骰子の眼

world

2015-01-20 23:40


ユニクロの中国の下請け工場の劣悪な労働環境が明らかに

日本と香港のNGOが報告書を発表「低価格競争を抑えるための構造的な問題解決が必要」
ユニクロの中国の下請け工場の劣悪な労働環境が明らかに
SACOMによる報告書より、上半身はだかで織物工程の問題を直している労働者。

日本のブランド・ユニクロの中国国内における主要な製造請負企業であるPacific Textiles Holding LtdとLuenthai Holding Ltd の2社について、香港を拠点とする労働NGOであるSACOM(Students and Scholars Against Corporate Misbehaviour )が潜入調査を実施。 労働者への聞き取り調査も行い、調査結果をまとめた報告書を発表した。これにあたり、SACOMの代表が来日し、日本のヒューマンライツ・ナウと合同で記者会見と報告会を実施。今回の報告で、ユニクロの下請け会社の劣悪な労働現場が明るみになった。

15日に行われた記者会見では、共同で声明を発表したSACOMのアレックス・チャンさんとヒューマンライツ・ナウの伊藤和子さんが報告書を発表する経緯について発表。また、17日には文京区男女平等センターにて一般参加者を交えての報告会が行われた。

報告書は1月12日にヒューマンライツ・ナウのホームページで「中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書(日本語版)」として公開されたあと、1月13日に伊藤さんによる記事がYahoo!にも掲載された。

SACOMとヒューマンライツ・ナウが、中国の企業とユニクロを経営する株式会社ファーストリテイリングに求めている内容は、以下の5点。
1.労働者に対して、毎週1日の休日及び毎日の休み時間をきちんと提供すること
2.中国労働法によって、残業給料を払い、毎月残業時間の上限を定めること
3.労働省に適切な作業安全訓練を提供し、定期的な健康診断を提供すること
4.製造業者が直接的、民主的な方法で、労働者代表を専任できること
5.企業の社会的席に(CSR)を厳格に遵守すること

sDSC02484
1月20日に行われた記者会見より、SACOMのアレックス・チャンさん(中央)、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子さん(右)

多くの中国の下請け会社があるなかで、まずネットでの事前調査により、6,500人の従業員のいるPacific Textile Ltd.と、従業員4,000人のDonguang Luenthai Garment Co.Ltd.を調査工場として決定。2014年7月から8月に3、4人の調査員が潜伏し、データを集め、従業員とも接触したという。現在の中国は労働者が求められているので、容易に潜入することができた。 潜入調査の後、事実調査、事実の正確性を確かめるため、9月下旬に労働者にインタビューを行った。3、4ヵ月の準備のうえ、11月頃工場の状況のアップデートの確認を行い、レポートをまとめたという。

ユニクロ写真4
SACOMによる報告書より、労働者は織り工程のあいだ、椅子の上に立つ。調査員も目撃したように、労働者はよく椅子から落下する。

その後、レポートはまず、SACOMが拠点とする香港で報告され、その際にデモを行ったことで、香港の消費者から大きな反響があったという(http://www.scmp.com/news/hong-kong/article/1678477/uniqlo-suppliers-put-workers-danger)。

今回のレポートの公開に対し、ファーストリテイリングは1月11日に 「中国のユニクロ取引先縫製工場および素材工場における労働環境に関する指摘について」そして1月15日に「中国のユニクロ取引先工場における労働環境の改善に向けた弊社行動計画について」という報告を発表した。

報告会では一般の参加者より「残業代を問題にするよりも、平均賃金を上げるべきではないか?企業よりも、中国政府に、地方役員にコンタクトすべきではないか?」という質問については、SACOMとヒューマンライツ・ナウは「中国では価格競争が激しくなっており、縫製産業が受注を受けるには低いコストでサービスを受けなければいけない。中国の政府ではなく、企業間の問題だと思う」と回答した。

さらに伊藤さんは「人件費の安い海外の工場に生産拠点を移し、現地で低コストで生産し、自国で販売するビジネスモデルでは、コストを下げれば下げるほど下請けの工場にしわ寄せがくる。短い納期をブランドが要求し、応じられなければ取引を停止するということで、短い納期を受け入れざるをえない。低価格競争が続くかぎり、こうした事例は再現なく続くので、システムを検証すべきときなのではないか」と語った。

ユニクロ写真7
SACOMによる報告書より、労働者が非常に重い生地を一人で運ぶ様子
ユニクロ写真9
SACOMによる報告書より、排水が作業現場全体にあふれている
ユニクロ写真11
SACOMによる報告書より、化学物質は単に積み上げられているのみで、適切に保管されていない。

また、今回の報告書発表を受けて、ファーストリテイリングとSACOMおよびヒューマンライツ・ナウとの会見が1月19日に行われ、その面談の内容を公開する記者会見が本日1月20日に行われた。

この会談には、ファーストリテイリング側からは、グループ執行役員(CSR担当)担当の新田幸弘さんはじめ4名が参加。CEOの柳井正さんは参加しなかったという。

この会談のなかでファーストリテイリング側は、事実関係の公開と調査について現在調査中、双方の意見の食い違いのある4点を含め、1ヵ月程度かけて公表したいと明らかにしたいと述べ、SACOMとヒューマンライツ・ナウ側は「解決までのデッドラインを示してほしい」と解決に向けて、そして情報の透明性に関して強い要請をあらためて行ったという。

なお、この過酷な労働の原因のひとつとなっっている発注価格の見直しについてヒューマンライツ・ナウの「生活賃金が保証でき、安全な体制が撮れるような財務状況にあるのか、ユニクロの買い取り価格でそうしたことが可能なのか、という根本の問題に対応してほしい」という要望に対し、ファーストリテイリング側は「私たちはファストファッションではなく、時間をかけて商品開発をして販売していることはご理解いただきたい」という趣旨のことを語ったという。

一連の発表についてSACOMとヒューマンライツ・ナウは、ファーストリテイリングの迅速な対応に対し一定の評価を示しているものの、「昨日の面談で結果を出していく意思表示は見せていただきましたが、目に見えるような結果は出ていません。労働者が安定した生活ができるという。すべてのユニクロのサプライチェーンにおいてまだ結果を語るには時期早々だと思います。今回の会見のように、ダイアローグを深めていくことが重要です。SACOMはこれからも中国の監査をしていきます。そして、ファーストリテイリングには構造的なモニタリングを進めていただきたい。一時的な問題ではなく、根本的な問題解決に励んでいかなければいけません」(アレックスさん)と語った。

会見の最後に伊藤さんは「低価格競争で自分の着ているものがどういう過程でできているか思いをめぐらしてほしい。誰かが辛い思いをしているから低価格になっていることを想像しながら、何を買うか選んでほしい、そして、声を上げることも社会的に大きなな意味があると思います」と述べた。

(取材・文:駒井憲嗣)

キーワード:

ユニクロ / 中国


レビュー(0)


コメント(0)