映画『海へ行こう!』より、主人公の少年トマーシュ(ペーター・シムチャク)
現在、東京・国立近代美術館フィルムセンターにて開催されている映画祭「EUフィルムデーズ2015」で、6月7日(日)チェコ映画『海へ行こう!』が上映、イジ―・マードル監督が登壇した。
「EUフィルムデーズ」は、欧州連合(EU)加盟国大使館・文化機関が提供する各国の作品を一堂に上映する映画祭。今回上映されたチェコ映画『海へ行こう!』のイジ―・マードル監督は、1986年10月生まれで現在28歳。2004年『Snowboarďáci(英題:Snowboarders)』で俳優デビューし、青春スターの座を獲得。2008年には、ミハエラ・パヴラートヴァー監督の『Deti noci(英題:Night Owl)』でカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した。チェコでは実力派のホープで、広く知られた俳優である。26歳の時に監督第一作として完成させたのが、この『海へ行こう!』だ。
映画『海へ行こう!』イジ―・マードル監督
『海へ行こう!』は、映画監督に憧れる11歳のトマーシュを通して、自分と家族の暮らし、そしてその背後に潜む出来事を描いた内容で、チェコ映画批評家協会ニューカマー賞を受賞している。満席となったこの日の上映でイジ―・マードル監督は、今作を「親からもらったニコンのカメラで11歳の少年が日常を撮り、自らナレーションする」という設定にしたきっかけについて、次のように述べた。
「小さな子供たちがスマホなどで撮影し編集までしていることに気が付き、誰でもが、自分で撮れる時代になったと思い、子どもから見たストーリーを考えました。数百年前、紙と鉛筆を持ったように、スマホを持ち、動画を通して自己表現できる時代の到来で、ビデオ日記を撮るような感じです」
映画『海へ行こう!』より
マードル監督は、お互いを撮影し合う少年トマーシュとハリスの配役、そして彼らへの演出について、俳優としてキャリアをスタートさせた自身と重ねあわせたという。
「主人公のトマーシュと、友達のハリス役の少年を見つけるのは困難で、スポンサーが決まっても未定だった程です。最終的にオーディションで決めたのですが、二人とも集中力があり、いい素質の持ち主でした。トマーシュ役のペーター・シムチャクは負けず嫌いで素質もあり、『わからないことは何でも聞くように』と言ったところ『ありがとう。そうするよ。でも恥をかきたくないから他の人のいないところで聞く』と。ですから、僕たちはしょっちゅう顔を寄せ合って、ひそひそと話していました。それを見て、スタッフは内緒話をしている、ときっと思っていたことでしょうね。彼を見ていて、僕のデビューのころを思い出しました」
映画『海へ行こう!』より
映画監督を目指すトマーシュが憧れるのは、『カッコーの巣の上で』で知られるチェコの巨匠、ミロシュ・フォアマン監督。「彼らが部屋にミロシュ・フォアマン監督のポスターを飾っていたり、フォアマン監督の名前を登場させたのは、彼はチェコが世界に誇る監督だからで、トマーシュの目指す夢として、設定したかったのです」
そして、物語を通じて明らかになるドメスティック・バイオレンスの問題については、「DV被害者の団体からの反応は、この映画をつくって最も嬉しかったことです」と語った。
なお、『海へ行こう!』は、東京では6月10日(水)15時よりフィルムセンターにて再度上映され、京都では7月4日(土)13時30分より京都文化博物館にて上映される。
今年のEUフィルムデーズではその他、2000年の東京国際映画祭コンペティションで『バック・ドア』が上映されたギリシャのヨルゴス・ツェンベロプロス監督の新作『我が内なる敵』、2014年のEUフィルムデーズで紹介された『101日』のネヴィオ・マラソヴィッチ監督の新作コメディ『ヴィザヴィ』、主演のイェルディス・トリーベルがドイツ映画賞主演女優賞を受賞したクリスティアン・シュヴォホー監督『西という希望の地』など、日本初公開作品、劇場未公開作品が多数上映される。
映画『海へ行こう!』
映画監督に憧れる11歳のトマーシュは、誕生日にもらったデジカメで撮影を開始。父親の「秘密」を探ろうとする自分の探偵ごっこや、家族、親友、クラスメートたちとの交流などの全てが、少年の目を通じて、彼のナレーションで語られる。最後には家族の驚くべき秘密が明らかに……。
監督:イジー・マードル
原題:Pojedeme k moři
英語タイトル:To See the Sea
2014年/90分/チェコ//チェコ語(日本語字幕)/DCP
EUフィルムデーズ2015
東京:2015年6月21日(日)まで開催中
京都:2015年7月1日(水)~7月12日(日)
東京会場:東京国立近代美術館フィルムセンター
東京都中央区京橋3-7-6 [地図を表示]
お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600
京都会場:京都府京都文化博物館
京都府京都市中京区三条高倉 [地図を表示]
お問い合わせ:075-222-0888
EUフィルムデーズ2015公式サイト:http://eufilmdays.jp/