1980年代末から90年代初頭、日本映画のインディペンデント・シーンでは石井聰亙、黒沢清、山本政志らの流れを受け継ぎ、園子温や塚本晋也など次々と刺激的な映画を作る若手監督が現れた。その個性がひしめく時代に、圧倒的に異彩を放ち続けた存在、福居ショウジン。
映像制作集団「ホネ工房」を率い、1万人を超える驚異的な観客動員を果たした『ピノキオ√964』や『ラバーズ・ラバー』など、海外でも上映・販売されるほどの熱狂的なファンを獲得する問題作を発表した。
それから時は流れ、2007年。福居はインディペンデント系若手監督のユニット「over8」の“映画の新しい可能性を追求する”というテーマに刺激を受け、自らの原点であるインディペンデントに立ち返った映画制作を決意する。
「over8のトークイベントに呼ばれた時に、劇場で作品を見て、インディーズの力強さを感じ、同時に創作意欲を刺激されました。すぐに映像制作集団『ホネ工房』を復活させ、制作に取り掛かりました」と福居が語るように、すぐに動き出した企画は、伝説と、そして新たな熱を巻き込み、完成した。それが『the hiding-潜伏-』である。
『ラバーズ・ラバー』から約12年ぶりの劇場公開作品であり、さぞかし福居の創作意欲を掻き立てたことだろう。
「これまで制作会社に所属してVシネやビデオの仕事をやってきましたが、現場でタブーとされている方法論をどうしても実践したくなり、実験的な意味合いを含めて、徹底的にやっていくことを考えていました。決して好き放題にやるということではなく、新しいもの生み出していく感覚です。既成概念に囚われないことがテーマでした」
そして劇場公開になった今、福居が想うことは―。
「やはり劇場で上映できるのは極上です。今、ライブ感覚に満ち溢れています。『映画はエエな』の一言に尽きます」
“潜伏”から“覚醒”へ。福居ショウジン復活祭が、幕を開ける。
『the hiding-潜伏-』
6月6日(金)までシネマアートン下北沢にて連日20:30レイトショー
監督・脚本・編集:福居ショウジン
出演:溝手真喜子、秋津ねを、友利栄太郎
製作:ホネ工房
(2008年/DV/カラー/40分)
別れた恋人のストーカー行為に怯えるヒロインが、自宅に侵入してきた謎の女の血液を媒介として、秘められた能力を覚醒させていく。予測不能のストーリーが進行する本作は、世界に類を見ないサイキック・シチュエーション・スリラー。また、90年代当時に福居の伝説を間近に体験していた、over8メンバーの蔭山周が撮影を担当したことにより、さらに凄みを増した福居の世界観を存分に体験できる作品である。
<同時上映作品>
『出れない』
*2007年発売のホラーDVD『怨廻』ディレクターズ・カット版
監督・脚本・編集:福居ショウジン
出演:伊藤主税、溝手真喜子、福山知沙、河端保成
(2007年/DV/カラー/60分)
06年にオリジナルDVD作品として発表された『怨廻』の再編集バージョン、『出れない』。監督自らが再構成し、新たなタイトルのもとに生まれ変わったこの作品もまた、福居の新境地を示すものとして往年のファンに新鮮な驚きをもたらすに違いない。
★上映期間中トークイベント開催
6月2日(月)
ゲスト:和田浩之監督、川野弘毅監督、千木良悠子監督+福居ショウジン監督
司会:蔭山周監督
6月6日(金)
上映後、監督、キャストの舞台挨拶
ゲスト:溝手真喜子、秋津ねを、友利栄太郎、伊藤主税