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映画『インヒアレント・ヴァイス』が2015年4月18日(土)より公開となる。現代文学の最高峰に君臨し続けるが写真も経歴も非公表の天才作家トマス・ピンチョンの『LAヴァイス』の映画化を許した、その相手は『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督。主演は同監督作『ザ・マスター』でも主演をつとめたホアキン・フェニックス。
"グルービー"な70年代LAを舞台に、大事な時にラリってしまうヒッピー探偵ドック(ホアキン・フェニックス)の謎解きがはじまる。ドックは、失踪した元カノとその愛人を救うことが出来るのか─?
webDICEではポール・トーマス・アンダーソン監督のインタビューを掲載する。
ポール・トーマス・アンダーソン監督インタビュー
「ホアキンと僕は、できる限り深く小説を掘り下げようとした。何事においても、つねに小説に戻るようにした」
ポール・トーマス・アンダーソン監督
── 原作『LAヴァイス』について
ドックの調査の裏には悲しみが隠れている。あの時代の人たちのアメリカの約束に対する期待は搾取され、冒涜されていたに等しい。それが最初から、ピンチョン作品の不変のテーマだった。この映画を作りながら、僕はアメリカの行く末に対するピンチョンの懸念を代弁したいと思ったんだ。アメリカがかつて果たせなかった約束を取り戻すことができるという感覚を、我々はまだもっているのだろうか?僕はそうであることを願っている。
彼の本を読んでいるときにいちばん感じたことは、自分のほうに物語が押し寄せてくるような感覚だった。何も期待せず、何もわからないままに、ただ彼が創作する波に身を委ねるだけなんだ。それをかいつまんで言うことはできない。時折、それが何なのかさえはっきりしないまま、ただ感じているだけのこともあったんだ。
ピンチョンの筋立ては複雑な構造をしているが、その下には、つねに何かシンプルなものが流れている。過去を見据え、物事に希望を抱くことでより良き明日が得られる。それ以上にシンプルなことがあるだろうか?我々全員が望むのはそういうことではないだろうか?
ホアキンと僕は、できる限り深く小説を掘り下げようとした。何事においても、つねに小説に戻るようにした。小説が僕たちを笑わせ、絶え間なく新しい素材をもたらしてくれた。あまりにも濃厚で、全部を心に留めておくことができない。でも僕たちは努力したよ。
大事な時にラリってしまうヒッピー探偵、ドック(ホアキン・フェニックス)
── 脚本の構成について工夫した点は?
僕が考え出したひとつのアイデアは、脇役のソルティレージュを活用し、彼女を物語のナレーターとして用いることだった。彼女が物語を追い掛ける観客を助ける。あまり手を弄すことなく、このナレーションを通して、観客にはいくつかのジョークや素晴らしいピンチョンの一節に入り込んでほしいと願っている。
妄想は、映画にとってとても面白い素材だ。隅に忍び寄るゾッとする感覚や人間や雑音。そのすべてがとても映画的だ。そして、ホアキンはとてもうまく妄想を表現する。
ドックが頼る海運関係の弁護士、ソンチョ(ベニチオ・デル・トロ)
── キャスティングについて
夢のシナリオだった。大小ともに素晴らしいキャラクターたちだ。ありがたいことに、スケジュールもうまくいき、この夢の演技チームが揃ったんだ。ジェナ・マローンからベニチオ・デル・トロまで、キャスト全員が何年も一緒に仕事をしたいと待ち望んでいた人たちだ。この映画はチャンスだった。それ以上にワクワクしたのは、ホン・チャウやジョーダン・クリスチャン・ハーンといった新しい若手俳優たちを見つけることができ、ジーニー・バーリンやエリック・ロバーツやマーティン・ショートといった偉大な俳優たちと仕事ができることだったよ。
ビッグフットは嫌な奴だが、ジョシュはそれを面白く、少し悲哀を込めて演じている。小説にビッグフットを表す"哀愁を帯びた"という素晴らしい言葉がある。だが彼は同時に愚か者でもあるんだ。キャサリン・ウォーターストンは、ゴージャスで才能もある。それ以上に何を期待したらいいだろう?それにニューフェイスとの仕事は楽しい。出演歴が少ないから、彼女をミステリアスなままにしておけるからね。
凍らせたチョコバナナ中毒のロス市警警部補、ビッグフット(ジョシュ・ブローリン)
── 舞台である70年代について
僕はカリフォルニアのロサンゼルス出身だ。70年に生まれたから、特にこの時代には興味があるんだ。それに、素晴らしい音楽や車や女の子たちも、興味の一翼を担っている。
過去を見つけるのがどんどん難しくなっているね。今回は、『ブギーナイツ』を作った97年よりはるかに難しかったよ。それに、この時代には、素晴らしい曲があり過ぎる。何が合うかを見るために、オーディションテープが必要だった。小説の中にはたくさんの音楽が引用されている。そのすべてを挿入するには映画は短すぎる。でも、"ザ・マーケッツ"の素晴らしい「Here Comes the Ho-Dads」は使ったよ。サックスのソロが最高なんだ!コーイ・ハーリンゲンも誇りに思うだろう。
おカタイ検事補なのに、なぜかドックの今カノ、ペニー(リース・ウィザースプーン)
ポール・トーマス・アンダーソン PAUL THOMAS ANDERSON
1970年生まれ。カルフォルニア州ロサンゼルス出身。自身が22歳の92年に撮った短編『シガレッツ&コーヒー』がサンダンス映画祭で注目され、その作品をベースに『ハードエイト』(96・未)で長編デビュー。第49回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品される。97年にはポルノ業界で生きる人々の光と影を描いた『ブギーナイツ』ではスマッシュヒットのみならず、アカデミー賞では脚本賞含む3部門にノミネートされるなど、賞レースに躍り出たことから一躍注目され、ハリウッドの若き天才と言われるようになる。その後、トム・クルーズらを起用した『マグノリア』(99)ではベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したほか、アカデミー賞3部門ノミネート、その実力を不動のものとした。『パンチドランク・ラブ』(02)ではカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。さらに20世紀の新しい欲望の形を描いた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)はベルリン国際映画祭監督賞受賞のほか、アカデミー賞の作品賞含む8部門にノミネート、狂気の石油王を演じたダニエル・デイ=ルイスが最優秀主演男優賞、最優秀撮影賞を受賞。ホアキン・フェニックスを主演に迎え、新興宗教の教祖とそのカリスマ性に引き寄せられていく男を描いた『ザ・マスター』(12)ではベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。若くして、寡作ながら世界3大映画祭全ての監督賞に輝く稀有な監督となった。そして本作でも自身が書いた脚本で脚色賞含むアカデミー賞2部門にノミネートされる。
映画『インヒアレント・ヴァイス』
2015年4月18日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田他全国公開
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:トマス・ピンチョン 『LAヴァイス』(新潮社刊)
衣装:マーク・ブリッジス 音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ
(2014年/アメリカ/英語/149分/ビスタ)
字幕翻訳:松浦美奈
原題:INHERENT VICE
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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