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ジョニー・デップ主演の映画『トランセンデンス』が2014年6月28日(土)より公開される。製作総指揮は、クリストファー・ノーラン。監督のウォーリー・フィスターは『インセプション』では撮影監督をつとめた。
「人工知能(AI)が人間を超える日」は様々なSFにおいて散々語られてきたが、最近"2045年問題"として人類の技術によって推測されうる未来モデルの限界点「技術的特異点」を越えるのは遅くともこの40年以内とする説が映画の世界ではなく現実の世界で話題になっている。
映画『トランセンデンス』では、科学者の頭脳をコンピューターにインストールすることではたされた"トランセンデンス(超越)"を描いている。自ら考える能力と意識を持ちネットワークに接続された「超頭脳」。さて、実在した科学者をまるごとインストールして出来上がるのは"誰"なのか。そして何を願うのか。
監督はインタビュー中「何人かの教授に、人間の脳を全部機械にアップロードしたら機械が感情まで持つかという質問をしたら、全員イエスと答えた」と語っている。全員…。映画を観終った後このインタビューを読んであらためて、これは本当に来る未来なのだなと思った。
webDICEでは、ウォーリー・フィスター監督のインタビューを掲載する。
ウォーリー・フィスター監督インタビュー
── この作品で監督デビューを果たしますが、撮影監督としてすばらしいキャリアを築いてきたあなたにとって、これは自然な流れだと感じていますか?監督になることは、以前から最終目的だったのでしょうか?
監督をしてみたいというのは、以前から、僕の頭の中にずっとあったことだよ。自分の手で、物語を語ってみたかった。ビジュアルだけでなく、言葉、せりふなども通して、総括的な形でね。
── ついにその夢が実現したわけですが、どういう形でこの作品にめぐりあったのですか?
SFを作りたいと思っていたわけじゃなかったんだが、たまたまこの脚本にめぐりあったんだよ。脚本を読んで、魅了されてしまったのさ。ここで語られるテーマは、とても時代を反映していると思った。今こそ、このストーリーを語る時だと思ったんだ。
── 脚本を読んだ時、どんな印象を持ちましたか?
すごく時事的な要素を含む物語だと思った。今日、僕らは、電話を"通じて"話すだけじゃなくて、電話を"相手に"話すようになった。僕らはまたコンピュータとも対話するようになっている。そんな流れの中で、多くの人は、いつかコンピュータが僕たちのコミュニケーションを制覇する時代がやってくるのではないかと、ふと考えることがあるんじゃないだろうか。そしてまた、そういったテクノロジーの変化は、人間関係にどんな影響を及ぼすのだろう?僕はそこも探索してみたかった。
── クリストファー・ノーランの現場で長い時間を過ごされたわけですが、彼から影響を受けたと思いますか?
もちろん、彼がどんなふうに監督するかは、ずっと意識して観察してきたよ。クリスは、非常に効率よく働く人。彼は僕の最高のお手本になってくれた。
ウォーリー・フィスター監督 © KaoriSuzuki
今回の映画で、彼(ジョニー・デップ)は奇抜なキャラクターをいちから作り上げる必要はなかった
── シンギュラリティ(技術的特異点)のコンセプトについて、ジョニー・デップは何と言っていましたか?
彼はこのコンセプトをとてもおもしろいと思ったようだ。彼のキャラクターは機械に支配されてしまったのか、それとも彼の魂、彼という人格は、そのまま残っているのか?そんなふうに観客をどきどきさせるのは刺激的だと、彼は感じたようだよ。
── ジョニー・デップの起用の経緯について語っていただけますか?
僕のほうから彼にアプローチしたんだ。彼のエージェントを通して、ぜひこの映画に出てほしいと伝えたのさ。エージェントも、これはジョニーが興味をもちそうな企画だと思ってくれて、彼に脚本を渡してくれた。彼はすぐに良い反応を示してくれたよ。それで僕らはミーティングをして、いろいろなことを話し合った。彼のアイデアを聞いて、それを取り入れた形で脚本を書き直したりもしたよ。彼と僕は、良い形でコラボレーションしたと思う。
── ジョニー・デップはキャラクターを創造する過程が一番楽しいと以前から発言しています。今回、ウィルという役を形作っていく上で、彼はどんなアイデアを出してきたのでしょうか?
今回の映画で、彼は奇抜なキャラクターをいちから作り上げる必要はなかった。今回、彼に必要とされたのは、このキャラクターの背後にあるさまざまな心理をその都度正しく表現することだ。ジョニーは、その部分をずいぶん楽しんでくれたようだよ。
── レベッカ・ホールがジョニーの妻を演じるようですが、この映画には恋愛の要素もあると思っていいのでしょうか?
そのとおり。ふたりは結婚している。それが、観客に共感をもらえる接点になる。観客は、この夫妻がたどるジャーニーを、一緒に体験するんだ。
── その重要な役をレベッカに任せた理由は?
レベッカとは、前にも仕事をしたことがある。クリス・ノーランの「プレステージ」でね。彼女はすばらしい才能をもつ女優だ。彼女のキャリアは、ずっとフォローしてきたよ。「それでも恋するバルセロナ」なんかも、すごくよかったよね。彼女こそこの役に完璧だと僕は思った。
科学者ウィル役のジョニーとその妻エヴリン役のレベッカ・ホール
科学者が、コンピュータが感情をもつことは可能だと言うんだよ
── この映画の世界観を表現する上で、どんなところにこだわりましたか?SFということで、ビジュアルの可能性は幅広かったと思いますが。
僕が一番重視したことは、物語に忠実にすること。話に現実味をもたせるために、ビジュアル面でもリアリティを重視した。観客にとって近寄りがたい雰囲気にはしたくなかった。
── リサーチを通じて、何か驚くべき発見に出会いましたか?
リサーチの過程で、何人かの教授に、「もし人間の脳を全部機械にアップロードしたとしたら、機械が感情まで持つことはありえるでしょうか?」と聞いた。すると、全員が「イエス」と言ったんだよ。それは驚きだったね。今回のリサーチで一番大きな発見は、それだった。その分野をずっと研究してきている科学者が、コンピュータが感情をもつことは可能だと言うんだよ。
── このテーマは知的で興味深いですが、下手をすると難しくなりすぎるかもしれません。誰にでも楽しめる映画にするのはチャレンジでしたか?
ああ、それはたぶん、今回、僕にとって一番のチャレンジだったと言えるね。信憑性と現実味を常にもたせ、観客に「わからない」「こんなことありえないよ」と思わせないこと。科学をしっかりとベースにして、観客に理解してもらって、この物語を信じてもらう。それが僕のチャレンジだった。
科学者の知能は全てデータ化されコンピューターにインストールされる
製作に使うテクノロジーをあえてローテクにするというのは、今回、意図的にやったこと
── 初めてご自分で監督されるということで、新たに挑戦しようとしたこと、新しい技術や撮影方法で取り入れたことなどはありましたか?
いや、それはなかったね。僕はこの映画を、リアリティにもとづくものにしたかったし。ビジュアルエフェクトも使っているが、舞台設定は基本的に現実的な世界だ。製作に使うテクノロジーをあえてローテクにするというのは、今回、意図的にやったこと。革命的なことは、何もやっていないよ。
── モーガン・フリーマンやキリアン・マーフィーなど、いわゆる"ノーラン組"が出演していますね。彼らと知り合いだから、彼らに出てもらったのですか?
そう、まさにそのとおりだよ。彼らとはもう長年の知り合いだ。もちろん、僕にとって、モーガンやキリアンと仕事ができるのは、とてもうれしいこと。僕らは3、4作品を一緒に作ってきて、その過程で友達になった。そして彼らはこの企画を気に入ってくれた。気が合う仲間と仕事ができるのは、僕にとって安心材料でもある。彼らがとてつもない才能をもっていることは言うまでもないしね。
"ノーラン組"モーガン・フリーマン、キリアン・マーフィー
── モーガン・フリーマンは、あなたが監督に進出すると聞いて、すごく応援してくれたのだそうですね?
そう、彼はすばらしい形で応援してくれたよ。自分にできることはなんでもやるから、と言ってくれた。そして実際にいろんな面でサポートしてくれた。並外れた俳優である彼は、ほかの形でも僕を支えてくれたんだ。
── トップクラスの俳優が揃ったわけですが、そういう人たちに指示を与えるのはどんな気分でしたか?
意外にも、すんなりやれたよ(笑)さっきも言ったとおり、一部のキャストとは何年も前から知り合いだしね。時に、ふと、「自分はこの人たちに演技のやり方を指示しているのか?」と驚くこともあったけれど、普段からしっかりコミュニケーションを取っていて、信頼を培っていれば、ちゃんと伝わるものだ。今回の現場にはそれがあったと思う。僕がもつビジョン、僕がこの映画で伝えたいことを、キャストはしっかりわかってくれたと思っている。
── シネマトグラファーとして、これまで多くの傑作にたずさわってこられましたが、その経験から学んだどんなことを今作に生かしたのでしょうか?
クリス・ノーランやロバート・アルトマンのような優秀な監督から学んだ一番のことは、ストーリーこそ一番大切だということ。ストーリーがしっかりしていなければ、どうにもならない。そこがうまくいくように、すべての努力を注ぎ込まなければいけない。キャラクターも、ストーリーを支えるために存在するんだ。そのストーリーをより良くするためにもっと何ができるだろうかと考えることをやめてはいけない。そして、その優れたストーリーを、すばらしい演技によって語るんだ。
── この映画で、監督が一番伝えたかったことを一言でいうと何ですか?
僕らとテクノロジーの関係だね。テクノロジーがどんどん進化する中、僕らはそれをどう使うべきで、どうつきあっていくべきなのか。
映画『トランセンデンス』
2014年6月27日(金)先行公開
2014年6月28日(土)全国超拡大公開
製作総指揮:クリストファー・ノーラン
監督:ウォーリー・フィスター
出演:ジョニー・デップ、モーガン・フリーマン、ポール・ベタニー、レベッカ・ホール、キリアン・マーフィ 、ケイト・マーラ
原題:Transcendence
2014/アメリカ/119分
配給:ポニーキャニオン/松竹
公式サイト