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デヴィッド・クローネンバーグ監督の新作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』が2014年12月20日(土)より公開される。
ハリウッドでリムジン運転手をしていた脚本家ブルース・ワグナーが実際に体験した話を基に、富も名声も得た完璧なセレブ一家が抱える秘密を暴き出す。意外にもデヴィッド・クローネンバーグ監督は本作ではじめてアメリカでの撮影を行った。
本作の演技で第67回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したジュリアン・ムーアをはじめ、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、ロバート・パティンソンら豪華キャストの競演も見どころだ。webDICEでは、デヴィッド・クローネンバーグ監督のインタビューを掲載する。
「ハリウッドはどうでもいい。僕はハリウッドの映画監督じゃないからね」
デヴィッド・クローネンバーグ監督インタビュー
デヴィッド・クローネンバーグ監督
脚本家ブルース・ワグナーとの友情、そしてこのオリジナル脚本をどれほど気に入ったかについて
ブルース・ワグナーだからだ。彼とは何年来の友人だし、彼の最初の小説「Force Majeure」を読んで、聡明な作家だと思った。彼は小説を10本書いている。そのほとんどがハリウッドとロサンゼルスについてだ。彼は素晴らしい作家だし、何年も一緒に何かやろうと話してきた。この作品はオリジナル脚本だが、彼の小説のトーンが色濃い。
じつは僕は映画作りに関する映画をやりたくないと潜在的に思っていた。ハリウッドはどうでもいい。僕はハリウッドの映画監督じゃないからね。でもブルースの脚本の力があまりに説得力があり、カリスマ的だったから、この脚本はぜひやらなくてはと感じたんだ。
落ち目の有名女優ハバナ(ジュリアン・ムーア)
象徴的なロサンゼルスでの撮影、美しさvs評判のよくない部分、そして初めてのアメリカの大地での撮影
この映画はハリウッドを描いている。だからロサンゼルスで5日間、ロデオドライブ、シャトー・マーモント、ハリウッドサインの下で撮影した。
重要な場所に行き、象徴的なハリウッドを撮影した。それは僕にとってユニークな経験だ。正直言って、アメリカで何かを撮影したのは人生で初めてのことなんだ。僕自身でさえショックを受けたよ。それを避けてきただけじゃなく、共同製作の契約があるからなんだ。それによるとアメリカでは金を使えない。ヨーロッパの共同製作だから、僕の映画の多くがアメリカを舞台にしていながら、この映画までアメリカで撮影したことがなかったんだ。
ロサンゼルスにはどの大都市もそうであるように、よからぬ面がある。でもここではそれを見せず、同じくこの街に存在する、美しい面を取り上げた。登場人物たちを魅了する部分だ。でも同時にそれはハエジゴクのような極めて有害な美しさなんだ。
デヴィッド・クローネンバーグ監督はじめてのアメリカ撮影
典型的なハリウッドのセレブファミリーであるワイス家、父のワイス(ジョン・キューザック)はセレブ向けのセラピストとして、TV番組も持つ成功者
映画のキャラクターとしてのロサンゼルス、逃れられない引力をもつ密集した星のような街
ハリウッドの引力はものすごい。圧倒的な引力をもつ高密度の星のようだ。近づけば近づくほど、そこから逃げるのは難しくなる。僕は、深い熱帯雨林や逃げ出すことが不可能な場所と違い、キャラクターとしてのロサンゼルスに重きを置いていなかった。
突然それが、この映画にとって重要な鍵だということが明らかになった。ロサンゼルスの魅力、特にハリウッドはキャラクターたちにとってそうだ。それが彼らをつかみ、引き付け、吸い込み、彼らは逃れられなくなる。彼らが逃げられない理由の一つは、彼らに逃げ出したいと思わせない街だからだ。でもキャラクター全員がある意味必死になって逃げだしたいと思っている。でも出来ないんだ。
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アガサを演じる難しさと、ミア・ワシコウスカの起用について
アガサ役には必要なものがある。まず、彼女は18歳に見えねばならない。彼女の中で多くのひねりや展開があるが、それが徐々に明らかになるまで、それを見せてはいけない。だから非常に繊細な女優が必要になる。とてもオープンで、毒気がなく、純粋に見えるが、徐々に危険な心の深淵を見せていく。彼女はじつは危険な人間なのだが、観客に「もちろん、彼女は最初からそうだった」と思わせるものが必要なんだ。
もっと若い、子役時代から、何年もミアのことを見てきた。彼女と話すと、とてもシンプルで率直で、浮ついてなくてオープンに見えるし、実際そうだ。でも彼女の鋭いウィットに出くわして驚かされることがある。彼女はとても愉快で、何の苦も無く演技しているように見える。監督の演出もほとんど必要ない。ちょっとしたアドバイスで、彼女は入り込む。自分でやれるんだ。
顔に火傷の後がある少女アガサ(ミア・ワシコウスカ)
幽霊に取りつかれること vs 記憶に取りつかれること
僕は幽霊を信じるのは宗教的信条だと思う。それは来世を信じることを意味する。僕にはあり得ない。僕は無神論者だ。来世は信じない。でも実人生で信じていないことでも映画は作れるかもしれない。そういう人もいると思う。だが僕は100%映画を支えたい。映画の信条は、それが意識下であろうと前面に出ていようと、僕にとってはリアルな問題だ。たとえば僕は、決して『エクソシスト』(73)を作れないだろう!それが要求する信条をもっていないからだ。
でも記憶に取りつかれるという考え方は、僕にとってはとてもリアルだ。完全に理解できる。何年も前に両親を亡くしたが、僕は両親に取りつかれ、彼らの声が聞こえ、彼らが見え、彼らを感じ、彼らの匂いがわかる。彼らがどこかに存在する幽霊だとは思わないが、彼らは僕の記憶に、僕の心に存在している。だから彼女が記憶という幽霊に、母親の記憶という幽霊に取りつかれているのは、僕にとって、ドラマとしても、心理的にも、感情的にも、完全に筋が通っているんだ。
(公式インタビューより)
役者を目指しながら、リムジン運転手をしているジェローム(ロバート・パティンソン)
映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
2014年12月20日(土)より、新宿武蔵野館他全国ロードショー
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、ロバート・パティンソン、オリヴィア・ウィリアムズ
2014年/カナダ・アメリカ・ドイツ・フランス/112分/英語/カラー/DCP
原題:MAPS TO THE STARS
公式サイト