骰子の眼

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東京都 中央区

2014-10-11 01:00


「強い欲望+嫉妬=愛」シャイア・ラブーフが語る『ニンフォマニアック』制作の裏側

ラース・フォン・トリアー監督がセックス依存症の女性の遍歴を全8章4時間にわたり描くドラマ
「強い欲望+嫉妬=愛」シャイア・ラブーフが語る『ニンフォマニアック』制作の裏側
映画『ニンフォマニアック Vol.1』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』が10月11日(土)よりVol.1が、そして11月1日(土)よりVol.2が公開される。『アンチクライスト』『メランコリア』に続く新作は、女性のセクシュアリティをテーマにセックス依存症の女性の思春期から50代までの半生を全8章4時間にわたり描いている。

主人公のジョーを熱演するシャルロット・ゲンズブールと彼女の思春期時代を演じるステイシー・マーティンのほか、トリアー作品の常連ステラン・スカルスガルド、そしてクリスチャン・スレイター、ユマ・サーマン、ウィレム・デフォー、ジャン=マルク・バール、ウド・キアら豪華な俳優陣が脇を固めている。

公開にあたりwebDICEでは、2回にわたり出演俳優のインタビューを掲載。まず今回は『Vol.1』の公開に合わせて、ジョーがヴァージンを捧げ、その後勤務先の上司として再会を果たす男・ジェロームを演じたシャイア・ラブーフのインタビューをお届けする。

この後『Vol.2』公開前に、ジョーが数奇な身の上を語るインテリの紳士セリグマン役のステラン・スカルスガルドのインタビューを掲載する。

僕はラースを無条件に信頼する

──この映画の制作前は、ラース・フォン・トリアーにどんな印象を持っていましたか?

僕の「偉大な5人の監督」のリストに入っている。アンドレイ・タルコフスキーと同じくらい偉大だ。褒め言葉も何も受け取らない、とても謙虚な人で、白黒はっきりしている。彼の名声は反逆者や銀行強盗への賛辞みたいだ。もし彼が厳格なクリスチャンなら「ありがとう、みなさん、感謝します」って言うだろうけれど、彼はそんな人じゃない。いわば、監督界のビリー・ザ・キッドなんだ。やりたいことは絶対やる。映画はこう作るという決め事があるけど、彼は決して従わない。彼は自分で新たな表現を発明することのできる数少ない一人だ。

シャイア・ラブーフ19 photo by Christian Geisnaes
映画『ニンフォマニアック Vol.1』より、シャイア・ラブーフ © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

──この映画の企画をどのようなきっかけで知ったのでしょうか?

ちょうどジョン・ヒルコート監督の『欲望のバージニア』(2012)に出演したときに、映画制作においてある種のエネルギーや監督のアプローチが自分が好きだということに気づいたんだ。そういう人は世界に20人くらいしかいないけれど、ラースはそのトップにいる。いつもそうした監督たちの噂や何をしているかを情報収集しているんだ。でもラースについては、彼が新たな映画を作っているのは知っていたけれど、どんな作品かは知らなかった。

ラースのファンとしては大きな仕事になるけれど、男優としてラースの映画に出演する機会は少ない。女優ならよかったよ。でも彼はそういう数少ない監督なんだ。だから僕の夢のリストにさえ載っていなかったくらい、ほとんど確率のない、叶わないものだと思ってた。でも僕のエージェントから「もしかしたらラース・フォン・トリアーの映画に出るチャンスがあるかもしれない」と連絡があったんだ。だから僕は「何でも、どんな役でもいい」と言った。その時点ではまだどんな役かは知らなかった。

リトル・オルガンスクール 08 photo by Zentropa
映画『ニンフォマニアック Vol.1』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

──脚本を読んでどう感じましたか?

いい脚本の指標とは、読んだ俳優がそこでどんな人生を送れるかにかかっていると思う。僕にとって『ニンフォマニアック』は極めてパワフルな脚本だった。「強い欲望+嫉妬=愛」がどうなるのか、今まで生きてきたなかで最も信頼のおける愛情描写だった。一番簡単で、一番シンプルで、最も事実に即している。それが僕の気持ちと結びついて、ものすごく怖くなった。ジョーのキャラクターには多くの要素があって、独特なキャラクターだと思うけれど、テーマはかなり一般的だから、多くの観客も感動してくれるだろう。

僕は敵役を探していたんだ。人生やキャリアの中で、ごく普通の人間がこういう強烈な状況に対処しなくてはならなくなる。ジェロームは、罰当たりのミニ暴君という卑屈な悪役を演じるチャンスだった。『摩天楼を夢みて』(1992年)のアレック・ボールドウィンみたいにね。

H夫人ユマphoto by Zentropa
映画『ニンフォマニアック Vol.1』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

ジェロームについてのどのシーンもパワフルで、本能的で、ヘヴィだった。脚本が翻訳だったこともある。ラースは英語で書いていなかったから、翻訳が必要だったんだ。だから英語に訳された時点で失われたものもあるだろう。場面や状況は分かっても、ジョークもよく分からなかったし、理解していなかったと思う。でも脚本の多くに僕は感動した。ラースを無条件に信頼した。彼の「最悪な表現」は、僕の最高の夢よりずっといいからだ。それくらい信頼できる人を見つけられるというのは、俳優にとってはとても幸運なことなんだ。

──彼とのコラボレーションにあたって、どのようなことを期待しましたか?

僕はもっと情報を、もっとアドバイスを、もっと演出を期待した。もっとたくさん演出してほしかったんだ。今作で、僕の意見を尊重してくれる協力者にやっと巡り合えたんだ。

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映画『ニンフォマニアック Vol.1』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

レフン親子のおかげで役をもらうことができた

──ラース・フォン・トリアーは、最終的にあなたをどのように配役したのでしょうか?

ラースが、僕が出演しているシガー・ロスの「Fjogur piano」のミュージック・ビデオの2分のフッテージを見てくれたんだ。彼は普段は、準備ができるまでどんな映画も観ようとはしない。それが起用を予定している俳優の仕事を見るためであってもね。僕はオーディションを申し入れたが、彼は断った。僕を尊重してくれたんだ。

僕は、今作の編集を担当したアンダース・レフンの息子、ニコラス・ウィンディグ・レフン『オンリー・ゴッド』(2013年)に、キャスティングにあたり会っていたので、彼のプロデューサーがラースにシガー・ロスのビデオを見せてくれた。ラースはそれを見てアンダースに、「どう思う?」と聞き、アンダースは「息子が会った。かなりいいぞ」と言った。レフン親子を通して僕は役をもらうことができたんだ。

アンダースの答えに、ラースが「わかった。彼に手紙を出してくれ」と言った。僕が受け取った手紙には「ゲームする?」と書かれていた。最初のテストは、「インターネットで自分のペニスを送ってくるまでにどのくらいかかるか?」だった。20分で送ったよ!だから彼らは「準備OK」だと思ったんだ。

▼シャイア・ラブーフが出演したシガー・ロスのミュージック・ビデオ「Fjogur piano」(2002年)

『アメリカン・サイコ』のクリスチャン・ベールのように

──ジェロームはどのような人物ですか?

ジェロームはシャルロット・ゲンスブール演じる主人公のジョーに激しく同調する。彼も違う理由から、彼女同様、愛とはかけ離れている。とても不安定な男で、虚栄心が強い。それにほかの人間を思いやる能力がほんとうに小さい、狭量で、わがままな男なんだ。

──冷淡なジェロームという役をどう演じようとしましたか?

キャラクターに入り込む方法は、「ケンカ好きか?虚栄心はどうか?」自分に問うて、自分で理解するしかないんだ。そして、それを全てを拡大させ表現する。僕は外見にこだわった。『アメリカン・サイコ』(2000年)のようにね。殺人はしないが、僕の頭の中では、あの映画のクリスチャン・ベールがイメージだった。ジェロームは、ウォール街のブローカーと同じような不安神経症で自己中心的な男だ。それに彼には暗い過去があった。それは描かれないけれど、僕にはパンドラの箱が全部開いたような感じだったし、そんなふうにこのキャラクターを捉えた。

彼は腰ぎんちゃくみたいな男だ。何の才能もないのに官僚の地位にのし上がった。映画を観てもらえれば分かると思うけれど、この男には愛の概念がない。彼の愛の概念は、ジョーの愛の概念なんだ。この「愛+嫉妬」は、本当の愛の影に過ぎない。それに彼も彼女も、愛を学んだことさえないと思う。

(オフィシャル・インタビューより)



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映画『ニンフォマニアック』海外版ポスター

シャイア・ラブーフ(Shia LaBeouf) プロフィール

1986年、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。スタンダップ・コメディアンから俳優に転身。2000年にスタートしたディズニー・チャンネルの「おとぼけスティーブンス一家」で4年間主演を務めた。その後は『穴/HOLES』(03・未)、『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』(03)、『アイ,ロボット』(04)、『コンスタンティン』(05)、『グレイテスト・ゲーム』(05・未)、『ボビー』(06)などの話題作に出演。2007年にSF超大作『トランスフォーマー』と青春スリラー『ディスタービア』の主役に抜擢され、ハリウッドを代表する若手スターに躍り出た。それ以降の出演作は『サーフズ・アップ』(07・声の出演)、『イーグル・アイ』(08)、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)、『ニューヨーク、アイラブユー』(08)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)、『ウォール・ストリート』(10)、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(11)。近作にジョン・ヒルコート監督作品『欲望のバージニア』(12)、ロバート・レッドフォード監督&主演作『ランナウェイ/逃亡者』(13)、『バレット・オブ・ラブ』(13・未)がある。




『ニンフォマニアック Vol.1』10月11日(土)~
『ニンフォマニアック Vol.2』11月1日(土)~
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開


ニンフォマニアックVol1サブ
映画『ニンフォマニアック Vol.1』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

『ニンフォマニアック Vol.1』

第1章:釣魚大全
第2章:ジェローム
第3章:H夫人
第4章:せん妄
第5章:リトル・オルガン・スクール

凍えるような冬の夕暮れ、年配の独身男セリグマンは、裏通りで怪我を負って倒れている女性ジョーを見つけた。彼は自分のアパートでジョーを介抱し、回復した彼女に尋ねた。「いったい何があったんだ?」するとジョーは自身の生い立ちについて赤裸々に語り始めた。それは、幼い頃から“性”に強い関心を抱き、数えきれないほどのセックスを経験してきた女性の驚くべき数奇な物語だった…。

監督/脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ユマ・サーマン、ソフィ・ケネディ・クラーク、コニー・ニールセン
2013年/デンマーク・ドイツ・フランス・ベルギー・イギリス/英語/カラー&モノクロ/シネマスコープ/ドルビーデジタル
原題:NYMPHOMANIAC/上映時間<Vol.1>:117分/R18+
配給:ブロードメディア・スタジオ




ニンフォマニアックVol2_メイン
映画『ニンフォマニアック Vol.2』より © 2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA

『ニンフォマニアック Vol.2』

第6章:東方教会と西方教会(サイレント・ダック)
第7章:鏡
第8章:銃

凍えるような冬の夕暮れ、年配の独身男セリグマンは、裏通りで怪我を負って倒れている女性ジョーを見つけた。彼は自分のアパートでジョーを介抱し、回復した彼女に尋ねた。「いったい何があったんだ?」するとジョーは自身の生い立ちについて赤裸々に語り始めた。それは、幼い頃から“性”に強い関心を抱き、数えきれないほどのセックスを経験してきた女性の驚くべき数奇な物語だった…。

監督/脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ジェイミー・ベル、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス、ジャン=マルク・バール、ウド・キア
2013年/デンマーク・ドイツ・フランス・ベルギー・イギリス/英語/カラー&モノクロ/シネマスコープ/ドルビーデジタル
原題:NYMPHOMANIAC/上映時間<Vol.2>:123分/R18+
配給:ブロードメディア・スタジオ


公式サイトhttp://www.nymphomaniac.jp
公式Facebookhttps://www.facebook.com/nymph.movie2014
公式Twitterhttps://twitter.com/NYMPHOMANIACjpn


▼映画『ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2』予告編 ハードVer.(R18+)

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