チョン・ジュリ監督『扉の少女』(仮題)より
独創的な作品をアジアを中心とした世界から集める国際映画祭、第15回東京フィルメックスが11月22日(土)より開催される。
新進作家を紹介するコンペティション9作品から、今年の審査委員長ジャ・ジャンクー監督をはじめとする5名の審査員の選考により、「最優秀作品賞」と「審査員特別賞」が授与される。また会場での投票により選出される「観客賞」、そして3人の学生審査員がコンペティション部門の作品を対象に審査する「学生審査員賞」が選ばれる。
「学生審査員賞」は、誰もが簡単に映像を撮り、見てもらうことができるようになった現在、学生は何を感じ、どう考えているかを知ってもらいたいという思いのもと2011年に創設された。関東最大規模の学生映画のコンペティションである東京学生映画祭が、審査員の選任から賞の決定まですべてを運営し、毎回白熱する議論と審査のうえ「学生審査員賞」が選出される。
今回webDICEでは、東京学生映画祭企画委員会の菅原澪さん(日本女子大学1年)、加藤優介さん(東京大学2年)、松井友里さん(國學院大學2年)より、コンペ全9作に加え特別招待作品から気になる3作品をピックアップしてもらい、レコメンド文を寄せてもらった。
コンペティション
『彼女のそばで』
カンヌ映画祭監督週間といえば、日本からも高畑勲監督の『かぐや姫の物語』などの作品が上映された、カンヌ映画祭の中でも注目される部門です。その監督週間ですでに上映されたということで、とても期待が大きいです!障がいを持つ妹とその姉の関係を監督はどのようにみせてくれるでしょうか!じっくり見てタイトルの意味を感じとれたらいいなと考えています!(菅原澪)
監督:アサフ・コルマン(Asaf KORMAN)
原題:Next to Her
イスラエル/2014年/90分
コンペティション
『ディーブ』
塚本晋也監督が『KOTOKO』(12)で作品賞を受賞したことでも知られる、ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門の監督賞作品というだけでも期待大です!が、それだけではなく第一次大戦期のヒジャーズ地方、映画ファンなら誰でも知っている『アラビアのロレンス』と同じ舞台なんです!あの時代の映像技術でもあれだけ壮大に映し出された砂漠の風景が、2014年にどのように蘇るのか。とても楽しみな作品です。(加藤優介)
監督:ナジ・アブヌワール(Naji ABU NOWER)
原題:Theeb
ヨルダン、U.A.E.、カタール、UK/2014年/97分
コンペティション
『数立方メートルの愛』
今でもなお断続的に発生しているアフガニスタン戦争によって、アフガン難民は後を絶ちません。アフガン難民の立場である本作のジャムシド・マームディ監督は、よりリアルな気持ちを作品に映し出していることでしょう。この社会問題をどのように恋愛と絡めパワフルに描いたのでしょうか、とても気になるところです!(菅原澪)
監督:ジャムシド・マームディ(Jamshid MAHMOUDI)
原題:A Few Cubic Meters of Love
イラン、アフガニスタン/2014年/90分
コンペティション
『プリンス』
近年、ファルハーディー監督などの活躍で盛り上がりを見せるイラン映画。イスラム教社会という背景を持つ国の監督・出演者が映し出すものは、我々の平和慣れした心に突き刺さります。『プリンス』では、日本人があまりに日常的に接する映画の持つ意味や、それのありがたみを痛感できるような気がします。(加藤優介)
監督:マームード・ベーラズニア(Mahmoud BEHRAZNIA)
原題:The Prince
イラン、ドイツ/2014年/92分
コンペティション
『クロコダイル』
シネマラヤ映画祭は、フィリピン映画の良作が出揃い、各国の映画祭関係者からの引き合いも多い映画祭です。そんなシネマラヤ映画祭で多くの賞を受賞した作品が東京フィルメックスにもやってきました!本作のポイントである我が子を思う母親の姿というのは、万国共通かもしれませんが、文化を比較しながら見ても面白いのではと思っています!(菅原澪)
監督:フランシス・セイビヤー・パション(Francis Xavier PASION)
原題:Crocodile/Bwaya
フィリピン/2014年/88分
コンペティション
『シャドウデイズ』
ドキュメンタリー映画を通じて、「中国の現在」を剥き出しにしてきたチャオ・ダーヨン監督。今度は劇映画だからこそ映し出される監督自身の"想い"や"願い"を通して「中国の未来」を考えてみたいです!(加藤優介)
監督:チャオ・ダーヨン(ZHAO Dayong)
原題:Shadow Days/鬼日子
中国/2014年/95分
コンペティション
『生きる』
パク・ジョンボム監督のデビュー作『ムサン日記~白い犬』は数々の映画祭で多数の賞を獲得し、その才能を世界に賞賛されました。そんなパク・ジョンボム監督の待望の第2作ということで、今回も監督の才能があふれた作品になっていることでしょう。とても楽しみです!(菅原澪)
監督:パク・ジョンボム(PARK Jungbum)
原題:Alive/SANDA
韓国/2014年/177分
コンペティション
『扉の少女』(仮題)
舞台となったヨスは韓国の南に位置し、海が美しい都市として知られています。カンヌ国際映画祭で脚本賞、ヴェネチア国際映画祭で監督賞を獲得したことのあるイ・チャンドンによる強力なプロデュースのもと、チョン・ジュリ監督はヨスを舞台にどんな監督デビュー作品を見せてくれるのでしょうか。とても楽しみです!(菅原澪)
監督:チョン・ジュリ(JUNG July)
原題:A Girl at My Door/DOHEE YA
配給:CJ Entertainment Japan
韓国/2014年/119分
コンペティション
『ダリー・マルサン』
後悔、負い目、葛藤など、私たちは明るい気持ちだけで生きているわけではありません。ダリーと善川の設定は突飛なように見えますが、もしかしたら私たちにも当てはまることのように思えます。髙橋泉監督が何を伝えようとしているのか、とても興味がそそられます。(松井友里)
監督:髙橋泉(TAKAHASHI Izumi)
英題:DARI MARUSAN
製作:群青いろ
製作協力:カズモ
日本/2014年/103分
特別招待作品 オープニング作品
『野火』
©SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
大岡昇平の名作「野火」。55年前に市川崑が挑んだ自然と人間、そして戦争の問題に今回は塚本晋也が挑みます。塚本晋也監督が鉄男や六月の蛇で見せた「切迫する美しい恐怖」が戦争やクライマックスの“あれ”とどのように呼応し、どのような表現になるのか。野火×塚本晋也というこれ以上ない組み合わせに、ヴェネチアの一報以来、私の胸は躍りっぱなしです!(加藤優介)
監督:塚本晋也(TSUKAMOTO Shinya)
英題:Fires on the Plain
製作:海獣シアター
日本/2014年/87分
特別招待作品 クロージング作品
『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
©2014 Starmaps Productions Inc./Integral Film GmbH
『ヴィデオドローム』に代表される初期の作品の剥き出しの狂気から、『イースタン・プロミス』に代表される近年の洗練された緊張感とヴァイオレンスまで、芯を残しながら絶えず変化する、クローネンバーグはそんな監督のような気がします。今回のフィルメックスでは、それを部分的にでも網羅するようにこの最新作に合わせ、特集上映まで組まれています。クローネンバーグの世界にどっぷりつかってみましょう!(加藤優介)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ(David CRONENBERG)
原題:Maps to the Stars
配給:プレシディオ
カナダ、アメリカ、ドイツ、フランス/2014年/109分
特別招待作品
『真夜中の五分前』
©2014 "Five Minutes to Tomorrow" Film Partners
『GO』、『今度は愛妻家』、『世界の中心で、愛をさけぶ』などで知られる行定勲監督。『恋空』で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得した三浦春馬に加え、中国・台湾から起用した若手俳優たちの競演はとても楽しみです。映画制作の現場に国境は関係ないと、この映画を見て感じられたらと思っております!(菅原澪)
監督:行定勲(YUKISADA Isao)
配給:東映
英題・中国語題:Five Minutes to Tomorrow/深夜前的五分鐘
中国、日本/2014年/129分
東京学生映画祭
関東最大規模の学生映画のコンペティション。東京近郊の大学に所属する映像制作団体から作品を募集し、予選を通過した作品を本選で上映、グランプリ作品を決定・表彰する。その企画・運営の一切を学生のみで行っている。
公式HP:http://www.tougakusai.jp/東京学生映画祭企画委員会の菅原澪さん(日本女子大学1年)
東京学生映画祭企画委員会の加藤優介さん(東京大学2年)
東京学生映画祭企画委員会の松井友里さん(國學院大學2年)
第15回東京フィルメックス
2014年11月22日(土)~11月30日(日)
会場:有楽町朝日ホール[有楽町マリオン11階][地図を表示]
TOHOシネマズ 日劇[有楽町マリオン9F][地図を表示]
※上映時間・料金などの詳細につきましては、
東京フィルメックス公式サイトをご覧ください。