『ブラインド・マッサージ』より
今年で24回目を迎える「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014」が9月12日(金)より開催される。アジア映画に焦点をあて、現在注目を集めている優れたアジア映画を世界に紹介していくことを目的に毎回プログラミングが行われている。また、監督・主演者等をゲストとして招待し、会場でのデスカッションやシンポジウムなども積極的に行われており、映画を通してアジアの理解、国際交流の場としても機能している。今回webDICEでは、プログラミング・スタッフのレコメンドによる7作品をピックアップして紹介する。
『シッダルタ』
『シッダルタ』
出稼ぎに出した息子(12才位)を必死で探すお父さんの姿を描いています。帰ってこない息子を心配するも、お父さんは貧しく、学もなく、ツテもない。自分が探すしかないけど息子の写真すら無い。連れ去られた子ども達が集められているという町へ、段々と辿り着きます。人がいなくなる……これはインドの現実で、現在でも実際に起こっているのではないでしょうか?音楽もダンスもなしのシリアス系。インド社会に生きる事の困難さを描いています。苦労が滲み出ているお父さんを見て欲しい。最後はお父さんガンバレと拍手したくなります。
英題:SIDDHARTH/監督:リチー・メーヘター/2014年/インド=カナダ/114分
9月14日(日)12:30 キャナルシティ13 スクリーン5
9月16日(火)19:00キャナルシティ13 スクリーン13
9月20日(土)10:00 キャナルシティ13 スクリーン13
『慶州』
『慶州』
朝鮮系中国国籍のチャン・リュル監督の最新作ですが、“慶州”という場所の魅力溢れる作品に仕上がってます。夜、アパートから見える古墳がとても美しいし、自転車で古都を旅する主人公の目を通して過去と現在が共存する慶州という町が浮き上がってきます。パク・ヘイル演じる主人公は、中国・北京の大学の先生。友人の葬式の為帰郷し、友人との思い出の地、慶州を訪ねます。記憶を辿り、昔行った茶屋に立ち寄り、茶屋の女主人(シン・ミナ)と出会います。いろんな人間関係が交差し、なんとなく繋がっているような不思議な感じや曖昧さが残ります。現実と幻想が入り交じっているような気持ちになります。本映画祭では、以前にも『イリ』(2006年)、『豆満江』(2011年)でチャン・リュル監督の作品を上映していますが、前2作にあった皮膚がヒリヒリする感覚はなく、ゆったりとした時の流れにゆらゆらと浮かんでいるような感覚を覚える作品です。
英題:Gyeongju/監督:チャン・リュル/2014年/韓国/145分
9月14日(日)15:10 キャナルシティ13 スクリーン5
9月17日(水)13:00 キャナルシティ13 スクリーン13
9月20日(土)19:10 キャナルシティ13 スクリーン5
9月21日(日)14:30 キャナルシティ13 スクリーン13
『ブラインド・マッサージ』
『ブラインド・マッサージ』
中国第六世代の騎手と言われるロウ・イエ監督の最新作。この作品に政治的なものは見当たりませんが、その裏には中国(の現実)を描がきたいという監督の思いを感じました。盲人男女10人による悲喜交々の人間模様が激しく、生々しい。もつれ合い絡み合う人間関係を”感じる”様が、暗闇で生きている人の視覚以外の感覚の鋭さを実感させてました。そして何よりその演出力に圧倒されます。原作は、2011年に中国で芽楯文学賞を受賞し、演劇やテレビドラマ化もされているそうで、映画祭ディレクター一押しの作品でもあります。感覚を研ぎ澄まして感じて欲しい作品です。
英題:Blind Massage/監督:ロウ・イエ/2014年/中国=フランス/114分
9月14日(日)19:00 キャナルシティ13 スクリーン13
9月19日(金)16:20 キャナルシティ13 スクリーン13
『予兆の森で』
『予兆の森で』
今回の15作品の中でも異色な存在感を放つ作品です。まがまがしい予兆をはらみながら、カメラは移動し続けます。森に囲まれた湖の畔、凧揚げイベントに参加するために集まった学生たち。近くのレストランの料理人たちは料理のための“肉”を探していた…。原題の『Fish & Cat』にあるように、魚と猫の関係のように、危うく、事件性をもった不安が終止続く作品。何かが起るかもしれないという可能性をはらみ、ホラー的なテイストなのにホラーの現場が出てこず最後まで引っ張ります。繰り返し、ゆがむ時間の中で、予兆の森をさまよう物語は結末が予測不可能。134分ワンカットでの撮影技法も、新しい映画表現を見たいという方にもおすすめの作品です。
英題:Fish & Cat/監督:シャーラム・モクリ/2013年/イラン/141分
9月13日(土)19:10 キャナルシティ13 スクリーン13
9月15日(月・祝)18:20 キャナルシティ13 スクリーン5
9月19日(金)10:00 キャナルシティ13 スクリーン13
9月20日(土)13:00 キャナルシティ13 スクリーン13
『ロマンス狂想曲』
『ロマンス狂想曲』
アーチェンは役所で働くやさ男。ある日、北京から祖母の初恋の人を探しに来たチン・ランと出会ところから物語が始まります。美人だが、わがままで押しが強いチン・ラン。人捜しの旅で、ふたりは感じ方考え方の違いに衝突を繰り返します。近づけそうで近づけないもどかしさを感じながら、放っておけない主人公の優しさと、素直になれないヒロインの初々しさは、同世代の若者に見ても共感を覚えます。台湾と中国大陸のむずかしい関係を主人公二人に映して爽やかに描いており、衝突を繰り返しながらも、互いを信頼する関係を築いていく様子に、切なさもじんわりと残る作品です。
英題:Apolitical Romance/監督:シエ・チュンイー/2013年/台湾/90分
9月12日(金)16:00 キャナルシティ13(オープニング上映)
9月14日(日)12:40 キャナルシティ13 スクリーン13
9月16日(火)10:00 キャナルシティ13 スクリーン13
9月20日(土)19:30 キャナルシティ13 スクリーン13
『福福荘の福ちゃん』
『福福荘の福ちゃん』
お笑いトリオ・森三中の大島美幸が頭を丸刈りにし、おっさん役に挑戦した初主演作品。本年度のモントリオール・ファンタジア国際映画祭で、主演女優賞を受賞したこともあり映画祭公式招待作品の中でも注目を集める作品の1つです。福福荘というおんぼろアパートに住む福ちゃんこと中年塗装工の福田辰男は面倒見がよく世話好きだけど、女性には大の奥手。同僚もそんな福ちゃんがいつも心配。そんなある日、福ちゃんのもとを中学時代の同級生・千穂が20年ぶりにたずねてきた……。あぶなっかしい個性的な人たちに囲まれて、しごく普通なおっさんの存在と、ちょっとした言葉が魔法のように、周りの人たちへ不思議な影響を与えていきます。女性だけど男性、普通なのに不思議、見ていてほっこりするファンタジー。
英題:Fuku-chan of FukuFuku Flats/監督:藤田容介/2014年/日本/111分
9月13日(土)13:20 キャナルシティ13 スクリーン13
9月19日(金)19:00 キャナルシティ13 スクリーン13
9月21日(日)12:10 キャナルシティ13 スクリーン13
『サピ』
『サピ』
冒頭から、ぐいぐい惹きつける迫力を持った作品。緊迫感あふれるドキュメンタリータッチの映像が、普通のホラーとはひと味ちがうリアル感を高めます。悪魔祓いという超常現象を、ニュース報道の世界を通じて描かれていて、日常の中に侵入し、悪夢のように観客を襲う。見えないものに対する人々の好奇心と恐怖を刺激するメディア。その中でおこる様々な超常現象。現実と非現実の境界がだんだんぼやけ、社会に山積する問題を見失っていく感覚は見たあとにはっとさせる。単なるホラーで終わらせずメディアの現実もえぐり出し、リアルに怖い。フィリピン映画界の鬼才と評されるブリヤンテ・メンドーサ監督の凄さを実感できる一作です。
英題:Possession/監督:ブリヤンテ・マ・メンドーサ/2013年/フィリピン/102分
9月13日(土)19:30 キャナルシティ13 スクリーン5
9月15日(月・祝)18:40 キャナルシティ13 スクリーン13
9月21日(日)18:00 キャナルシティ13 スクリーン5
「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014」
2014年9月12日(金)~ 21日(日)
9月12日(金)オープニング上映(関係者・一般招待者のみ)、オープニング・セレモニー
9月13日(土)~ 21日(日)一般上映 、9月17日(水)福岡観客賞授賞式
上映会場:キャナルシティ博多内(福岡県福岡市博多区)ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13(オープニングセレモニー他、キャナルシティ博多地下1階サンプラザステージ他で開催予定)
福岡市総合図書館映像ホール・シネラ(福岡県福岡市早良区)
主催:アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会、福岡市
公式サイト:http://www.focus-on-asia.com
公式Facebook:https://www.facebook.com/asiafocusfukuoka
公式Twitter:https://twitter.com/asiafocus10