骰子の眼

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2015-04-28 12:55


参院選で17万票を集めるも落選した男を追うドキュメンタリー『選挙フェス!』クラウドファンド実施中
映画『選挙フェス!』より

クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は『沈黙しない春』の杉岡太樹監督の新作で7月4日からのユーロスペースでの劇場公開を控える映画『選挙フェス!』を支援するプロジェクトを紹介。今作に登場するミュージシャン・三宅洋平、そして杉岡監督が制作・配給に参加した『ハーブ&ドロシー』の佐々木芽生監督を迎えての鼎談を掲載する。

今回のプロジェクトでは、配給・宣伝費のために、300万円を目標に2015年5月19日00:00までクラウドファンディングを行なう。集まった資金は、上映素材、予告編作成、チラシ、ポスターなどのデザイン&印刷費、試写会や上映イベントの開催費などに使用される。

残り21日の4月28日時点で39人のコレクターにより46万4,000円の協力が寄せられている。応援にあたっては3,000円から3万円までチケットを選ぶことが可能で、価格に応じてオリジナルグッズ進呈や、特別試写会への招待などの特典が用意されている。また、1万5,000円(限定100名)と3万円(限定20名)では映画のエンドロールに出資者の名前を登場させることが可能に。「選挙フェス」を記録したドキュメンタリー映画を広めることに参加し、名前を残すことのできる貴重な機会となっている。

詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。

映画『選挙フェス!』とは

2013年7月に行われた参議院選挙。緑の党から推薦を受けて立候補したミュージシャンがいた。三宅洋平、34歳。地盤もなければカネもない、公示当初は「売名行為」と揶揄された新人候補は、音楽と演説を融合させた“街頭ライブ型政治演説”を「選挙フェス」と称して全国ツアーを敢行する。この前代未聞の選挙運動は、インターネットからうねりを起こし、路上に多くの観衆を集め、結果的に落選候補最多の17万6,970票を集めることになる。

しかし、比例代表選挙はそれぞれ政党の獲得した総得票数によって議員の当落を決定するシステムであり、緑の党は議席を獲得する総得票数に達しなかったため、落選となった。

本作は17日間26ヶ所を巡る三宅の旅に完全密着。群衆に訴えかけたコール&レスポンス、政治参加へのアプローチ、その裏側で未経験の選挙に苦悩し、怒り、歓ぶ等身大の姿を捉えた。「政治をマツリゴトに」をスローガンに、多くの人の心を奪った"新たなカリスマ"の素顔。三宅洋平とは、何者だ?


杉岡太樹監督☓三宅洋平☓佐々木芽生監督鼎談
表も裏も出るのがドキュメンタリー

落選候補最多の17万6,970票を集めた参議院選挙から2年、先日の統一地方選挙でも応援行脚のため日本中を駆け回った三宅洋平。捕鯨の国際紛争を扱った新作ドキュメンタリー映画のクラウドファンディングがスタートした佐々木芽生監督。そして、7月4日からのユーロスペースでの劇場公開を控える映画『選挙フェス!』の杉岡太樹監督。それぞれ違ったバックグラウンドを持ちながらも2015年に交差した3人の鼎談、話題はドキュメンタリー、政治、アート、炎上、メディア論、と多岐に渡った。

佐々木監督は前作『ハーブ&ドロシー2』の製作・配給資金1,463万円をMotionGalleryで集め、三宅は600万円の供託金を含む選挙資金をインターネットとライブ会場による呼びかけで集めたこともあり、話題はクラウドファンディングの可能性についても広がった。


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左より 佐々木芽生監督、三宅洋平、杉岡太樹監督

佐々木芽生(以下、佐々木):まずは、私が映画『選挙フェス!』を拝見した印象を言っちゃっていいですか?

三宅:どうですか?

佐々木:ビックリしました。観て最初に、三宅さんというキャラクターにどうしても引き込まれますよね。映画監督として「素晴らしいキャラクターを見つけたな」と思って。

三宅:もうね、自分のドキュメンタリーって、自分で観ても何にもわかんないですね。

佐々木:イヤでしょ?

三宅:イヤです、イヤです。

佐々木:うん、絶対イヤだと思う。

三宅:「もっとカッコよく撮ってよ!ドキュメンタリーって、やっぱりな~……」みたいな。表も裏もどっちも出てくるし。

佐々木:それがカッコイイんですよ!

三宅:「俺ってこんななんだ……」みたいな、うん。でも、選挙に出たことも、政治や音楽でやろうとしてることも、基本は「包み隠さず出す」ってことをやってきたから、その一貫なんですけどね。でも「もうちょっとカッコつけたいなー」くらいは思いますよね(笑)。

佐々木:いや、十分カッコついてた!

三宅:本当ですか?(笑)

佐々木:うん。私も一作目、二作目と主人公仕立てのドキュメンタリーを撮ってるんですけれど、一人の主人公を中心としたドキュメンタリーって簡単に見えるんだけど、すごく難しくって。撮る側の思いと撮られる側の思いって途中からずれたりするんですよね。そこを乗り越えて乗り越えて、どうやって最後まで完成させるか。こういう映画の半分くらいは途中でダメになって、完成できない。

三宅:僕はもう彼のことを戦場カメラマンだと思って、とにかく好きでついて来て「全日程撮る」って言ってるから、それなら全部撮っておいてもらおうと思って。

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左より、佐々木芽生監督、杉岡太樹監督、三宅洋平

政治の中に“ログイン”しないと

佐々木:で、どうしてまた杉岡くんだったんですか?

杉岡太樹(以下、杉岡):最初に洋平くんが俺に求めてたのは、「各地で撮られるだろう映像をまとめてほしい」みたいなことだったんだよね。最初にマサヤさん(注:三宅が当時所属していたレーベル、Jazzy Sport代表・Masaya Fantasista)から「洋平が杉岡くんに撮ってもらいたがってるけど、どう?」って来たの。で、俺は「うーん、政治……」みたいな。というのも、“脱原発デモ”がテーマになってる前作『沈黙しない春』を撮った時に、若いヒトたちが面白がってくれるかな、なんて思ってたら全然で。「脱原発のヒト」みたいな扱われ方しかされなかった。次作はアプローチを変えなきゃマズイ、なんて思ってた時にその話が来て。「今はタイミングが違うな」と思いつつも、洋平くんがそういう風に言ってくれているなら本人には連絡しよう、と思ってメールを送ったんですよ。「どんな状況?」くらいの。そしたらスゴイ返信が来て。

三宅:どんなの?

杉岡:スゴイってことはないんだけど、簡単に言えば「この社会には、地球には、時間がない。いま、立ち上がる時だ」みたいな、熱いヤツ。面と向かって言うのは恥ずかしいけど、本当に尊敬してるアーティストであり、カッコイイと思ってる男からそんなメールが来て何もしない、っていう選択肢は俺にはないな、と思って。で、選挙が始まる2ヶ月前に横浜で会って、「7月の参院選に出ようと思ってる」っていうこと聞く、と。だけど、「選挙を撮る」って言ってもどうやって撮っていいかもわからなかったし、中途半端な気持ちじゃ映画は作れないし、「コレどうしよう?」とか思いながら選挙公示日前日にまでなっちゃって、その夜に二人で飯を食って。

三宅:「ということで」みたいなね。

杉岡:そこで洋平くんの選挙運動の日程、全国を回るスケジュールをもらって、「初日と、中盤と、最終日を撮るか」なんて思いながらその夜は別れて。ところが次の日、吉祥寺の「選挙フェス」での洋平くんの姿をこの目で見て、「こういうことだったのか。これは全部行こう」こんな動きに同行できて撮れるチャンスはそうそうないから。そこまで入れてた自分の予定、全部吹っ飛ばしましたね、17日間。

三宅:僕は普段はほとんどが一言二言の手短かな返信なんだけれど、その時にそういうメールを返したのは、政治っていうと遠ざかっていくヒトの連続で、「お前もかぁ!」と思って。

佐々木:(笑)。

杉岡:あの時は、俺も心して受け止めた、というか。

三宅:俺たちは今まで、音楽だろうとアートだろうと、「政治にだけコミットしない」っていう謎の畑で調子良く遊ばされてきたんだよね。その中で「ラブ」とか「ピース」とか必死に訴えることでちょっとは世界は変わるはずだ、っていう淡い期待をして。だけど、それって目的がハッキリしてなくて、「本気じゃなかったんだな」と。非常に無邪気な時代だった。自分の音楽で社会を変えよう、膠着した窮屈な日本社会を突破しよう、ってずっとやってきたんだけど、「音楽だけでやってる」っていう自分のこだわりや縛りが、とくに原発事故以降、自分の中で無力化して。人間、三宅洋平、あるいは一人の父親として今やらなければいけないことがまず最優先。で、そこにぶつかって行く中で、時間も気力もエネルギーも全部奪われる、「全然曲書けねえ」とか思ってたけど、その中からこそ歌を生み出した方がいい、と思って。だから、国会へ行って、日々あの中で答弁したり調査したり、っていう中で生まれるそれをスポークンワードに落とし込んでいったり音にしたり、できるはずだ、とまだ僕は信じていて、その方法と体制作りを具体的に進めているところなんですよね。なんでもいいんだけれど、みんなが一歩、政治の中に”ログイン”しないと。

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杉岡太樹監督

政治とアートは全然近い

佐々木:私もこの映画を観た時に一番衝撃的だったのは、三宅さんというキャラクターを通じて、政治とアートって水と油みたいに一番かけ離れている所にあるものだと思っていたものが、「なんだ、全然近いじゃん」っていう、その境界線はすごくぼんやりしているもので、政治とアートを仕切ることが逆におかしいんじゃないか、って思わされた。そんなこと考えたこともなかったから、その衝撃がすごく大きかったんですよ。

私もアートコレクターの映画を作ったんだけれど、その時から「アートってなんなんだろう?」ってことをすごい考えていて。ニューヨークだと今、「現代アート=お金 」またはすごい知識があって芸術史の博士号を持ってるようなヒトじゃないとアートを語れない、っていう風に思われていて。日本でもその映画を公開しようと思った時に、配給会社が全然見つからなくて、全部断られたんですよ。「日本人って現代アートって言うと引いちゃうから」なんて言われて。私はそれがすごく不思議で。アートって生活の色んな部分に入り込んでるモノじゃないですか。日本の生活って世界のどんな国よりも、アートが生活の中に取り入れられていると思うんですよ。それが自分を解放してくれる、自由にしてくれるモノだと思うんですよ、アートって。三宅さんの姿を見ていて、政治にもアートはあるのか、って気づかされて。その辺って杉岡くんは意識しながら撮ってた?

杉岡:さっき洋平くんが最初に「もっとカッコよく撮ってくれよ」って言ってたけど、僕としては映画を作る上で「彼がアーティストである」という事実がすごく難しくて。ドキュメンタリーってやっぱり“剥いでいく”作業だと思っていて、その中に残るコアな人間性みたいなものが垣間見えるのがドキュメンタリーの肝だったり、僕が観る側になった時に「面白い」と思う所だけれど、それは今回はどこまでやるべきか、という悩みが、やっぱり対象がアーティストだから。

佐々木:そりゃ、アーティストは自分をカッコよく見せたいよね、もちろん。

杉岡:そう、そのアーティストとしての姿に惹かれているからこそ僕は彼の映画を撮りたい、と思った訳で。三宅洋平がアーティストであること、そのラインの扱いをすごく気をつけて作った、というか。だから、僕の中では洋平くんがカッコいい所はとことんカッコよく見えるように作ったつもり。

映画『選挙フェス!』より
映画『選挙フェス!』より

もう一回選挙やったくらい疲れた

佐々木:人物ドキュメンタリーってカッコイイ所だけ見せると逆にカッコ悪い映画になっちゃうの。カッコ悪い所を見せるからこそ、「そのヒトがカッコイイな」ってことになるんだよね。カッコイイ所だけ見せると「嘘でしょ。こんなカッコイイ所だけなはずないじゃん」って。観てる人はバカじゃないから、それって見抜かれちゃうんですよ。だから『選挙フェス!』を観てたら、英語で言う「brutally honest」、残酷なくらいむき出し、っていう、そこのカッコよさはすごくあったと思う。

三宅:刺身だったね、刺身。

佐々木:もう「生!」って感じ?(笑)

三宅:生、そのまま。器とか、最小限の装飾で。でも「もっとカッコよく撮ってよ」ってのは半分冗談で。

杉岡:うん(笑)。

三宅:半分かよ!って感じでしょ?(笑)その手法に対しては全然意に介してないというか、杉岡くんはそうすると思ってたし。映画が生々しいから、僕が観て感想を問われた時には「疲れた」としか言えなかった。もう一回選挙やったくらい疲れた。

佐々木:映画を観て?それって、追体験したってことじゃないの?

三宅:そう。

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映画『選挙フェス!』より

騒ぎ倒して炎上上等

佐々木:インターネットって、強力なツールとして使える一方でものすごい武器にもなるよね、三宅さんは色んな意味で経験しているだろうけど。なんでも便利になってるし、メッセージもあっという間に伝えられるようになった反面、大事な声がどうでもいい「炎上」によって掻き消されたり人を平気で傷つけたりもできる。それが子どもたちに影響を及ぼすようにまでなってることについてはどう思う?

三宅:炎上っていう意味では、僕はもう山5個分くらい燃やしてるんですけど(笑)。まず一つは、政治的勢力が背後にある、明確な戦略的ネガキャンが多い。はじめはそれがわからず、まるで色んな方角から一般市民に攻撃されてるように見える。でも、その戦略性やキーパーソンが見えるようになってくるとなんでもなくなる、というか。

佐々木:最初はきつかった?

三宅:真っすぐ受け答えをして、「ちゃんと話せばわかり合える」って思って相手してた時はきつかった。直球が全く通じない、ってことが1年くらいで確認できて、「これはなにか意図と意志があるな」と。または、「これを起こすことだけが目的のこともあるな」と。となれば、そのやり取りを見せ物にもできる。それはもうラップとかフリースタイルセッションの世界観を通ってきた人間からすれば、「バトるならバトりますよ、そのかわり、俺のバトルはとんち込めてるよ、君は人を笑わす材料にしかならないからね」って。そういうやり取りって、自分のことを知らないヒトやアンチのヒトたちに向けて僕の情報を大拡散してくれる訳だから。うっかり僕の動画を観ちゃったヒトに「うーん、この三宅ってのは本当に悪いヒトかな?」って思わす自信はあるわけ。なぜなら、自分の中に嘘や曇りは一点もないから。

佐々木:じゃあ炎上なんか全然怖くない?

三宅:もう騒ぎ倒して、このヴァイブスを広げるしか手段はない訳だから、炎上上等でしょう。

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三宅洋平

17万人が1万円出せば17億円

佐々木:というのも、いま私が捕鯨の国際紛争をテーマにしたドキュメンタリーを製作するためのクラウドファンディングを実施しているんだけれども、なかなかこの映画については話題にしないで、みんなこっそり「応援してます」って伝えてくるような感じ。以前から言われてはいたんだけれどね、「この映画は炎上を恐れるヒトが多いから広まらないよ」って。そんなものかな、とは思ったんだけれど、もっと驚いたのはメディアのヒトがみんなビビってるんだよね。

三宅:それは日本のメディアでしょ?

佐々木:そう!で、この話を欧米のマスコミやTV局のプロデューサーに話すと、みんな「面白いね」って。「それだけバッシングされてるのに、なぜ日本人はまだクジラを捕るのか、みんな知りたいよ。漁師のナマの声が聞けるんだったら面白いね」と。でも、日本のマスコミは「いや、個人的には応援したいんですけど、なかなか、微妙で……」とか言ってメディア自体がもう身を引いちゃってる。なんのためのメディア?っていう。こんなことってインターネットがここまで発達する前にはなかったことでしょう。それ以前でも苦情の電話がかかってくるようなことはあったかもしれないけれど、今のようにネットで炎上させられたり、コメンテーターが個人攻撃されたり、それでみんなビクビクして声を上げようとしなくなっちゃってる。これだけ発信するのに便利なツールがあるのに、逆にそれが発信を躊躇わせる要因になってしまってるような状況に陥ってる気がする。

三宅:まさにその通りの状況が起きてるし、みんなそういう状況の中で上手くやろうとする。そうじゃなくて、言っちゃいけないと規制された言葉の本質を問うていく、とか、反差別という名の差別が生まれていないか、とか、そういうことをちゃんと記事にして「炎上」させていくことがメディアの仕事のはずなのに、「三宅くん、プロは言わずして言うってのが」とか言って、上司とちゃんとぶつかる、会社辞めてでも意見通す、そういう根性が育ってないんでしょうね。具体的にそういった“規制”で排除されるモノを拾い上げていくには、新聞社をクビになった社員を全員集めて僕の新聞社を作ればいいと思う、「反骨新聞」。

佐々木:「反骨新聞」ね(笑)。

三宅:「新聞には本当のことが書いてない」って数百万人の市民が言ってるけど、そのためになにかを講じてるヒトは全然いない。「朝日はウソだ」「読売はウソだ」「産経はウソだ」「そもそも全ての新聞は昔CIAがカネ出してる」そうですよ、その通りです、じゃあどうする?全部の新聞社で、書けないこと書いてはぐれてきたヒトたちに声かけて、「うちでなら僕が責任持ってなんでも書けますよ」という新聞社があればいいんだと思う。キッチリした企画としてクラウドファンディングを立ち上げて、僕に投票したヒトが17万人以上、一人一万円ずつ出してくれれば17億円。17億円の資本金から始めれば出版社も作れるだろうし、なんなら報道局だって作れるだろう。僕に投票した17万人って、そういう力なんだよ、っていうこと。僕は今そういうプロジェクトを5個くらいやりたい。みんなそれぞれ一つ一つ判断してもらって、面白ければお金を出してもらって。自分は5万円しか出してないのに、こんなスゴイものが5個もできた、っていう経験をすれば、「じゃあ、毎年何十万、何百万円も払ってる所得税や消費税はなんに使われてるの?」って思うはず。そこから税制改革をしたい。

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映画『選挙フェス!』より

自分で考える「ひねくれ者」たちへ

佐々木:私も今回の映画含めて今まで3つのプロジェクトを立ち上げてるんだけれど、クラウドファンディングって本当にスピリチュアルな体験だと思ってて。私がすごく感動したのが、全く見ず知らずのヒトが「お金」っていう言語を通じて「がんばって」という言葉だけではなく、アクションとしての応援してくれたことで。私のことを知らない方が50万円も出資してくれて、そのヒトが特別お金持ちって訳でもなかったりする。そういう風に「与えられる」という経験を通じて、私もちゃんと「与える」ということで返していかないといけないんだ、ということを思い知らされた。クラウドファンディングってそれこそインターネットというツールの素晴らしい部分で、すごく民主的なプロセスで色んな社会の枠組みを越えて色んなことに挑戦できるようになった。私はそこに大きな可能性を感じてる。

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杉岡:メディアが政治的なトピックスを扱わなかったり思い切ったことを言えなかったり、ってのは、結局メディアもいち企業だからスポンサーとか株主の顔色を伺わなきゃいけない、って所を突かれて「スポンサーに突撃します」みたいな炎上を起こされちゃう訳でしょ?一方で、さっき洋平くんが言ったような、自分に投票した17万人が1万円ずつ出して新聞作る、っていうのも結局は“三宅洋平の”メディアでしょ?洋平くんが「あらゆる意見を許す」と言っても、それは三宅洋平という属性の中で、っていう制限はやっぱりあると思う。そこが僕が今回の「制作費を出すから映画を撮ってほしい」という洋平くんのオファーを断った理由で、やっぱり自分で制作費を捻出しないと表現の自由が守られないから。

三宅:そうだ、だから「スコセッシがウッドストックを撮ったようにカッコよく撮ってほしい」っていう俺に対して「いや、自分が撮りたいのはドキュメンタリーだからお金をもらっては作れない」っていう区切りだったね。

佐々木:その時点で太樹くんの映画がアートになったからね。

杉岡:その区切りをつけることが僕の目指すメディアのあるべき姿で。やっぱりメディアはメディアで独立すべきだ、と思ってて。じゃあ、自分自身を含め、どうやってそのヒトたちがお金を集められるのか、っていうことが問題ですね。そこが解決しないと、独立した視座を保たれたドキュメンタリーが成立するのが難しくなっていくんだろうな、って。

三宅:そうだね、そうじゃないとミュージックビデオみたいなドキュメンタリーが増えていくよね。

杉岡:僕は「三宅洋平を応援する」という前提でこの映画を撮ってないし、でもだからといって揚げ足を捕ったり足を引っ張ってやろう、みたいな邪な気持ちがある訳でもない。どっちつかずで、誰も味方がいないんじゃないか、って不安になったりもするけど、それは僕が僕なりに「自分で考える」ってことを大事にしてるだけで、同じことを大切にして生きてるヒトと繋がりたくて、同じように闘ってるヒトを肯定したくて映画を作ってる。だから、世の中で「斜めに見てる」って思われてるヒトや「ひねくれ者」扱いをされてるヒトにこそ、自分の映画だと思ってサポートして欲しいな(笑)。




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三宅洋平 プロフィール

1978年ベルギー生まれ。早稲田大学卒業後、リクルートに就職するも9ヶ月で辞職。以降、REBEL MUSICの道を邁進する。2003年のフジロックで持ち時間を60分オーバーする”伝説”を残したバンド「犬式」として3枚のフルアルバムを発表。2010年には新バンド「(仮)ALBATRUS」を結成。原発震災を機に沖縄へ移住し、パーマカルチャーなどに影響された自給自足ライフの実践に入る。2013年、緑の党からの推薦を受け、参議院選挙全国比例区より立候補。

https://miyake-yohei.jp




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佐々木芽生 プロフィール

2008年、つつましい収入から世界屈指のアートコレクションを築いたNYの公務員夫妻を描いた『ハーブ & ドロシー』で監督デビュー。世界各国の映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞、観客賞など多数受賞。 2013年、続編にあたる『ハーブ&ドロシー2?ふたりからの贈りもの』発表。制作・配給資金をクラウドファンディングによって1,463万円集め、当時の日本最高記録を更新する。現在、クジラとイルカ問題をテーマとした長編ドキュメンタリー映画の製作進行中。ニューヨーク在住。

【MotionGallery】
クジラを巡る世界的論争描く、日本人監督初の本格ドキュメンタリー映画
https://motion-gallery.net/projects/whalemovie




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杉岡太樹 プロフィール

1980年神奈川県生まれ。01年より渡米、School of Visual Arts(ニューヨーク)にて映画製作を学ぶ。第84回アカデミー賞ノミネート作品の『もしもぼくらが木を失ったら』や、日米で異例のヒットとなった『ハーブ&ドロシー』などの制作・配給に参加。2010年より拠点を東京に移し、“脱原発デモ”の萌芽を追ったドキュメンタリー『沈黙しない春』で2012年に長編映画デビュー。現在、ブラインドサッカー日本代表チームを追った長編ドキュメンタリー映画を製作中。

http://senkyofes.com




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http://www.webdice.jp/dice/detail/3512/




映画『選挙フェス』

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映画『選挙フェス』公式サイトより

MotionGalleryプロジェクトページ:
https://motion-gallery.net/projects/senkyofes

公式サイト:http://senkyofes.com

映画▼『選挙フェス』予告編

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