骰子の眼

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東京都 新宿区

2015-04-10 19:46


説明のつかない恋こそ本物なんだ─ウディ・アレンが語る『マジック・イン・ムーンライト』

南仏を舞台に皮肉屋マジシャンと謎めいた占い師の駆け引きを描くロマンティック・コメディ
説明のつかない恋こそ本物なんだ─ウディ・アレンが語る『マジック・イン・ムーンライト』
映画『マジック・イン・ムーンライト』より、マジシャン・スタンリーを演じたコリン・ファース(右)と、占い師ソフィを演じたエマ・ストーン(左) Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

ウディ・アレン監督の新作『マジック・イン・ムーンライト』が4月11日(土)より公開される。皮肉屋のイギリス人マジシャン・スタンリーが、心霊術や超能力を駆使し大富豪たちから引く手あまたの占い師の真偽を確かめてほしいという依頼を受け、謎めいたアメリカ人女性ソフィのトリックを暴こうとやっきになるうちに、彼女に魅了されていくという物語だ。

これまでも『スターダスト・メモリー』(1980年)『ニューヨーク・ストーリー』(1989年)『ウディ・アレンの影と霧』(1992年)『スコルピオンの恋まじない』(2001年)など、手品を作品のモチーフにしてきたアレン監督。今回は、疑いの目を持ちながらも次第に相手に惹かれていく悲観主義者のスタンリーに『英国王のスピーチ』のコリン・ファースを配し、何もかも正反対な性格の彼を翻弄する楽天主義なソフィに『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のエマ・ストーンを起用し、ふたりの恋の駆け引きをコミカルに描いている。

今年1月にはキャリア初のテレビ・シリーズをアマゾン・ドット・コムのインスタント・ビデオで制作することを発表するなど、精力的に制作を続けるアレン監督が今作について語ったインタビューを掲載する。

恋はとても複雑だ

──本作のアイデアはどこから得たのですか?

若いころ、ずっとマジシャンに憧れていたんだ。昔からマジックやトリックなんかに興味があって、ステージで披露される手品やトランプマジック、マジシャンを見るのが好きだった。いつも興味津々で見ていた。だから手品を題材にした作品の構想はずっとあった。これまで、僕の作品の中で手品は何度も登場している。

映画『マジック・イン・ムーンライト』のウディ・アレン監督
映画『マジック・イン・ムーンライト』のウディ・アレン監督(右)、エマ・ストーン(左)

──舞台となる1920年代という時代背景について教えてください。そんなに心霊術が流行っていたのですか?

当時はいろいろ言われていたんだ。アーサー・コナン・ドイル(『シャーロック・ホームズ』の生みの親)のような著名人が、この問題をひどく真面目に取り扱った。心霊写真のようなあらゆる案件に人々は興味津々で、心霊術はとても一般的だったんだ。

──そんな時代を背景に「恋の魔法」について描こうとした理由を教えてください。

誰かに出会ってその人にたちまち魅了されてしまうというのは、説明のつかないことだ。人はそこに理由を見つけだそうとする。「その人のスタイルが好きだ」「その人のユーモアのセンスが好きだ」「考え方が好きだ」「容姿が好きだ」とね。でも結局のところ、理由は絶対わからない。なぜなら同じスタイルで同じユーモアのセンスで、いろいろ同じだったとしても、別の相手には魅了されないからだ。恋はとても複雑だ。なぜならそれは実体のないものだからね。でもそうした恋こそ本物なんだと思う。

映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.
映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

今から100万年後には、コンピューターで何が起きているかを数式グラフで表すことが間違いなくできるようになるだろう。だけど現在は、そして予測できる将来においては、この状況が変わるなんて保証はどこにもない。人が誰かに出会い、その相手に対して前向きでロマンティックな感情を抱くというのは、間違いなく魔法のようにワクワクすることなんだよ。

映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.
映画『マジック・イン・ムーンライト』より、コリン・ファース(左)とエマ・ストーン(右) Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

俳優から自発的に出てくる芝居こそ、とても良いもの

──心霊術を駆使する占い師の嘘を暴こうとするマジシャンのスタンリーにコリン・ファースを起用した理由は?

彼とは初めてだったが、本作を撮影するにあたってハンサムで威勢がよい英国人俳優を探していたんだ。この条件を満たす俳優はそんなに多くはいないけれど、コリン・ファースはこの条件をすべてクリアしていた。ハンサムだし、芝居は上手いし、ユーモアのセンスもある。チャーミングで、素晴らしい人物だ。彼のスケジュールが空いていて、撮影に参加してもらえて僕は本当にラッキーだったと思う。

──彼と仕事をしてみて、どうでしたか?

最高だった。イメージ通りの人物だった。とても頭がよくて、教養があって、紳士的。一緒に仕事をして楽しい俳優だった。気難しいとか、問題を起こすとかそういったことは一切なく、現場でも気持ちのよい人だったね。

映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.
映画『マジック・イン・ムーンライト』より、ソフィ役のエマ・ストーン(左)とソフィの母ベイカー夫人を演じたマーシャ・ゲイ・ハーデン(右) Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

──そして、スタンリーを惑わす快活な女性占い師ソフィにエマ・ストーンをキャスティングした理由は?

彼女は、今やアメリカ人の誰もが愛するスターだ。美人だし、才能がある。しかも面白いし、演技も上手い。今や皆の憧れの的となっている。彼女とは、この作品のあと、すでに別の作品でも一緒に仕事をしていて、本作とは違ってとてもシリアスな役柄を演じているよ。

映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.
映画『マジック・イン・ムーンライト』より、コリン・ファース(左)とエマ・ストーン(右) Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

──現場でのエマはいかがでしたか?

素晴らしかったね。彼女は非常に頭が切れる。それに面白いし、とても仕事がしやすい女優だ。彼女と仕事をすることができて、本当に楽しかった。だから、次の作品も彼女に出てもらおうってことになったんだ。役柄のイメージに合えば、いつでも彼女を起用したいよ。もちろん彼女のスケジュールが空いていればね。

──監督は撮影前にあまりリハーサルをしないとお聞きしましたが、今回もそうですか?

先にいろいろやってしまうと面白味がなくなってしまうからね。だから俳優にはセットに入ってもらって、その場で芝居をやってもらうようにしている。彼らの思うままの演技が非常に良い場合が多いんだ。自発的に出てくる芝居こそ、とても良いもの。もし僕のイメージ通りの芝居ができていない場合は、撮り直しをするだけだよ。それは映画の良いところだね。気に入らなければボツにして、気に入るように撮り直すことができるのだから。

(オフィシャル・インタビューより)



ウディ・アレン(Woody Allen) プロフィール

1935年、ニューヨーク州ブルックリン生まれ。クライヴ・ドナー監督作品『何かいいことないか子猫チャン』(65)で映画俳優として、翌年『What's Up, Tiger Lily?』(66/未)で監督としてデビュー。その後、『スリーパー』(73)などのシュールでスラップスティックな喜劇を次々と世に送り出し、1977年には都会的に洗練されたラブ・ストーリー『アニー・ホール』(77)を発表。同作品でアカデミー賞主要4部門を受賞した快挙に続き、『インテリア』(78)、『マンハッタン』(79)も絶賛され、アメリカを代表する映画作家のひとりとして認知されていった。 1980年代には私生活のパートナー、ミア・ファローと組み、『カイロの紫のバラ』(85)、『ハンナとその姉妹』(86)などを発表。1990年代も『夫たち、妻たち』(92)、『マンハッタン殺人ミステリー』(93)、『ブロードウェイと銃弾』(94)、『誘惑のアフロディーテ』(95)、『ギター弾きの恋』(99)などの多彩な快作を連打した。2000年代も『マッチポイント』(05)、『恋のロンドン狂騒曲』(10)発表の後、『ミッドナイト・イン・パリ』(11)で25年ぶりの作品賞を含むアカデミー賞4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。『ローマでアモーレ』(12)に続き、『ブルージャスミン』(13)で、主演のケイト・ブランシェットにオスカーをもたらし、自身もアカデミー賞脚本賞にノミネートされた。次作はエマ・ストーンの2作品続けての登場とホアキン・フェニックスのキャスティングが早くも話題となっている。舞台をアメリカ・ロードアイランド州に移し、繰り広げられるミステリーだ。




映画『マジック・イン・ムーンライト』
4月11日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ他、全国公開

映画『マジック・イン・ムーンライト』より Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.
Photo: Jack English © 2014 Gravier Productions, Inc.

頭が固くて皮肉屋のイギリス人男性スタンリーは、中国人に扮装し、華麗なイリュージョンで喝采を浴びる天才マジシャン。そんなスタンリーが友人の依頼を受け、ある大富豪が入れあげているアメリカ人占い師ソフィの真偽のほどを見抜くために、コート・ダジュールの豪邸へ乗り込んでいく。ところが実際に対面したソフィは若く美しい女性で、スタンリーに"東洋のイメージが浮かぶ"などとあっと驚く透視能力を発揮。この世に魔法や超能力なんか実在しないという人生観を根底からひっくり返されたスタンリーは、笑顔も抜群にチャーミングなソフィに魅了されてしまう。しかし素直に想いを打ち明けられない2人の行く手には、大波乱が待っていた。はたして悲観主義者のマジシャンと楽天主義者の占い師のもつれにもつれた恋を解きほぐす“魔法とトリック”は存在するのだろうか?

監督&脚本:ウディ・アレン
出演:コリン・ファース、エマ・ストーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ハミッシュ・リンクレイター、サイモン・マクバーニー、アイリーン・アトキンス、ジャッキー・ウィーヴァー
製作:レッティ・アロンソン、スティーヴン・テネンバウム、エドワード・ウォルソン
撮影:ダリウス・コンジ
美術:アン・セイベル
編集:アリサ・レプセルター
衣装:ソニア・グランデ
提供:KADOKAWA、ロングライド
配給:ロングライド
2014年/アメリカ=イギリス/98分/シネマスコープ/カラー/5.1ch

公式サイト:http://www.magicinmoonlight.jp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/MagicInMoonlight
公式Twitter:https://twitter.com/mim_movie


▼映画『マジック・イン・ムーンライト』予告編

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