骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2014-08-15 11:45


北欧のポップセンス溢れる『シンプル・シモン』監督が語るスウェーデンのアスペルガーを巡る状況

渋谷アップリンクで8/16より上映、カラフルなデザインに彩られたハートウォームなラブコメディ
北欧のポップセンス溢れる『シンプル・シモン』監督が語るスウェーデンのアスペルガーを巡る状況
映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

スウェーデンを舞台に物理とSFが大好きなアスペルガー症候群の青年と、彼の兄との関係をカラフルな色彩で描きだし、5月の渋谷ユーロスペースでの公開以来ロングランヒットを記録している映画『シンプル・シモン』が8月16日(土)より渋谷アップリンクで上映される。北欧デザインのインテリアやファッション、スウェディッシュ・ポップをふんだんに盛り込みアスペルガー症候群の主人公を巡る出来事をハートウォーミングに描いたアンドレアス・エーマン監督が今作制作の経緯について語った。

たくさんのアスペルガーの人々からヒントをもらった

──なぜ今回、アスペルガー症候群の青年と、その兄の映画を撮ろうと思ったのですか?

私はいつも異なった視点の物語を愛してきたのです。そして、アスペルガーについて多くの本を読み、私の自身の経験から、本当にこの物語に触発されました。

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映画『シンプル・シモン』のアンドレアス・エーマン監督

──シモンにモデルはいるのですか?

シモンにはこの人、といったような特定のモデルはいません。でも私はたくさんのアスペルガーの人々からヒントをもらいました。

──シモン以外にもユニークな人物がたくさん登場しますが、彼らについてはどうでしょうか?

他の登場人物も私が創り上げたキャラクターですが、ほんの少し私自身も投影させています。

──アスペルガー症候群について、『シンプル・シモン』を撮る前と後で、何か感じ方に違いはありますか?

映画の製作中はもちろん、完成後もたくさん学ばせてもらいました。いちばんたくさん学んだことは、この世界を全く違う視点で見ている誰かを理解すること、そして人はみんなそれぞれ違っているということです。私たちはみんな唯一の存在なのです。

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映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

──この映画には、アスペルガー症候群とうまくやっていこうとするシモンの家族のシーンがいくつかあります。

この映画をみて、何かを感じ取るとすれば、メインストーリーのシモン、兄のサムそしてシモンがサムの新しい恋人にしようとする女性イェニファーから感じていただくべきだと思います。シモンの家族を少し描いたのは、子育ての難しさを表現するだけでなく、サムがどれだけ責任を負っているかを表現したかったのです。

──シモンの同僚たちもアスペルガー症候群ですよね?

そう決めてはいません。私たちは、シモンの同僚たちがもつ問題までは追わないことにしたので。

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映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

──本作はスウェーデン北部のヴェステルノーランド県の中のクラムフォッシュ、ソレフテオー、スンズヴァルという街で撮影されていますね。

そう、私はヴェステルノーランドのクラムフォッシュというバルト海に面した町で生まれ、小さい頃は同じ地方で育ちました。

──なるほど、そうなんですね。出身地だったからそこで撮りたかったのですか? あるいは、他にも何か理由があったのですか?

あの辺はとても安全で、またとてもロマンティックなところなんですよ。ほんの少し作品にも登場しますけど。私たちは友人や家族にもたくさん手伝ってもらいましたし、そのことが映画を撮ることができた大きな理由でもあります。

──そうですか。このような職場はスウェーデンでは一般的なのでしょうか? モデルとなった企業などありますか?

ええ、アスペルガーや他の障害をもつ人々を雇用している会社がスウェーデンにはあります。アスペルガーの人々は秀でた才能の持ち主でもあるので、多くのこの種の企業で大活躍していますよ。

──共同脚本のヨナタン・シェーベルイさんは社会精神医学関係の実践的な経験を積み、そこでアスペルガーの人々に関してたくさん知識をもらったと伺っています。監督ご自身も、インタビュー以外でアスペルガーの人々と会ったり、何かを一緒にしたりといった機会はありましたか?

ヨナタンにはアスペルガー関係の人たちと一緒に働いた経験がありますね。私自身は、友人や学校で出会う人々の両方で、個人的な経験があります。

──監督はスウェーデンでのアスペルガー症候群の人々を取り巻く状況についてどう思われますか?

私たちの映画や一般的な意識のたかまりのおかげで、人々は彼らの困難な状況を知り、より理解されるようになったと思います。スウェーデンのアスペルガー症候群の人々は、一般的に良く扱われ、社会生活に適応してもらうためのさまざまなプログラムも用意されています。

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映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

混沌としたイェニファーのアパートのデザインがお気に入り

──この映画のサウンドトラックは素晴らしいですね。作中では、ヨセフ・トゥールセのつくった楽曲に加え、沢山の楽曲が劇中歌として使われています。サウンドトラックはどのようにしてつくられるのでしょうか?

私はいつも編集中に自分で映画のサウンドトラックに取り組みます。いったん固まってしまえば、それらすべてが同じ世界に一緒になるように、作曲家と緊密につくっていきます。

──いま、スウェーデンのデザインは世界中で人気があり、とくに日本ではブームのようになっています。映画に出てくる部屋の壁紙や置かれているアクセサリーなどのインテリアはよく考えられていて、日本人にとって非常に魅力的です。それらすべては美術監督の方の手によるものですか?

インテリアのすべてが、美術監督のサンドラ・リンドグレンによってデザインされたものです。

──監督ご自身が考えるインテリアデザインのコンセプトや、作中でお好きな部分などについて教えてください。

私のお気に入りの場所は、イェニファーのアパートですね。私たちは、あの混沌とした場所の準備のために、長いこと苦心しました。そして壁紙やバルコニー、照明など、基本的にすべてのもののおかげで、本当にスウィートでクールな場所に仕上がったと思います。

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映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

──次回作について教えてください。

昨年(2013年)、次の映画を撮影していましたが、今秋に公開の予定です。ボニーとクライドに触発されたロマンス──スウェーデン北部を舞台にしたロードムービーで、ラブストーリーです(注:2014年秋にスウェーデンで公開予定の『Remak』のこと。『シンプル・シモン』でサム役のマッティン・ヴァルストレムも出演している)。

──日本では5月の公開開始以来、全国の劇場で上映が続いています。

この作品には、たくさんの温かいハートがこもっています。私が自身で意図したことを、みなさんにも同じようにとらえていただけたらと思います。私たちは、すべての人は同じではないことを理解しないといけないし、それでいいんだ、ということ。生きる上で大切なことは理解することであり、この映画で、みなさんがシモンを理解してくだるよう、願っています。

(オフィシャル・インタビューより)



アンドレアス・エーマン(Andreas Ohman) プロフィール

1985年1月24日、スウェーデン北部のクラムフォッシュ生まれ。オンゲルマンランド地方の小村で育つ。16歳の時に観たポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)に影響され映画の道を志し、その頃から大量の脚本執筆や短編映画、CM、ミュージックビデオの製作を手掛けた。2004年、ニューヨークのハンプトン国際映画祭で短編“Positive About Negatives”(未)が最優秀作品賞を受賞。07年にはテレビアニメーションのシリーズ“Myggan”に監督・脚本の一人として参加。その後09年のイェーテボリ国際映画祭においてスウェーデンで最も権威のある短編映画賞「スターツラッデン」(Startsladden)を“My Life as a Trailer”(未)で受賞。翌年本作で長編劇映画デビューをはたし、スウェーデンアカデミー(グルドバッゲ)賞最優秀作品賞にノミネートされるなど高評価を得た。その後、“Bitch Hug”(2012/未)、“Remake”(2014/未)でも脚本、監督を務める。




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映画『シンプル・シモン』より © 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

映画『シンプル・シモン』
8月16日(土)より渋谷アップリンクにて上映
全国順次公開中

物理とSFが大好きなシモンは、気に入らないことがあると自分だけの“ロケット”にこもり、想像の宇宙へ飛び立ってしまう。そんなシモンを理解してくれるのは、お兄ちゃんのサムだけ。でも、シモンのせいでサムは恋人に振られてしまう。彼女がいなくなって、落ち込むサム。そのせいで自分のペースを乱されるシモン。サムに「完璧な恋人」さえいれば、生活が元通りになると考えたシモンは、サムにぴったりな相手を探し始める。そして、偶然出逢った天真爛漫なイェニファーに狙いを定め、ある計画を実行に移すが……。

監督・脚本・製作:アンドレアス・エーマン
出演:ビル・スカルスガルド、マッティン・ヴァルストレム、セシリア・フォッシュ、ソフィー・ハミルトン、ロッタ・テイレ、イングマール・ヴィルタ、クリストッフェル・ベルイルンド、ジミ・エドルンド、スサンネ・トールソン
脚本・製作:ヨナタン・シェーベルイ
製作:ボニー・スクーグ・フィーニー
製作総指揮:ピーター・ポスネ
撮影:ニクラス・ヨハンソン
音楽:ヨセフ・トゥールセ
美術:サンドラ・リンドグレン
衣装:カサンドラ・コルネリオ
編集:アンドレアス・エーマン、ミカエル・ヨハンソン
原題: I rymden finns inga känslor
提供:Stichting Tamago Tokyo LLP
配給・宣伝:フリッカポイカ
宣伝協力:VALERIA
後援:スウェーデン大使館
協力:トーキョーノーザンライツフェスティバル
2010年/スウェーデン/カラー/スウェーデン語/86分/デジタル上映/DOLBY DIGITAL
© 2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Västernorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved.

公式サイト:http://www.simon-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/simon_movie
公式Facebook:https://www.facebook.com/simplesimonmovie




▼映画『シンプル・シモン』予告編


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