骰子の眼

cinema

東京都 目黒区

2008-05-21 23:27


ジブ・コーレン:インタビュー「報道写真をうまく撮る秘訣などはない。必要なのは情報と経験、そして最も重要なのは運」

報道写真家ジブ・コーレン来日決定! 横浜 BankART で写真展、ワークショップを開催
ジブ・コーレン:インタビュー「報道写真をうまく撮る秘訣などはない。必要なのは情報と経験、そして最も重要なのは運」

イスラエル人の報道写真家ジブ・コーレン。テルアビブで爆破されたバスの写真が2000年「ワールド・プレス・フォト・オーガニゼーション」の“過去45年の中で最も重要な写真200”の中に選ばれるなど、彼は常に自国の紛争の最前線を撮り続けてきた。6月に来日するジブ・コーレンにインタビューした。


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彼自身が被写体となったドキュメンタリー『1000の言葉よりも』の企画を受けた時、彼は自分を「英雄視しないという事、つまり私には取材が上手くいく事もあればいかない事もあるという点と、取材活動の困難さをさらけ出すという点を含む」という条件を挙げた。

自国とパレスチナの両側で取材する事に対して、「特に私がイスラエル人であるという点から紛争の両当事国での撮影は非常に危険な行為だが、プロパガンダではなくフォトジャーナリズムを成立させるためにはバランスの取れた取材を目指す」と語る。

「撮影する時に心がけるのは、個人の意見や思想が写真に影響を及ぼさないようにする事です。可能な限り、個人的な目的に左右されることのないよう、事実をあるがまま写したいと考えています。時々、自分が海外のジャーナリストだったらどれだけ楽だった事かとも思います」

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彼が撮影するのはイスラエル・パレスチナ紛争だけではない、彼の中で写真撮影のテーマというのはなんなのだろう。

「一般的に、私は何か世の中に変化をもたらすような出来事を伝えたいと考えています。そうした出来事の多くは、いかに普通の事柄であるにも関わらず、さほど露呈されない社会的な側面です。しかし言い換えるならば、私が関心を持つ出来事は多くの場合、世間が排除してしまおうと考えるような、非大衆的な物語なのかも知れません。私はそうした事件を取材する責任を感じています。雑誌の編集者が仕事として取材を依頼して来るのを待たず、自ら外へ飛び出して撮影することが重要だと考えています。思想家のスーザン・ソンタグは著書の中で写真の力について、人間が何か強烈なイメージを視覚的に認知すると、目と神経を結びつける脳はその経験を感情的な体験へと昇華する事が出来ると述べています。これは正しく私が写真において到達したい地平なのです」

日常が危険を伴う地域で取材をしている彼に、ビデオジャーナリストの長井健司氏がビルマ(ミャンマー)で殺害された事件の件をどう思っているかを聞いてみた。

「惨い事件だと思います。そう思うのは、その瞬間が映像として録画され、発砲されたのが実弾であり、それは言わば処刑だったからです。残念ながら戦争写真家やフォトジャーナリスト達はそうしたリスクを背負わざるを得ません。イラクやバルカン半島、アフリカ、そしてガザでも多くのジャーナリストが命を落としました。しかしジャーナリストのダニエル・パールのケースのような例外を除き、多くの場合は意図的な発砲によるものではないという事に加え、その模様が録画されたことはありません。人が死ぬ様子を"ライブ"で目の当たりにすることは最も衝撃的な事です。しかも理由もなく人間の生命が無駄に奪われるという様子をです」

そして最後によい報道写真を撮るにはと聞くと「秘訣などはない。必要なのは情報と経験、そして最も重要なのは運」だと言う。日常をつねに“現場”とするプロフェッショナルならではの回答である。


映画『1000の言葉よりも―報道写真家ジブ・コーレン』
2008年6月14日(土)より東京都写真美術館ホール にてロードショー



■写真展『1000の言葉よりも―ジブ・コーレン報道写真展』

日時:6月10日(火)~6月21日(土) 11:30~19:00
会場: BankART 1929 Yokohama<3F 1929スペース>[地図を表示]
(横浜市中区本町6-50-1/みなとみらい線「馬車道駅」下車)
料金:一般600円
割引500円(日本写真家協会・日本写真協会の会員の方【会員証要提示】、世界報道写真展もしくは映画『1000の言葉よりも』の半券をお持ちの方、学生の方【学生証要提示】、当日一眼レフをお持ちの方)

■『ジブ・コーレンによる報道写真ワークショップ』

報道写真家を志す方、フォトジャーナリズムに関心を持つ方々へ向けたレクチャーを行います。彼自身の写真を題材に、プロとして現場から何をどう伝えるのかを語ってもらいます。

日時:6月13日(金) 14:00~15:30
会場: BankART 1929 Yokohama<3F 1929スペース>[地図を表示]
(横浜市中区本町6-50-1/みなとみらい線「馬車道駅」下車)
料金:1,000円(写真展入場料含む)
定員:先着40名様(以下から要予約/予約締切6月11日)

【ワークショップ予約方法】
下記項目を明記の上、件名を『予約/ジブ・コーレンによる報道写真ワークショップ』とし、メールにてお申込みください。
(1)お名前 (2)予約人数 (3)電話番号 (4)ご住所
film@uplink.co.jp

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