映画『ホドロフスキーのDUNE』より、H.R.ギーガー
5月12日、映画『エイリアン』のクリエイターとして知られるスイス人のデザイナー/イラストレーター、H.R.ギーガーが74歳で亡くなった。現地時間4月26日にスイスの自宅の階段から転落、病院に運ばれていた。
ギーガーは1940年生まれ。1973年にジャケットを手掛けたエマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』が世界的にヒット。続いて1975年、35歳のときに、アレハンドロ・ホドロフスキー監督(当時46歳)が着手したSF映画『DUNE』に参加するも製作が頓挫。その後、リドリー・スコット監督の『エイリアン』(1979年)でクリーチャーのデザインを手がけ、第52回アカデミー賞の視覚効果賞を受賞した。
ギーガーによるエマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』ジャケット
6月14日(土)から日本で公開されるドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』では、ギーガー本人がインタビューに答え、サルバドール・ダリを介して彼のことを知ったホドロフスキー監督が『DUNE』参加を持ちかけた経緯や、ホドロフスキー監督とのコラボレーションの様子を語っている。
▼映画『ホドロフスキーのDUNE』H.R.ギーガー出演シーン
「持っているすべてを注ぎ込んで、
ハルコンネン家の世界を夢中で創り上げた」
──ギーガー
「ホドロフスキーとダン・オバノンは、パリで私の作品が展示されているのを見た。そして『映画を一緒にやりたい』と連絡してきた。映画の仕事は全く初めてで、胸が躍る思いだった」
──ギーガー
映画『ホドロフスキーのDUNE』より
「ホドロフスキーとは、パリで初めて会った。マグマのコンサートに彼が行った夜のことだった。この映画のために描かれた絵を受け取った。絵コンテを描いたメビウスから渡されたんだ。ハルコンネン城の絵だ。私はハルコンネン家の世界を夢中で創り上げた。エアブラシを使って、5枚のデザイン画を描いていった。自分が持っているすべてを注ぎ込んでね。ハルコンネンの要塞は、攻撃を受けると、槍が出てきて敵を刺し殺す。城に向かう歩道にいる者は皆殺しにされる。この要塞は原作には存在しない。これはホドロフスキ―が自分の解釈に基づいて創り出した。そこから新たな世界が生まれたんだ」
──ギーガー
映画『ホドロフスキーのDUNE』より、ギーガーによるハルコネン男爵の城デザイン画
映画『ホドロフスキーのDUNE』より、ギーガーによるハルコネン男爵の城デザイン画
「ギーガーに『君の作品は邪悪な芸術だ』と言った」
──ホドロフスキー
「ダリはギーガーの作品集を見せてくれた。そして言った『彼には才能がある』。それを見て驚いた。悪役のハルコンネンのイメージ通りだったからだ。ゴシック風の惑星と人物たち。そして私はギーガーを捜しに行った。彼は映画の経験はなかった。『やるべきだ』と私は言った。『そのままの君が必要だ。君は魂の奥底に潜む深い闇を探求している。それが君が創る芸術だ。君の作品は邪悪な芸術だ。ハルコンネン男爵に必要な病んだ芸術だ』。
城はハルコンネンの巨大な彫刻だった。そこに男爵は住んでいるんだ。自分の大きなエゴの中にね。城が口を開けて舌を出すと宇宙船が舌の奥に入り、飲み込まれる。城に行くには、歩道を通る必要があった。巨大な歩道で、槍が出てくる仕組みだ。ハルコンネン男爵の城に行くにはこの道を通るしかない。大きな槍が刺すのを避けながらね」
──ホドロフスキー
映画『ホドロフスキーのDUNE』より、ギーガーによるハルコネン男爵の城デザイン画
映画『ホドロフスキーのDUNE』より、ギーガーによるハルコネン男爵の城への道
「その後、ギーガーはエイリアンをデザインした。推薦したのはダン・オバノンだった。彼の原案と脚本だ。『エイリアン』にはメビウスやギーガー、クリス・フォスも携わった。ハリウッドは私の仲間を起用し始めた。本当に素晴らしいことだ」
──ホドロフスキー
映画『ホドロフスキーのDUNE』より、特撮監督を担当する予定だったダン・オバノン(左)とギーガー(右)
(発言は映画『ホドロフスキーのDUNE』より)
『ホドロフスキーのDUNE』
2014年6月14日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開
1975年にホドロフスキーによって企画されるも、撮影を前に頓挫したSF大作、ホドロフスキーの『DUNE』。「映画化不可能」と言われた小説、フランク・ハーバートの「DUNE」を原作に、そうそうたる面子をキャスト・スタッフに配し、莫大な予算と、12時間にも及ぶ上映時間を予定していたというその企画は“映画史上最も有名な実現しなかった映画”と言われ、伝説となっている。本作は、ホドロフスキー版『DUNE』の顛末と、ホドロフスキー、プロデューサーのミシェル・セドゥー、ギーガー、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督等のインタビュー、膨大なデザイン画や絵コンテなどの資料で綴る、驚愕、爆笑、感涙のドキュメンタリーである。
監督:フランク・パヴィッチ
出演:アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セドゥー、H.R.ギーガー、クリス・フォス、ニコラス・ウィンディング・レフン
(2013年/アメリカ/90分/英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語/カラー/16:9/DCP)
配給:アップリンク/パルコ
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/dune/
『ホドロフスキーのDUNE』より
▼『ホドロフスキーのDUNE』予告編
『リアリティのダンス』
2014年7月12日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開
1920年代、軍事政権下のチリ、トコピージャ。幼少のアレハンドロ・ホドロフスキーは、権威的な父と、そして息子を自身の父の生まれ変わりと信じるオペラ歌手の母と暮らしていた。ロシア系ユダヤ人であるアレハンドロは学校でも「みんなと違う」といじめられ、世界と自分のはざまで苦しんでいた……。青い空と黒い砂浜、サーカスに空から降ってくる魚の群れ、青い服に赤い靴。映画の中で家族を再生させ、自身の少年時代と家族への思いを、チリの鮮やかな景色の中で、現実と空想を瑞々しく交差させファンタスティックに描く。
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、クリストバル・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキー
音楽:アダン・ホドロフスキー
原作:アレハンドロ・ホドロフスキー『リアリティのダンス』(文遊社)
原題:La Danza de la Realidad(The Dance Of Reality)
(2013年/チリ・フランス/130分/スペイン語/カラー/1:1.85/DCP)
配給:アップリンク/パルコ
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/dance/
(c) "LE SOLEIL FILMS" CHILE・"CAMERA ONE" FRANCE 2013