映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より
クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』(仮)[原題:Return to Homs]の劇場公開を支援するプロジェクトを紹介。今回のプロジェクトの発起人で、シリアにアラビア語の研修経験もある、映画配給会社ユナイテッド・ピープルのスタッフ・アーヤ藍さんからのメッセージを掲載する。
今回のプロジェクトでは、今夏の劇場公開にあたり、映画の買い付け金以外の宣伝費のために、180万円を目標に2015年6月1日23:59までクラウドファンディングを行なう。集まった資金は、上映素材・予告編作成、チラシやポスターのデザインと印刷費、試写会や上映イベントの開催費などに使用される。
映画『それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より
応援にあたっては500円から50万円までチケットを選ぶことが可能。今回は「シリア」を感じてほしいというアーヤ藍さんのセレクトによる趣向を凝らした特典が用意されており、3,000円でシリア難民Yaserさんが撮影したシリア難民の”日常”を映した写真のポストカード、5,000円でシリアから直輸入のアレッポ石鹸、8,000円でシリア難民のお母さんたち手作りのニットアクセサリーを進呈。
3,000円以上の協力でプレゼントされるシリア難民Yaserさんが撮影したポストカード。 ©Yaser
そして、3万円でアーヤ藍さん主催の上映会&モスクツアーに招待。5万円でシリアのトークと料理を楽しめる特別先行試写会に招待、そして10万円でニューヨークで活躍中のフォトグラファー・鈴木雄介さんによる内戦以降のシリアを撮った限定写真集を進呈、と様々なかたちで「シリア」の市井の人々の生活を感じることのできる特典が用意されている。
詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。
フォトグラファー・鈴木雄介氏による写真。10万円の協力で限定写真集が進呈される。 ©Yusuke Suzuki
映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』とは
映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より
舞台はシリア西部、ダマスカス、アレッポに続く第3の都市と呼ばれるホルム。2011年にアラブで始まった民主化運動の波はシリアにも起こり、サッカーのユース代表チームのゴールキーバーとして活躍した青年・バセットは、そのカリスマ性が若者を引きつけ、民主化運動のリーダーとしてデモの先陣を切るようになる。
反体制派の拠点のひとつとなったホムスで、バセットの友人のオサマは、デモを撮影し、インターネットで公開することで民主化運動を広げようとする。ふたりは同志として非暴力の抵抗運動を先導し、抵抗運動の波はシリア全土へと広がっていった。
映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より
しかし、2012年2月に事態は一変。政府軍の容赦ない攻撃によって、ホムスで170人の市民が殺害。政府側との対話は不可能と悟ったバセットたちは、これを機に武装闘争へと転換していく。廃墟と化したホムスの街で、政府軍に包囲されてしまった彼らの姿をカメラは追っていく。
監督を務めるのは、シリア人のタラール・デルキ。
アーヤ藍さんからのメッセージ
「普遍的な『戦争』のリアル、
『生きること』『死ぬこと』が映し出される」
アーヤ藍さん
【『それでも僕は帰る』について】
4年。気づけばそんなにも長い時間が経過しました。
2011年3月、私は中東・シリアに1ヵ月間アラビア語の研修で滞在していました。初めて訪れたイスラーム圏の国に、最初は緊張と不安もあったものの、日本では見たことのないくらい透き通った青空、歴史の積み重ねを感じる建物、そして、人懐っこく、ハートの熱いシリアの人たちに、すっかり魅了されました。
しかし、帰国直前から「アラブの春」の影響を受けた民主化運動が始まり、その後ほどなくして、内戦状態となってしまいました。少し前まで、一緒にご飯を食べ、言葉や宗教の違いを超えて笑い合い、「また会おうね」と手を振って別れた友人たちが、悲惨な言葉や写真をSNSでアップするのを見て、とても「他人事」にはできませんでした。
でも、私に一体何ができるのだろう。
自問自答を繰り返しながら、そして、何もできない自分に苛立ちを覚えながら、時は流れ、シリアを訪れた時から丸4年が経過しました。そんななかで出会ったのが今回の映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』(仮)[原題:Return to Homs]です。自分と同年代の2人のシリア人青年を追ったこの映画を見ていると、シリアで共に過ごした友人たちも同じような環境にいるのだろうかと、胸が苦しくなります。一方で、「死」と隣り合わせの状況でも、シリア人の陽気な面が垣間見え、ふと笑ってしまうような作品でもあります。そして何よりこの作品には、政権側か反政権側かに依らない、また、シリアにも限られない、より普遍的な「戦争」のリアル、「生きること」「死ぬこと」が映し出されています。この作品を日本に届けることが、今の私にできる、そして4年が経過してようやく踏み出せる“一歩”だと感じています。
今回のクラウドファンディングと映画を通じて、だんだん日本のマスメディアでは取り上げられなくなってきた「シリア」に、目を向けていただければと願うとともに、日本における「平和」を見つめ直す材料にもなれば、と考えています。また、クラウドファンディングがうまくいった暁には、「シリアに関心を持っている人が日本にこれだけいるよ!」と、シリアの“友”たちに向けて、アラビア語で発信をしたいと思っています。
映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』
監督:タラール・デルキ
プロデューサー:オルワ・ニーラビーア、ハンス・ロバート・アイゼンハウアー
編集:アンネ・ファビニ
原題:The Return to Homs
国際共同制作:Proaction Film / Ventana Film / NHK / SWR / SVT / TSR / CBC 他
シリア/2014年/アラビア語/94分
MotionGalleryプロジェクトページ:
https://motion-gallery.net/projects/return_to_homs