骰子の眼

stage

東京都 渋谷区

2014-03-03 23:30


枠にはまらない、のではなく「はまれなかった」コントカンパニー、ミラクルパッションズ

3/9渋谷アップリンクにてオルタナティブな5年間の活動の集大成的公演開催
枠にはまらない、のではなく「はまれなかった」コントカンパニー、ミラクルパッションズ
3/9(日)に渋谷アップリンクで公演を行なうミラクルパッションズ(左より、畑中実、伴秀光、ワクサカソウヘイ)

中学男子が休憩時間にするおふざけを恐ろしく高度なレベルで繰り出す馬鹿馬鹿しさ。テレビカルチャーを著しく斜めから愛と皮肉と羨望を込めた眼差しで観察するユニークな視点。それらをハイブリッドすることにより「能でDr.スランプアラレちゃん」や「めだかの学校をブルーハーツのトレイントレインの歌詞で歌う」や「学校の先生が実は火の鳥だった」などの前衛的コントは生まれた。

そしてこの2月、屋台骨を支える脚本担当のワクサカソウヘイはテレビブロスでの連載をまとめた『夜の墓場で反省会』を上梓し、いよいよ今年ブレイク秒読みではないかと巷では噂されている。 来たる3月9日にテレビブロスとの共催により渋谷アップリンクで行われる、脂身たっぷりいいとこどりのベスト・オブ・ベスト公演に向け、3人の出会いからミラクルパッションズ結成と、現在に至るまでを聞いた!

「ツッコミ」と「動き」と「人間味」

──まずは簡単な自己紹介からお願いします。

ワクサカソウヘイ(以下、ワクサカ):ミラクルパッションズの全部のコントの脚本を担当しております。現在30歳でして、メンバーはみんな同じ歳ですね。

伴秀光(以下、伴):ミラクルパッションズでは、リーダーをやらせてもらっています。

畑中実(以下、畑中):僕は、特にこれといってやってることはないです。

ワクサカ:ボケ・ツッコミみたいな感じでいうと、主にですけど、僕がツッコミで、畑中くんが「動き」で、伴くんは「人間味」ですね、「業」っていうのかな。

伴:あとは「概念」とかやってますね。

──すごく大きな部分を(笑)。3人の出会いは何だったんですか?

畑中:伴くんとは小学校が同じで、ワクサカくんとは高校が同じですね。

──地元が一緒なんですか?

ワクサカ:東京は東京なんですけど、2人は葛飾っ子で、僕は練馬っ子です。それで、畑中くんを介して伴くんと知り合うわけですけど。高2か高3の頃に、とにかくモテたくてバンドをやろうってなって。それで、バンド内恋愛みたいなものをやってみたいと思ったわけですよ。

──バンド内恋愛(笑)。

ワクサカ:憧れのサークルラブっていうんですか? とにかく人を集めようって、21世紀だからみたいなのもあって、21人集めたんですよ。女子多めで、でも結局何にもなかったのが、この3人なんですよ。結局モテなくて。しかも残っちゃった3人が楽器ができなかったもんだから。それで始めたのがコントなんですよ。

──そうすると、18歳の頃からもう「ミラクルパッションズ」として?

ワクサカ:そうなんですけどね。芸歴聞かれると困るんですよね。いちおう6年か7年くらいにしていて。というのも、高校卒業してから、1年に1回くらいしかやらないっていう感じだったんですよね。もうコントは卒業するっていうようなことが何回もあって、リーダーなんて脱退宣言を何度したことか。

伴:しましたねぇ。節目節目で脱退しようとしましたね。

ワクサカ:昔は、「ミラクル☆パッションズ」って「☆」が入ってたんです。けど、ちゃんとやろうってなって「☆」を取ったんですよね。こんな浮ついてちゃいけないって。なので芸歴のスタートは「☆」を取った日からってことにしてますね。

──結成当時から名前はすでに「ミラクルパッションズ」だったんですね。

ワクサカ:そうですね。バンド名どうしようって言って、相談した時に畑中くんが。

畑中:そうでしたね。最初はバンド名として考えていて、しかも当初は、漢字だったんだよね。「魅裸狂パッションズ」って。

ワクサカ:だせぇ名前にしちゃえみたいな18歳のノリで。パッションズも漢字にしたかったんだけど思い付かなくてカタカナに(笑)。あと、1回、「もっこりガイズ」になったよね。その後に「もっこりハム太郎」になって戻したんですよね。酒飲んでて決めちゃったから。トリオ名はいまでも足かせですね(笑)。

伴くんは、普通に話してる時もチャゲアスみたいなことを言っていた

──コントへ移行していったのはどういった経緯だったんですか?

畑中:バンドを辞めてコントをやろうって話になったんだけど、何にもしない期間がずっとあって、最終的に僕が所属していた演劇部の卒業公演をするってなった時に、その前座としてミラクルパッションズで何かやらせてよって部長にお願いしたんですよね。

ワクサカ:それでディズニーランドをモチーフにしたド下ネタのコントをやってねぇ。

──伴さんは、その前座公演にも他校から参加されたんですかね? そんなに自由に他校から参加できるものなんですか?

ワクサカ:いや、彼だけですよね。文化祭でも他校から来た伴くんを連れ回して、「握手会だ!」って言って校内をパレードしたんですよね。

伴:何も知らずに、練り歩きましたね。

ワクサカ:よく連れ回されるんですよね。

畑中:あと中学の時、おかしな坊主頭になった時も葛飾練り歩いたよね。

伴:まだtwitterとかないし、練り歩くしかないからね。

ワクサカ:だからいまもその衝動でコントやってるだけですよね。とにかく伴くんを連れ回したい。伴くんを練り歩かせたいっていう思いがね……。

畑中:葛飾からやっと渋谷まで来たね。

伴:市中引き回しだねぇ。

畑中:いまはこんな感じにまとまっててまだいいんですけど、当時は思春期のリビドー真っただ中で、変なロン毛で、アメ横で買った変なシャツで、髪立てるの流行ってたから立ててはいたんだけど、仕上がりはサリーちゃんのパパみたいな感じで(笑)。そんな人が他校から来て校内を練り歩いてたりして、すごく変な目で見られたっていう。

──それは何か影響を受けてそういうファッションにしてたんですか?

ワクサカ:それはもう僕たちも教えてほしいですよね。

伴:まぁなんでしょう。僕は工業高校だったんで、女の子の反応とかもよく分からなくって行き詰まりに行き詰まってなんとか打開しようと思ってやったのがあの髪型だったんですよね。

ワクサカ:彼はそう言ってごまかしてますけど、本当はL'Arc~en~Cielが大好きだったからhyde感は出してましたよね。

──なるほど(笑)。

ワクサカ:畑中くんに紹介されて初めて伴くんに会った時も、彼は極度の人見知りなのに、「かましてやれ!」みたいなのがあって。

畑中:ちょうど高校1年生だったんで、デビューしたてだったんですよね。

ワクサカ:チョケてチョケてのおチョケがすごい時期だったから、シルバーアクセサリーを両手につけてて。普通に話をしてたら、ムカついてきちゃったみたいで、「いまからアイツ殴りに行こうぜ」ってチャゲアスみたいなこと言ってたもん。ほんとに言ってたよね?

畑中:そう。中学校の時の同級生の話してたら「アイツ、ムカつく」って言い出してね。なんかよく分かんないゴツゴツしたドクロのやつしながら。

伴:あぁ、クロムハーツね。

ワクサカ:使い方によってはメリケンサックになるやつね。

畑中:金のネックレスも付けて、けど真っ白のシャツの中に思いっきりNIKEのマークが透けて見えて(笑)。

伴:隠しきれない葛飾感ね(笑)。

畑中:途中でメシ食いにファミレスでも行こうよってなったら全部(アクセサリー)外したよね。

伴:そうそうカラまれちゃうと怖いから

──ワクサカさんのことはどんな印象でしたか?

畑中:とにかく美少年だったんですよ、ワクサカくんて。高校の時なんてとくに。お肌ツルツルだったし、こんなにハゲ上がってなかったし。ほんとにキレイな顔してるんだけど、間近で見た時にすごく変な顔って思いましたね。

伴:僕には前情報として、「国分太一そっくりの友達が出来た!」って言ってましたけどね。すごいモテモテのヤツが来るって、家に連れて来たら、当時マッシュルームカットで目パチクリさせながら変な感じで来て、なんだコイツって。

ワクサカ:殴ってやろうかって(笑)。

児童公園で「地獄」を作っていた

──高校を卒業されてからはどんな活動を始めたんですか?

ワクサカ:いろんなことやりましたね。舞台もやったし児童公園で「地獄を作ろう!」って言って、鬼の格好したり、ゾンビの格好したりして、8時間ぶっ通しだったけ? 「雨天決行だ!」って言って。

畑中:10時間かな。

ワクサカ:だんだんひよって5時間にしたんだっけ。

──ゲリラライブってことですか?

ワクサカ:船橋の方でね、なんかコントやってる人たちがいるらしいってだまされた人がいたみたいで、ちょっと何かやってくれませんかってなったんですよね。それで船橋にいい公園がありますねって、地獄作ってね。そういうことやったりはしてましたね。23、24歳の頃は道をいろいろやりすぎて真人間に戻れなくなってた時期もありましたね。なので、ほんと3人でしっかりやろうってなったのは。そのあとの2007年くらいかな。

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2008年に船橋・本町四丁目公園で行われた5時間ライヴ「地獄温泉」の会場の様子

──HPには2003年頃の情報からアップされていますが。

ワクサカ:うん。アバウトだよね。2003年は初めて舞台でコントをやったっていうのからのカウントなので、いまは僕らの精神の話をしてるよね。

──なるほど(笑)。

ワクサカ:なので気持ちは2007年ぐらいですね。それまではこの3人以外にも人が出たり入ったりしてたんですよ。

畑中:なんだかんだ抜けていくわけですよ。それで残ったのがこの3人ですよ。

ワクサカ:また残るわけなんですよね。バンド辞めて3人になっちゃってからまたっていうね。「コントやる!」って言ってると何人かは嗅ぎつけてまた来るんですよね、でもその人達もいなくなるんですよね。だから、もう、嫌われ者ですよ。

──そんなことはないかと(笑)。

ワクサカ:話してて寂しくなっちゃった……。あと、そういえば高校の頃、映像もやってたんですよ。それで、畑中くんと一緒に上映会をやったんですよ。それに伴くんはお客さんで来てたんですよ。まだメンバーに入ってるような入ってないようなフワフワしてた頃だったんで。それで、当日、上映会スタートってなったら、上映が出来なくて。

畑中:なんか単純なトラブルで映像が流れなかったんですよね。

ワクサカ:結局、上映が中止になっちゃって、深々と頭を下げて、畑中くんなんかは泣いちゃったんですから。それなのに、伴くんは客席から「金返せ!」って言ったんですよ。

(一同、笑)

伴:当時高校生でおこづかい制だったんで、交通費もバカにならなかったんで。わざわざ呼びつけてふざけるな、と。

ワクサカ:それがいまのリーダーです。

畑中:一番の敵がね。

ワクサカ:クレーマーが(メンバーに)入るっていう新しい形ですね。

──そうですね(笑)。「新しい」というと、ミラクルパッションズの活動自体、新しい形だと思うのですが、これまでいわゆる芸人さんの事務所に所属されなかったのはどうしてなんですか?

ワクサカ:「芸人」になりたいの前に、「コントがやりたい」の方が先にきちゃったんですよ。たぶん芸人さんとはモチベーションが違うなと思うのが、お笑い芸人になりたいっていうのが先にあるんだと思うんですよね。僕らはリビドーとしての「コントやりたい」が先にあって、それが強かったので。もう事務所の入り方とかよく分かんない時期を何回も通り過ぎちゃってて。いちおう括りとしては「お笑い芸人」で括らせてもらってはいるんですけど。

──なるほど。

ワクサカ:テレビで芸人さんと絡んだりしても、芸歴がよく分からないので、困られるんですよね。ほんと生態系を壊してるブルーギルみたいなやつらですよ。

──かなり珍しいですよね。

ワクサカ:たぶん、いないでしょうね。未だに演劇の方にジャンル分けされがちなんですけど、演劇のこともよく分かんないし。でもある意味、自分たちのマーケティングの中でやっている活動ですね。

若干、気持ちがヤリチン(畑中)ヤリマンっていうかね(ワクサカ)

──コントは選曲も含めてワクサカさんが作ってるんですか?

ワクサカ:いや、選曲は3人で。

──絶妙ですよね。ちょうどダサい感じで。

ワクサカ:オシャレさがないから、そこ目指しちゃうと終わりだっていうことに、たしか2年前に気付いたのかな。

──けっこう最近なんですね(笑)。

ワクサカ:やっぱりモテたくてね。

伴:色気がまだあったからね。

ワクサカ:パルコで買い物すればおしゃれぐらいの価値観だったからね、俺ら。それで、(2年前に)気付いてからは、冒険はしないでありのままを出してますね。「ダサさ」っていうのは楽しんでほしいところですよね。

──ネタ作り自体はどんな感じでされてるんですか?

ワクサカ:3人でとにかく喫茶店で何時間もネタ出しして、こんなんがいいんじゃないかとか言って、これとこれ面白かったから持って帰って脚本作るわって感じですね。

──ちなみに、3年前には、ニューヨークで公演をされてますが、それはどういった経緯で?

ワクサカ:僕らね、やりたいことはすぐやる、コント界の「すぐやる課」なんですよ。なので次のライブでもある音楽家の時事ネタをぜったい入れたいと思ってるんですけど。

伴:さっそくね。

ワクサカ:もういまやりたいぐらいなんですけどね。だからニューヨーク行きたいと思ったら、すぐ行きたいんですよね。経緯も何もなくて、自分たちで旅費を払って、スタジオ押さえて外人に見せようと。そこで生まれたのが「能でDr.スランプアラレちゃん」っていう僕らの中での名作なんですけど。それを外人にぶつけようって言って、客も完全にNYで集めて、サイト作ってってやったら8人集まったんですよ、現地の人が。

──すごいですね!

ワクサカ:えぇ。それが全員日本人だったんですよ、現地のね。

(一同、笑)

──でも、ほんとにすごい行動力ですね。

ワクサカ:そうですね。暇だからですね。行動しないとなんでもなくなっちゃうから。

畑中:若干、気持ちがヤリチンみたいなところがあるよね。

ワクサカ:ヤリマンっていうかね。だから、すぐやっちゃうんです。

畑中:我慢ができないんですよね。

ワクサカ:この後、彼氏と会えるの分かってるんだけど、気持ちいいからやっちゃうみたいな。ヤリマン気質ですね。って何の話ですか、これ。

演劇やお笑いの事務所に属さず、オルタナティブなスタンスで居続けていることを芸人界の生態系を乱しまくる「ブルーギル」と自らを形容しうそぶいてみせるが、彼らの織り成すコントにはそのスタンスゆえの覚悟と行動力、既存のテレビ的お笑いでは成し得ない痛快さがある。それは既存のお笑いに対するカウンターカルチャーともいえる。

(取材・文・構成:石井雅之/ヤマザキムツミ)



ミラクルパッションズ プロフィール

2007年より3人で活動を開始したコントカンパニー。無数のコントを積み上げることでひとつの世界を出現させる「コントコラージュ」という独自の手法を用いて、精力的にLIVEを行っている。近年より単独LIVEのチケットはソールドアウト状態が続いている。2010年にはNYでのコントLIVEを敢行した。そんな感じだが、知らない人に「何ていうチーム名で活動しているの?」と聞かれると、いまだに口ごもる。
公式サイト:http://mp-s.net/




ワクサカソウヘイ『夜の墓場で反省会』出版記念LIVE
「ミラクルパッションズ、たえまなくそそぐあいのなを大全集とよぶことができたなら」
2014年3月9日(日)渋谷UPLINK FACTORY

第1回公演 17:30開始/第2回公演 20:00開始
料金:予約1,000円(別途ドリンク代)/当日2,000円(別途ドリンク代)
【キャスト・スタッフ】
作・演出・出演:ワクサカソウヘイ、畑中実、伴秀光
音響:髙嶋早紀
照明:小林千紘、こんきりこ
映像:工藤尚輝
構成協力:木村樹
企画・制作:瀬川卓見、ミラクルパッションズ
共催:テレビブロス、UPLINK
☆各回終演後サイン会あり
ご予約は下記より
http://www.uplink.co.jp/event/2014/23099




夜の墓場で反省会
著:ワクサカソウヘイ
発売中

1,575円(税込)
191ページ
東京ニュース通信社
ISBN-10: 4863363842
ISBN-13: 978-4863363847


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