ジェフ・ミルズ「ビジター(訪問者)」(写真:葛西龍)
音楽家ジェフ・ミルズによる一日限りのエキシビションが3月23日(月)、天王洲アイル寺田倉庫にて開催された。
「WEAPONS:—音楽に関連するアバンギャルドなオブジェクトの小さなしかし強力なエキシビション」と題されたこの展示会では、1942年にロサンゼルスで起きたUFO目撃事件「バトル・オブ・ロスアンジェルス」という出来事にインスパイアされ、プロダクトデザイナー、スズキユウリ氏の協力のもと制作されたドラムマシーン「ビジター」が世界初公開された。
「バトル・オブ・ロスアンジェルス」とは、1942年2月24日から25日の未明にかけて。ロスアンジェルス上空に未確認飛行物体が目撃され米軍が攻撃を仕掛けるものの、謎の物体は破壊されることなく姿を消したという事件。
今回の展示ではそのほか、50年代のフィルム・ノワールを基調にしたセッティング、ミルズによる音楽を背景にこの「バトル・オブ・ロスアンジェルス」に端を発したヒステリアを再現した「アラート(警告)」、オリジナルのアナログレコードを使用した「トゥモロー+X」、「ビジター(訪問者)」と「ビジター(訪問者)」使用時のためにオランダ人デザイナー、ユロエン・フォン・トゥイルがデザインしたスーツ「ストレンジャー(謎の男)」が公開された。
当日は、ジェフ・ミルズ本人も来廊し、作品について同時通訳を介して解説を行い、自ら「ビジター」の演奏も披露した。彼は今作について「人間性は好奇心と探究心によって進化してきた。思考と想像が実現する方法を見つけ出したときに不可能は可能になる。つまり夢見ることによって何事も可能になるという理論が私たちの想像力をよりたくましくしてきたと言える」と、アートにおける想像力の大切さ、そしてサイエンス・フィクションの可能性について語った。
会場へは寺田倉庫G1号を5Fまでエレベーターで上る。入口に設置されたインスタレーション。
5Fのフロア全体がエキシビション会場となっている。
「WEAPON」会場風景(写真:葛西龍)
1.「ビジター(訪問者)」
1942年ロサンジェルスで起きたUFO目撃事件「バトル・オブ・ロスアンジェルス」にインパイアされデザインされた、サウンド・アーティスト鈴木有理氏とのコラボレーションによるドラムマシーン。事件のあった日に目撃された菱型の未確認飛行物体がモチーフになっている。ミルズによると、下部の3本の脚は、当日地上と物体の間を結んでいた光線を表現したものだという。
「ビジター」を操作するジェフ・ミルズ
「ビジター」を操作するジェフ・ミルズ(写真:葛西龍)
2.「ストレンジャー(謎の男)」
ジェフ・ミルズが「ビジター」使用時に着用するためにオランダ人デザイナー、ユロエン・フォン・トゥイルがデザインしたスーツ。事件当日、早朝であるにもかかわらずフォーマルな格好をした数人の男たちが目撃されたことから、このスーツのデザインが生まれた。
ジェフ・ミルズ「ストレンジャー」(写真:葛西龍)
3.「バトル・オブ・ロスアンジェルス」
1942年ロスアンジェルスで起きたUFO目撃事件「バトル・オブ・ロスアンジェルス」に関するオブジェクト。中古のラジオと古新聞を素材に、戦時中の様々なニュースを家庭に届けるメディアであったラジオから、この不思議な事件に関する情報を人々は入手したことが表現されている。
「バトル・オブ・ロスアンジェルス」の前で解説するジェフ・ミルズ(写真:葛西龍)
ジェフ・ミルズ「バトル・オブ・ロスアンジェルス」(写真:葛西龍)
「WEAPON」会場風景
「WEAPON」会場風景
4.「トゥモロー+X」
ジェフ・ミルズが制作した白いアナログ盤を使用したインスタレーション。レコードは、すべて違う内容の音楽が刻まれており、世界に2枚づつしか存在しない。この特注アナログレコードが、真鍮のホルダーにより固定されている。
ジェフ・ミルズ「トゥモロー+X」(写真:葛西龍)
ジェフ・ミルズ「トゥモロー+X」
ジェフ・ミルズ「トゥモロー+X」(写真:葛西龍)
5.「アラート(警告)」
「バトル・オブ・ロサンジェルス」に関わるヒステリアと、1940年代のイメージを表現したインスタレーション。1942年2月26日の地方紙、「Los Angeles Examiner」。第二次世界大戦中だったため、UFOの空中飛行目撃に関してはアメリカ軍と政府が事実を隠蔽しようとしているという噂を封じ込めるため、「日本軍の攻撃ではなかった」という論調に終始している。
ジェフ・ミルズ「アラート」(写真:葛西龍)
ジェフ・ミルズ「アラート」(写真:葛西龍)
「WEAPON」会場風景
「WEAPON」会場風景
「WEAPON」会場風景(写真:葛西龍)
「WEAPON」会場風景(写真:葛西龍)
「WEAPON」会場風景
「WEAPON」会場風景(写真:葛西龍)
[取材・文・クレジット記載以外の写真:駒井憲嗣]
JEFF MILLS presents WEAPONS – a small but potent collection of music affiliated avant-garde objects
「WEAPONS : — 音楽に関連するアバンギャルドなオブジェクトの小さなしかし強力なエキシビション」
日時:2015年3月23日(月)19:00–22:00
会場:天王洲アイル 寺田倉庫 G1号5F 特設会場
〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10
主催:Axis Records
制作:UMAA Inc/ TodaysArt.JP
協力:寺田倉庫株式会社、Gibson Guitar Corporation Japan