骰子の眼

art

東京都 渋谷区

2015-05-19 16:55


10年後のスターがここから!?タナカカツキによる気鋭若手アニメーション作家を囲む夜

榊原澄人・ぬQ出演、6/12渋谷アップリンク「タナカツキのアニメの時間 第2回」の見どころ
10年後のスターがここから!?タナカカツキによる気鋭若手アニメーション作家を囲む夜
右上:榊原澄人作品「Requiem Zarathustra」より 右下:榊原澄人作品「E in Motion no.2」より 左上:ぬQ作品「ニュ~東京音頭 NEW TOKYO ONDO」より 左下:ぬQ作品 チャットモンチーMV「こころとあたま」より

昨年より渋谷UPLINK FACTORYにてスタートした、クリエイター・タナカカツキが若手アニメーション作家を紹介するイベント「アニメの時間」の第2回が6月12日(金)に開催される。

前回開催時にタナカさんは、アートアニメーションがもつ魅力を「気持ちいい動き」と評した。ストーリーを意識して見るアニメーションと異なり、アートアニメーションは動きに着目し、感覚に直接訴えかける。うねるような動きはどこか自然をイメージさせ、気持ちいいアニメーションを見ると大自然にいるかのように気持ちいい感覚になる……そうか!考えるのではなく感じるのか。と思わず膝を打ったお客さんも多かったのではないだろうか。

今回は約1年越しの開催に向けて、イベントホストのタナカさんに見どころを聞いたインタビューを掲載する。

衝動だけでやらせてください、このイベントは

──約1年ぶりの開催となりますが、まずは第1回を振り返ってみてあらためていかがでしたか?

たくさんの方に来ていただいて、びっくりでした。ゲスト陣も楽しんでくれてましたね。普段、部屋にこもってコツコツ作業している方々を、いきなり聴衆の面前に晒して、精神的にはかなりの負担だったと思うのですが、よく喋っていただきました。いやぁ、でも「アニメのイベントやります」って言って、よく1回目からお客さん来てくれたと思います。ありがたいです。

タナカカツキ
渋谷アップリンクで「アニメの時間」を開催するタナカカツキ

──第1回は、タナカカツキがおすすめする若手アニメ作家がどんな人たちなのか、気になるという方が多かったんではないかと思います。

そうなってくると第2回はお客さんが減ってしまう可能性ありますよね。

white-screen.jp山本加奈(以下、山本):そんなことはないでしょう(笑)。来場者視点で言うと、テレビアニメじゃないアニメーションに興味はあるけど、どう楽しめばいいのか、見方が分からないってあると思うんですよね。美術に関しても、鑑賞するにあたってどこで知識を得たらいいのか分からないということはありますし。ですから、第1回は、「アートアニメーションをどう楽しめばいいか」を教えてくれる会ということで、来てくれた方が多かったんじゃないかと思っています。

「タナカツキのアニメの時間 第一回」より
2014年7月29日に開催された「タナカツキのアニメの時間 第1回」より、水尻自子、ひらのりょう、最後の手段、平岡政展が参加した。

──アニメーションの見方を伝えていくイベントに、ということはタナカさんも前回もおっしゃってましたね。

それは少しありますね。せっかくおもしろい作品もストーリーがみえにくかったりすると、いきなりアートの領域とかに押しやられて高踏なものになってしまう。これはアニメの楽しみ方が偏ってる、見慣れていないってことだけだと思うので、そういった作品もみんなで楽しんでいきたいですよね。そういう環境ができあがれば、良い作品に触れる機会も得らますし。お客さんも来てくれて、出演者も楽しんで、第1回目がとりあえず「ハッピー」やったんで。でもなんでハッピーか分からないんですよね、それを第2回、第3回とやっていくうちに、「これやったんかー!」ってその理由分かってくると思うんですよね。

──なるほど。タナカさんも、アニメの制作段階のように、まだ模索している状況なんですね。

そうですね。ただ、衝動だけはあります。もういい歳やのにね。衝動だけでやらせてください、このイベントは。

時代とぜんぜん添い寝してなさすぎるふたり

──今回は、ぬQさんと榊原澄人さんがゲストとして決まりましたが、どうしてこのおふたりにフォーカスを当てようと思ったのですか?

水尻自子、ひらのりょう、最後の手段、平岡政展という第1回の面々は、動くイラスト調だったり、「動き」に焦点を当てた楽しみ方を提案しました。彼らの映像は、静止画を見るだけでも、今の時代を言い得ているようなタッチや線、キャラクターだったりして、「今」を感じさせるものだったと思います。

でも、今回のぬQさんと榊原くんは、何年のいつの作品か分からないんです。時代とぜんぜん添い寝してなさすぎるんですよ。自由すぎて、放って置くといなくなると思います。だから早く誰かがイジらんと。

榊原くんは北海道の浦幌っていう牛舎しかないような所で生まれ育ち、今制作している場所が長野の山奥って。基本、人里離れすぎてる人生なんですよね。人がたくさんいる集落が苦手なのか何なのか、距離を置きたがるんですよ。物理的にだけでなく、精神的にも。朝、森の中を散歩しながらアニメーションのアイディアがバーン!と閃いたり、日々、薪を割りながら暖炉にくべて、アニメーションを制作している。「それ、2015年ですか?」っていう(笑)。

榊原澄人『Requiem Zarathustra』より
榊原澄人「Requiem Zarathustra」より

──自然の中で暮らしながら制作活動というと、かなり芸術家タイプというか、ストイックな方という印象を受けます。

山本:作品にも圧倒されると思います。彼が24歳の頃に作った『Flow』という作品があるんですが、完成度の高さに驚きました。あまり世に出てないので、貴重な上映の機会になると思います。

身体や頭がおかしくなるくらいに作業に没頭する

──では、ぬQさんと知り合われたのはいつ頃なんですか?

僕はメディア芸術クリエイター育成支援事業という助成金のアドバイザーもしているんですが、ぬQさんが助成金の申請をした際に行った面接審査がきっかけですね。それが2~3年前ですかね。その時にもう頭おかしい感じだったんですよ。

Q個展3「リョ〜ヨ〜」より
沖縄One's Room gallery & studioで開催されたぬQ個展3「リョ〜ヨ〜」より

──作品のシュールなキャラクターそのままだったんですね(笑)。ちなみに榊原さんとぬQさんは面識はあるんですか?

たぶんないと思います。まったくキャラ違うもん。榊原くんにはぬQが見えないかもしれないです。

──山から下りてきて、突然ですもんね(笑)。おふたりに共通する点とはどんなところでしょうか?

身体や頭がおかしくなるくらいに作業に没頭することですかね(笑)。ステキですよね、そういうの。でも、僕もふたりのことまだよく知らないです。だから今回もどうなるかわからない。ただ、作品はおもしろい、ものすごく強度がありますから、楽しんでいただけることをお約束します。驚愕しますよ、きっと。見た人はなんらかの意欲を注ぎ込まれるでしょう。そして、このイベントを通して、新しいアニメーション作家の姿がお披露目されることになっていくので、彼らが今後どうなっていくのかも見届けていけたら嬉しいです。10年経ってみたら、すごいスターが出てるかもしれないしね。

(インタビュー・文・構成:石井雅之/ヤマザキムツミ)



【関連記事】

「目の快楽、感覚で受け取る」タナカカツキが語るアート・アニメーションを楽しむ方法(2014-07-18)
http://www.webdice.jp/dice/detail/4304/




タナカカツキ プロフィール

マンガ家。1966年大阪生まれ。1985年マンガ家デビュー。著書に「オッス!トン子ちゃん」「サ道」、天久聖一との共著「バカドリル」など。近年では「コップのフチ子」の生みの親としても活躍する。
代表作:「オッス!トン子ちゃん」「サ道」
http://www.kaerucafe.com/




タナカカツキの「アニメの時間」第2回
2015年6月12日(金)渋谷UPLINK FACTORY

ホスト:タナカカツキ
出演アニメーション作家:榊原澄人、ぬQ
19:00開場/19:30開演
予約:http://www.uplink.co.jp/event/2015/37598
料金:入場料1,500円(1ドリンク付)
主催:white-screen.jpUPLINK
協賛:EIZO株式会社


出演アニメーション作家


榊原澄人

榊原澄人(さかきばらすみと)

北海道浦幌町出身。15歳で渡英後文化庁海外派遣生を経て、Royal College of Art(英国王立芸術大学院大学)/MA Animation科を卒業。日本に帰国後祖父の実家の牧場で肉体労働者になった後、現在は長野の山中で生活している。
http://sumitosakakibara.com/



nuq

ぬQ(ぬきゅう)

多摩美術大学大学院修士課程修了。アニメーション作品「ニュ~東京音頭」で、第18回学生CGコンテスト最優秀賞を受賞し、「第16回文化庁メディア芸術祭」審査委員会推薦作品に選出されるなど、国内外で多数上映され話題となる。アニメーションに留まらずアーティストとして幅広く活動する。
http://homepage3.nifty.com/nuQ/




▼榊原澄人作品「E in Motion no.2」(一部抜粋)


▼ぬQ作品「ニュ~東京音頭 NEW TOKYO ONDO」

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