骰子の眼

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東京都 渋谷区

2015-02-13 13:55


インド発ミステリー『女神は二度微笑む』監督語る「観客の進化に合わせ作り手も変化が必要」

ハリウッド・リメイクも決定、カルカタを舞台に失踪した夫を探す妻を巡るサスペンス
インド発ミステリー『女神は二度微笑む』監督語る「観客の進化に合わせ作り手も変化が必要」
映画『女神は二度微笑む』より、主演のヴィディヤー・バーラン

インド映画『女神は二度微笑む』が2月21日(土)より公開される。今作は、行方不明になった最愛の夫アルナブを探すためにロンドンからインドのコルカタを訪れた妊婦ヴィディヤを中心に、2年前にこの街で起こった毒ガスによる地下鉄無差別テロ事件との関連と、アルナプの行方が描かれるサスペンス。インドのアカデミー賞と呼ばれるインド・フィルムフェア賞では、監督賞、主演女優賞など5部門を受賞している。その巧妙に張り巡らされた伏線を持つ物語の展開とラストのどんでん返しが、これまでのインド映画のイメージを塗り替える作品となっている。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニールス・アルデン・オプレヴ監督の手によるハリウッド・リメイクが決定している今作について、スジョイ・ゴーシュ監督が語ったインタビューを掲載する。

母親はどのように自分自身や自分の子供を守ろうとするのか

──本作はインドの大都市コルカタが舞台となっていますが、コルカタを選んだ理由についてお聞かせ下さい。

私はコルカタで生まれ育ちました。その為この街のことについて熟知しています。私は以前からコルカタを舞台にした作品を作りたいと思っていましたので、この地を選びました。

映画『女神は二度微笑む』スジョイ・ゴーシュ監督
映画『女神は二度微笑む』スジョイ・ゴーシュ監督

──夫を探す妊婦を演じる主演のヴィディヤー・バーランの存在感が素晴らしかったのですが、どのようにして彼女を主演に抜擢されたのでしょうか?

私はずっとヴィディヤー・バーランと一緒に仕事をしたいと思っていました。この映画の企画が浮かんだときに彼女にアイディアを伝え、それから彼女と相談しながらストーリーを作り上げていきました。そしてこの役を演じる上で、彼女には多くを説明する必要はありませんでした。彼女は主人公のキャラクターについて私と同じくらい理解してくれていましたし、インドでも抜きんでた女優ですから、自分の役柄をしっかりと演じてくれたのです。

映画『女神は二度微笑む』より
映画『女神は二度微笑む』より、妊婦ヴィディヤ役のヴィディヤー・バーラン(左)、巡査ラナ役のパラムブラト・チャテルジー(右)

──インド映画でサスペンスというのは日本人にとって馴染みがなく、とても新鮮で驚きました。この作品は監督のオリジナルのアイディアなのでしょうか?

はい、その通りです。このストーリーは私の中で、何年もかけてあたためてきたものです。最初の発想は、私の妻が最初の子どもを出産したときに、一晩で変わった彼女の姿を見たことがきっかけでした。前の夜まで知っていた彼女とは違う、別の誰かに一瞬で成長したのです。それは私にとって大変魅力的な光景でした。突然生まれた責任感、わが子を守ろうとする本能、無条件の愛。それがアイディアに結び付いたのです。また、主人公のキャラクターについては私の母親がモデルなのです。母は無条件に愛を注ぎ、全力で私たちのことを守ってくれる人です。

母親というものは全く見知らぬ環境の中でどう反応するのか?どのようにして自分自身や自分の子供を守ろうとするのか?このアイディアをヴィディヤー・バーランに相談し、そこから作り上げていきました。

映画『女神は二度微笑む』より
映画『女神は二度微笑む』より

映画は絵画のようなもの

──インド映画というと歌って踊るイメージが強いのですが、なぜそのようにされなかったのでしょうか?

映画は絵画のようなもので、一つ一つの作品に違う色彩や形式が要求されるものです。この映画では、観客がヒロインと伴に彼女の旅や捜索に加わることが求められました。そのため今回は歌や踊りは入れずに、少しドキュメンタリー的な感じも加えて撮影しました。

映画『女神は二度微笑む』より
映画『女神は二度微笑む』より

──最近日本では、今までのボリウッド映画のイメージとは異なる多種多様なインド映画が公開されているのですが、今インド映画界は大きく変化しているのでしょうか?

確かにそうです。私は世界がどんどん小さくなっていると感じています。インドの観客も進化していて、より新しい題材を経験することに許容的になっています。彼らは要求が厳しくもあり、そのため私たち製作者は油断するわけにいきません。でもそれこそ進化そのものだという気がします。私たちは進歩するために常に変化する必要があるのです。

──ヴィディヤとともに謎を解決しようと奔走する警官ラナを演じたパラムブラト・チャテルジーも素晴らしかったです。どういう経緯で彼を抜擢されたのでしょうか?

彼はベンガル語圏の映画界で人気のある俳優です。そしてこの映画にとって、彼は命の恩人なのです。実は当初、このラナの役は他の俳優が演じるはずでしたが、直前で出演できなくなってしまいました。そのときチャテルジーはイギリスにいたのですが、彼に電話をして相談したところ翌日なんと帰って来てくれて、そのまま撮影に参加してもらうことができました。彼は本当に晴らしい俳優です。私は今でも、一晩で全てがうまく行ったことに驚いています。

映画『女神は二度微笑む』より
映画『女神は二度微笑む』より、巡査ラナを演じたパラムブラト・チャテルジー(左)、指令本部次長カーン役のナワーズッディーン・シッディーキー(右)

──『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニールス・アルデン・オプレヴ監督によってハリウッド・リメイクが決まったと聞きました。

私はハリウッドリメイクのプロジェクトには関わっていないのですが、とても嬉しく思っています。本作と同じような面白さをもった作品になったらと期待しています。

(オフィシャル・インタビューより)



スジョイ・ゴーシュ(Sujoy Gosh) プロフィール

1966年5月21日コルカタに生まれる。コルカタ南部で成長し、13歳でロンドンへ移る。その後マンチェスター大で工学を修め、MBAも取得。卒業後はロイターのメディア部門南アジア担当として1999年まで勤務する。監督デビューは2003年のボリウッド映画『Jhankar Beats(ジャンカール・ビート)』で、ポップス・コンテスト「ジャンカール・ビート」に挑む3人組を描いたこの作品は、偉大な作曲家R.D.バルマンへのオマージュとなっており、カルト的人気を獲得した。続いて、日本版DVD発売済みの『アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター』(2009)などを監督。2012年には『女神は二度微笑む』で大ブレイク、批評家からも観客からも絶賛を浴び、権威あるフィルムフェア賞最優秀監督賞を受賞した。本作は興行的にも成功し、『マダム・イン・ニューヨーク』などを抑えて興収ベスト10に続く位置にランクインした。次回監督作品は、福山雅治主演作『容疑者Xの献身』のインド版リメイクと伝えられている。監督以外に俳優としても活躍しており、2013年にはリトゥポルノ・ゴーシュ監督の遺作『Satyanweshi(真実追究者)』で、主人公の人気探偵ボムケシュ・ボクシを演じた。




映画『女神は二度微笑む』
2月21日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー

女神は二度微笑む:サブ6
映画『女神は二度微笑む』より

2年前、毒ガスによる地下鉄無差別テロ事件で多くの犠牲者が出たコルカタの国際空港に、美しき妊婦ヴィディヤが降り立った。はるばるロンドンからやってきた彼女の目的は、一ヵ月前に行方不明になった夫のアルナブを捜すこと。しかし宿泊先にも勤務先にもアルナブがいたことを証明する記録は一切なく、ヴィディヤは途方に暮れてしまう。やがてアルナブに瓜ふたつの風貌を持つミラン・ダムジという危険人物の存在が浮上。それを知った国家情報局のエージェントが捜索に介入し、ヴィディヤへの協力者が何者かに殺害される緊迫の事態に発展していく。はたしてアルナブはミランと同一人物なのか、それとも人違いで何らかの陰謀に巻き込まれたのか。少々頼りなくも誠実な警察官ラナの協力を得て、なおも夫捜しに執念を燃やすヴィディヤは、2年前の無差別テロと結びつく驚愕の真相に迫っていくのだった……。

監督:スジョイ・ゴーシュ
出演:ヴィディヤー・バーラン、パラムブラト・チャテルジー、ナワーズッディーン・シッディーキー
音楽:ヴィシャール=シェーカル
原題:KAHAANI/インド映画/2012年/カラー/123分/字幕:松岡環
配給:ブロードウェイ
配給協力:コピアポア・フィルム
宣伝:メゾン

公式サイト:http://megami-movie.com/
公式Facebook:https://www.facebook.com/megamimovie
公式Twitter:https://twitter.com/Megami_movie


▼映画『女神は二度微笑む』予告編

キーワード:

インド / スジョイ・ゴーシュ


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