映画『ANNIE/アニー』より
日本でも毎年上演されるミュージカルで有名な「アニー」を、設定を現代のニューヨークに移しリメイクされたのが、本作『ANNIE/アニー』である。『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女〜』(2012年)で史上最年少のアカデミー主演女優賞候補となったクヮベンジャネ・ウォレスを主演に迎え、『ステイ・フレンズ 』(2011)や『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)のウィル・グラックがメガホンをとった。
原作は1924年からニューヨークのデイリー・ニューズ紙に掲載されたハロルド・グレイによる連載漫画。もともとの舞台は、1933年の世界大恐慌直後のニューヨークで、同じ設定で1977年にブロードウェイでミュージカルが初演され、1982年にジョン・ヒューストン監督で映画化もされた。今作は、現代の格差社会とSNSの普及を織り込んだ、まさに「今」のニューヨークを映し出している。
製作陣に名を連ねるウィル・スミスとジェイ・Zが「TOMORROW」などおなじみの名曲を新たにプロデュースし、共演には『Ray/レイ』『ジャンゴ』主演のオスカー俳優ジェイミー・フォックス、ミュージカル初挑戦のキャメロン・ディアスら豪華キャストがそろっている。
以下にウィル・グラック監督と、ジェイミー・フォックス、そしてキャメロン・ディアスのインタビューをお届けする。
写真左よりウィル・グラック監督、 ボビー・カナヴェイル(ガイ役)、クワベンジャネ・ウォレス(アニー役)、犬のサンディー、キャメロン・ディアス(ハニガン役)、ジェイミー・フォックス(スタックス役)
ウィル・グラック監督 インタビュー
──作中の悪役について
二人の悪役のうち、主な悪役はキャメロン・ディアス演じる(孤児院長の)ハニガンだけど、単に子供を施設で預かる風変りな酔っ払いとしてではなく、彼女の過去に何があってなぜそういう人物になったかも描きたかったので、そこに労力を費やした。彼女はかつて有名な歌手だったのに、とある理由で首になって、以来、その25年前の過去の栄光にひたっている。今は、子供たちを一時的に引き取ることだけが、彼女の唯一のお金を稼ぐ手段。笑えるのは、彼女が90年代の虜になっていることで、そして原作とは違って、彼女も成長していく。こんな過去を持つ女性だけれど、エンディングではアニーを犠牲にしてしまい悪かったと自分の過ちを認める。はじめは悪人だけど、最終的には正しい選択をするんだ。
そういう成長を見せないのは、ボビー・カナヴェイルが演じるガイ。彼は僕が作り上げた、まったく新しい登場人物なんだ。ガイはジェイミー・フォックス演じるスタックスの政治コンサルタントで、ジェームス・カービル〔米国の政治コメンテイター。1992年のクリントン陣営の選挙参謀として知られる〕や、カール・ローヴ〔米国の政治コンサルタント。G・W・ブッシュ政権で大統領補佐官など重要なポストを兼任し「影の大統領」と呼ばれた〕をモデルにしている。実は元々カールという役名だったのを、土壇場でガイに変えたんだ。彼は根っからの悪人で、スタックスを当選させるためなら手段を選ばない。ボビーは非常に優れた俳優で、おもしろおかしくも演じられるし、真剣で恐怖を与える演技ができるから、悪人役として素晴らしい。
映画『ANNIE/アニー』のウィル・グラック監督
──歌うシーンをリアルにするために
全篇ニューヨークでの撮影で、歌のシーンを撮るのも市内の路地やレストランの中だったから、歌に振付をしてからどこかで撮る、というやり方ができなかった。代わりに、振付師のザック・ウッドリー〔『glee/グリー』の振付家として知られる〕と、どこでその歌のシーンを撮るか、なぜそこであるべきか、どんな振付ならそのシチュエーションの中で自然でリアルに感じられるかを、時間をかけて考えた。たとえば「Tomorrow」は、アニーが区役所で親の情報が無いことがわかった帰り道で歌う。ハーレムを歩きながら、お店の窓や車の窓に反射して見える、家族や子供たちの姿を眺めている。でも、それらはアニー自身が欲しいと思っているものの幻想にすぎない。アニーは独り言のようにこの歌を歌い、誰にも歌っていることを気づかれないし、途中から一緒に歌い出す人もいない。唯一、派手な歌のシーンは、キャスト全員とエキストラが歌って踊るラスト。あることの始まりなのだけれど、最後にああやって全員が歌って踊る理由は、映画を見てもらえればわかると思う。
──ジェイミー・フォックスとクワベンジャネ・ウォレスについて
ジェイミーとクワベンジャネは、とても相性が良くて、現場でジェイミーはまるで彼女の父親のようだったよ。ニューヨークでの撮影中、クワベンジャネはニューオーリンズに住む自分の家族と離れていたから、ジェイミーが親代わりになって彼女の面倒を見ていたというか。本当に通じ合った二人が、一緒に笑って、歌って、踊っていたときのエネルギーは、周囲にもすごく良いかたちで波及したんだ。
映画『ANNIE/アニー』より
ジェイミー・フォックス インタビュー
──出演を決めた理由
アニー役のクワベンジャネは、並はずれた才能の持ち主だし、キャメロン・ディアスをはじめとする他のキャスト、ローズ・バーンやボビー・カナヴェイルも優れた役者ばかり。こうした俳優たちと共演できる機会を逃すわけにはいかなかった。
──役の葛藤について
とても裕福な人と、とても貧乏な人は、両極端でありながら似ていたりする。恵まれない人は、あまりにもの辛さに、生きていく意味はあるのかと思うかもしれない。逆にすべてを手に入れてしまった人は、生きていく意味はあるのだろうかと思うかもしれない。この映画では、ある男が少女と知り合い、最初は成功するために彼女を利用しようとする。けれど、次第に彼女が持っているものに心が動かされ、彼女の愛情により心を開いていくという、とても美しい物語になっている。
グッゲンハイム美術館でのプレミア上映にて、クワベンジャネ・ウォレス(左)とジェイミー・フォックス(右)
──本作の中で好きな曲
ヘリコプターの中で歌う「NYC」。僕が演じるスタックスが、ニューヨークという素晴らしい街では、出身がどこであろうと成功するチャンスは生きている限りある、とアニーに語りかけるシーンだ。「これはあなたの物語の始まりに過ぎない。勇気があれば栄光も得られる。誰でも夢をかなえることができる」という歌詞。
キャメロン・ディアス インタビュー
──ハニガン役について
彼女のキャラクターとして皆で考えたのはのは、誰もが好きな彼女らしい部分は、忠実に残そうということだった。ただ、現代風ミス・ハニガンになっていると思う。
──世界的に人気がある「アニー」という作品について
私がハニガン役を演じると発表になったとき、社会的・経済的地位も人種も関係なく、とにかくあらゆる人たちから、「ミス・ハニガンを演じるんですか? 私はアニーが大好きなんです。私の子供時代であり、私の一部です」と言われたわ。思いもよらない人が突然、アニーの歌を唄い出したり。だから、多くの人にとってこのリメイクが作られることには、深い意味があるのだと思う。
映画『ANNIE/アニー』より
──原作の「アニー」のスピリットを引き継ぐことについて
「アニー」という物語が、いかに人々の心に触れ、人々が何度も見たいし聞きたいと思っていて、さらには、その中に現状を見出したいと思っていることがわかったわ。この映画は、オリジナルのハートもスピリットもすべて入っていて、親しみのある作品になっている。ただ、現代風になっていて、今の時代の様々な側面を象徴してもいると思う。
(オフィシャル・インタビューより)
映画『ANNIE/アニー』
2015年1月24日(土)より全国公開
ニューヨーク、マンハッタン。携帯電話会社のCEOでNY市長候補のスタックス(ジェイミー・フォックス)は選挙キャンペーン中、車にはねられそうになった少女 を偶然助ける。その少女の名前はアニー。4歳の頃、レストランに置き去りにされ、今は、横暴なハニガン(キャメロン・ディアス)が営む施設で暮らしている。10歳になるアニーは、毎週金曜日の夜、そのレストランの前で迎えにくるはずのない両親を待ち続けていた。スタックスはそんなアニーの境遇を選挙戦に利用しよう考え、彼女を引き取り、超高層ビルのペントハウスで一緒に暮らし始める。アニーも自分が有名になれば両親が名乗り出てくるかも知れないと考え、スタックスの選挙戦を利用し、協力するが、次第にふたりの心に絆がめばえていき…。
監督:ウィル・グラック
出演:ジェイミー・フォックス、クワベンジャネ・ウォレス、キャメロン・ディアス、ローズ・バーン、ボビー・カナヴェイル、アドウェール・アキノエ=アグバエ、デヴィッド・ザヤス、
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2014年/アメリカ/カラー/118分
公式サイト:www.annie-movie.jp
公式Facebook:www.facebook.com/AnnieMovie.JP
公式Twitter:twitter.com/anniemovie_jp