオカシイ台湾バナシとイケテルアミ族の音楽ナイト~
日時:6月7日(土) 開場19:00/開演19:30
会場:アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)[地図を表示]
料金:2,000円(1ドリンク別)
※定員に達したため予約は締め切りました。当日券は若干配布する予定となっております。
★他、ライブ公演日
6月9日(月) 非常口(新宿)
6月11日(水) mona Records(下北沢)
6月16日(月) 多作(渋谷)
※ライブに関する詳細は、青木由香ブログ「台湾一人観光局」をご覧ください。