(サディスティックサーカス第2夜「ペイン・ソリューション」写真:Tadao Bakuya)
かつてはクラブで行われていたが、2012年からはプロレスなどの興行が行なわれるリングのあるイベント会場「新宿FACE」に拠点を移して毎年行なわれている「サディスティックサーカス2014」が9月に開催された。
主宰は銀座に「ヴァニラ画廊」など4店舗を経営するヴァニラ・グループ。
パンフによる口上は「この夜に起きたことは、決して口外してはなりません」と書かれているが、webDICEでは、ヴァニラ画廊の大沼瞳さんのオフィシャルレポートを特写と共にお届けする。
9月13日(土)、14日(日)に開催されたサディスティックサーカス2014。今年は二晩に渡り悪夢的幻想のステージが広がりました。
(サディスティックサーカス会場の新宿FACE入口 )
第1夜(Aプログラム)
(サディスティックサーカス第1夜のオープニング 写真:Tadao Bakuya)
まず第一夜のオープニングアクトは何といきなりの「戸川純&フルバンド」!バーバラ・セクサロイドが会場に響き渡り、その圧巻の女王のステージは怒濤のセットリスト。途中から高木完氏の乱入などハプニングもあり、なんとアンコールまで!
まだ熱気冷めやらぬ会場内には、客席から妖しい兎の面を付けたパフォーマーが登場。その名も戸川純の名曲「バーバラ・セクサロイド」からのオマージュから名づけた、「バーバラ村田」です。熱気あふれる会場を次第に幻想の渦に巻き込むかのように、客席内からサーカスの魔法をかけていきます。
(「バーバラ村田」写真:Tadao Bakuya)
続いて登場した「くるくるシルク」、赤・青・黄色の三人組の男衆は、鞭や金ダライなどを使用したアクロバティックでドラマティックな名物のサーカスショーにてすっかり会場は妖しい夜の見世物小屋・サーカスの煌びやかな空気に包まれました。
(「くるくるシルク」写真:Tadao Bakuya)
その艶やかな空気を吹き飛ばすように、ステージに上がったのは、劇団ゴキブリコンビナートの看板女優たちによるアイドルユニット「BBG48(分倍河原48)」!あまりに下衆であまりに可憐なリリックによる、爆発的なステージに、当初は戸惑いを隠せなかった客席も次第にその世界に引きずり込まれるようにコール&レスポンスの応酬が始まります。史上最悪にステージ上をゴミだらけにして最強のアイドル達はマイクを置いて去っていきました。
混沌の渦と大量のゴミ、そして最高の笑顔を残したまま……。
(「BBG48(分倍河原48)」写真:Tadao Bakuya)
そして第一日目の見せ場ともいうべきノルウェーからのサイドショーチーム「ペイン・ソリューション」が登場!
(「ペイン・ソリューション」写真:Tadao Bakuya)
お医者様の姿の「ヘッドマスター」、女装ナース姿の「マニアック」が何やら大きなトランクを持って登場すると、会場からはお帰りなさいの声が飛びました。(今回3回目の来日です。)そして最後に恭しく登場したのは今夜の主役、美しいドレスをまとった「プリンセス・オブ・スカーズ」。颯爽と長いドレスを脱ぎ、その美しい肌に太いフックを刺していきます。
全身にドレスの代わりに太いフックを施されたプリンセスは一気に空中へ!彼女を支えるのはその全身に刺さったフックのみ!
最高峰のサスペンションチームが魅せるのは、ただ宙づりになるばかりのサスペンションとは違います。そのフックからのびたロープを1本ずつ削いでいくヘッドマスター。フック1つにかかる比重がどんどん大きくなっていきます。観客の悲鳴とは正反対に、まるで翼を背にまとったかのように、自由に空中を乱舞するプリンセス。最後のフックが切り落とされ、華奢なハイヒールで地面に着地し、可憐にお辞儀をしたプリンセスに、会場は割れんばかりの拍手喝さい!美しくスペクタクル溢れるサスペンションショーに、拍手が鳴りやみません。
興奮冷めやらぬ内に登場したのは「フープ東京AYUMI」。そのダイナミックかつ、エロティックな迫力のフープテクニック!
(「フープ東京AYUMI」写真:Tadao Bakuya)
ようやく訪れたしばしの休憩の後、舞台にはレストランを思わせる一組のセットがありました。静寂の中、美麗なスーツを着こなし、顔面には全頭マスクを着用した異様な姿の男性、そして白いドレスをまとった美しい女性が黙々と二人で向き合い食事をしています。こちらはその独特の美学を持つ、ポーランドからのパフォーマンスチーム「スカオフ」です。穏やかな愛溢れるディナータイムの風景が繰り広げられるのかと思いきや、突然の理不尽でバイオレンスな展開によって、異様な空間が一気にステージに広がります。
(「スカオフ」写真:Tadao Bakuya)
彼らの提示する暗い闇の中で繰り広げられる、凄惨でありながら、何か静かな小説を読んでいるような美しい奇妙な光景。観客の間に何か異様な世界に来てしまったという共有感が広がります。
そして一晩目のトリは「奈加あきら」の緊縛ショー。カラビナを使わずに、竹を使用した緊縛は、縄の落ちる音、モデルの息遣い、何層にも重ねられた布の轡の擦れる音、全ての音が調和して唯一無二の、縛りという名の愛を感じさせるものでした。
(「奈加あきら」写真:Tadao Bakuya)
(新宿FACE会場内に張られた垂れ幕)
(新宿FACE会場内に張られた垂れ幕)
(新宿FACE会場内に張られた垂れ幕)
(新宿FACE会場内に張られた垂れ幕)
第2夜(Bプログラム)
あけて翌日、再びサーカスの幕があけました。
ステージ上に現れたのは、歌うお人形&メイド型アンドロイドによるユニット「その名はスペィド」が観客を巻き込みながら、そのエレクトリックでおきゃんな魅力を全開に!
(「その名はスペィド」写真:Tadao Bakuya)
そして降臨したのはもうサーカスの見所の一部である「浅草駒太夫」。そのエロティックな視線の使い方一つ一つが最高の妙技でありました。
会場に熱い空気が流れる中、ステージ上には高くセットが組上げられます。そこに登場したのはコントーションチーム「ノガラ」。驚異の軟体パフォーマンスチームです。
(「ノガラ」写真:Tadao Bakuya)
曲がってはいけない方向に曲がる体、グネグネと蠢く鍛え上げられた肉体は、幽玄の涅槃へと誘うような妖しいニンフを思わせ、続く浅葱アゲハは蝶の羽をまとい、こちらもその極限まで鍛え上げられた肉体をエアリアルシルクにのせて、宙を舞います。その磨き上げられた美しさ、輝きを四方に放出しながら、地に降り立った天女は可憐に微笑みステージを後にします。
その余韻に浸る間もなく、何かエネルギーの塊のようなものが、会場内を暴れまわります。破壊と混沌の申し子「POP HEADS!!!」です。Abe`M`ARIAのプリミティブな暴発する痙攣、そのテンションが伝染するように会場を徘徊する神林和雄。今までの幻想的な雰囲気は一変し、夢は悪夢へと変質していきます。
(「POP HEADS!!!」)
(「POP HEADS!!!」)
昨夜のパフォーマンスに続いて、悪夢の続きを見せてくれたのは「スカオフ」。
前日とは打って変わった男女逆転バイオレンス小劇場。女性パフォーマーが男性の擬似皮膚であるラテックスを引き裂いていく様子は、身震いするほど美しく官能的なひとコマでした。
(「スカオフ」)
(「スカオフ」)
(「スカオフ」写真:Tadao Bakuya)
カワイイ黒船「レディビアード」、黄金の輝き「the NOBEBO」、スピードフル・ハイ×コンテンポラリーダンス「ばい菌持ってる鳩」、最高にキレたミュージカル「ぱいまちょ歌劇団」怒濤のパフォーマンスが目白押し!
(「レディビアード」)
(「レディビアード」写真:Tadao Bakuya)
(「ぱいまちょ歌劇団」写真:Tadao Bakuya)
(「ばい菌持ってる鳩」)
(「ばい菌持ってる鳩」)
(「the NOBEBO」)
(「the NOBEBO」)
(「the NOBEBO」)
(「the NOBEBO」)
夜半を過ぎ観客のテンションも最高潮に達し、「ペイン・ソリューション」のステージが幕を開けました。マニアックが電導ドリルを鼻に突き刺し、電球喰い、全身拘束抜け、そしてサスペンションを披露すると、プリンセスも負けじと自ら全身に鈴の付いたフックをひっかけ、可憐に舞います。「お前ら血がもっと見たいか!」ヘッドマスターによる全身串刺し!挑発的でショーマンシップに溢れる最高のエンターテイメントで、一瞬たりとも目の離せない90分のショーが幕を閉じました。
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
5(「ペイン・ソリューション」)
(「ペイン・ソリューション」)
そして、サディスティックサーカスに無くてはならない「早乙女宏美」の切腹ショー。花道から登場したのは、燈籠を持った怪しく佇む美女。誰かを探しているかのように燈籠を掲げ、ゆっくりと舞台へと向かいます。今年のテーマは「牡丹灯籠」。早乙女演じるのはお露、愛しい新三郎を探していたのでした。哀しくも壮絶な愛の結末に、固唾をのんでその死を見守ります。
(「早乙女宏美」)
(「早乙女宏美」)
(「早乙女宏美」)
(「早乙女宏美」)
(「早乙女宏美」)
鮮血が飛び散った舞台にまたもや血が飛び散る出演者、「劇団ゴキブリコンビナート」の登場です。危ないファミリーミュージカル劇団、今年は新しい家族のカタチ(夫・妻・ガス屋のお兄さん)で3人まとめて串刺し!笑いと悲鳴のボディーブローが直撃!
(「劇団ゴキブリコンビナート」)
(「劇団ゴキブリコンビナート」)
そして2日間に渡るサーカスのオオトリを飾るのは、京都BarBARAの「龍崎飛鳥」。
支配するもの、支配されるものが交互に入れ替わり、眩暈が起こるような最速の縄捌きと、驚きのストーリーテリングによるショーで衝撃をもたらす緊縛のエンタテイメントが繰り広げられました。
(「龍崎飛鳥」)
(「龍崎飛鳥」)
(「龍崎飛鳥」)
(「龍崎飛鳥」)
(「龍崎飛鳥」)
夜は明けはじめ、白く靄かかった新宿。一夜の幻の悪夢のサーカスの幕が閉じます。
次にお目にかかれるのは昭和にレッツ・タイムスリップ!2015年春の温泉お座敷大宴会「春のサディスティックサーカス」、または一年後の早秋だとか。しばしの間、興奮も衝撃もおあずけです、首を長くして待ちましょう。「サディスティックサーカス」はあなたが追い求める限り、その姿を現し続けます。