骰子の眼

cinema

2015-03-27 12:00


韓国ノワールの傑作『新しき世界』スタッフが再集結した恋愛ドラマ『傷だらけのふたり』

フィルムノワールの登場人物にも「家族があり、恋愛がある」それを撮りたかった
韓国ノワールの傑作『新しき世界』スタッフが再集結した恋愛ドラマ『傷だらけのふたり』
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『新しき世界』のファン・ジョンミン、ドラマ『がんばれ!クムスン』のハン・ヘジンが主演の映画『傷だらけのふたり』が2015年4月4日(土)公開となる。

本作で長編映画デビューを飾ったハン・ドンウク監督は、10代で撮影現場に入り、照明部や演出部、助監督など、15年近くスタッフとして実績を積んできた。ハン監督が助監督に就いた『生き残るための3つの取引』(10)『新しき世界』(13)に出演していた俳優ファン・ジョンミンと、「いつか濃厚なラブストーリーを撮ろう」という話が持ち上がり、彼の推薦により監督に抜擢されて、本作の企画がスタート。撮影監督ユ・オク、照明のペ・イリョク、プロダクション・デザイナーのチョ・ファソンほか、『新しき世界』を担った制作スタッフが再結集し、ハン監督のデビュー作を支えている。

webDICEでは、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014で上映された際に来日した監督のQ&Aを掲載する。




フィルムノワールの登場人物にも「家族があり、恋愛がある」それを撮りたかった
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014 ハン・ドンウク監督Q&A

『傷だらけのふたり』ハン・ドンウク監督
ハン・ドンウク監督

──クンサンを舞台に選ばれている理由。また、クンサンを選んでいるということは『八月のクリスマス』(1998年/ホ・ジノ監督)へのオマージュなのでしょうか?

『八月のクリスマス』は大好きな作品ですが、オマージュではないんです。私自身クンサンという都市がとても好きだったので映画の舞台に選びました。クンサンはソウルとは違った、なにかドラマがあるような場所で暖かい感じがする街なんです。シナリオを書くときも、クンサンという都市の独特の情緒や印象を映画の中に込めたいと思い、クンサンでシナリオを書きました。

この映画の主人公はもちろんテイル(ファン・ジョンミン)とホジョン(ハン・ヘジン)なんですが、もう一人主人公がいるとしたら、このクンサンという街も主人公だと思います。すでに過去の街というような印象もあるのですが、とても情緒のある都市で主人公の雰囲気とこの街の雰囲気がとても似ているような気がしました。

『傷だらけのふたり』

──助監督の時代には『悪いやつら』『新しき世界』など、かなりハードな映画の世界にいたと思うのですがどのような切っ掛けでメロドラマをやりたいと思われたのでしょうか?

私の性格はハードでワイルドな感じですから現場でもちょっと怖い感じなんですよ。なので自分がもし監督をすることになったらアクション映画とかフィルムノワールの作品を撮るんじゃないかなと思っていたんです。でも少し考えが変わったんです。

スタッフとして参加していた作品の中には荒削りの男が出てくるものが多かったんですが、そういう人達にも家族は居るし、そういう人たちも恋愛はする訳です。ところが、なかなかその部分を描いた作品が無いように感じました。だから、自分としてはそういう人たちの恋愛とか、彼らを取り巻く家族のことを撮ってみたいなって思うようになったんです。このことがきっかけとなり、見た目が荒っぽい人たちの恋愛がどういうものか一度やってみようと、この作品を作りました。次も心暖まる作品を取りたいと思っていてもまた、考えが変わってしまうかもしれない。けれど今は心温まる作品をもう少し撮り続けたいと思っています。

『傷だらけのふたり』

──『傷だらけのふたり』は、英題『MAN IN LOVE(恋に落ちた男)』タイトルでしたが、観ていて『恋に落ちた女』でも良かったんじゃないかなと思いました。監督は、"恋に落ちる"ような大恋愛の経験はありますか?

今ちょうど恋に落ちているところです(笑)。この作品を作っている最中に激しい恋に落ちてしまって…今まさに大恋愛中です!

『傷だらけのふたり』
ホジョン(ハン・ヘジン)

──恋愛シーン、アクションシーン共にテイル役のファン・ジョンミンさんの魅力が詰まった作品だなと思いました。監督は『生き残るための3つの取引』の頃からお付き合いがあると思うのですが、ファン・ジョンミンさんへの思いがあったら教えてください

彼とは企画の段階から話をしていました。ファン・ジョンミン先輩はおいしいモノやお酒をよくご馳走してくれるいい先輩なんです。俳優としてはもちろんのこと、本当に一緒に仕事をして色々と学ぶ点の多い方です。監督以上にキャラクターのことを一生懸命研究してくださいますし、今までの豊富な経験から沢山の意見を出してくださいます。現場にいるときはその中にいる一番上のお兄さんという感じで現場のまとまりを考えてくださって、場を和ませてくれる本当に懸命な俳優さんでとても好きです。

『傷だらけのふたり』
テイル(ファン・ジョンミン)

──夜のシーンでもオレンジ色の照明を使うなど、最初から最後まで明るい色で撮られていてそれが主人公テイル(ファン・ジョンミン)の優しさを表しているよう感じました。照明について工夫されたことはありますでしょうか?

今回はジャンルとしてはメロドラマ、ラブストーリーということで照明のトーンにこだわりました。撮影監督と照明監督と共に、シーンごとにしっかりとカラーやトーンで主人公たちの内面を描いてみようと話し合っていました。

なのでメロドラマらしく、コントラストをつけながらそのシーンが持っている雰囲気や、ひとつのシーンの中で今までは見えてこなかった登場人物達の違った側面を照明で引き出せるのではないかと思いかなり色にも気を配りました。だから照明や色に気付いて頂けてとても嬉しいです。

『傷だらけのふたり』

──監督が今回撮影されて苦労された点、もしくは裏話などエピソードがあれば教えて下さい

苦労といえばこの映画の最初から最後まで、ずっと苦労のしっぱなしでした。ですが特にこれが大変だったというのは無かったです。スタッフや俳優の皆さんと本当に楽しく撮影できたからです。ただ夏の暑い時期に撮影していたので、暑さは大変でした。

撮影の時の裏話とかビハインドストーリーとか、エピソードとか、撮影当時は本当にたくさんあった気がするんですが、時間が経ってみると本当に楽しいことしか覚えてないですね。楽しく皆さんと遊びながら、休みの日にはお酒やお肉を食べながら撮影していたので、本当に楽しい記憶しかないですね。大きな事件や事故はありませんでした。

──今後の展望等あったら教えて下さい

今、シナリオを執筆しています。心温まる作品を撮りたいなと思っていて、内容も私たちの身の回りに起きるような物語。自分と重ね合わせたり、自分を振り返るような映画を撮りたいと思ってシナリオを書いています。

『傷だらけのふたり』


2014年7月26日(土)SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014 Q&Aより



ハン・ドンウク(Dong-Wook Han)

10代で映画界に飛び込み、イム・グォンテク監督の『酔画仙』(02)『下流人生~愛こそすべて』(04)では照明部、リュ・スンワン監督の『ARAHA アラハン』(04)『クライング・フィスト』(05)では演出部に参加。さらに、リュ・スンワン監督作『生き残るための3つの取引』(10)、ユン・ジョンビン監督作『悪いやつら』(12)、パク・フンジョン監督作『新しき世界』(13)で助監督を務め、端役ながら俳優もこなす。『新しき世界』を撮影中の2012年夏、製作会社サナイ・ピクチャーズの社長と俳優ファン・ジョンミンが、十数年にわたり、スタッフとして撮影現場に携わってきた実績と実力を見込んで、本作の監督を依頼。既存の脚本を1年かけて脚色し、満を持しての長編監督デビューを果たす。




映画『傷だらけのふたり』
2015年4月4日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋 他 全国順次公開

監督:ハン・ドンウク
製作:パク・ミンジョン
脚本:ユ・ガビョル、他
出演:ファン・ジョンミン、ハン・ヘジン、クァク・ドウォン、チョン・マンシク、キム・ヘウン、ナム・イル
英題:MAN IN LOVE
原題:남자가 사랑할 때
2014年/韓国/120分/5.1ch/カラー/シネマスコープ/韓国語/日本語字幕:根本 理恵
公式サイト


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