骰子の眼

cinema

2015-02-19 18:22


「毎朝目覚めたら、今日もまだ生きていると思う」86歳になったホドロフスキー新作を語る

新作『エンドレス・ポエトリー』“現金とポエティックマネー”を両替する資金集め実施中
「毎朝目覚めたら、今日もまだ生きていると思う」86歳になったホドロフスキー新作を語る
アレハンドロ・ホドロフスキーが2月15日に行ったYouTube Live会見より

2015年2月15日、アレハンドロ・ホドロフスキーが、新作『エンドレス・ポエトリー』の製作にあたり、YouTube Liveで会見を行った。同日よりアメリカのクラウドファンディング・サイト、キックスターターで製作資金を募るプロジェクトがスタートしている。

本作は昨年日本で公開された『リアリティのダンス』の続編とも言える作品で、チリの首都サンティアゴを舞台に、青年時代のホドロフスキーと当時のアバンギャルドな詩人、アーティスト、パフォーマー、ミュージシャンなどとの交流を、現実とフィクションを織り交ぜたマジック・リアリズムの手法と構成で描かれる。この時代にホドロフスキーの拠りどころとなった「詩」をテーマに、現在の映画に失われた詩的な力を蘇らせ、観た人が真の自分を発見する手がかりになる、まさに"生きること"への招待ともいうべき作品になるという。

3月22日まで35万ドルを目指し行われているキックスターターのプロジェクトでは、ホドロフスキー監督の「世の中のすべてのお金は詩に換えられるべきだ」という考えから、寄与される金額を、それと同額のホドロフスキーの「ポエティックマネー」(DINERO POÉTICO)と両替することで製作資金を集める。

今回webDICEでは、会見の全文を掲載する。




アレハンドロ・ホドロフスキー監督
『エンドレス・ポエトリー』製作発表会見

【私にとって映画は自分を思い出すためのものだ】


今日の会見にあたり、何も準備しないようにしていた。あなたたちに話すことをあらかじめ準備したくなかったんだ。なぜか?それは心の奥の真実を探していたからだ。自分が何を言うか知りたかった。

あと2日で86歳になる(*2月17日が誕生日)。かなりの歳だ。なぜ86歳にもなって、映画を作るために闘っているのか?これ以上に重要なものは何もないからだ。明日にでも死んでしまうかもしれない人間にとって、なぜ映画を作ることが、それほど重要なことなのか?なぜなら86歳にもなると、毎朝起きてこう思うのだ。「まだ生きてるぞ」と。生きていることに満足するのだが、もしかすると最後の日かもしれないとも思う。なぜ映画を作るのか?映画とは何なのか?ただ面白おかしい見世物のような映画がある。もちろん、そういうものも必要だ。だって、この世界では誰もが皆、身の回りで起こるすべてのことにイライラしているだろう?地球を破壊しているのは私たちだとさえ言う人もいる。

そうすると、自分を忘れるために映画を見に行く必要がある。おそらくそれも必要なのだろうが、私にとって映画とはそういうものではない。私にとって映画とは自分を忘れるためではなく、自分を思い出すためのものだ。だが自分を思い出すとはどういうことだろうか?何を思い出せるのか?私にとって映画こそが本物のアートである。アートとは何か?自分の内側にある美を探すこと。それこそがアートだ。私は金儲けのために映画を作りたくない。もし金がやってきたら、もっと映画が撮れるようにポケットを広げて受け取るが、それは目的ではない。他人からの賞賛を集めるのが目的でもない。観客が今まで体験したことのない出来事を作り話ででっち上げるのが目的でもない。

ENDLESS POETRY_03
アレハンドロ・ホドロフスキーのチリ時代の写真

【愛とは偉大なもので、とてつもなく崇高なものだ】


何かを伝えるためには、自分が話していることを知っている必要がある。スクリーンの中で見せるものが、ひとつの体験になる必要がある。私はこの映画で何を見せるつもりだろうか?人間、アート、美術館や映画館が私たちに教えてくれるものは何なのか?私たちはアンチヒーローなのか?尊厳のない人々なのか?私たちは奴隷なのか?嘘つきなのか?泥棒なのか?今の私たちは何なのだ?私は映画の中でそんな人を見せたくない。私はお金を得るために、お金を奪うために、みんなが闘っているような映画は作りたくない。なぜか?それから“愛”についても語りたくない。その種の“愛”は現実とは程遠く、おとぎ話だ。愛とは偉大なもので、とてつもなく崇高なものだ。そしてもっとも美しいものだ。

チベットの聖人マルパはこう言った。「人生、すべてのものは幻影である」と。あるとき、彼の息子が若くして亡くなった。彼は悲しくて涙にくれた。すると弟子が彼に言った。
「どうして泣いていらっしゃるのですか。息子さんも幻影でしょう?」
「そうとも、私の息子は幻影だ。だが、今もなお最も美しい幻影なのだ」
映画は幻影である。だが、最も美しい幻影でなければならない。私は泣き叫びたい気持ちがどういうものかを知っている。私も息子を一人亡くしたからだ(*1995年、三男のテオを事故により失う)。本当にひどいことだ。そういう時、人はこう自分に問いかける。「なぜ、私はアートなんかやっているのか、映画なんか作っているのか?」
そしてこう答える。「自分の魂を癒すために、映画をアートを作っているのだ」。私は自身を大きく開いていく必要がある。自分自身を見つけ、人間とは何かを思い出すため、人間の美しさを、あなたの美しさを思い出すために。私は人間がどれほど美しいかを見せる必要がある。まさに今。

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アレハンドロ・ホドロフスキーのチリ時代の写真

【この作品で精神的な楽園とは何かを見せたい】


1940年代、私が24歳だった頃のチリは素晴らしかった。戦争が世界中で起きていたが、チリには戦争がなかった。というのも世界から遠く切り離されていたからだ。テレビはなく、山があり、海があり、平和があった。平和に溢れ、美しかった。そこで奇跡が起こった。詩がこの国にやってきたのだ。偉大な詩人たちが最高の詩を書き始めた。そのうち二人はノーベル賞を獲った。パブロ・ネルーダとガブリエラ・ミストラルである。二人は国の父であり母であった。

そしてすべてが詩の世界になった。そこら中に詩が溢れている状況で思春期を迎えた。そこで何が詩的行為なのかを探し始めた。美と共に生きることがどんなものか知るために。思考の中で生きるとは、自由だ。心の中に生きるとは、世界とのつながり。性の中に生きるとは、創造性にあふれること。

いかにして詩的活動を起こすかは、人生の美しさを発見するためだった。その当時、確かにそれはあった。詩がそこにあった。人間がそこにいた。本当の愛があり、アーティストがいた。私たちはあらゆる種類のアートを見つけた。

それが突然、消えてしまった。私は24歳でこの楽園を去り、ヨーロッパへ向かった。そこでは世界が幻影なのか幻滅なのか分からない。今私は精神的な楽園とは何かを見せたい。詩の美しさを探っている一人の若者の話だ。それが私のやりたいことだ。私はこの過去に感謝している。詩の中で生きるとは、どういうことなのか知っているのだから。それが可能な世界を人々に知らしめたい。それはできるんだ。自分を思い出せるし、思考を開くこともできる。心を開き、創造性を開花させることもできる。わずかな持ち物で暮らしながら、豊かに生きる。そう、これが私のやりたいこと。終わりのない詩、エンドレス・ポエトリーだ。これが私のやろうとしていることなのだ。

▼2月15日にアレハンドロ・ホドロフスキー監督が行った『エンドレス・ポエトリー』製作発表




『エンドレス・ポエトリー』あらすじ
物語は、ホドロフスキー一家が故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住するところから始まる。青年アレハンドロは、自分への自信のなさと抑圧的な両親との葛藤に悩み、この環境から脱し何とか自分の道を表現したいともがいていた。ある日、アレハンドロは従兄リカルドに連れられて、芸術家姉妹の家を訪れる。そこでは、古い規則や制約に縛られない、ダンサーや彫刻家、画家、詩人など若きアーティストたちが共に暮らしていた。彼らと接していく中でアレハンドロは、それまで自分が囚われていた檻から、ついに解放される。エンリケ・リンやニカノール・パラといった、後に世界的な詩人となる人物たちとの出会いや、初めて恋に落ちたステジャ・ディアスとの会遇によって、アレハンドロの詩的運命は、新たな未知の世界へと紐解かれていく。

キックスターター:
アレハンドロ・ホドロフスキーの新作『エンドレス・ポエトリー』

『エンドレス・ポエトリー』イメージ・スケッチ ©Pascale Montandon-Jodorowsky
『エンドレス・ポエトリー』イメージ・スケッチ ©Pascale Montandon-Jodorowsky

https://www.kickstarter.com/projects/276667448/jodorowskys-new-film-endless-poetrypoesia-sin-fin

公式サイト:http://www.poesiasinfin.com/
公式Twitter:https://twitter.com/JodorowskyFilms
公式FACEBOOK:https://www.facebook.com/pages/Satori-Films/823481731051146




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http://www.webdice.jp/dice/detail/4597/

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