映画『ロボコップ』より © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
1987年に公開され、世界的ヒットを記録したポール・バーホーベン監督の『ロボコップ』。その後も続編やTVシリーズなどが制作された人気作が、劇場用映画としてリブートされ、3月14日(金)より日本でも公開される。鋼鉄のボディを身にまとった警官アレックス・マーフィの活躍と、人間かマシンか、自らのアイデンティティを探求するという哲学的な基本コンセプトはそのままに、マシンが犯罪を取り締まる荒廃した近未来のデトロイトというオリジナルの舞台から、アメリカが中東の派兵をロボットで行うようになったものの国内ではロボット配備が禁止されている、という現代の社会情勢を踏まえた設定に置き換えられている。
今作の監督を務めたのは、ブラジルの社会派監督ジョゼ・パジーリャ。実際に起きたバスジャック事件もとにブラジルの貧窮を捉えたドキュメンタリー『バス174』、そして実話をベースにスラム街の麻薬販売組織をめぐる抗争を描くフィクション『エリート・スクワッド』で高い評価を獲得する新鋭パジーリャ監督が大作に抜擢された経緯、そしてストーリーについて語った。
技術の進歩に伴う倫理的問題をとりあげる
── 今作は、当初報じられていたダーレン・アロノフスキー監督の降板後、パジーリャ監督が最初に監督候補に挙がっていたそうですね。
私はMGM役員たちから教えられるまでアロノフスキー監督が『ロボコップ』をリメイクすることを知らなかったんだ。当初『ヘラクレス』のリメイクを依頼されてハリウッドへ招聘された。そのMGMでのミーティングの際、オリジナル版『ロボコップ』のポスターを指して「『ヘラクレス』には興味ないが、僕が作りたい映画はあれだ」と言ったんだ。『ロボコップ』は素晴らしいイコン的な名作だった。この作品に対する僕の見解を話したところ、実に幸運なことに彼らがその場で「やろう」と言ってくれた。
映画『ロボコップ』のジョゼ・パジーリャ監督
── どのようなテーマをもってリメイクに挑みましたか。
オリジナルの『ロボコップ』は未来の話だ。象徴的な映画であり、非常に成功した映画でもある。賢い映画だし、これをより深く見て、その構築のコンセプトを理解して、その世界を再現することができて、光栄に思っているよ。
義手や義足から無人飛行機や自動運転車まで。半分人間、半分ロボットというアイデアは、人々の生活の一部になりつつある。そしてそこから発生する多くの法律上、倫理上の問題に我々は直面している。アレックス・マーフィはそうした問題、すなわち機械の中に人間を入れたらどうなるか、という問題を体現しているんだ。
── 技術の進歩に伴う倫理的問題に言及していますね。
マーフィは世界一のロボット軍需会社オムニコープが売りたくてたまらない商品なんだ。彼は試作品だ。清涼飲料メーカーが新しい瓶を開発するのと同じように、オムニコープは警察に売り込むロボットとして、理想的なデザインを見つけようとしている。同社にとっては何十億ドルもの収益が見込めるだけに、多少の倫理的問題は無視するつもりだった。自走する車を買ったとしよう。その車がコントロール不能になり誰かを轢いたとする。それは誰の責任だろうか。誰が訴えられるのか。自分か。それとも車のメーカーか。警官が間違って誰かを殺してしまったらどうだろう。今だったら、警察ではなくその警官の責任だ。でも警官がロボットだったらどうなる? ロボットの中に人間を入れれば、何か問題が起きたときに、それを“ 処分” すればすむ。『ロボコップ』では、技術の進歩に伴うそうした問題を取り上げているんだ。
映画『ロボコップ』より、ロボコップを設計するデネット・ノートン博士役のゲイリー・オールドマン(右) © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
── それはこれからの世界を予言するような設定でもあると思います。
まもなく、戦争がオートメーション化する世界がやってくる。ロボットが兵士や警官の役割を果たすことになるんだ。今現在は、無人飛行機に関して活発な議論が行われている。無人飛行機はまだオートメーション化はされていない。遠く離れた場所から人間が状況を観察し、引き金を引くタイミングを決める。でもその決断をソフトウェアが、アルゴリズムが下すようになったらどうなるだろうか。本作で描かれていることはすべて、まもなく現実の世界のことになり、その是非が論議されることになるだろう。このストーリーの中では、機械が人間の感情を理解している、と人々が信じていなければいけない。そこでオムニコープは、アレックス・マーフィの脳をそのまま活かしておく。だから彼には感情も記憶も認知力もある。でも息子を抱きしめることも、妻とセックスすることもできないんだ。そして、オムニコープは、自分たちの製品の中に人間がいることを忘れてしまう。完全に自分たちがコントロールできるものを作り出したつもりでいたが、彼らが選んだのは、自分に与えられた新たな力を正義のために使う非常に意志の強い男だ。ロボコップでいるのは悪夢のようだが、本作は、そんな状態で自分は今後どう進んでいけばよいのか、という自身の存在に関する疑問に直面する男のドラマでもある。
映画『ロボコップ』より © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
ジョエル・キナマンは人間性を失う、という実存するドラマを演じることができる俳優
── ビジュアルについてもオリジナルの近未来観を継承しつつ、新しいものになっていますね。
素晴らしいビジュアルから尻込みをすることもなかったし、最先端のビジュアル・エフェクトを使用した撮影やグラフィック・デザインから尻込みをすることもなかった。反対にどんどん使っていったよ。かっこいい銃撃戦を表現したかったしね。かっこいいED-209(法執行ロボット)を作り上げたかった。テヘランに襲撃をかけるロボットたちを表現したかった。それをすべてやりこなして、映画の大きな一部となっているよ。小さな部分でさえも―アレックス・マーフィの生身の体の部分が彼のロボットの部分と作用している部分さえも―詳細とグラフィックとビジュアル・エフェクトに気を配った。そのすべてが面白い映画へと結びついて、観客に訴えかえるような映画になっていると思うよ。
映画『ロボコップ』より、主演のジョエル・キナマン © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
── 主人公のアレックスには、スウェーデンの俳優ジョエル・キナマンが扮しています。彼を起用した理由について教えてください。
ストーリーには非常にドラマ性があるし、最初に考えたことはどうやってロボコップ役をキャストしようか、ということだった。自分の人間性を失う、という実存するドラマを生きて演じることができる俳優が必要だった。そこでたくさんの俳優をオーディションして、ジョエル・キナマンは最初から、一つのシーンを読んだところで―まだ当時は台本がなかったので―、彼の演技は素晴らしかった。この時点でロボコップが見つかったと思ったね。
映画『ロボコップ』より、レイモンド・セラーズ役のマイケル・キートン(右) © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
── ではオムニコープCEOであるレイモンド・セラーズ役のマイケル・キートンについては?
まずマイケル・キートンと一緒に仕事をすること自体楽しみだったし、同じセットにいるというだけで光栄だったね。それで、実際に彼の考えるセラーズを彼が演じ始めると、天才役だから非常に賢く演じられていて、同時に面白いんだ。企業に関する皮肉やジョークを盛り込みながら、問題の深刻さや、ロボットを戦争に使うという主張、ロボットを法執行機関として使用するという主張がなされているんだ。非常にもっともだよね。ロボットには汚職がないだろうし、ロボットは疲れない。偏見もなければ人種差別もしない。だから彼はこのロボットに関する主張があり、その主張を非常にスマートに行うんだ。ちょっと変な方向に行ってしまうけど、言っていることはまとも。つまりそういう意味で、彼は通常見る「悪者」とは違う存在なんだ。そんなセラーズを演じるマイケル・キートンの演技は圧倒的なものだったよ。
(公式インタビューより)
ジョゼ・パジーリャ プロフィール
1967年ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。2002年にドキュメンタリー映画『バス174』で監督デビュー。世界各国の映画祭で栄誉に輝いた。その後、数本のドキュメンタリー映画、テレビを撮り2007年に『エリート・スクワッド』で初めて劇映画に進出、ブラジルでは商業的に大成功をおさめた。この作品は、リオデジャネイロのスラム街の麻薬販売組織とエリート部隊との抗争を描いた実話で、そのドキュメンタリックで緊迫した演出法が高く評価され第58回ベルリン国際映画祭では金熊賞を受賞した。2008年には再びドキュメンタリー映画『Garapa』を発表。2010年には『エリート・スクワッド』の続編『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』が公開され、ブラジリアン・アカデミー賞の脚本賞、監督賞、作品賞を獲得、1100万人以上という、ブラジル映画史上、最高の観客動員数と興行収入を挙げたブラジル映画となっている。2010年にはドキュメンタリー映画『Secrets of the Tribe』を監督した。
映画『ロボコップ』より © 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
映画『ロボコップ』
2014年3月14日(金)より、丸の内ピカデリーおよび新宿ピカデリーほか全国ロードショー
物語の舞台は2028年、巨大企業オムニコープがロボット・テクノロジーを支配する世界。海外では、オムニコープのロボットが軍事利用されている一方、アメリカでは法律で禁止されており、国内でもその技術を広めるため、機会を窺っていた。アメリカ・デトロイトで愛する家族とともに暮らす勤勉な警官アレックス・マーフィは重症を負うが、オムニコープの最新のロボット技術により“ロボコップ”として新たな命を得る。驚異的な力を身につけたアレックスを前に、オムニコープは予想をもしなかった問題に直面する。“ロボコップ”は正義を信念とする1人の警官でもあるから―。
監督:ジョゼ・パジーリャ
出演:ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、サミュル・L・ジャクソン、マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、他
脚本:ジョシュ・ゼトゥマー、エドワード・ニューマイヤー、ニック・シェンク
プロデューサー:マーク・エイブラハム
製作総指揮:ビル・カラーロ
撮影:ルラ・カルヴァーリョ
美術:マーティン・ホイスト
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2014年/アメリカ/スコープサイズ/117分
© 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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