右:『愛しのゴースト』より © 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved. 左:『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』より © Ideale Audience & Intermezzo Films
下手の考え休むに似たり自身になりましたので『愛しのゴースト』(バンジョン・ピサンタナクーン監督作/出演:マリオ・マウラー/ダビカ・ホーン)を鑑賞したのでした。
お話は、タイの内戦で徴兵された男前のマークと助け合って生きてきた変な髪型の3枚目の友人4人が、奇跡的に生き残りマークの故郷のプラカノーンの村に辿り着き、マークの最愛の美しい嫁ナークと出征中に生まれたデーンと約束していた再会をする。マークの発案で4人の友人は、村にしばらく滞在する事に。村の人達は、マークの帰郷を喜ぶよりも、恐れており、どうもナークが実は幽霊ではないか?と4人の友人達は知る事になる。怖がりの4人の友人達はマークを助け出そうと奮闘するが、4人の中に幽霊がいるのかもと疑心暗鬼になったりしながらドタバタとお話は進み、果たしてマークとナークの愛の行方は?運命は?
『愛しのゴースト』より © 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.
元々このお話の原案は、タイに昔からある怪談で、監督は時代設定を変え肉付けしリメイクしたのです。サービス精神旺盛でいろんなジャンルが混じっているのです。ホラー的な場面は、ぼやけて幽霊的に映したり、ジワジワ恐怖を描くというよりは、テンポよくあおって、音楽も一緒になって脅かす表現をしたり、ホラーでは女性の叫び声が多いような気がするのですが、4人の友人達が恐がりなので叫びまくってるのです。4人の友人達のボケとコミカルなダンスシーンや、お化け屋敷のシーンでは観てる方がツッコミが強くなり、かなり南国気分になれるいい湯加減のコミカルさなのです。
『愛しのゴースト』より © 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.
そして恋愛シーンは王道すぎる?表現で、すごく久しぶりにスローモーションでアイドルソング的な音楽と美女の笑顔を観た気がする。要は、ロマンティックなのです。ラストはマークのナークに寄せる愛の独白的な回想で、涙がポロリするはずである(すみません!私はポロリせずに美女のナークがクシャクシャになってる表情がいいなーとずれた感情でみてました……)。
『愛しのゴースト』より © 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.
驚いて、笑って、歌って、踊って、切なくなってとサービス精神溢れる娯楽映画なのでした。見せ物的な表現(お化け屋敷とかモロですけど)は、映画の基本的な表現なのかもなーと思った次第なのです。エンドロールのおまけ映像(物語)は、とても楽しかったのです。切ない運命をひっくり返す心の広すぎるオチであるのです。鑑賞する方は、エンドロールの最後まで観てほしいのです。
まだ下手な事を考えてしまうので、いい音楽を観よう!耳で観て、目で聴くぞ!意味不明な考えが持ち上がり『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』(ステファニー・アルゲリッチ監督作)を観たのでした。
女性ピアニストの巨匠マルタ・アルゲリッチのドキュメント映画なのですが、監督がアルゲリッチの3女・ステファニーなので、所謂ドキュメント映画というよりは、ホームビデオ的な撮影なのです。こんなに寄って撮影出来るのは娘だからかもです。起き抜けのアルゲリッチの顔のアップとかは他人だと撮影するのは難しい。
『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』より © Ideale Audience & Intermezzo Films
アルゲリッチはステファニーを世界に演奏旅行に行く時にいつも連れて行って、普通の育て方はしていないのです。しかもアルゲリッチは結婚と離婚を繰り返しており、父親が違う娘があと2人いるのです。その2人の娘も登場し自分とアルゲリッチを語ったり、ステファニーの父親のピアニスト・コヴァセヴィッチが登場して娘との距離を少し縮めたりとシリアスな内容とデリケートな関係性だけれど、時間が経過してるのと、ステファニーの人間力?で、軽やか(重ーくならず)に表現されてるのです。娘と話してるというより、年下の大切な親友と接してる感じであった。
アルゲリッチは南米出身で、多分南米でヨーロッパの主要なクラシック・ピアノ・コンクールで優勝したのは初ではないでしょうか?若い時はすごく美人でテクニックもスピードとパワーを兼ね備えた希有なピアニストなのです。ステージに立った時も華があり、当時、心奪われた男性は多かったであろう(私は、バカなので美女過ぎて聴いてなかったです……グールドにいってしまった)。
『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』より © Ideale Audience & Intermezzo Films
コンサート前は、緊張でイライラしており、これで演奏できるのか?と感じるほどなのだが、しかしながら本番では、ちゃんと演奏して笑顔になる。オーケストラとのリハーサルでは、どうしてもここから速く弾いてしまう、原因が分からない、どうしていいかも分からないとなり、どうも独りで考えるとダメなようだ(ピアノソロ曲の録音物があまりないのは一人より人と一緒に弾きたいからかな……)。不安になって子猫のようになったり、虎になってピアノを弾ききったり、情緒の不安定さが魅力である(だからあの無骨な手でも繊細な音が生まれるのかも……)。破天荒な男のような生き方だけれども、少女のような弱さもあり、年をとってもまだチャーミングなところがあるのです。
『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』より © Ideale Audience & Intermezzo Films
ステファニーのデリケートな質問に誠実にアルゲリッチは答えるのですが、言葉にできない事が多く、現在進行形で人生について悩み、一生懸命ピアノを弾いて、必死で生きてるのです。インタビュー嫌いのアルゲリッチの人生と内面に迫った良質のドキュメント映画で、アルゲリッチのピアノをもっと知りたいと思ったのでした。ステファニーの愛情のある眼差しは、人生に対する和解と愛なのだろうなと感じたのでした。エンドロールでかなりレアなアルゲリッチのピアノが聴けるのです。これはかわいいのです。
結論、愛が全てだ!と普段、感じない事を感じた両作品なのでした。下手な考えするよりも、この両作品を観て、感じたら良いのです。
(文:松本章)
【映画『愛しのゴースト』を観て思い出したキーワード】
『雨月物語』上田秋成著
『今昔物語』
映画『オールウェイズ』
映画『ポゼッション』(幽霊じゃないけど、過剰で笑えた)
映画『ブレインデッド』(ホラーで笑いで愛だな)
【映画『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』を観て思い出したキーワード】
映画『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』
『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々』オリヴァー・サックス著
(文:松本章)
■松本章(まつもとあきら)プロフィール
1973年生まれ、大阪芸術大学映像学科卒。東京在住。熊切和嘉監督作品、山下敦弘初期作品の映画音楽を制作に係る。熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』、内藤隆嗣監督『不灯港』、山崎裕監督『トルソ』、今泉力哉監督『こっぴどい猫』、内藤隆嗣監督『狼の生活』、吉田浩太監督『オチキ』、『ちょっと可愛いアイアンメイデン』、『女の穴』などの音楽を手掛けた。
Twitterは @akiraise
blogは http://ameblo.jp/akira-toumei/
『愛しのゴースト』より © 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.
映画『愛しのゴースト』
10月18日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート六本木ほか全国ロードショー
タイの有名な怪談“メ・ナーク プラカノーン”をベースに、タイ歴代最高興行トップのヒットを記録したロマンティック・ホラー。戦場から奇跡的に生還した若者マークが、故郷の村で最愛の妻ナークとの再会を果たした。ところがマークと一緒に村にやってきた4人の戦友は、身重のナークが夫の出征中に命を絶え、幽霊になってこの地に留まっているという噂を耳にする。恩人マークをナークから引き離したい4人は、様々な救出作戦を試みるが、ナークの呪いに脅えるばかり。そして実はナークは生きていて、マークや4人組のひとりが幽霊なのではないかという疑惑が浮上する。
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
出演:マリオ・マウラー、ダビカ・ホーン ほか
提供:ソニー・ピクチャーズ エンターテイメント
配給:キネマ旬報DD
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
宣伝:ファントム・フィルム
© 2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:http://love-ghost.com/
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『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』より © Ideale Audience & Intermezzo Films
映画『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』
9月27日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
子供の頃から類稀な才能を発揮し、16歳で既に“生ける伝説”と呼ばれたマルタ・アルゲリッチ。麗しい美貌とは裏腹に、力強く圧倒的な演奏でたちまち世界中にその名を広げ、以降、約50年以上に渡りクラシック界の“女神”として君臨し続けている。しかし、スキャンダラスな私生活や気分屋で情熱的な性格は有名で「奔放な性格も彼女の芸術の一部」と称される。本作はそんな彼女のこれまで明かされる事のなかった演奏会の裏側、家族との姿、3人の娘たちの想い等、極めてプライベートな部分に迫り、核心を掘り下げてゆく。
監督:ステファニー・アルゲリッチ
製作:ピエール・オリヴィエ・バルデ
出演:マルタ・アルゲリッチ、スティーヴン・コヴァセヴィッチ、ロバート・チェン、シャルル・デュトワ、ステファニー・アルゲリッチ
2012年/フランス・スイス/カラー/スコープ/5.1ch/96分
原題:BLOODY DAUGHTER
配給:ショウゲート
© Ideale Audience & Intermezzo Films.
公式サイト:http://argerich-movie.jp
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