骰子の眼

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東京都 渋谷区

2015-05-13 17:40


子育てパパが伝えたい、遺伝子組み換えについての5つのこと

GM食品「初級編」ドキュメンタリー『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』全国公開中
子育てパパが伝えたい、遺伝子組み換えについての5つのこと
映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より、ジェレミー・セイファート監督(左)と息子のフィン(右、当時5歳)

食の安全を願う「家族」の視点から、遺伝子組み換え作物がいかに私たちの生活のなかに拡大しているかを取材し、遺伝子組み換え食品=GMOをめぐる問題点を描くドキュメンタリー映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』が現在渋谷アップリンクほか全国公開中だ。3児の父として生活のなかに入り込んでいる遺伝子組み換え作物について追ったジェレミー・セイファート監督。今回は、劇場パンフレットに掲載の内容をもとに、今作のテーマである遺伝子組み換えについて知っておくべき「初級編」とも言うべきキーワードを掲載する。




映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより

【1】遺伝子組み換えってなぁに?

遺伝子組み換えとは、世界保健機構(WHO)によると、「遺伝形質(DNA)の有機体を自然には起こらない方法で変えたもの」。遺伝子暗号を解析し、ある特定の遺伝子の働きを、別の遺伝子に挿入して新しい性質をもった生物を作り出す。

映画のなかでも説明されているように、遺伝子組み換え作物は除草剤に耐性のある遺伝子をバクテリアから抽出し、それを金の粒子に付着させ、遺伝子銃で遺伝子内に挿入する。

遺伝子組み換え作物は大きく①除草剤耐性作物と、②害虫抵抗性作物に分類される。除草剤耐性作物とは、除草剤をかけても枯れない品種で、その除草剤とセットで販売されている。害虫対抗性作物とは、バクテリアを組み込み、害虫を殺す毒素を自らつくる品種のこと。

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより

【2】遺伝子組み換え作物と除草剤はセット、でも耐性を持ったスーパー雑草が生まれている

遺伝子組み換え作物は、安全であると確証のないまま世界各国で認可が進められている。世界での作付け面積は、2013年で1億7,520万ヘクタール、さらに2014年で1億8,150万ヘクタールに及ぶ。遺伝子組み換え作物の大豆、トウモロコシ、綿、小麦だけでなく、トマトやジャガイモなど野菜もある。

世界の主要4種の作物と呼ばれる大豆、綿、トウモロコシ、ナタネの遺伝子組み換え作物の作付面積の割合をみてみよう。大豆は全体1億700万ヘクタールのうち79パーセント、綿は全体3400万ヘクタールのうちの70パーセント、トウモロコシは全体1億7,900万ヘクタールのうち、32パーセント、ナタネは全体3,400万ヘクタールのうち24パーセントが、遺伝子組み換えとなっている。

そして、世界の遺伝子組み換え作物作付けの実に70パーセントが「ラウンドアップレディ(耐性)」「ラウンドアップレディ」とは、モンサントの主力の売上を誇る除草剤グリホサートの商品名「ラウンドアップ」とセットで売られる品種で、除草剤をかけても枯れずに雑草だけが除かれるため、除草が簡単だとされているが、その安全性については現在も賛否両論がある。さらに、ラウンドアップレディと野生植物の受粉により、除草剤でも枯れない「スーパー雑草」が生まれるという問題も生じている。

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより
(出典:ISAAA国際アグリバイオ技術事業団)
映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより
(出典:ISAAA国際アグリバイオ技術事業団)

【3】「アメリカは遺伝子組み換え作物の規制が日本より遅れている」というのは間違っている

アメリカでは、80パーセント近くの加工食品に遺伝子組み換え作物が使われている。最も一般的なのは、コーンスターチ、異性化糖、大豆レシチン、植物蛋水解物など。ロシア、インド、中国を含む60ヵ国以上で遺伝子組み換え作物の表示が義務付けられているが、これまでアメリカでは、遺伝子組み換え食品の表示は義務化されていなかった。しかし現在、約29の州議会で、遺伝子組み換え食品の表示を義務化させようという法案が議論されている。

そのきっかけとなったのが、2011年、カリフォルニア州での表示に対する住民投票。これに反対するバイオテクノロジー企業や大手の食品企業が40数億円も投じて反対キャンペーンを実施した結果、カリフォルニア州では不成立となってしまった。しかし、その後の表示運動の高まりにより、2014年、バーモント州議会ではじめて食品表示の義務化が可決された。執行は2016年からの予定となっている。

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより
(出典:ISAAA国際アグリバイオ技術事業団)

【4】世界の種を支配しようとしているモンサント社、ハイチ大地震の際に現地に寄付したものとは?

2010年1月12日に起こったハイチ共和国の大地震により、約21万7,300人が死亡、負傷者は約30万600人に上り、首都ポルトープランスを中心として甚大な被害をもたらした。深刻な状況のなか、支援物資のひとつとして送られてきた、アメリカのモンサント社によるハイブリッド種(F1)の種を、ハイチの農民たちが燃やすという出来事が起こる。ハイブリッド種とは、異なる特性の品種を人為的にかけあわせて作った種で、その性質は一代かぎりのため、農家は毎年種を買わなければいけない。「種は自然の恵みそのもの」と語る農民たちによる、ハイブリッド種の流入を防ごうとしたこの運動をきっかけに、セイファート監督はアグリバイオ企業による作物のハイブリッド化や遺伝子組み換え作物に問題があると気づいた。

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より
映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より、ハイチの農民たち

【5】そして日本の食卓にはどのくらい遺伝子組み換え食品が含まれているのか?

実は、日本は遺伝子組み換え食品の輸入大国だ。それは、遺伝子組み換え食品の表示が義務付けられているものの、抜け穴があるため。表示の対象となるのは、納豆、豆腐、味噌など30種類の食品に原料に使用された場合に限られるうえ、重量の5パーセント以下であれば表示しなくてもいいため、実際には様々な遺伝子組み換え原料が含まれていても表示されていない。この項については、映画の公開を記念して行われた白井和宏さん(市民セクター政策機構・専務理事)によるトークレポートも参考にしてほしい。

また日本はトウモロコシの世界最大の輸入国で、その量は年間1,600万トン。輸入先の約9割がアメリカで、主に家畜の飼料、食用油やしょうゆ、果糖ぶどう糖溶糖、コーンスターチなどの加工食品の原料として使われるため、遺伝子組み換え食品が表示のない状態で食卓にのぼっていることになる。

さらに、現在議論を呼んでいるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参入によっては、遺伝子組み換え食品の表示基準が緩和され、食の安全性が守れなくなる心配もされている。本作で描かれる遺伝子組み換え食品との向き合い方は、未来の日本の姿かもしれない。

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より
映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より
(以上、映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』パンフレットより)



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映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』
渋谷アップリンク、名古屋名演小劇場、横浜シネマ・ジャック&ベティにて公開中、
他全国順次公開

映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』より

監督:ジェレミー・セイファート
出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリー二、ヴァンダナ・シヴァ
協力:大地を守る会、生活クラブ生協、パルシステム生活協同組合連合
字幕:藤本エリ
字幕協力:国際有機農業映画祭
配給:アップリンク
2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/カラー/アメリカ、ハイチ、ノルウェー

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/gmo/
公式Facebook:https://www.facebook.com/gmo.movie
公式Twitter:https://twitter.com/uplink_els


▼映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』予告編

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