骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2015-01-23 12:00


ウソみたいな真実の話だったから映画にしたかった『ビッグ・アイズ』ティム・バートン語る

「多くのアーティストが今も昔も影響されてる」ウォーホルも賞賛した絵に隠された秘密
ウソみたいな真実の話だったから映画にしたかった『ビッグ・アイズ』ティム・バートン語る
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

実在の画家マーガレット・キーンとその夫ウォルター。60年代のアメリカ、ポップアート界に衝撃を与えた〈ビッグ・アイズ〉シリーズを巡る騒動をティム・バートン監督が描いた『ビッグ・アイズ』が1月23日(金)より公開となる。自らも〈ビッグ・アイズ〉シリーズを愛し、コレクターでもあるティム・バートン監督が、エイミー・アダムスとリストフ・ヴァルツを主演に迎え、60年代以降のモダン・アートに大きな影響を与えたその独特のタッチの画の秘密について迫っている。アンディ・ウォーホールからも賞賛され、セレブリティの仲間入りを果たしたふたりにふりかかったスキャンダルを、ティム・バートン監督はどのように描いたのか。

先日発表された第72回ゴールデン・グローブ賞で、エイミー・アダムスがコメディ/ミュージカル部門の主演女優賞を受賞した今作について、ティム・バートン監督が語ったインタビューを掲載する。

「ビッグ・アイズ」は日本のアニメのようだとずっと思ってた

──マーガレット・キーンの大きな瞳の絵の魅力は何ですか?

幼い頃からずっと記憶に残ってるんだ。彼女の作品はいろんな場所に飾ってあったよ。家や病院、歯科医院、どこに行ってもね。子供ながらにすごい存在感を感じたんだ。
可愛いんだけど……なんだか恐ろしい。だから、みんながこの絵に何を感じ、興味を持つんだ。
大好きな人も、大嫌いな人もいる。そういった反応が私には興味深くてね。

ティム・バートン監督Photo:Yoshiko Yoda
映画『ビッグ・アイズ』のティム・バートン監督 Photo:Yoshiko Yoda

──彼女の作品を集めていると聞きましたが?

いくつか持ってるよ。新しい作品が多く、古い作品は少ないね。
その中でも、古い作品は実に面白い。
最初は多くの人がウォルター・キーンの作品だと思ってて……後になって本当のことに気がつくんだ。

映画『ビッグ・アイズ』より
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

──日本の“カワイイ”文化を知っていますか?若い女性はみんな「ビッグ・アイズ」のように描かれます。

ああ、知ってるよ。これは日本のアニメのようだとずっと思ってた。
どっちが先だったかは忘れたけど、日本のアニメや、この絵のような雰囲気は……今でも大きな目のキャラクターは多いけど、多くの人に好き嫌いに関係なく、影響を与えてきたんだ。そんな中である程度日本のアニメを感じさせる要素があることには気づいていたよ。

──この物語を映画にした理由は?

これは奇妙な話で、実話だけど、信じられないというか……ウソみたいな話が事実だったりするけど、これもそうだ。
私は絵に興味があり、ウォルターとマーガレットのこじれた関係の話を聞いた。
マーガレットが描いたけど、名義はウォルターで……そんなところが面白かったんだ。

映画『ビッグ・アイズ』より
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

──実在する人物を元にした映画は久々ですが、今回の作品で最も重要だったことは何ですか?

発想が気に入ったんだ。真実だけれども信じられない側面が多い。
これは『エド・ウッド』に少し似てるんだ。彼は最低の映画監督と言われても多くの人が彼の作品を覚えてる。そこが似てると思う。
この絵を嫌う人も多いが、それでも何か人の記憶に残るような強烈なものを持っている。
だからこの2つの映画には共通点がある。
どちらも実在の人物で、少し常識外れで……まるで作り話に聞こえる。

映画『ビッグ・アイズ』より
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

実際のマーガレット・キーンは内気で、とても内向的だった

──キャスティングの意図は何ですか?クリフトフ・ヴァルツとエイミー・アダムスを選んだ理由は?

クリストフは芸達者で、ウォルターにぴったりだ。
魅力的だが、いじめたり脅したり、そういう2つの面を同時に表現するのがとてもうまい。
エイミーは静かな力を表現した。ある意味、彼女の役の方が難しかったと思う。
内向的で内気な人物を演じつつ、見ている人に強烈な印象を抱かせた。
そんな2人が合わさってカップルとなるが、完全にゆがんだカップルだね。

──この映画は60年代のポップアート全盛期が舞台ですが、当時のポップアートを表現する上で気をつけたシーンや風景はありますか?

実際のところ、制作費が少なかったから、ある分だけで頑張った。
色々と工夫を凝らして当時を再現した。でも制作費は大した問題じゃなかったんだ。
この作品は人間関係が中心の映画だ。だから少しは困ったけど、大方問題ない。
むしろ急いで撮影したり、あちこちへ飛び回ったりとすごく楽しかったし、前向きに仕事をこなせたよ。

映画『ビッグ・アイズ』より
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

──マーガレット・キーンには実際に会われたとのことですが、どんな人でしたか?

内気で、とても内向的だった。なんで彼女が映画を気に入ったか不思議だったよ。
でも、自分についての映画を見ること自体が、異様な体験だと思ったね。
ましてや、その人が内気で内向的な場合は。
だから彼女にとっては、法廷に立って苦しい過去を告白することは大変なことだったと思う。

──今回の映画には目の大きいキャラクターがいますが、自分も彼女の絵に影響されたと思いますか?

もちろん。多くのアーティストが今も昔も影響されてる。たとえば私の娘も、“ビッグ・アイ”な人形をコレクションしてる。20体ほど。
こういう人物描写はディズニー映画でも見られるし、現代の画家もこういう絵を描く。好きか嫌いかは別として、多くの人が影響を受けてるんだ。

(オフィシャル・インタビューより)



ティム・バートン(Tim Burton) プロフィール

1958年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。ディズニーの特別奨学金でカリフォルニア芸術大学に入学、1979年にアニメーターとしてディズニーに入社する。短編アニメ『ヴィンセント』(82)で監督デビューを果たした後に退社し、『ピーウィーの大冒険』(85)で初めて長編映画の監督を務める。1989年、『バットマン』が世界的大ヒットを記録。続く『シザーハンズ』(90)では、ダークファンタジーと切ないラブストーリーを一体化させ、広く女性ファンも獲得する。その後も『ビッグ・フィッシュ』(03)、『チャーリーとチョコレート工場』(05)、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(07)、『アリス・イン・ワンダーランド』(10)など、多彩なジャンルを“バートン・ワールド”に塗り替え、唯一無二の映像作家として広く愛されている。その他の主な作品は、『エド・ウッド』(94)、『スリーピー・ホロウ』(99)、『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(01)、『ダーク・シャドウ』(12)、アニメ『フランケンウィニー』(12)など。映画以外にも様々な芸術活動で特異な才能を発揮、2009年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)が、スケッチからデッサンや写真、映画製作用のキャラクター模型などを集めた「TimBurton展」を開催。MoMA歴代3位の入場者数を記録し、パリ、トロントなど世界5都市を巡る。その後、展示形態をテーマ毎に変えて新たに150点の作品を加えた「ティム・バートンの世界」が、2014年3月にチェコ、11月より東京で開催されて大成功を収め、2015年2月より大阪にも登場する。




映画『ビッグ・アイズ』
2015年1月23日(金)TOHOシネマズ 有楽座他 全国順次ロードショー

映画『ビッグ・アイズ』より
映画『ビッグ・アイズ』より © Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

内気で口下手なマーガレット・キーン。彼女の描く悲しげな大きな瞳の子供たちの絵は、1960年代に世界中で大ブームを巻き起こした。──ただし、夫のウォルターの絵として。富と名声。両方を手にしたふたり。しかし、マーガレットは真実を公表し闘うと決心する。なぜ彼女は、夫の言いなりになったのか?なぜ彼女は、全てを捨てると決めたのか?アート界を揺るがす大スキャンダルの行方は?

監督:ティム・バートン
出演:エイミー・アダムス、クリフトフ・ヴァルツ
音楽:ダニー・エルフマン
美術:リック・ハインリクス
衣裳:コリーン・アトウッド
2014年/アメリカ/カラー/106分/ヴィスタ/5.1chデジタル

公式サイト:http://bigeyes.gaga.ne.jp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/moviebigeyes
公式Twitter:https://twitter.com/bigeyesfilm




『オイスター・ボーイの憂鬱な死』

奇才ティム・バートン監督による大人の絵本
フリーキーな子供たちが次々と登場、
悲しく残酷なストーリーでありながら、
キュートさとユーモアを感じさせる
バートン独特の世界が結実。

ティム・バートン:著、イラスト
サイズ:B6変型
定価:2,855円(税別)
頁:127ページ
発行:アップリンク
発売:河出書房新社

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/burton/




▼映画『ビッグ・アイズ』予告編

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